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AI活用でスポーツ中継の魅力拡大。ソニーがInter BEEで4K8Kカメラ&最新制作技術
2019年11月13日 18:41
国際放送機器展「Inter BEE 2019」が13日、千葉県の幕張メッセで開幕した。期間11月13~15日で、入場は無料(登録制)。4K8K関連機材や、AIを活用した映像制作など、各社が最新技術やソリューションを紹介。その中から、4K/HDR対応の最新カメラやIPライブ制作などを紹介していたソニーのブースをレポートする。
ブース正面で注目されているのは、LEDディスプレイ「Crystal LED」の440型8K映像。日本代表の活躍でも盛り上がったラグビーワールドカップ 2019の「日本VSアイルランド」や2018年の紅白歌合戦を含むNHKのコンテンツ、バイクのMotoGP、ソニーオープンゴルフ2019などが、3つのプログラム構成で上映されている。
新製品は、12月3日に発売するスタジオ用の大型カメラ「HDC-5000」を披露。グローバルシャッター機能付き3板式4Kイメージセンサーを搭載。大型レンズの直接取り付けが可能な“デカカメ”と呼ばれるスタジオ・中継現場向けのカメラで、低重心化したことで、レンズ光軸とカメラマンの目線を同じ高さに合わせることができ、柔軟なカメラワークを可能とした点が特徴。価格は1,650万円(システム構成により価格は異なる)。カメラコントロールユニット(CCU)「HDCU-5000」(400万円)も同時に発売する。
ショルダー型は、フルサイズセンサー搭載のメモリーカムコーダー「FX9」を12月10日に発売。ボディのみの想定価格は120万円前後、レンズ付属は150万円前後。新開発のフルサイズ裏面照射型ExmorR CMOSイメージセンサーをXDCAMメモリーカムコーダーとして初めて搭載。6Kの画素を活かした高精細な4K収録を実現する。
歪みを防ぐ4Kグローバルシャッター搭載のXDCAM最上位機種「PXW-Z750」(想定価格420万円前後)も国内で初展示。4K 2/3型3板式のCMOSセンサーを備え、4K/HDRと、HD/SDRの同時収録が行なえ、2020年1月に発売。
FX9とPXW-Z750は、当初の予定から1カ月前倒しての発売となる。このほか、2020年春に発売するEマウントのシネレンズ「FE C 16-35mm T3.1 G」も展示している。
新たな取り組みとしては、AIを活用したソリューションが放送コンテンツで活用され始めている。NTTぷららが採用したのは、卓球Tリーグのダイジェストシーンを自動抽出してdTVやひかりTVで配信するという仕組み。
また、TBSテレビの「テレビ字幕自動生成システム」の実証実験にAIエンジンなどをソニービジネスソリューションが提供。高い認識率や認識スピードが好評とのことで、リアルタイム字幕の運用に最適としている。そのほか、AIアナウンサー「荒木ゆい」も活動の場が広がり、高知さんさんテレビのイベントガイドや、秋田ケーブルテレビの地域情報番組、玉川高島屋S・Cの館内放送などに活用されている。
ソニーのIP Live制作システムは、共同テレビや朝日放送、テレビ東京、北海道文化放送などを含め全国で36システムが年内稼働予定。
アーカイブ用のオプティカルディスクは第3世代となる5.5TB、3Gbps製品が登場。ドライブユニット「ODS-D380U」やカートリッジ「ODC5500R」を'20年1月に発売する。さらに、1ライブラリーあたり最大50PB(ペタバイト)を予定するという「PetaSite EXソリューション」というアーカイブのシステムを米Qualstarと共同開発中だという。
ソニーのAI活用映像制作は、効率化だけでなく視聴者にもメリット
公式に発表されているものではないが、ソニーブースのCrystal LEDでも上映されているNHKのラグビー8K映像は、ソニーの8K 3板式カメラシステム「UHC-8300」を使って撮影されたもの。また、W杯ではIP Liveで遠隔地からのリモート制作を可能にする技術も使われるなど、現場での活用も徐々に本格化していることが、Inter BEE取材を通じて見えてきた。
ソニービジネスソリューションの宮島和雄社長は、AIを用いた映像制作について「効率化」と「楽しめる映像を作る」という2つの側面で強みを活かせると説明。効率化については、前述の卓球Tリーグのダイジェスト映像作成や、AIアナウンサーなどの活用により、少ない人員でもクオリティの高い映像を作れることを挙げている。
もう一つの「楽しめる映像」については、一例としてバスケットボールの試合を映像で認識して個人の動きをトラッキングするという「Motion Detection Technology」技術の開発を進めている。モーションキャプチャーなどのセンサーを使うのではなく、映像で人の関節位置を抽出/推定。ユニフォームの番号と合わせて、各選手の動きの解説映像や、コーチング用の資料などに活用できるという。バスケットボール以外の競技への活用も見込んでいる。
卓球Tリーグの映像では、ボールの回転数などまでとらえられる「Pattern Matching Technology」も紹介。「卓球の奥深さを楽しめる」という。
宮島氏はこうしたAIの活用について「回転数などは、我々のカメラでないと取れないデータ。我々が一番得意なのは、高画質で撮影できること。そこに合わせたところでAIを活用する」とソニーの強みを説明している。
IP Live制作ソリューションについては「ようやく“IPの便利さ”の認識が広まってきた」としており、中継車などの設備を大量に投入しなくても、リモート操作などを活用して制作が効率化できることが放送局にも浸透しているという。制作者にとっての低コスト化だけでなく、視聴者も“これまでライブでは観られなかった映像”が楽しめる機会の増加につながっている。
4K8K衛星放送がスタートしてから1年が経とうとしているが、現状については「4K8Kカメラを含め、機材が揃ってきた」として、“4Kで観たくなる番組”がもっと増加することに期待を寄せる。
ソニーブースで上映されているラグビーW杯のCrystal LED映像を観ると、選手を間近で観戦するような迫力に圧倒され、当時の感動も蘇る。家庭のテレビだけでなく、高画質な大型ビジョンを活用したスポーツのパブリックビューイングなども、4K8Kを楽しめるコンテンツが身近になっていくための大きなカギになりそうだ。