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パナソニック、8K/60pで広ダイナミックレンジ対応、動体歪も抑えた新CMOS

 パナソニックは、8K/60pの撮影に対応し、フォーカルプレーン歪みを防ぎ、45万電子の高飽和と、感度変調機能を持つグローバルシャッタ現像が可能なCMOSセンサー技術を開発。その一部を、2月11日~15日に米サンフランシスコで開催される国際学会ISSCC(International Solid-State Circuits Conference) 2018で発表する。

画素構成の比較と、解像度比較

 これにより、例えばスタジアムにおける、日差しの強いフィールドと日陰になる観客席といった明暗差の大きなシーンを8K高解像度で撮影したり、動体の歪みのない瞬時切り出し、複数のカメラを用い多視点撮像を行なう「マルチビューポイントカメラ」での各カメラ間の同期を取った撮像や、マシンビジョン・ITS監視など、高速かつ高解像度が求められる分野で活用できるという。

 パナソニックの有機CMOSイメージセンサは、光を電気信号に変換する機能を有機薄膜で、信号電荷の蓄積、および、読み出しを行なう機能を下層の回路部で、それぞれ完全独立で行なう構成になっている。

 この構造的特長を活かし、配置自由度の大きい回路部に、高速なノイズキャンセル技術、高飽和化を実現する技術を搭載。通常はトレードオフとなる、8K高解像度でのフレームレート60fps読み出し、高飽和特性実現による広ダイナミックレンジ化、グローバルシャッタ機能を同時に実現した。

 有機CMOSセンサは、有機薄膜と電荷蓄積部を金属配線で接続しているため、蓄積電荷を完全に読み出すことはできない。そのため、画素(信号電荷蓄積ノード)リセット時のリセットノイズの影響を受けるという課題がある。

 さらに、8Kのような多画素センサでは、ノイズキャンセル時に垂直方向に並ぶ4,000を超える画素分の大きな負荷を、一度に駆動する必要があり、ノイズ抑制に時間がかかるという課題があった。

 新センサでは、独自の半導体デバイス技術と、新たに開発した「画素内-容量結合型ノイズキャンセル回路」により、発生したリセットノイズを、多画素駆動時にも、高速にキャンセルする構成を開発。電流源以外の要素を全て画素内に設けた負帰還ループを用いることで、画素毎に、リセットノイズの抑制を高速に実現している。

ノイズキャンセル技術の比較

 配置自由度のある回路部に大容量の容量素子を搭載することで、同一画素構成を用いながら、カメラシステムからのスイッチ切り替えのみで、高感度モードと高飽和モードの両モードを実現。高飽和モードでは、高感度モード比10倍の大きな光量まで撮像でき、高感度モードでは白飛びする被写体も、鮮明に撮影できるという。

8K高解像度撮影例。左下は電球を撮影したもので、左が高感度モード、右が高飽和モード
広ダイナミックレンジ撮影例。明るい空の雲をとらえつつ、日陰のスタンドにいる人の表情もとらえられる

 有機薄膜へ加える電圧を制御するだけで、有機薄膜の感度を変更できる事から、8Kのような多画素駆動時でも、全画素同時撮像可能なグローバルシャッタ機能を実現。高速で移動する被写体も、歪みのなく撮影できるとする。

 従来のグローバルシャッタ型センサでは、データを全画素一括で蓄積するために、転送回路と電荷を蓄積しておく電荷蓄積容量などの新たな素子を追加する必要があり、光を捉えるフォトダイオードと追加回路との面積の取り合いが発生。画素サイズを小さくできない、飽和光量を増やすことができないという課題があったが、有機CMOSでは追加素子が不要なため、セルの小型化、高解像度センサが実現でき、飽和拡大容量の搭載で、暗いシーンから非常に明るいシーンまで、歪みのない正確な撮像が可能。

 さらに、有機薄膜へ加える電圧を制御し、感度を所望の値に変更することで、従来は複数のNDフィルタが必要だった撮影シーンでも、カメラシステムへの電圧制御のみで、電気的にNDフィルタ機能を実現できる。これにより、撮影機材の簡易化、感度の連続、無段階制御を実現。シーンに応じた撮影の自由度が広がるという。