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4K/HDR制作が低コスト化、8KをノートPCで編集!? 「After NAB」秋葉原で開催

 米ラスベガスで4月22日~27日(現地時間)に行なわれた世界最大の放送/映像業界向けイベント「NAB Show 2017」で披露された最新製品やサービスを、日本国内で紹介する「After NAB Show」が6月1日~2日の2日間、東京・秋葉原UDXで開催。4K/HDRや8Kなどの配信/放送に向けて、よりスムーズな映像制作を実現するワークフローなどが展示されている。

会場の秋葉原UDX

 After NABでは、米国NAB Showでは明かされなかった日本市場へのリリースの時期や価格など、日本開催に合わせた情報も発表されている。なお、東京開催に先駆け、大阪では5月30日にグランフロント大阪で開催された。参加は無料だが、登録制のイベントとなっている。

4K/HDR制作を低コストで実現する新製品が多数

 UDX 2階のアキバ・スクエアに展示スペースが設けられ、45ブースが出展。さらに、4階のUDXシアターとUDX NEXT-2では両日に渡って、出展社らによるプレゼンテーションが行なわれている。4K/HDR制作や、配信ソリューションなどに関するトレンドなどが紹介されている。

セミナーのプログラム

 キヤノンは、5月31日に発表したCINEMA EOS SYSTEMの新たなビデオカメラ「C200」や、ビューファインダ/LCDモニターなどを省いてドローンなどにも搭載できるという「C200B」を展示。17型4Kモニターの「DP-V1710」と合わせて、コンパクトで低コストな4K/HDR制作環境として紹介。

EOS C200B
ハンドルやグリップなどを外してコンパクトに
「C200」と、17型4Kモニター「DP-V1710」

 また、国内では初展示となる新たなEFシネマレンズ「CN-E70-200mm T4.4 L IS KAS S」も用意している。EOS C700や、24型4Kモニター「DP-V2420」など本格的な制作機材と合わせて、制作側の様々なニーズに対応できる点をアピールしている。

EFシネマレンズ「CN-E70-200mm T4.4 L IS KAS S」

 AJAは、4K/60p収録対応のレコーダ/プレーヤーで、1080/60p×4ch収録も可能な「Ki Pro Ultra Plus」を紹介している。Apple ProResやAvid DNxHD MXFのフォーマットに対応するレコーダ/プレーヤー。HDMI 2.0対応で、4K/60pで4:2:2/4:4:4のキャプチャと出力が可能。サイズはハーフラック幅で、AJAのPak SSDメディアへ収録が可能なほか、オプションでeSATAへも収録できる。Webブラウザを使って現場やスタジオからリモートでモニタリング/操作/設定が可能。価格は563,000円。

Ki Pro Ultra Plus

 アスク メディア&エンタープライズ(ASK M&E)は、アクションカムのGoProを複数台同期させてマルチカム収録するための、タイムコードシンク用アダプタ「SyncBac PRO」を展示。GoProの背面に装着することで、タイムコードを埋め込んだMP4ソースファイルを生成できる製品。複数のGoProでの同期や、業務用カメラや音声機器との同期が可能。タブレットやスマホ、PCを使ってワイヤレスでモニタリング/制御ができるアプリの「B:LINK HUB」にも対応する。

左がGoPro、右が、背面に装着するタイムコードシンク用アダプタ「SyncBac PRO」
3台のGoProのタイムコードを同期

 Tooは、HP Z840ワークステーションを使った4K/60pリアルタイムプレビュー対応編集ターンキーシステムなど、現在提供している本格的な編集環境を展示。その一方で、今後の新たな提案として、ノートPCなどのマシンでも8K動画の確認などができるシステムを紹介している。

 これは、ノートPCなどにThunderbolt 3接続できる外付けのグラフィックカード搭載ユニット「eGFX BREAKAWAY BOX」(Sonnet Technologies製)を活用したもので、NVIDIA GeForce GTX 1080/980やAMD Radeon R9/RXなどの高性能なGPUを使って編集できるのが特徴。

ノートPC(左)と、外付けのグラフィックカード搭載ユニット「eGFX BREAKAWAY BOX」

 さらに、エンコード時にGPUパワーを活用できるように最適化されたコーデックの「UltraPix」(Comprimato製)を使うことで、8K/60pなどのコンテンツを、MacBook ProやHPのZBookなどでも扱えるという。

