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ソニー第2四半期は営業利益457億円。PS VR販売数「想定通り」、通期は下方修正

 ソニーは1日、2016年度第2四半期(2016年7月1日~9月30日)の連結業績を発表した。売上高は、前年同期比10.8%減の1兆6,889億円、営業利益は48%減の457億円。税引前利益は43.9%減の405億円。純利益は85.6%減の48億円。減収減益ながら黒字を維持している。

第2四半期業績

 売上高が前年同期比減少となった要因は、主に為替の影響としている。金融分野や映画分野の増収などがあったが、スマートフォンの販売台数の大幅な減少によるモバイル・コミュニケーション(MC)分野の減収などで、売上高はほぼ横ばいとなった。熊本地震の第2四半期への悪影響は約137億円。

 営業利益の大幅な減益は、映画分野とMC分野などで改善があった一方で、主に半導体分野とコンポーネント分野の損益悪化を要因として挙げている。四半期純利益は、前年同期に比べ287億円減少の48億円となった。

登壇した代表執行役副社長兼CFOの吉田憲一郎氏

PS VR販売数は「想定通り」。イメージセンサーはドローンや車載向けも

 テレビを含むホームエンタテインメント&サウンド(HE&S)分野の売上高は、前年同期比18.7%減少の2,349億円。主に為替の影響と、家庭用オーディオ/ビデオ市場縮小にともなう販売台数の減少によるものだという。

ホームエンタテインメント&サウンド(HE&S)分野

 営業利益は前年同期比18億円増加の176億円。為替の悪影響と、減収の影響があったが、高付加価値モデルへのシフトによる製品ミックスの改善、コスト削減などで分野全体では増益となった。なお、為替の悪影響は60億円。

 液晶テレビの販売台数は前年同期比10万台増の310万台。通期見通しは1,200万台で7月時点から変更はない。

 HE&Sの通期見通しは、液晶テレビの好調などで売上高を1%上方修正の1兆100億円とし、この増収により、営業利益は60億円上方修正の470億円を見込む。

 ゲーム&ネットワークサービス(G&NS)分野は、売上高が前年同期比11.3%減少の3,199億円。ネットワークを通じた販売を含むPlayStation 4(PS4)ソフトウェアの増収があったが、為替の影響やPS4のハードウェア価格改定の影響などで、分野全体では大幅な減収となった。

ゲーム&ネットワークサービス(G&NS)分野

 10月に発売したPlayStation VR(PS VR)の売上について、代表執行役副社長兼CFOの吉田憲一郎氏は「台数は開示していないが、想定通り。今年、目論んでいた出荷は十分できる。生産を増やす形で上向きに動かしている。VR事業は当面、ゲームやCGなどでビジネスをしていくが、将来的には実写でのエコシステムが作れればいいと考えている。ソニーにはいろんなハードウェアがあり、そこでポジショニングを上げていきたい」とした。

 営業利益は前年同期比49億円減少の190億円。PS4のハードウェアのコスト削減と、PS4ソフト増収の影響があったものの、PS4のハードウェアの価格改定の影響や、PlayStation 3(PS3)ソフトの減収の影響などで、分野全体では減益となった。なお、為替の悪影響は9億円。

 デジタルカメラなどイメージング・プロダクツ&ソリューション(IP&S)分野は、売上高が前年同期比25.2%減少の1,354億円。デジタルカメラ/ビデオカメラにおける高付加価値モデルへのシフトによる製品ミックスの改善があったが、市場縮小や熊本地震の影響で部品の調達が困難になったことなどによってデジカメ/ビデオカメラの売上が減少。為替の影響もあり、分野全体で大幅な減収となった。

イメージング・プロダクツ&ソリューション(IP&S)分野

 営業利益は前年同期比82億円減少の149億円。製品ミックスの改善や固定費の削減などがあった一方、減収の影響や為替の悪影響などで大幅な減益となっている。為替の悪影響は95億円。

 IP&S分野の通期見通しは、熊本地震による影響を受けた部品調達と製品出荷の改善、高付加価値モデルへのシフトなどから、売上高を3.7%上方修正の5,600億円、営業利益を120億円上方修正の340億円とした。

 スマートフォンなどのモバイル・コミュニケーション(MC)分野は、前年同期比39.6%減少の1,688億円。スマホの高付加価値モデルへの集中による製品ミックスの改善があったものの、主に普及価格帯のスマホ販売台数の減少や、前年度に事業縮小を図った不採算地域における販売台数の減少などによって、大幅な減収となった。

