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世界初8K液晶テレビ「AQUOS 8K」登場、70型で約100万円。シャープが8Kをリードする

 シャープは世界初の8K対応液晶テレビ「AQUOS 8K LC-70X500」を12月1日より発売する。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は100万円前後。8Kの高精細液晶パネルを世界で初めて民生用液晶テレビに採用したAQUOSシリーズ最上位機種となり、「究極のリアリズムを追求した」という。当初月産台数は200台。

AQUOS 8K LC-70X500

 2015年に80型の業務用8K液晶ディスプレイ「LV-85001」、'17年に70型の「LV-70002」を発売したシャープだが、LC-70X500はチューナを搭載し、世界初の民生用8K対応テレビとなる。チューナは地上/BS/110度CSデジタルを装備。2018年12月開始予定の8K実用放送に向け開発中の「8K放送対応受信機(別売)」と組み合わせることで、8K実用放送の視聴にも対応する。

AQUOS 8K LC-70X500

 70型の8K/7,680×4,320ドットの液晶パネルを搭載し、フルHDの16倍の高解像度を活かしたきめ細かくリアルな映像表現が特徴。目の前に実物があるかのような「臨場感」、「実物感」、物体の奥行きやふくらみなどの「立体感」をリアルに表現できる8Kの魅力をアピールする。シャープは「8Kエコシステムの構築」を中期的な重点戦略に掲げており、実用放送の開始に先駆け、8K対応テレビを商品化する。

 AQUOSで培ってきた、広色域・高輝度技術を採用し、地上デジタル放送や4K放送は、8Kにアップコンバートして表示できる。広色域技術「リッチカラーテクノロジープロ」や、輝きを復元する「メガコントラスト(ダイナミックレンジ拡張)」などの技術を搭載し、テレビ放送を始めとした現在の様々なコンテンツも高画質に楽しめるという。デジタルカメラの高解像度写真データ(JPEG)の、8K表示にも対応する。

 メガコントラストでは、LEDバックライト制御によりコントラスト感を向上。光源や光源を受けて反射する輝き部分を映像信号から解析して、そのエリアのLED輝度を調整しながら輝きを復元する。HDRにも対応し、対応HDR方式はPQ(HDR10)とHLG(ハイブリッドログガンマ)。表示フレームは60Hz。視野角は上下176度、左右176度。

8K(左)と4K(右)の画質比較
ルーペで確認
ルーペで見てもドットがわからない

 2018年12月の4K/8K実用放送では、BS左旋の17chでNHKがSHV 8K放送を実施予定。シャープ TVシステム事業本部の喜多村和洋 副事業本部長は、「カメラ、スマートフォン、ビデオなどあらゆる機器が8Kに変わっていく」とし、8Kを支える技術とともに、「臨場感」、「実物感」、「立体感」といった観点から8Kの高解像度が必要になると強調。「8Kでは、見えなかったものが見える」と、解像度を活かした体験の変化をアピールした。

8K/4K放送のロードマップ
あらゆる機器が8Kに
8Kでは、見えなかったものが見える

 スピーカーは、総合出力35W(10W×2ch+15W)で、フルレンジユニット×2とサブウーファ×1を内蔵する。

 チューナは地上/BS/110度CSデジタル。8Kチューナは搭載していないが、後日発売予定の8K放送対応受信機を利用することで、8K実用放送も視聴できる。8K信号入力用に、HDMIを4本使用する「8K映像対応端子」を1系統備えている。

4系統のHDMIを使った8K映像対応端子
8Kチューナにも対応

 その他の入力端子はHDMI×4、AV入力×1、アナログRGB。アナログ音声出力や光デジタル音声出力、ヘッドフォン出力も備えている。USB端子は、USBメモリ用とHDD用の2系統。LAN端子も備えている。なお、映像配信サービス対応などのネットワーク機能は省かれている。

背面

 消費電力は470W(待機時0.15W)。外形寸法は156.4×96.7×37.5cm(幅×奥行き×高さ)、重量は50kg(スタンド装着時)/42.5kg(ディスプレイのみ)。リモコンやB-CASカードが付属する。

