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レート変動でBluetoothが途切れにくい「aptX Adaptive」。対応機は'19年半ば

米クアルコム(Qualcomm)は3日、通信状況に合わせデータレートをシームレスに変動させて無線伝送する「aptX Adaptive」の技術説明会を開催した。aptX AdaptiveをサポートするBluetooth用オーディオSoCはすでに出荷済みで、コンシューマ用の対応機器は'19年半ばの登場が想定される。

クアルコム テクノロジー インターナショナルでプロダクトマーケティング部ディレクターを務めるジョニー・マクリントック氏

固定レートで伝送(CBR方式)する従来のaptX/aptX HDと比べ、aptX Adaptiveはレートを変動させて伝送(VBR方式)するのが特徴。スマホなどの送信側と、イヤフォンなどの受信側が相互に通信状況を確認し、環境に応じて送信側が伝送レートを決定する。最大48kHz/24bitの音声データをサポートし、279kbps~420kbpsのレート幅の中で自動変動させて伝送する。

変動するのはレートのみで、ビット深度やサンプリングレートは変わらない。CBRのaptX HD(最大576kbps)までの高レートは出ないものの、通信の接続性が安定し、一層途切れにくくなったという。

aptX Adaptiveの仕様

登壇したジョニー・マクリントック氏は、aptX Adaptiveは「長年にわたる研究成果の一環」と述べると共に、「生活に重要なスマホがイヤフォンジャックレスになりつつある中で、無線に求められる性能を追求した。音質を維持しながら、有線と変わらない快適さと安定さを無線で実現することが我々の使命」と今回の開発背景を説明。

Bluetoothは、2.4GHz帯を使う伝送技術。Bluetooth同士の混信はもちろん、2.4GHz帯を使ったWi-Fiの干渉、また電波の反射や障害物といった影響が避けられないが、VBRになったことで通信の接続性も向上したという。「日本の場合は、満員電車が好例。aptX Adaptiveであれば、困難な通信環境下でも低レートにシームレスで切り替わりことで堅牢な接続を維持する。設定も必要としないユーザービリティの高さもポイントだ」(同氏)。

途切れにくい、オーディオクオリティ、低遅延が特徴

またマクリントック氏は、aptX Adaptiveの音質についても言及。「開発に当たり、第三者による音質調査を実施。音響工学を教える英国サルフォード大学にて6カ月間、30名に200サンプルのブラインドテストを行なったところ、96kHz/24bitのオリジナル音源と、420kbpsのaptX Adaptiveとでは"統計的に著しい違いは無かった"という結果が得られた。音質面においても、同技術の優位性が証明された。様々な音声コーデックが混在しているが、音質と安定性を両立する規格は無い」と話す。

"統計的に著しい違いは無かった"という研究結果

遅延に関してもアルゴリズム上のレイテンシーは2ms。機器に組み込まれた場合の実際の運用においては「レイテンシーは50ms~80msに抑えられているので、実使用上は問題は無い」(同氏)と低遅延性能もアピールした。

aptX Adaptiveは、既存のaptX、aptX HDと下位互換性を持つ。なおaptX Low Latencyは今後aptX Adaptiveに切り替わる。

aptX Adaptiveは、既存のaptX、aptX HDと下位互換性を持つ

現状aptX AdaptiveをサポートするBluetooth用オーディオSoC「CSRA68100/CSRA68105」と「5100 series」は、すでに出荷を開始済み。製品リリースはベンダー次第だが、クアルコムでは対応機種の登場を'19年半ばとみている。

説明会でaptX Adaptiveをサポートするスマホ用SoCに関する言及は無かったものの、次期Snapdragonでの対応が予想される。

クアルコムではaptX AdaptiveのサポートSoCを順次拡大する予定。なおSoC「CSRA68100/CSRA68105」、「5100 series」が搭載されているオーディオ機器全てがaptX Adaptiveをサポートするわけでなく、製品に搭載する機能の有無はベンダー次第という。

なおアップルiPhoneでのaptX対応の可能性有無について質問したところ「aptX Adaptiveの技術を含め、我々はあらゆるベンダーにアプローチはしている」(同氏)とだけに止めた。

2018年第3四半期までに、aptXエンコーダーは40億に達した
数多くのAndroid製スマホにaptX HDが採用されている