ニュース

押井監督「よく作れたなと思う」、攻殻IMAX公開挨拶

左から若林和弘音響監督、押井守監督

IMAXデジタルシアターで先行上映が始まっている「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊 4Kリマスター版」。18日に実施された公開記念舞台挨拶のオフィシャルレポートが到着した。

1989年に士郎正宗により発表されたコミック「攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL」(講談社KCデラックス刊)を原作に、1995年に公開され、世界中のクリエイターに影響を与えてきた押井守監督作品「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」。ハイクオリティな映像で甦った4Kリマスター版は10月1日より通常劇場で公開されるが、それに先駆けて、9月17日よりIMAXデジタルシアターでの上映が日米同時スタートした。

(C)1995 士郎正宗/講談社・バンダイビジュアル・MANGA ENTERTAINMENT
『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊 4Kリマスター版』予告編

TOHOシネマズ日比谷にて実施されたIMAX公開記念舞台挨拶では、押井守監督、若林和弘音響監督が登壇。今も世界中で愛され続ける本作の、当時の制作の裏側などを語った。

制作時から数えて約27年前の作品であり、過去に幾度も作品について語る機会があったことから「今日は音響周りの話を中心に」と押井監督。それを受けた若林音響監督が「丸投げですか?」と戸惑いながらも、和やかに舞台挨拶がスタート。

銃の音を録りに香港を訪れた話や、AvidやAppleなど当時の最先端だったデジタルテクノロジーを使用して音響作業を行なった苦労話など、序盤からマニアックな話題に。押井監督が「デジタルを手段ではなく目的に。デジタルっぽく見えるようにアナログで作った」と語るように、デジタルツールが黎明期にあった当時、最新のシステムを使いながらも、そのやり方は意外にもアナログ。電脳通信の声を作り出すため、壺の中にスピーカーを吊って収録したセリフを再生し、マイクを上から入れて録音し直したという驚きの方法などが明らかにされた。

さらに、若林音響監督は「女性は低音が少なく声が響きにくいので、45Lのポリバケツに田中敦子(草薙素子役)に顔を突っ込んでもらって録音をしてみたけど、直ぐに不採用になった(笑)」と衝撃の裏話を続け、会場からは驚きの声が上がり、試行錯誤を重ねた思い出話に次々と花が咲いていった。

そして、話は今回の4Kリマスター版へ。「当時の納品データはテープでしたが、今はそれをかけられる機械も存在しないので、当時の劇場用の2ch音源をもとに疑似的に音を広げたものを聴いて調整しました」と若林音響監督。

また、声優について押井監督は「長く付き合ったのは大塚(明夫)と山寺(宏一)、あとは(榊原)良子さん。この3人をつい軸にしてものを考えちゃう」と語り、監督にとってキャスティングが如何に重要かを感じさせる貴重な話を披露した。

ディープ過ぎる話が続く舞台挨拶は早くも終わりの時が近付き、劇場へ足を運んだファンへメッセージを届ける。「この作品はお客さんが観やすくなるための音楽の付け方をせず、ストーリーに沿ったものだけを付けました。だから、刑事ものなのに全くそれらしくない。25年以上たった今、もう一度スクリーンにかけられたことを幸せに思います」と若林音響監督。

最後は「ほとんどブツブツ言っているだけで、この作品は実は地味。よく作れたなと思います(笑)。当時、入れ込んでいた企画が他にもあったこともあり、客観的に作れたことが良かったのかなと。女性を真ん中に置く、戦うヒロインで作品を作りたいと思うきっかけになった。僕の作品をスクリーンで観たいというファンの熱意のおかげで今回上映できたと思っています。本当にどうもありがとう」と押井監督が締め、舞台挨拶は幕を閉じた。