ニュース
世界初、印刷方式の21.6型4K有機ELパネルをJOLEDが出荷開始。大型化への戦略も
2017年12月5日 13:24
JOLED(ジェイオーレッド)は、世界初となるRGB印刷方式の21.6型4K有機EL(OLED)パネルを製品化。12月5日より出荷を開始した。最初の出荷先はソニーの医療部門で、医療用モニターへの採用が決まっている。このほかにも様々な用途に順次出荷予定としている。
JOLEDは、産業革新機構(INCJ)とジャパンディスプレイ(JDI)、ソニー、パナソニックの4社が、有機ELディスプレイパネルの量産開発加速と早期事業化を目的として'15年に設立。RGB方式では世界初となる、印刷方式の21.6型4K有機ELパネルを4月よりサンプル出荷開始したことを5月に発表している。
今回、JOLEDが製品化したのは、RGB全ての有機EL材料を印刷で塗り分けるRGB印刷方式の4K/3,840×2,160ドット(204ppi)有機ELパネル。有機EL材料を大画面に均一に一括塗布する設備技術(パナソニックと共同開発)や、プロセス技術を実用化したことで開発。光取り出し効率が高いトップエミッション構造を採用している。JDIのG4.5パイロットラインで生産され、現在の生産能力は月2,000枚としている。
自発光方式である有機ELパネルの高コントラストや、色再現性の高さ、高速応答性などを活かし、医療用のほかにもゲーム用モニターや、車載用途などが見込まれる。
21.6型の画面寸法は478.1×268.9×548.5mm(幅×奥行き×高さ)、ピーク輝度は350cd/m2、全白140cd/m2、コントラスト比は100万:1、パネル厚は約1.3mm。重量は500g。消費電力は14.6W(40%window、6500K)。寿命はLT95@W350cd/m2(初期の輝度から5%減少までの時間)が1,000時間。
創業から3年、製品化までの取り組み
JOLEDの田窪米治CTO & CQOは、創業から約3年で製品化/出荷開始を実現したこれまでの取り組みを振り返りながら、同社技術の特徴や、今後の事業戦略などについて説明。当初は中型パネルを中心とした展開となるが、将来的には同社の印刷技術を他社へ供与することなどで、テレビを含む大型市場へ展開することも進める方針を示した。
なお、同社の東入來信博社長は今回登壇していないが、「創業3年目で、ついに当社のRGB印刷方式による有機ELパネルを製品出荷できることを、たいへん嬉しく思います。今後は製品展開を加速し、お客様のニーズにあった有機ELパネルの提供を進めるとともに、当社の技術と製品によって世界の有機EL市場に革新を起こしてまいります」とコメントしている。
田窪CTO & CQOは、5日に行なった会見において、最初の採用となる顧客(ソニーの医療)に製品が到着したという連絡が届いたことを報告。パネルはJDIの石川工場で生産されており、初出荷に先立ち、JDI石川工場のメンバーとともに出荷式を行なったという。
製品化できたポイントについては、ソニー、パナソニックによる10年以上の開発技術資産、人材を継承できたことを挙げ、「互いの違いを知り、良いところを盛り込みながら、技術開発のシナジーが生まれ、特性なども向上した」と述べた。加えて、JDIによるTFT供給など、既存株主の継続的なサポートも重要な点として説明した。
今後のパネル量産化に向けた資金面については、10月に日経新聞などで「1,000億円規模の資金調達を検討している」と報じられていたことに言及し、「そのうち生産投資に回るのは2/3。残りの1/3は、生産開始してからリターンを獲るまでの経費として必要となる」と述べた。現在進めている、第三者割当増資による資金調達の時期については、「最終クロージングの3月末を目指して進捗している」とした。
将来の大型化に向けた取り組み。全パネルを1つのプロセスで
現状、グローバルで有機ELパネルの生産は大型がLG(白色EL蒸着法)、小型はSamsung(FMM-RGB蒸着法)が中心となっている。
JOLEDが印刷方式で中型市場から参入する理由は、「蒸着方式での製品化が難しい」とされているため。医療などのモニターのほか、大画面タブレットや、“デジタル窓”などの分野で市場創造を図っていくという。
効率や寿命の改善への取り組みについても説明。白色発光効率は'13年の55型4Kパネルの2倍となり、デバイス構造と材料の改良によって、'18年には'16年の1.5倍以上を見込んでいる。
次の段階として、大型への展開については、自社製パネルとしての生産ではなく、印刷技術の他社への技術供与などを軸としたアライアンス戦略を検討。組む相手としては主にパネルメーカーなどを想定。「いくつかの大型テレビを作っているメーカーからは話が来ている」という。具体的な進捗については明かされなかったが、必ずしも資本提携が前提になるものではないという。
大型化への新たな事業モデル確率に向け、画素密度200ppi以上の高精細印刷精度を実現する印刷設備を開発。川幅2,000mm以上のワークサイズを可能にする印刷設備の原型開発を完了したという。
一方で、スマートフォンやVR/AR製品など、小型市場への展開も目指し、高精細化を進めていく予定。現在は「220ppiであれば安定的にモノを流せるが、それ以上の400、500ppiに上げていくには、まだ技術開発が必要」(田窪氏)としている。
田窪氏は、印刷方式を採用することによる“一番の目標”として「全てのサイズのパネルを1つのプロセスで作る。そうでない限り、液晶にとって代わるような発展はない」と述べた。「昔の第6世代マザーガラスは、32インチのテレビを作るためのラインだったが、今やほとんどスマホを作っている。マーケットの変化に弾性力ないラインは、健康的ではない。5年、10年単位ではあるが、全てを1つのプロセスで作ることを目指し、それをデファクトにしたい」とした。