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JDI、指紋・静脈・脈波が計測できる世界初のウェアラブルイメージセンサー

ジャパンディスプレイ(JDI)は21日、指紋・静脈・脈波が計測できる薄型イメージセンサーを発表した。東京大学との共同開発品で、指紋・静脈・脈波を1つのイメージセンサーで計測できるものは世界初。今後3年以内を目標に、生体情報を読み取るウェアラブル端末や、模倣やなりすましを防ぐセキュリティ端末などへの採用を目指す。

薄型イメージセンサー

新開発のイメージセンサーは、高移動度の低温ポリシリコン薄膜トランジスタ(LTPS TFT)と、高感度な有機光検出器を集積することで、高速読み出しが必要な脈波の分布と生体認証に用いられる指紋や静脈といった高解像度撮像が必要な生体情報を1つのイメージセンサーで計測することを可能としたもの。

イメージセンサーは、フィルム基板上にLTPS TFTと有機光検出器を積層させた構造で、厚みは15マイクロメートル。薄く軽量で、曲げて使用することも可能。

薄型イメージセンサー

センサー解像度は508dpiで、読み出し速度は41fps。面積は1.26×1.28m2。外部量子効率は、近赤外領域の0.5以上を実現。

同社は「生体認証において、生体情報(指紋、静脈)に加えて生体信号(脈波)を取得することで、模倣やなりすましを防止することができるなど、高い安全性を有する認証システムへの適用が期待できる」とする。

センサー構造
センサー断面図

発表会会場には、センサーを組み込んだ2種類のプロトタイプを設置。

1つは指先と指の腹の2カ所から、指紋・脈波・静脈を計測するもの。指先をセンサーに触れると、高解像度に指紋を表示しつつ、血管の収縮から脈波を計測。指の腹では赤外光越しに読み取った静脈を可視化できる。

計測モジュール
センサー部分
指先と指の腹の2カ所から、指紋・脈波・静脈を計測
画面に指紋と脈波が表示された

もう1つは、手首にセンサーを巻いて静脈を投影するモジュールで、ウェアラブル機器などへの応用を意識したものとなっていた。

静脈を投影するモジュール
モジュールの仕組み
ディスプレイに手首の静脈を表示(写真左上)

同社R&D本部デバイス開発部課長の中村卓氏は、「センサーサイズはまだ大型化、小型化ができる。またセンサーを組み込むアプリ次第で、仕様の読み出し速度や取得する領域を変更することも可能。有機光検出器の耐久性は十分高く、生体検出の精度も、従来ある手法とほぼ同等のレベルにあると自負している」とコメント。

中村卓氏(ジャパンディスプレイ R&D本部デバイス開発部課長)

R&D本部デバイス開発部部長の木村裕之氏は「日本、そして世界は高齢化社会に投入し、今後ますます、身体への影響が少なく、また連続して計測できる医療用機器やウェアラブル製品が求められる」と開発の背景を説明。「今回のイメージセンサーは、JDIの強みであるLTPS TFT技術と、東京大学が長年研究してきた有機EL、および有機光検出器の技術が組み合わさり実現したもの。センサーは人間の入力デバイスとして、進化し続ける。3年以内を目処に、認証システムを含むセキュリティ分野、生体情報を計測するウェアラブル機器などへ展開できるようにしたい」と抱負を述べた。

木村裕之氏(ジャパンディスプレイ R&D本部デバイス開発部部長)