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パナソニック株式会社は4日、2008年度第3四半期(2008年4~12月)連結決算を発表した。 売上高は前年同期比9%減の6兆2,237億円、営業利益は34%減の2,545億円、税引前利益は60%減の1,442億円、当期純利益は70%減の654億円となった。 また、同社では、2008年度通期の連結業績見通しを下方修正した。連結売上高は、11月公表値に比べて7,500億円減となる前年比14.5%減の7兆7,500億円、営業利益は2,800億円減となる前年比88.4%減の600億円、税引前損益は11月公表値から4,800億円減の3,800億円の赤字(前年実績は4,349億円の黒字)、当期純損益は同4,100億円減の3,800億円の赤字(同2,818億円)とした。
同社では、「前回の業績予想公表後の国内外における、より一層の市況悪化に伴う販売減や、さらなる円高の進行を受けた為替レートの見直しにより、収益悪化が予想されることに加え、この状況に対応した収益改善に向けた事業構造改革の追加実施などを見込んだことにより、連結通期業績予想を修正した」としている。 なお、今回修正予想における営業外損益4,400億円の損失には、国内外の拠点統廃合、固定資産の減損および雇用構造改革を中心とした事業構造改革費用3,450億円、保有株式の評価減780億円などが含まれている。 さらに、同社では、兵庫県姫路に建設中の液晶パネル生産のIPSアルファ姫路工場の量産稼働時期を、2010年1月の予定から2010年7月に延期したこと、プラズマディスプレイパネル生産の兵庫県尼崎の国内第5工場の稼働予定を、当初の2009年5月から、2009年11月に試験生産を開始、2010年1月からの量産へと延期することを明らかにした。 通期業績の下方修正について、パナソニックの上野山実取締役は、「さらなる市況の悪化と追加構造改革により年間見通しを下方修正することになった」と説明し、売上高で7,500億円にのぼる下方修正のうち、1,000億円が第3四半期に、6,500億円が第4四半期に影響するとして、市況悪化がさらに進展していることを示した。また、企業向けのBtoB関連で4,800億円の減少と、修正要因全体の6割強を占めているという。 営業利益の2,800億円減の修正要因としては、景気減速による大幅な販売減、および競争激化による価格下落の影響などで3,250億円減、為替の影響で100億円減。一方で原材料価格の低下で160億円、合理化・固定費削減の390億円の合計550億円の増加があるとした。 また、営業外損益における4,800億円減の修正要因としては、営業利益での2,800億円の減少に加えて、事業構造改革費用で1,900億円減、株式評価減で180億円減、社名変更およびブランド統一費用で80億円の増加とした。事業構造改革費用では、前回公表の1,550億円の構造改革費用に加えて、1,900億円を追加し、3,450億円とした。
構造改革の具体的な取り組みとして、製造拠点の統廃合として、国内13拠点、海外14拠点の合計27拠点を閉鎖。不採算事業の撤退および固定資産の減損、人員の再配置・削減などを実施する。 閉鎖する具体的な拠点については、すでに実行に移している藤沢、岐阜、マレーシアの拠点をあげるに留まったほか、撤退事業についても、撤退基準として定めている「2006年度以降、3年連続で赤字の商品、事業」とするに留まり、具体的な事業名については明言を避けた。 人員削減については、「雇用を守るのは当然。だが、拠点や事業を見直す上で、人員の配置転換や削減が生じるもの」と前置きし、「対象人員規模は、全世界で1万5,000人。国内外が半々ずつ。国内には非正社員も含まれるが、その規模は明らかにできない。だが、派遣社員は契約を満了するまでできるだけ契約を維持し、満了した際も、再就職の相談窓口を用意する」などとした。 また、2009年度には、コスト削減効果として2008年度比1,000億円を見込むが、一方で、2009年度も引き続き事業構造改革を断行するとともに、緊急経営対策を新たに実行し、「他社よりも早く立ち直るよう経営体質の強化を図る」(上野山取締役)とした。 緊急経営対策では、今月から役員報酬を10~20%返上、管理職報酬も5%返上を実施。さらに、各事業場において、管理可能経費の削減を実行するという。
