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新「TiVo」は買収で何が変わる? 観たい番組探しとデータ活用の今後

 TiVoは、「CEATEC JAPAN 2016」の開催に合わせてプライベート展示を行なっており、EPGの「Gガイド HTML」や、「Fan TV」、スポーツ向けメタデータなど同社の技術やサービスを、放送事業者などの関係者に対して紹介している。

TiVoの東京オフィス

 TiVoは、'99年から米国などで展開しているテレビ番組のレコーダ(DVR)で知られ、録画中の番組を冒頭部分から観られるタイムシフト再生などにも早くから対応。多くの放送/CATV/ネット配信などの様々なコンテンツを1つのレコーダで管理し、目的の番組を探しやすくするといったサービスを行なっている。

 既報の通り、TiVoは9月にRoviによって買収され、社名の「TiVo」を引き継ぐ形で両社の事業を統合。Roviが持っていたGガイドなどのサービスも、TiVoブランドとして展開される。

 レコーダ本体の機能追加に際し、ユーザーの評価を集めて反映するといった手厚いサービスもあり、現在も海外のコアなユーザーに根強い人気を持つ。米国などで販売されているレコーダの現行機「TiVo BOLT」の価格は500GBモデルが199.99ドルで、ネットワークサービスを月額14.99ドルで提供している。

TiVoのレコーダ「BOLT」

 TiVoは現在、70カ国2,500万以上の世帯に500以上の有料テレビサービスを展開。一方で、日本に比べると“テレビ録画”が一般的ではない海外では、レコーダを購入する世帯は限られ、米国でもレコーダのユーザー数そのものは100万人程度だという。

 こうした中、TiVoのレコーダは自社での販売だけでなく、テレビサービスのDirecTVによる「DirecTiVo」のように、サービスプロバイダ経由でも提供。このようなサービス事業者との連携が、今のTiVoの重要な収益になっているという。

 そのため、旧RoviによるTiVoの買収は、自社のハードウェアを持つことで、コンシューマにとって身近な存在になるという狙いはあるものの、単にレコーダの販売を拡大することよりは、「CATV/テレビ局などサービスプロバイダとの連携をさらに強める」ことに大きな意味を持つという。

 また、EPGを主としたサービスを持つ2社が1つになることで重なる部分を省くこともでき、「100億円以上のコストカットをすると市場に約束している」とのこと。両社は多くの特許を持っており、TiVoが持つ特許の一つとして、録画しながら再生する“タイムワープ”が有名。

 国内のレコーダユーザーの中には、今後、日本でもTiVoのレコーダが販売されることを期待する人もいるかもしれないが、上記のような理由から、少なくともTiVoが自社で発売する可能性はほとんどなさそうだ。

TiVo「BOLT」の画面。もうすぐ配信が終わる番組のリストを表示

 TiVo独自の機能としては、「パーソナルレコメンデーション」というものもある。例えば番組検索などで、検索結果に見たかった番組があれば、そのまま視聴や録画予約などへと移れるが、必ずしもユーザーの期待に沿った番組がリストの上に表示されるとは限らない。TiVoのレコーダにはリモコンに“サムアップ/ダウン”ボタンがあり、検索結果に合っている場合はサムアップ、違う場合はサムダウンを押す。その結果を蓄積して、検索結果表示に反映される。データが集まるほど、ユーザーの実際の感覚に合った検索が可能になっていく。こうしたユニークな機能が、今回の統合によりTiVoレコーダ以外にもテレビ本体やサービスなどへ導入されていけば、利便性は高くなりそうだ。

BOLTのリモコン。サムアップ/ダウンボタンがある

 従来はRoviとして手掛けてきた番組表の「Gガイド」もテレビへの搭載が進み、3月から発売されたシャープAQUOSのテレビにも採用が開始された。

 最新の「Gガイド HTML」では、インターネット上のデータも活用し、番組出演タレントから、他の出演番組を探せるなど、放送波データだけの番組表から大きく進化。また、現在のテレビ番組表から、以前見逃したドラマの過去放送回をCATVなどのVODサービスで探し、視聴まで移行するといった連携も簡単な操作で実現している。

 こうした機能も、豊富なメタデータと、サービスプロバイダとの連携によって可能になったもので、ストレスのない操作で好みのコンテンツを探せるUIが今後も進化すれば、エンドユーザーにとって大きなメリットとなるだろう。

Gガイド HTMLの最新事例。国内サービス事業者から今後提供される製品への採用も決まっているという
音声での番組検索画面
従来の黒基調のUI画面だけでなく、白基調の明るいUIも用意。これをベースにテレビメーカーなどがカスタマイズできる
番組表から「相棒14」の情報を表示。出演者の写真も
出演者の一人を選び、他の出演作品を検索
国内テレビ/レコーダの多くがGガイドを採用

Fan TV、スポーツなどのメタデータも

 '14年に買収したFanhattanが持つサービス「Fan TV」もデモ。対話式の音声検索が行なえ、例えば「今夜の番組は?」と話して検索結果が出た後、「明日はどう?」と尋ねると、前の会話の内容を反映して、「番組」という言葉を使わなくても翌日の番組を検索するといったことが行なえる。

Fan TVの画面
音声検索では、直前に話した言葉の流れを汲んで結果を表示

 また、スポーツ向けのメタデータも紹介。選手の個人成績や、チームの試合結果などのデータを蓄積して、映像配信など様々なサービスと連携可能。例えば、放送/配信中のサッカーの試合の一覧から、特に盛り上がっている試合(拮抗しているなど)に炎のアイコンを表示して、盛り上がっている順におすすめ表示できるといった活用例を提案。試合経過を細かく分類し、「A選手がシュートを決めた」など特定のシーンだけを後から再生するといったことも可能だという。

スポーツ選手のメタデータの例
関連動画の表示
盛り上がっている試合の順。サムネイル上の赤い帯が最も盛り上がっていることを示し、オレンジはその次