モバイル・コミュニケーション(MC)分野

 営業損益は前年同期の206億円の損失に対し、37億円の黒字となった。構造改革の効果などによる費用削減、製品ミックスの改善、為替の好影響や、構造改革費用の減少などを損益改善の理由として挙げている。為替の好影響は54億円。

 MC分野の通期見通しは、スマホ販売台数想定の下方修正に合わせて、7.1%マイナスの7,800億円とする。減収の一方で、高付加価値モデルへの集中による製品ミックスの改善などで営業利益の見通しに変更はない。

 半導体分野は、売上高が前年同期比 5%減少の1,937億円。イメージセンサーにおいて、モバイル機器向けの販売数量は増加したが、為替の影響で減収となった。外部顧客に対する売上高は、前年同期比 1.1%増加した。

半導体分野

 営業損益は42億円の赤字で、前年同期は341億円の黒字から大幅なマイナスとなった。モバイル機器向けイメージセンサーの販売数量は増加したが、為替の悪影響や、モバイル機器向けの一部イメージセンサーの在庫に関する評価減94億円を計上したことなどが影響した。営業損失のうち、熊本地震に関連する費用(純額)は12億円。

 イメージセンサーの現状について吉田氏は「中国向けを中心に足元の需要は総じて強い、来年に向けても引き合いは強く、複眼カメラの比率も期初時点の想定より上昇していく見通し。しかし、スマートフォン向けは市場の変化が激しいことから、動向は引き続き注視する」とした。

 スマホ以外の「AV・監視向け」は、熊本地震の影響が大きかったとするものの、今後は高付加価値化などで収益向上を図り、「監視カメラ、ドローン向けは順調に推移している」という。

 車載向けについては、デンソーがソニー製のCMOSセンサーを採用すると発表したことに触れ、「イメージセンサーで強みにしている“感度”が評価された意味は大きい。ただ、出荷が本格的に立ち上がるには3~5年の時間軸が必要。機能には自信を持っており、一定のポジションを獲得できる」とした。

 映画分野は、売上高が前年同期比4.6%増加の1,921億円。映画製作、テレビ番組制作、メディアネットワークの各カテゴリが増収した。第2四半期に公開された「ゴーストバスターズ」、「ソーセージ・パーティー」、「ドント・ブリーズ」などによる劇場興行収入の増加が、映画製作の大幅な増収に貢献したという。テレビ番組制作は、「ザ・クラウン」と、「ゲットダウン」の会員制ビデオオンデマンド(VOD)からのライセンス収入などで大幅に増収した。営業損益は、前年同期は225億円の赤字だったが、増収の影響で32億円の黒字に転換した。

映画分野

 音楽分野は、売上高が前年同期比8%増の1,502億円。円高の悪影響があった一方で、スマホ向けゲームアプリ「Fate/Grand Order」が好調だった映像メディア・プラットフォームや、ストリーミング配信売上が増加した音楽制作の増収があった。ヒットした主な音楽作品は、セリーヌ・ディオンの「Encore un soir」、乃木坂46の「裸足でSummer」、西野カナ「Just Love」など。増収の影響などで、営業利益は前年同期比23億円増加の165億円となった。

音楽分野

関連会社の架空発注を陳謝。電池事業譲渡で、通期見通しは下方修正

神戸司郎執行役EVP

 1日に行なわれた決算説明会の冒頭に、10月28日に発表したソニーLSIデザイン(SLSI)の元役員と元社員による取引先と不正行為について、吉田氏が株主らに対して陳謝。この件について、法務/コンプライアンス担当の神戸司郎執行役EVPから報告が行なわれた。

 社内調査によれば、元役員1名と元社員4名は、実態とは異なる発注などで不正に支出を計上し、一部を着服していたことが判明。不正行為は'12年2月から'16年9月の約4年半の間に繰り返し行なわれ、SLSIに約9億円の損害を与えたという。5名は懲戒解雇となり、今後刑事告訴の準備を進め、民事上の責任追及も検討するという。

 SLSIは1日付で社長交代を含めた人事組織改革を行ない、内部管理体制の強化などを進める方針。神戸氏は「ソニーグループにおいて、このような事件を決して繰り返さないよう、コンプライアンス教育の再徹底、経理/調達プロセスの再評価、内部監査の強化など、再発防止に努める」とした。

 電池事業の村田製作所への譲渡に伴う損失計上額は、営業損失が328億円、税金費用は45億円。

 通期業績見通しは、売上高は7月時点と変わらず7兆4,000億円。営業利益は、電池事業の譲渡に伴う損失計上によって、300億円下方修正の2,700億円とした。純利益は、200億円下方修正となる600億円。

連結業績見通し
セグメント別業績見通し
熊本地震の営業利益への影響額試算