上野山取締役は、「2001年に実行した構造改革(破壊と創造)とは環境が大きく違う。金融経済に加え、実体経済も縮小に入っており、車、PC、携帯電話、AV機器といった、いずれもが縮小している。しかも、底がまだ見えない。この状況は1年以上続くだろう。2009年度は、今年度以上に厳しい年になると見ている」と現状を判断。 さらに「2009年度黒字化に向けて、成長事業での収益基盤構築、不採算事業の確実な改革および撤退、伸びる事業分野への仕込み・強化を加速することに取り組む。三洋電機の買収については、これを進めることには変わりがない。事業の詳細はまだ話ができていないが、成長事業分野である電池事業を中心にシナジーを生む要素が大きいと考えている」と説明。 なお三洋電機の買収に関しては、11カ国において競争法当局に申請を行っており、2月下旬までに進捗について説明できるとした。
■ 四半期別の売上高は第3四半期実績では全分野で減収 一方、第3四半期の連結決算について、上野山取締役は、「急激なグローバル需要の低迷、円高の進行により、9カ月累計では減収減益となったものの、第3四半期(10~12月)の営業利益は264億円(前年同期比84%減)の黒字を確保した。また日本ビクターと為替の影響を除く実質ベースでは売上高は2%減となっている。だが、構造改革の実施により税引前利益、純利益は赤字となった」とした。 第3四半期累計での国内売上高は6%減の3兆1,341億円、海外売上高は13%減の3兆896億円となった。海外では米州の売上高が1%減の8,407億円、欧州が1%増の8,054億円、中国が4%増の7,131億円、アジアが前年並みの7,304億円となった。
セグメント別の第3四半期累計の売上高は、デジタルAVCネットワークの売上高が7%減の3兆402億円、営業利益が979億円。営業利益率は3.2%となった。 そのうち、薄型テレビなどのデジタル家電を担当するAVCネットワークス社は、売上高が3%増の1兆6,024億円となったが、営業利益は薄型テレビの価格下落の影響があり、87%減の125億円。携帯電話事業を担当するパナソニックモバイルコミュニケーションズ(PMC)の売上高は4%減の2,949億円、営業利益は449%増の280億円となった。 第3四半期は、薄型テレビやDVDレコーダーの売り上げは前年実績を上回ったが、デジタルカメラやオーディオ機器などが減収となった。情報・通信機器部門では、カーエレクトロニクス機器やパソコン、周辺機器などの売り上げが低調となった。 薄型テレビの販売金額は第3四半期までの9カ月累計で、全世界で、9%増の7,742億円。そのうち、日本国内は6%増の1,895億円、米州は5%減の1,760億円、欧州は12%増の2,733億円、アジア/中国は34%増の1,354億円となった。また、プラズマテレビが前年同期比3%減の4,875億円、液晶テレビは39%増の2,868億円となった。デジタルカメラは、11%減の1,772億円、DVDレコーダーは7%増の1,099億円。
一方、アプライアンス分野の売上高は3%減の9,776億円、営業利益は651億円。コンプレッサー、電子レンジ、管球などの売り上げが減少したのが影響。エアコン、冷蔵庫、洗濯機の白物主要3製品は、欧州で19%減の299億円、アジアで2%減の818億円、中国で3%減の739億円となった。 電工・パナホームの売上高は3%減の1兆3,614億円、営業利益は461億円。パナソニック電工は、健康器具などの電器事業に加え、電子材料や制御機器などの販売が苦戦したことにより減収。一方、パナホームは、建築請負事業が堅調で増収となった。デバイス分野の売上高は前年同期比11%減の9,485億円、営業利益は540億円。一般電子部品や半導体などが販売不振となった。その他分野の売上高は、4%増の8,210億円。営業利益は289億円となった。
四半期別の売上高は第3四半期実績では全分野で減収。営業利益はアプライアンス分野を除いて減益となった。だが、第4四半期は全分野で減収減益になると見ている。設備投資は、9カ月累計で3,522億円。通期の計画では5,300億円としていたが、4,700億円程度に留まることになりそうだ。 なお、9カ月累計のグループ事業領域別実績では、デジタルAVCネットワークソリューションの売上高が7%減の3兆402億円、営業利益は50%減の979億円。環境・生活快適実現ソリューションの売上高が3%減の2兆3,390億円、営業利益が15%減の1,112億円、デバイス・産業ソリューションの売上高が5%減の1兆7,695億円、営業利益が33%減の829億円となった。
□パナソニックのホームページ ( 2009年2月4日 ) [Reported by 大河原克行]
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