◇ 最新ニュース ◇
【11月30日】
【11月29日】
【11月28日】
【Watch記事検索】
日本ビクターとケンウッドが統合した「JVCケンウッドHD」が誕生
-「1年以内にホームAVとモバイル機器で新機軸を」


10月1日発表


 日本ビクター株式会社株式会社ケンウッドが経営統合した共同持株会社、JVC・ケンウッド・ホールディングス株式会社(JVCケンウッドHD)が1日に設立。都内で設立会見が開催され、同社会長で前ケンウッド会長の河原春郎氏、同社社長で前日本ビクター社長である佐藤国彦氏らが出席した。

 JVCケンウッドHDは、ビクターとケンウッドの株式を100%保有する完全親会社となる。また、統合による大きなシナジー効果を見込んでいるカーエレクトロニクス事業においては、シナジーの早期最大化を図るため、同日付で会社分割により、両社カーエレクトロニクス事業に関する権利義務の一部などを、合弁会社のJ&Kテクノロジーズ株式会社に承継。同社はビクターとケンウッドの共同技術開発のために設立されていたが、今後は業容をカーエレクトロニクス事業の全面的な開発、設計、調達、生産に拡大。両社カーエレクトロニクス事業関連の生産子会社6社も、J&Kテクノロジーズの子会社となる。

 これにより、JVC・ケンウッドグループには、ビクターとケンウッド、そしてJ&Kテクノロジーズ(JKTE)の3つの事業会社が存在するというグループ構造になる。

会長で前ケンウッド会長の河原春郎氏(左)、社長で前日本ビクター社長である佐藤国彦氏(右)らが出席した JVCケンウッドHDのコーポレートロゴマーク。なお、両社の商品には従来通り日本ビクターやケンウッドのロゴが使用される

 ホールディングスの株主構成はパナソニックが24.41%、スパークス・グループが14.54%、ケンウッドが11.28%、その他が49.77%。人員規模の概算はホールディングス(本社:横浜)が700人、ビクターが14,500人(本社:横浜 3.500人、関係会社11,000人)、ケンウッドが2,400人(本社:八王子 700人、関係会社1,700人)、JKTEが6,000人(本社:八王子 1,000人、関係会社5,000人)となり、グループ合計では23,000人規模になるという。


■ ジャンルトップ戦略

 河原春郎会長は、5月に発表した企業ビジョン「カタ破りをカタチに。」と、行動指針「一人一人が主人公となって絶え間ない変革をやり遂げる。」を再度紹介。「これらのもとで新たな付加価値を創造し、これまで経験したことのない桁違いの体験をお客様へお届けしたい」と決意を述べた。

 さらに、JVCケンウッドHDのコーポレートロゴも紹介。右側にある2本のラインは成長性や拡張性、カタ破りをカタチにする発想力や実行力で世界をリードするという決意を表しているという。ブランドカラーは「知性と品格を表すインテリジェントブルー、進化し続ける技術力を表すテクノグレーを採用した」とのこと。

 事業は大きく分けて4つを手掛ける。2008年3月期の売り上げ構成で43%と最も大きなウエイトを占めるのは、オーディオやビデオ、テレビを含む「ホーム&モバイルエレクトロニクス事業」。次いで「カーエレクトロニクス事業」が18%、「業務用システム事業」が14%、ソフトなどの「エンタテイメント事業」が9%。ジャンルとしては合計6つ。

 河原会長はそれぞれのジャンルでトップを目指す「ジャンルトップ戦略」を掲げる。最大の売り上げとなるカーエレクトロニクスは現在の1,500億円から、2,000億円規模を目標とする。強みを持つカーエレクトロニクス、ビデオカメラ、業務用システム、エンターテイメントの4ジャンルで、2011年3月期には全社売上高の約7割に相当する規模になる予定。河原会長は「ディスプレイとオーディオが構造改革を終えて、少なくともブレイクイーブン以上の事業になれば、非常に安定して収益性の高い会社に生まれ変わるだろう」と語る。

 なお、カーエレクトロニクス事業の実質的統合体であるJKTEは、現時点では営業部門などを持っていないため、当面は開発した機器を、その特性に合わせてビクターやケンウッドに提供することになる。そのため、JKTEブランドで市販される機器は当面登場しない予定だが、将来的には商品企画や営業機能を含めた独立事業会社化する構想で、事業会社に準ずる扱いをしていくという。

4事業セグメントと6ジャンルへ再編 ジャンルトップ戦略の概要


■ 1年以内に新機軸の2製品を投入

新事業開発センターの前田悟センター長

 組織設計もシンプルに変更されたほか、新たに「新事業開発センター」が設けられ、センター長に、かつてソニーでロケーションフリーなどを手がけた前田悟氏が就任したことが報告された。

 前田氏は懇親会の挨拶の中で、「昨年暮れにソニーからワクワクした気持ちで入社し、JVCケンウッドHDも『開発センターを持つべきだ』と提案させていただいた。それは、新しい商品を出し続ける会社になる必要があると考えたからだ」という。

