ニュース
DALI“再構築”の新スピーカー「OBERON」。ZENSORから刷新、ボーカルなど向上
2018年9月14日 12:00
ディーアンドエムホールディングスは、デンマークDALIのスピーカー新シリーズ「OBERON(オベロン)」を9月下旬に発売する。ヒットモデル「ZENSOR(センソール)」の後継で、ペア57,000円のブックシェルフ型「OBERON1」から、1台78,000円のフロア型「OBERON7」まで、6製品をラインナップ。壁面設置の「OBERON/ONWALL」も用意する。カラーは、ダークウォルナット(DW)、ブラックアッシュ(BA)のほか、ライトオーク(LO)やホワイト(WH)も選べる。
【ラインナップと価格】
ブックシェルフ型「OBERON1」57,000円(2本1組)
ブックシェルフ型「OBERON3」80,000円(2本1組)
フロア型「OBERON5」115,000(2本1組)
フロア型「OBERON7」78,000円(1本/ペア販売)
センター「OBERON/VOKAL」54,000円(1本)
オンウォール「OBERON/ONWALL」80,000円(2本1組)
上位モデルOPTICONなどに搭載する「SMC(ソフト・マグネティック・コンパウンド)」を、このクラスで初めて搭載するなど、「単なる後継シリーズではなく、DALIのシリーズ構成を再構築し新しい調和をもたらす」という新モデル。
製品名のOBERONは、中世ヨーロッパの伝承に登場する妖精王。シェークスピアの戯曲「真夏の世の夢」の登場キャラクターとしても知られ、クラシックファンになじみ深い名前となっている。
いずれも2ウェイ型で、ツイータはシリーズ共通の29mm径。ウーファーはブックシェルフ型がシングル、フロア型がダブル構成で、サイズは「OBERON1」と「OBERON5」が130mm径、「OBERON3」と「OBERON7」が180mm径。
ウーファーのドライバに搭載した「SMCマグネット・システム」により、磁気回路内部で発生する磁気変調とエディカレント(渦電流)を低減。3次高調波歪を大きく低減している。
通常のフェライトマグネットの原材料は酸化鉄の砂鉄だが、SMC磁気回路では、砂鉄の一粒一粒に化学的なコーティングを施したSMCを使用。高い透磁率を持ちながら絶縁性のある素材で、発熱性が低いのも特徴。通常の酸化鉄の導電率が銅の1/10であるのに対し、SMCの導電率は銅の1/10,000のため、電流歪みを抑制できる。
また、駆動力を高めるためボイスコイルを従来の2層巻から4層巻へ強化。重量が増加することで中域に悪影響が出るのを防ぐため、軽量なCCAW(銅被覆アルミニウム線)を使用。駆動力と音質の両立を図った。なお、オンウォールは2層巻ボイスコイルを採用している。
ウーファーの振動板はDALIのトレードマークにもなっているウッドファイバーコーン。高分子パルプに木の繊維をブレンドし、クリアコーティングを施したもので、2種類の異なる層を持つことで薄くて軽く、変形しにくい特徴を持つ。均等な振動特性により、偏った振動を抑えることで正確でナチュラルな音を実現。音源に含まれるすべての信号へ機敏に反応するという。ウッドファイバーコーンの混合比はモデルによって異なり、OBERONは上位機種に近づけつつ最適化したという。低損失なラバーエッジと、SMC磁気回路と合わせてウーファーの低損失化に寄与している。
OBERON3と7には、大口径の7インチ(180mm)ウーファーを搭載。通常の6.5インチウーファーより約15%広い表面積を持ち、よりダイナミックな再生が行なえるという。
上位モデルと同等の29mm径ツイーターをOBERON全モデルに搭載。軽量なシルクファブリックをベースとするソフトドーム型で、ZENSORの26mm径に比べてパワーハンドリングが高く、より低い周波数帯域までカバー。ウーファーからツイーターへの最適な受け渡しを行ない、自然でバランスのとれた均質な中音域を再生できるという。
ポールピースのトップには、ダンピングにソフトフェルトのアブソーバーを装着。従来の平坦なポールピースから生じる不必要な音の反射が発生しないようにした。また、新型のツイータ―プレートにより、広いスイートスポットを実現する。
エンクロージャーはMDF製。ZENSORに比べて内部補強構造を強化したほか、吸音材は複数の種類を組み合わせ、配置箇所に応じて最適化した。ZENSORのフロア型はフロントバスレフだったが、ストレートな低域再生を実現するため、ブックシェルフと同様にリアバスレフに変更。なお、ラック内などにも設置されるセンタースピーカーのOBERON/VOKALのみ、フロントバスレフを採用する。OBERON1/3/5/7のバスレフポートは、外側だけでなく内側もフレア形状とし、エアフローを向上している。
オンウォールモデルは、独自のポートシステムを採用。壁面の反射を利用することで、奥行き120mmの薄型ながらリッチな低域を再現可能としている。