 店頭予想価格は100万円前後で、6月30日に発売した業務用の70型「LV-70002」の800万円より大幅に低価格化された。業務用は、「BtoBの専用仕様を搭載しており、個別のサポートを含む価格であり、市販商品と比較するものではない。モニターは、放送業界向けの画質調整や、ガンマカーブなどの個別対応などを行なっており、一律に同設定にできる民生用のテレビとはかなり用途が異なっている」(喜多村 副事業本部長)と説明。ただ、パネルや8Kアップコンバート用の半導体など多くの部品を継承しており、業務用モニターを先行開発したからこそ、LC-70X500の価格が実現できたという。

シャープ TVシステム事業本部の喜多村和洋 副事業本部長

 100万円という価格については、「最初の4K大型テレビの投入価格が80万円だった。8Kの魅力を追加すると100万円は妥当。(この価格で販売しても)赤字ではない」とした。

2020年には60型以上の半分が8Kに。8Kエコシステムをリード

 「8Kエコシステム」の強化を掲げるシャープは、8Kテレビやディスプレイを日本だけでなく、海外でも展開。10月に中国で発売し、12月に日本、2018年2月から台湾、3月から欧州で発売する。中国と日本は8Kテレビ、台湾と欧州は8Kディスプレイとして展開。テレビやディスプレイだけでなく、8K放送受信機や8Kカメラなどの8K関連商品の開発を加速し、「8Kエコシステム構築で世界をリードする」としている。

放送の進化にあわせてシャープのテレビが進化
シャープの8Kエコシステム

 グローバル展開に向けて、日本、台湾、中国、欧州の4地域で、同日に発表会を開催。8Kに向けた同社の取り組みを各地でアピールする。なお、中国で先行して発売する理由は、「中国は市場が最も大きいので優先している。日本は二番目。日本では8Kの取り組みが進んでおり放送が“すぐそこ”に見えているため、すぐに対応するための時期設定」(TVシステム事業本部 喜多村和洋 副事業本部長)。

 シャープ 取締役 8Kエコシステム戦略推進室長の西山博一氏は、「鉱石ラジオや白黒ブラウン管の第一号はシャープだった。放送への貢献において、シャープはいつも第一号を目指す。2017年8Kテレビを世界初発売する」と、世界初の8Kテレビ発売を宣言した。

シャープ 西山博一 8Kエコシステム戦略推進室長

 一方で、8Kを推進するには、シャープが強みを持つ表示機(ディスプレイ・テレビ)やインターフェイス以外の、インフラやコンテンツ配信、ストレージ、放送・通信インフラ、カメラなど複数の領域において、パートナーとの連携が必要となることを強調。「シャープの強みや鴻海グループとのシナジーを活かしながら、他社とのアライアンスを推進する。それが8Kエコシステム。シャープはリーダーシップをとっていく」とした。

他社とのアライアンスを推進

 また、70型で8Kテレビをスタートしたが、「60、65、75、80インチなど大型テレビの8Kラインナップを順次そろえていく」とし、60型以上の大型テレビでの8K対応を積極化。今後の8K需要予測については、「4Kの普及スピードを念頭にしている。わずか4年で液晶テレビの半分が4Kになった。大きな市場が控えていると考えている。2020年度には、シャープの60型以上の液晶テレビの半分を8Kに変える」(喜多村 副事業本部長)と目標を設定した。

2020年度には、シャープの60型以上の液晶テレビの半分を8Kに

 有機ELとの比較においては、「様々な観点での特徴があるが、重視しているのは『高精細』。高精細という点では、世の中のてっぺんにいるデバイスが液晶。その液晶の特徴を生かした商品が8K AQUOS」(喜多村 副事業本部長)と説明した。

 シャープの8Kエコシステムにおける強みは、自社での液晶パネル製造に加え、高画質LSIから製品設計、組み立て、サービスまでを一貫して手掛けられること挙げる。特に、8K対応の高画質LSIに力を入れているという。

シャープ8Kの強み

 加えて鴻海の生産能力や調達能力を活用していく方針で、「今回の8Kテレビ/ディスプレイは、中国と欧州向けの製品については、中国で生産する。ここは鴻海の支援をうけて生産立ち上げする。まさに鴻海の強みの“生産”を生かしたもの。その他の地域向けは日本で生産する」とした。

 また、グローバル展開における米国の位置づけについては、「ブランドをどうするかという問題がある(注:Hisenseとの訴訟問題)。だから、アメリカで8Kを展開できるかどうかは未定」とした。