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シャープ、「液晶をさらに大きな事業へ、8Kを鴻海がサポート」。経営説明会開催

 シャープは20日、大阪府堺市のシャープ本社において、株主を対象にした経営説明会を開催。日本の技術を結集して、有機ELテレビを開発する計画や、8Kテレビの開発、コスト削減などについて説明した。

シャープの戴正呉社長

 午前中に開催された株主総会では、決議の目的事項に関連する質問に限定したが、経営方針説明会では、約1時間30分に渡って、株主からの幅広い質問に回答する内容とした。

 今回は、鴻海傘下で初めて開催された株主総会であったが、こうした形で、株主の質問に答える場を別途設けたのは初めての試み。また、午前中の株主総会に出席した株主が対象であり、会場に株主が着席していることを確認して、開始時間を約5分前倒しとしたのも、鴻海流の手法であったといえる。

「日本の技術を結集して、有機ELテレビを開発したい」

 有機ELテレビに関する質問では、ディスプレイデバイスカンパニーの伴厚志副社長が回答。「シャープは2016年9月に、有機ELに関する重要な決断をし、今、パイロットラインの整備を進めている。シャープは、有機ELに関して、1992年から開発をスタートしており、韓国勢よりも長い歴史があるが、事業投資をしてこなかった。シャープが持つオリジナリティのある技術を用いて、堺で開発を進めており、まずは、スマホ、ノートPC向けに技術を立ち上げていく。これは、十分な競争力を持てるものだと確信している」。

 「一方で、パネルサイズが大きい有機ELテレビ向けには、現在、LG電子の1社だけが供給している状況だが、シャープは、日本の会社。日本の技術を結集して、有機ELテレビを開発したい。これから、スマホ向けやノートPC向けと並行して、テレビ向け有機ELパネルにも取り組んでいく」と説明した。

 また、液晶事業への取り組みについては、「シャープの液晶パネルは、多くの顧客から高い信頼と評価を得ている。フリーフォームディスプレイといった形状を問わないものや、高精細なパネル、そして、IGZO技術もある。液晶パネルについては、亀山工場で引き続き新たな技術を開発し、活用している。亀山工場は2005年から稼働しているが、新たな技術に対応する設備を投入しており、オリジナル性が高く、優れた技術のパネルを生産している。これは、世界トップの技術だと確信している」。

 「そして、高いエンジニアリングがあり、これを、亀山以外にも展開していくことも期待している。マーケットがあり、新たな工場が必要であり、そこにインセンティブが得られると判断すれば、エンジニアリングの力を活用して広げていきたい。液晶事業は、シャープの全社売上高の42%を占めており、実力がある事業。チャンスを逃さず、さらに大きな事業に発展させていく」と述べた。

大阪府堺市のシャープ本社で行われた経営説明会

8Kエコシステムを鴻海がサポート

 一方で戴社長は、4K有機ELテレビと4K液晶テレビを比較したパネルを利用しながら、「明るさ、消費電力、コスト、長期信頼性、薄型化などにおいて、4K液晶テレビの方が優位性がある」と説明。「今、55型と65型の有機ELテレビがあるが、80万円もの価格となっている。これでいいのか。今の有機ELテレビは、ICをたくさん使っている。シャープは単独でLSIを開発しており、来年秋にはこれを完成できる。それによって、大幅なコスト削減ができる」とした。

 さらに、「スマホに採用されている有機ELパネルは、1年後には日焼けして、変色し、見づらくなってしまう。テレビは何年使うのか。1年や2年なのか。それとも10年、20年使うのか。有機ELは、それだけの長い期間を保証できるのか。シャープの液晶テレビは、10年保証できる。そして、有機ELと同じ薄さになっている」などとし、「今は、液晶テレビと有機ELテレビを、見比べることができる場がないが、これを比較するためのロードショーをやる考えである」とし、液晶の優位性を訴えた。

 さらに、「シャープは、液晶をスタートした会社であり、その生産拠点である亀山工場は有名である。そして、様々な技術やノウハウを持っている。これからも、液晶テレビの新商品を、ずっと開発していく」とした。

 8Kテレビについては、西山博一取締役兼執行役員が回答。「シャープが、これから力を入れていくのは8Kである。現在も試験放送が行なわれているが、受信機、モニターを提供しているのは、シャープ1社だけである。この実績をもとに、シャープは、2018年からの本放送開始に向けて製品を投入していく。また、放送分野向け以外にも、医療分野や教育分野などにも大きなチャンスがある」と述べた。