グリルは本体カラーに合わせてシャドウブラック(ダークウォルナット/ブラックアッシュ用)のほか、マウンテングレイ(ライトオーク/ホワイト用)の2色を用意。装着は上位モデルとは異なりマグネットではないが、接続部分のパーツが金属製となり、耐久性を向上した。
周波数特性/クロスオーバー周波数は、OBERON1/3/5/7の順に、51Hz~26kHz/2.8kHz、47Hz~26kHz/2.4kHz、39Hz~26kHz/2.4kHz、、36Hz~26kHz/2.3kHz。VOCALは47Hz~26kHz/2.6kHz、ONWALLは55Hz~26kHz/2.1kHz。
インピーダンスは、OBERON1/3/5/7/ONWALLが6Ω、VOCALのみ4Ω。推奨アンプ出力は、OBERON1/3/VOCAL/ONWALLが25~100W、OBERON5が30~150W、OBERON7が30~180W。
外形寸法と重量は、OBERON1が162×234×274mm(幅×奥行き×高さ)、4.2kg。OBERON3が200×315×350mm(同)、OBERON5が162×283×830mm(同)、10.8kg。OBERON7が200×340×1,015mm(同)、14.8kg。OBERON/VOCALが295×161×441mm(同)、7.45kg。OBERON/ONWALLが245×120×385mm(同)、4.9kg。
組み合わせの推奨サブウーファは、ZENSORと同様に、定格出力170W/300mmウーファの「SUBE12F」(89,000円)と、定格出力170W/230mmウーファ「SUBE9F」(67,000円)の2モデル。
ボーカルなど中域が大きく向上
OBERONシリーズの取り組みと音質への効果について、シニアサウンドマネージャーの澤田龍一氏が説明した。
2011年に発売され、手頃な価格ながら高い音質が評価されてDALIの世界的なヒットモデルとなったZENSORは、同社が100%出資した中国のNINGBO工場での最初の量産モデルでもあり、DALIが開発に大きな投資をした機種だったという。
新しいOBERONのウーファに採用した独自のSMCユニットは自社工場で製造。EPCONやRUBICONなど上位モデルに搭載されるユニットだったが、それがOBERONにも広がったことで、内製率も上がったという。
同クラスのスピーカーでは、ツイーターのサイズがZENSORと同じく1インチ前後(ZENSORは26mm)が多い中、OBERONは上級機と同様に29mmの大口径を採用。これにより振幅を大きくしなくても高いレスポンスを実現し、ツイーターが受け持つ範囲で低い帯域まで歪みを改善。ZENSORと比較測定したところ、1kHzにおいて3次高調波歪みで10dBの差があったという。
このツイータは低い帯域だけでなく超高域についても高い性能を持つとのことで、澤田氏は「ZENSORが実測22~23kHzに対し、OBERONは32kHzだった。特性コントロールがしっかりされていて、驚きました」と語る。
ウーファについても、前述のSMC採用により高い周波数の歪みを改善。ツイーターとウーファー両方の改善により、中域部分の歪みを抑え、ボーカルなどの再現性を高めたことがOBERONの大きな特徴といえる。
バスレフポートの内外にフレアを備えた点についても、「エアノイズに有効だが、金型が必要になるため普通はやらないこと。ZENSORの更新にあたり、かなりの投資が行なわれたことが分かる」としている。
ボーカルの瑞々しさなど、DALIサウンドに新たな個性
実際にOBERON1/3/5/7の音を試聴した。最初に現行の小型ブックシェルフのZENZOR1を聴くと、豊かな中低域や、ボーカルの細かなビブラートまで緻密に表現できる点など、今聴いても高い実力を持っていると思える。筐体がほぼ同サイズのOBERON1に変えると、繊細な表現は保ちつつも、ボーカル全体に厚みが増し、生の瑞々しさがさらにプラスされたような印象に変化。声をより近くに感じ、解像感、クリアさを損なうことなく立体感が増している。
サイズの大きなOBERON3へ変更すると、さらに全体のスケール感がアップ。低域部分にも余裕を感じ、多編成の演奏も広い音場の中で精密に描写。ボーカルと演奏の対比もより明確になり、全体のまとまりを持ちながらも、1つ1つの音が濃い密度で届く印象だ。
フロア型のOBERON5に変更すると、ダブルウーファによって低域の力強さが増し、広い部屋でも無理なく音を満たし、スリムな見た目から想像する以上の力強さがある。シリーズ最大モデルであるOBERON7に変えると、さらにふくよかな低域を味わえ、音楽ソースだけでなく、ホームシアターの5.1chなどにも使いたくなる。
フロア型のダブルウーファによる豊かな低域が魅力的な一方、ブックシェルフ型も、ボーカル帯域を中心として高解像度かつ芯の太いサウンドなどに、新しいDALIサウンドの個性を感じる。今回は広い部屋で聴いたが、ブックシェルフを机の上のコンパクトなシステムでニアフィールドに使うと印象も変わるだろう。設置やアンプの組み合わせによる変化も試したくなった。