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ソニー、デジタルシネマ「VENICE」がIMAXとパートナー契約。放送局向けIP Live拡充

左からソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズ メディアソリューション事業担当VPの喜多幹夫氏、ソニービジネスソリューションの古田了嗣代表取締役社長

ソニーは18日、同日に開幕した「Inter BEE 2020 ONLINE」に合わせ、オンライン記者説明会を開催。同日に発表したフルサイズセンサーの4Kカムコーダー「ILME-FX6V」などの新製品を紹介したほか、国内の放送業務用ビジネスの取り組みについても説明した。

参加したのは、ソニービジネスソリューションの古田了嗣代表取締役社長、ソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズ メディアソリューション事業担当VPの喜多幹夫氏。

説明会は、ソニーPCL内にある「VIRTUAL PRODUCTION LAB」で撮影された映像からスタート。現実の背景の代わりに、Crystal LEDディスプレイシステムを使った撮影ができる設備で、奥行きのある部屋で撮影されたような映像だが、実際は高精細なディスプレイの前に立って撮影されていた。

奥行きのある部屋で撮影……したのではなく、Crystal LEDディスプレイシステムの前で撮影されている

放送業界向けに、高付加価値・高効率な映像制作を実現する「IP Live」対応製品を展開しているソニーだが、その機能拡充を推進。IPリモート中継を簡素化する「HDCEシリーズ」や、4K信号処理を強化したスイッチャー「XVSシリーズ」、HDR変換機能を追加した「SDI-IPコンバーター」、HFR映像信号をST2110伝送する「PWSサーバー」などを手掛けている。

IP Liveは、新型コロナウイルスの影響もあり、効率化を求める放送局などで採用が拡大。以前は50システムが導入されていると発表していたが、現在は120システム以上に倍増。「IT化は顕著に推移している」という。

また、ソニービジネスソリューションは、クラウドベースで効果的なメディア管理・運用を実現する統合プラットフォーム「Ci Media Cloud Services」を国内向けに提供開始。クラウド上でSaaS(Software as a Service:利用者側でソフトウエアをインストールする必要がなく、インターネット上で必要な機能をすぐに利用できる)として構築されるもので、安全かつ安価で、即座にクラウドベースのコンテンツ管理システムやさまざまなアプリを利用できるという。

素材の収集から制作、公開、アーカイブまで、メディアライフサイクル全体をサポートする柔軟かつシームレスなコンテンツ管理、需要が高まっているリモート制作をサポートする多彩なコラボレーションツールなど、現場で要求されるさまざまな機能セットを手軽に活用できるとする。

AIも活用。ソニービジネスソリューションはTBSテレビに、音声解析AIを活用してテレビ字幕を自動的に生成するシステム「もじぱ音声認識テキスト化システム」を納入。2019年からTBSと共同で実証実験を進めてきたもので、1年間の実証実験で95%以上の認識精度を実現。今年の11月から正式なシステムとして採用され、地上波の報道番組などで活用される。

実証実験では、これまで1時間未満の番組につき3人程度必要だった字幕起こしの人員を1人に削減でき、「放送局におけるワークフロー改善に効果が高いと認められた」という。

AI技術は他にも、スタッフ同士が連絡をとるインカムアプリ「Callsign」でのノイズフィルターや、監視カメラなどの4K映像を鮮明にするシステムなどで活用されている。

同日発表の「FX6」

カメラでは、同日発表の「FX6」を紹介。フルサイズイメージセンサー搭載高い表現力と、コンシューマー向けデジタルカメラ「α」の技術を融合した小型軽量カメラで、小型ながら15ストップを超えるダイナミックレンジや、スキントーンの表現を重視したS-Cinetoneが利用できる事などをアピールした。

FX6は、デジタルシネマで培ったルックと、クリエーターの高い要望に応える信頼性と操作性を兼ね備えた商品群を「Cinema Line」に位置づけているが、同じくCinema Lineの製品であり、本格的な映画撮影で使われている「VENICE」についても現在の状況を説明。

新ファームVer6.0を11月にリリースする予定のほか、technicolorのVENICE用ルックを12月に公開するという。また、VENICEとIMAXとのパートナー契約も締結。今後、IMAX作品の撮影で、VENICEが活用されていくとのこと。

同じくCinema Lineの製品で、ドキュメンタリーやドラマ向けのXDCAM「FX9」では、 既にリリースしたファームVer2.0で大幅なAF機能向上。ユーザーから好評だという。今後提供予定のVer3.0では、S700PTPプロトコルへの対応や、B4レンズにも対応予定としており、公開は2021年が予定されている。