UltraPix

 UltraPixコーデックは、ビデオ編集ソフトのPremiere Proと合成ツールのNUKEに対応。Premiere Proのプレビュー画面では、一時停止中は8,192×4,096ドットのフル解像度だが、再生中は1,024×512ドットなどに落とすことで、コマ落ちを防ぎつつ映像の簡易チェックなどに使える。今回のシステムの製品化については検討中だが、顧客のニーズとして、VR映像の8K制作や、高精細映像のチェック用など、簡単/低コストな制作環境を求める声は多いという。

一時停止中は解像度(Render Size)が8,192×4,096ドット
再生中は1,024×512ドット

 ATOMOSは、SHOGUN INFERNOなどのカメラ用レコーダ製品を展示。また、同製品などのSSD対応機器において認証したソニー製のプロフェッショナル向けSSD「SV-GS96」なども紹介。さらに、バックアアップ用SSDとして、「ev Series Reader」のATOMOS最適化モデル「Atomos Master Caddy Edition」を紹介。ATOMOSのレコーダからの高速転送や、スタンドアロンのデバイスとしての再生、録画、バックアップ用途を想定している。

SSDレコーダなどを展示するATOMOS
ソニーやG-TechnologyのATOMOS認定製品を紹介

 リーダー電子は、4K映像対応のマルチ波形モニター「LV5490」において、HDRビデオ信号に対応する別売のソフトウェアオプション「LV 5490SER07」を紹介。また、ポータブルタイプのマルチSDIモニター「LV 5333」とオプション「LV 5333SER02」で、HDR対応ビデオ信号を評価できるデモも行なっている。

マルチ波形モニター「LV5490」
ポータブルの「LV 5333」

スポーツのハイライト映像で即時にエフェクト付加。HDRからのHLGコンテンツ生成など

 Avidは、スポーツ番組のハイライトやニュース速報などスピーディな制作が求められる現場で活用できる「PlayMaker」シリーズを展示。ビデオサーバー「PlayMaker Server」において、この春から導入したリアルタイムエフェクト機能「FlexFX」をデモ。

FlexFXの適用例

 FlexFXは、従来は一旦収録した素材に加えていた視覚効果を、サーバー単体で付与できるというもので、スポーツ中継のエンディングなどに、グロー、ブロー、セピア変換、モアレ効果などを付与して演出できる。現時点では18種類のエフェクトを用意し、コントローラ機材の「PlayMaker Controller」のボタンに割り当ててワンタッチで付与/変更できる。

コントローラからワンタッチでエフェクトを付与/変更

 AWSエレメンタルは、Amazon Web Service(AWS)を活用した映像配信向けのプラットフォームやビデオ処理サービスなどを紹介。HDRとSDRの両方で配信する場合に、HDR10やHLG(Hybrid Log Gamma)、SDRのソースから、HDR10またはHLGのコンテンツをリアルタイム生成するAWS Elemental Liveのデモを行なっている。

AWS Elemental Liveのデモ

 また、テレビ放送後の見逃し配信などを想定したVOD映像を生成する際に、フレーム精度で部分切り出しが行なえ、大容量のVODコンテンツ管理/配信に対応した「AWS Elemental Delta」なども紹介している。

AWS Elemental Delta

HDRの現状と課題を研究者が解説。Premiere ProはHDR対応強化

 アドビ システムズは、4月にアップデートした「Adobe Creative Cloud(Adobe CC)」の新機能を紹介。Adobe本社や業界団体で色彩科学を研究し、CinemaDNGフォーマットの開発なども担当しているカラーサイエンス研究者のLars Borg氏が、HDRに関する基礎から現状の制作における課題などを解説した。

カラーサイエンス研究者のLars Borg氏

 Borg氏は、HDR制作においてBT.2020の広色域をカバーするのに対し、ディスプレイ側はそれを表現しきれていないといった現状を説明。また、HDRコンテンツの収録、マスタリング、制作、配信、視聴それぞれの現状や課題を挙げた。一例として、HDR/SDR両方のコンテンツを配信または放送する場合、どちらを優先してカラーグレーディングするかという方針が、制作ケースによって分かれている点と、それぞれの違いなどを解説した。

HDRの概要と特徴

 こうした説明を受けて、アドビシステムズの古田正剛マーケティングマネージャーが、HDR対応などを強化したPremiere Proの新機能を紹介。国内放送局からの要望を受けてHLGに対応した点などを説明した。さらに、VR映像向け機能や、音声編集なども含めてAdobe CCの“全方位進化”をアピールした。

HDR制作の現状と課題
カラーグレーディングの基準はHDR? SDR?
アドビシステムズの古田正剛マーケティングマネージャーがPremiere Proの新機能をデモ