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ハイレゾロゴに「左右独立型」追加。位相差の許容値定義

ハイレゾオーディオワイヤレスロゴ

日本オーディオ協会は、2018年からライセンスを開始した「ハイレゾオーディオワイヤレス」ロゴに、新たなカテゴリーとして左右独立型ワイヤレス製品を30日より追加した。

左右のユニットが独立に動作するイヤフォンなどの製品においてもハイレゾらしさが損なわれない技術要件を検討し、その結果を「ハイレゾオーディオワイヤレス」ロゴに対応する左右独立型ワイヤレスの定義と定めたとしている。

ライセンスの対象は、ハイレゾオーディオ信号をそのまま伝送できないワイヤレス接続に対して、協会が認証したオーディオコーデック(LDAC、LHDC)を用いた左右独立型ワイヤレス商品で、ワイヤレス接続部以外は「ハイレゾオーディオ」ロゴの技術規定を満たしているもの。

2018年の「ハイレゾオーディオワイヤレス」ロゴのライセンスをスタートする時点では、左右独立型ワイヤレス製品の扱いについては、協会内でも意見が分かれ、持ち上がった懸念に対して十分な審議が出来ていないということで、対象製品から外され、継続審議されることになっていたという。

その懸念のひとつは、左右チャンネル間の連結にケーブルを用いず、独立したユニット間で更にワイヤレス通信を必要とする左右独立型ワイヤレス製品は、外部電波などの妨害を受ける可能性が高くなり、安定して音楽を楽しめない、という製品が多々見受けられたため。

もうひとつは、左右チャンネルのユニットがそれぞれクロックを持って動作するのが一般的で、結果的に左右の音楽信号にはわずかな位相差が生じることにもなるため、これを定量的にコントロールしないと、ハイレゾらしさを損なうのではないかという懸念があったという。

今回、使用環境における外部電波からの妨害について、ワーキンググループ(WG)内で評価方法の議論を行ない、妨害の起きる環境を一律に定義することが出来ない、と結論。また、この2年の間に各社のアンテナ技術や伝送方法が成熟している背景も鑑み、「この点については各社の仕様や実力に任せることとした」という。

一方、位相差については、実際に左右でズレを持たせた信号を作って検証。最初は固定的に左右の位相差をずらした音源を作ってWGメンバーで試聴した結果、位相差が大きくなると共に、音の定位が片チャンネルに偏差していくことを認識。これは大体想定内だったとする。

続いて実動作同等の実験機を用いて動的に位相差をずらした音源を作成し確認。協議を行なった結果、大きく位相を揺らした場合と小さく揺らした場合では音質に影響を与える差があり、WGメンバーでハイレゾオーディオワイヤレス製品としての品位を保てる許容値について合意できた数値(±50μs)を、左右間位相差の定義にしたという。

この±50μsを、一般的なスピーカーリスニングの設置に置き換えた場合の考察も提示している。

左右のスピーカー間を180cmとした正三角形でリスニングポイントを考えた場合、音の速さを340m/sとして計算すると、片チャンネルのスピーカーを固定し、もう片チャンネルのスピーカーの位置ずれが±1.7cmに値するのと等価になるという。リスニング中に頭や体を全く動かさないということはありえないと考えると、この数字はそれらの動きの範囲内だと考えることも出来るため、ほぼ問題のない数字だと言えるため、「左右の位相差が±50μs以内で管理されることは、かなり精度の高い話である」としている。

一般的なスピーカーにおけるリスニングに置き換えて左右位相差を考察

左右独立型ワイヤレスイヤフォンは、昨今各社からノイズキャンセリング機能が搭載されたモデルも発売され、こちらも高い需要と人気があり、徐々に平均単価が上がる傾向を示しているとする。日本オーディオ協会は、「このライセンスの開始により、益々市場が活性化していくことが期待される」と述べている。