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JDI、JOLEDの子会社化を撤回。「液晶の需要は底堅い」

 ジャパンディスプレイ(JDI)は30日、印刷方式による有機EL(OLED)ディスプレイ事業のJOLEDを子会社化する方針を撤回した。ただし中型ディスプレイ事業における戦略的提携は継続し、JOLEDの印刷方式有機ELディスプレイ早期量産化に向けた出向者派遣も視野に入れた技術支援など、事実上の関係強化を行なっていくという。

JOLED株式取得の方針変更について

 JDIは、2016年12月にJOLEDの子会社化方針を発表していたが、経営戦略の見直しのため、'17年6月に延期を発表していた。

 JOLEDは、2017年12月に印刷方式による有機ELディスプレイを製品化し、顧客向けに出荷を開始するなど事業化に向けた開発が計画通りに進捗。JOLEDは量産ラインの設置に向けた設備投資を実行するため、設備投資の資金を含む1,000億円程度の外部からの資金調達を完了すべく、出資候補者と交渉を続けている。

 JDIは、資金面の支援とともに開発・生産面の支援・協力を行ない、特にTFTバックプレーン開発においては、大きな成果を上げているという。また、開発委託や販売活動の連携なども行なっており、「すでに強固な協力関係を構築しており事実上のシナジーの実を確保している」として、子会社化の方針を取り下げる。

JOLE資金調達による資本構成の変化見込み

 なお、JDIは30日付けで、日亜化学工業株式会社を割当予定先とする約50億円規模の第三者割当増資と、海外機関投資家を割当予定先とする300億円規模の増資を発表。さらに2017年12月に稼働停止した能美工場に係る資産を産業革新機構(INCJ)に譲渡し、INCJから約200億円の資金調達を完了予定。譲渡する能美工場はINCJにおいてJOLEDに対する現物出資が予定されている。

 調達する資金は、主として2018年度下期に見込まれる液晶ディスプレイモジュール「FULL ACTIVE」の需要増に対応するための運転資金及び、FULL ACTIVEの後工程 製造(モジュール組立)の設備投資等に充当する。

 また、中期経営計画において、OLEDディスプレイの量産技術の確立と事業化の加速を目的としたグローバル企業とのパートナーシップを構築するとしており、引き続き蒸着方式による高精細OLEDディスプレイの開発を継続し、現在も複数の候補先と協議を継続中。また、液晶ディスプレイの需要がJDIが想定していたよりも底堅いと見られ、車載やVR、ウェアラブルデバイス等のスマートフォン以外の用途での成長が期待される一方、OLEDの市場拡大スピードは想定より緩やかとなる見込みのため、「より中長期的な視点で当社の戦略を見極めた上で今後の協議を進める」としている。