 戴社長は、「シャープは真似されるものを作る会社である。シャープが目指す8Kエコシステムは、真似されるものであり、社会に貢献するものである。しかも、これを、フォックスコン(鴻海)がサポートする。これからは、日本の企業だけでなく、米国や欧州、中国でも8Kが使われるようになる。そうした流れを見れば、新たな液晶パネルの工場を作ることは当たり前である」と語った。

 さらに、長谷川祥典取締役兼専務は、若者のテレビ離れに関する質問に回答。「若者のテレビ離れは深刻だと考えている。どうやって使ってもらうかと考えているところである。これまでは、テレビ放送を中心とした利用であったが、インターネットにつなげて、インターネットからもコンテンツを見てもらうことができる」。

 「例えば、テレビでYouTubeを見るといった利用も増えている。たくさんのコンテンツが見られるようになる世界が訪れるが、こうした世界が訪れると、自分が見たいものを、簡単に選べる環境が重要になってくる。シャープでは、テレビの利用者の嗜好を解析して、好きなコンテンツを勧めることができる機能を搭載している。これにより、多くの世代に、テレビを利用してもらえるようにしたい」と述べた。

 さらに、長谷川取締役兼専務は、スマートホームについても回答。「家の中の様々な機器同士がつながり、これがインターネットともつながることで、快適、便利な家を実現するのが、スマートホームである。シャープは、AIoTとして、電子レンジやエアコンなどをインターネットにつなげ、様々なサービスを提供している」。

 「また、最適なエネルギー消費を実現することで、コストを下げていくことができる。いまは、進化する過程である。これから、スマートホームの世界を広げたい」と語った。

昨年度、1,000億円以上のコスト削減を実現

 一方で、株主総会で議決した定款変更および追加に盛り込まれた「食品販売および金融商品の取り扱い」については、野村勝明副社長が回答。「食品の販売を追加したのは、AIoTが進化するなかで、冷蔵庫のなかに何があり、何が切れているのか、今ある食材から何が作れるのかといったサービスを提供ができるようになるが、その際に、食材などを補充するといった事業ができると考えている」。

 「また、社内ベンチャーであるTEKION LABでは、ワインや日本酒などを最適な温度で管理できる製品を開発したが、これを食材の宅配ビジネスにも応用できる。金融商品については、具体的なものは、いまのところはないが、ベンチャー支援に関する基金を集めるところで活用できる」とした。

 シャープの業績回復に関する質問については、戴社長が回答。「社員がひとつになることが大切。私は、社員に対して、社長メッセージを毎月出しているが、読んでいる社員の数は毎月増えている。また、信賞必罰の考え方のもとで、賞与や社長特別賞を出している。給与も2回アップしている」などと発言。「私は、リストラを行わずに黒字化した。前の社長は、何度リストラをやったのか。ぜひ比較してほしい」などと語った。

 また、「日本に来て勉強したのがガラパゴスという言葉。シャープは、日本国内ばかりを考えている。グローバルで考えていない。まさにガラパゴスだ」などと指摘。ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長の本をテキストに、経営幹部による勉強会を行なっていることも明かし、「日本の経営者のことも勉強している」とした。

 さらに、「2016年4月に会見をした時には、バラバラのシャープだった。そこで、OneSHARPをスローガンに掲げた。また、ほとんど社員が、営業マンか、技術者であり、経営の専門知識が足りなかった。そのため、外との契約には期限がないものも多く、不利なものもあった。また、海外拠点では、シャープが危ないのにも関わらず、ボーナスをあげていた。ボーナスの契約更新ルールを世界で統一する。今は、契約書のすべてを、私がチェックしている。本社から下を、OneSHARPにする。結果として、昨年度だけで、1,000億円以上ものコストセービングを実現した」と語った。

 続けて、野村副社長は、「300万以上は、すべて社長決裁が必要であり、私が100万以上を決裁。事業部長は100万円未満の決裁する仕組みとしている。これは、ものごとのプロセスをチェックするというものであり、収益についても細かいチェックを行なっている」とする一方、「社員の間からは、シャープが変革していることを感じるという声や、業績が上向いていることに、やりがいや自信を持つ若い社員が増えてきた」などと述べた。

 戴社長の趣味や、無報酬であることに関する質問が飛んだが、これについては、戴社長の指名で、社長室長である橋本仁宏常務執行役員が代わって回答。「戴社長は、毎日1万歩を歩くことが日課になっている。雨が降った日も社内を歩いている。これは、決めたことを必ずやり、強い意思を持ってやることの表れである。無報酬の件については、シャープの再生のために来ており、少しでもコストは下げたいという思いからである」とした。