 前田氏は「私はAV機器を“危ない機器”ではないかと考えている。各社の製品は同じようになりつつあり、価格競争に陥り、空洞化してしまう。新しいアイデアの商品を出していかないとアジア勢に負けてしまう。現在はインフラも充実しており、逆の意味でアイデア次第でライフスタイルを変えるものは作れる状況でもある」と語り、新事業開発センターで現在2つの製品を開発していることを明らかにした。

 製品ジャンルは“ホームAV”と“次世代モバイル機器”とのことだが、詳細は「1年以内には商品をご説明できるだろう。アイデア次第なので今お話するわけにはいかない」と笑う。「キーワードはネットワークと新サービスと、秘密のもう1つ。テーマは“やりたくてもできなかったことを実現する商品”。よく、(新商品や新サービスの利点として)様々な場所でドラマが観られて、その場ですぐに俳優の着ている服が注文できるなどと紹介されるが、私は大河ドラマの篤姫くらいしかドラマは観ない。篤姫を観ながら何の服を欲しがるというのか? 本当にやりたくてもできなかった事を実現する商品を届けていきたい」と語った。

懇親会場にはビクターとケンウッドが手がける製品が展示。共同で開発されたHDMI/DSPモジュールを搭載した、ケンウッドブランドのAVアンプも展示された。欧州向けの製品だが、日本市場への投入については「検討中。年内に何らかの動きはあるだろう」という


■ 2011年3月期の経営目標 売上高7,500億円

河原会長

 経営面では、パーチェス会計による統合効果により、'09年3月期の下期からのJVCケンウッドHDの業績は、同上期までの両社業績の単純合算と非連続になる。JVCケンウッドHDとしての'09年3月期の業績は、ケンウッドの'09年3月通期業績と、ビクターの'09年3月期下期の業績が連結される。上期のビクターの業績は連結されない。

 また、パーチェス会計では各企業の資産が時価で引き継がれることから、その効果が370億円近く出るという。ここから退職給付や構造改革の残存コストなどを引き当て、最終的には100億円程度の「負ののれん」が発生する見込み。5年償却を想定し、1年あたり約20億円の償却額が営業外収益として計上されるという。

 こうしたことを踏まえた、'09年3月期の見通しは、売上高4,000億円、営業利益125億円、純利益が50億円の黒字。2011年3月期の経営目標としては、連結売上高7,500億円、連結営業利益390億円、営業利益率5.2%を目指すという。

 売上高は前回発表した8,300億円よりも減っているが、これはビクターが従来、顧客に対する値引き額の一部を販売費として処理していたが、株式移転にともない、ケンウッドと同様に売上高から直接控除するネット方式に変更したためで、見かけの売上高は減っているが、実態は前回の目標と同じだという。

経営目標 2009年3月期の業績予想

 なお、統合の効果として純資産は両社にとってプラスに、自己資本比率は30%近い水準を維持。一株あたりの純資産は110~120円と資産されているが、1日のホールディングス株価の終値は69円となった。河原会長は「大変サプライズな安さで、私どもとしては『安すぎる』という感想を持っている」とコメント。「9月末の両社の上場廃止からしばらく間があいたので、そこについて心配されたのかもしれない。また、ディスプレイ事業の成り行きやサブプライム問題の影響が見えないことなどについて、ご心配していただいたのかもしれない」と分析する。

 佐藤国彦社長はディスプレイ事業について「米国の市場は確かに厳しいが、欧州とアジアでカバーできる。展開しているプレミアムプロダクツの薄型液晶TVやiPod Dock付き液晶TVなどの導入はうまくいっており、8~9月は十二分に盛り返している」と現状を報告。

 河原会長も「国内のテレビ事業の縮小という判断には、着実に成果が出ている。米国の厳しい状況は想定の範囲内であり、自らのコスト削減による結果が出つつあるので、市場動向にさほど左右されずに結果が出せるだろう」と語り、株価については「統合会社としての価値で、株価を付けていただけるようお願いしたい」と語った。


□JVCケンウッドHDのホームページ
http://www.jk-holdings.com/
□ニュースリリース(PDF)
http://www.jk-holdings.com/press/2008/10/press_081001.pdf
□ビクターのホームページ
http://www.victor.co.jp/
□ケンウッドのホームページ
http://www.kenwood.co.jp/
□関連記事
【9月12日】10月1日設立のJVCケンウッドHDが経営体制を内定
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20080912/jvck.htm
【8月25日】ビクターとケンウッドの共同開発第1弾はAVアンプ
-HDMI/DSPモジュールを開発。ケンウッドが今秋発売
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20080825/jandk.htm
【5月12日】JVCケンウッドホールディングスが10月1日設立
-ビクターとケンウッド経営統合。「カタ破りをカタチに」
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20080512/jvck.htm

(2008年10月1日)

[AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]


00
00  AV Watchホームページ  00
00

Copyright (c)2008 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.