西田宗千佳のRandomTracking
第646回
ブルーレイ・レコーダーはなぜ終売するのか。ディスクメディアの30年に見る必然
2026年2月10日 07:30
TVS REGZAに続き、ソニーがブルーレイ・レコーダーの出荷終了を決めた。
いつか来ると予測していたが、ついにやってきてしまった。1月にREGZAブランドのBlu-rayレコーダーが生産を完了しているので、市場に残るのはいよいよパナソニックとシャープだけ、ということになる。
TVS REGZAがBlu-rayレコーダーの生産を止めることになった背景については、予測を含めて、CESでのインタビュー記事の最後に触れている。
ここでは改めて、「なぜBlu-rayレコーダーは生産が終わるのか」「今後レコーダーはどうなるのか」「そのことはBlu-rayという規格全体にどう影響するのか」という話について、歴史的経緯も含めて解説しておきたい。
Blu-rayレコーダー終売でなにが起きるのか
まず、今回の件がどういうことで、どう影響するのかについてまとめておこう。
ソニーが出荷を終了するのはあくまで「記録型Blu-rayディスクへの書き込み機能を持ったレコーダー」である。
現状では、「Blu-rayディスクへの再生機能を持つプレーヤー」製品の出荷は継続される(ソニーも編集部の取材に対し、BD/DVDプレーヤーは「今後も生産を継続する」とコメントしている)。
また、ソニーグループ関連という意味では、PlayStation 5も光学ディスク搭載版(もしくは別売の専用ドライブを増設したデジタル・エディション)では、Blu-rayディスクの再生が行なえる。だから、再生機能を持つ製品がなくなるわけではない。
また、ソニー製品の中にレコーダー機能がなくなるか、というとそうではない。テレビであるBRAVIAには外付けハードディスクへの録画機能が存在するので、「ハードディスクへの録画」は可能だ。
すなわち、「記録型Blu-rayディスクに映像を書き出す機能を持ったレコーダー」の販売が終了する……ということになる。
TVS REGZAの場合にも同様で、ハードディスクへの録画についてはテレビで可能。一方で、REGZAには録画機能を持たないプレーヤー製品が存在しないため、同社ブランドとしてはBlu-ray関連製品は当面終売ということになる。
そうなると、日本メーカーでBlu-ray製品を作っているのは、パナソニックとシャープだ。
シャープはBlu-rayレコーダーのみを製品化しており、パナソニックはBlu-rayレコーダーとBlu-rayプレーヤーの両方をラインナップに持っている。
だから、日本国内でBlu-rayレコーダーがすべてなくなったわけではなく、当面はパナソニック・シャープの製品を選ぶことになるだろう。
一方で、Blu-rayレコーダーがいつまでも製品として残るのか……という点には疑問もある。今は大丈夫だが、残る2社についても、「記録型Blu-rayディスクを使ったレコーダーを作らなくなる日」が、いつかやってくる可能性は高い。
年率20%で下落、急速に落ちるBlu-rayレコーダーのニーズ
なぜBlu-rayレコーダーが終売していくのか?
シンプルに言えば、日本国内でのニーズが急激に落ちているからだ。
以下は、JEITA(一般社団法人電子情報技術産業協会)が公開している「民生用電子機器国内出荷統計」から、Blu-rayレコーダーの年間販売台数をまとめ、グラフ化したものだ。
統計にBlu-rayレコーダーが追加された2009年から2025年までをまとめたものだが、見事な右肩下がりである。
地デジ移行があった2011年に突出して需要があったのはテレビと同じなのだが、そこからじわじわと減少が続く。ただ、2020年まではそこまで顕著な変化ではなかった。
そのあとは急だ。コロナ禍に入ると年率25%近く出荷数量が減り、2025年末には年間62万3,000台まで落ち込んだ。
この数量で数社が製品を出し続けるのは難しい。おそらく2026年の統計は、大幅に低いものになるだろう。
日本にしかない「録画」が記録型ディスクを生み、日本だけであるが故に苦しむ
今回の「生産完了」は、日本にしか需要がない製品が日本で売れなくなったから……と言っていい。
実のところ、DVD以降「記録型ディスク」の需要は世界的に見て少ない。なぜなら、PCなどのストレージ用というより「録画のダビング用」を重視して生まれた経緯があるからだ。
その理由を知るには、まず世界の映像メディアの変遷を頭に入れておく必要がある。
1980年代末になると、テープメディアであるVHSも映像ソフトを売る「配布メディア」になっていた。その後継としてDVDが生まれ、さらにいわゆる「HD世代」に対応するためにBlu-rayが生まれたのはご存知の通りだ。
一方で、日本以外ではすでに「録画する」という文化がほとんどなくなっていた。前出のように、映像は「ソフトとして買う、もしくはレンタルするもの」だったからだ。
ではストレージはどうか? こちらも微妙だ。PC向けにはすでに容量が中途半端で、「バックアップには向かないし人に渡すには高価」という時期が続く。CD-Rがいまだ残るのは、「使い捨ててもいいほど安く、人に渡したいデータ量は意外と小さい」からでもある。
だが日本には「録画」という文化がある。DVDレコーダー登場初期より録画自体はハードディスクに行なうのが一般的だが、それを自分でライブラリとして残したり、他人に渡したりするために「ディスクに書き出す機能が必要」と判断されたのだ。
そのため記録型Blu-rayを規格化する際にも、日本の家電メーカーがリードする形で策定が進んだ。最初のBlu-rayはソニーから登場したが、当時はROMの規格がまだ生まれておらず、「デジタル放送の記録用」として登場した。当時の対象市場はもちろん日本だけだ。
その後配布メディアとしてのROM規格が決まり、そこで「HD DVD 対 Blu-ray」の競争が起きる。だが、そこでキャスティングボードを握ったのはハリウッドの映画会社。彼らは録画規格に興味はなく、あくまで配布メディアとしての「ROM」だけに興味を持っていた。
だから、記録型Blu-rayや記録型HD DVDの話を語るのは日本メーカーが中心だったのだ。
なお、Blu-rayの拡張規格である「Ultra HD Blu-ray(UHD BD)」には記録規格がない。UHD BDは最初から「配布メディア(ROM)」として規格化されている。このことからも、規格化当時(2015年)、すでに録画市場でのディスクニーズが厳しい、と判断されていたことが見えてくる。大容量のBDXL規格はあるが、これとUHD BDは別の規格であり、記録型Blu-ray同様、録画ニーズを重視したものだ。
ハードディスクに録画し、ディスクにダビングするDVDレコーダーが登場したのは2001年のこと。当時から録画はハードディスクに行なう「見て消し」が基本であり、ディスクへの書き出しは「ダビング」「ライブラリ化」などの付加価値とされた。とはいえ、HD(ハイビジョン)時代になれば、それにあったディスクが必要となる。だから、地デジ移行を見据えて「Blu-rayレコーダー」が必要になったわけだ。
実際には「見て消し」が基本であっても、結局売れるのはBlu-rayレコーダーだった。ディスクを見る・借りるニーズが十分にあったためだ。
だが、コロナ禍に入って映像配信が日本でも普及し始めると、「録画機は買わなくてもいい」という人が増えてくる。地デジ移行の頃に買った製品は買い替えが進まず、若い新しい層は、「リビングにテレビは置いてもレコーダーまでは買わない」ようになっていく。
こうして、日本だけに存在していた「Blu-rayレコーダー」のニーズは急速に減っていった。日本国内のためにだけ部材を供給するところは少なくなっているので、結果として、Blu-rayレコーダーのビジネスを維持するのは困難になっていった……ということなのだ。
課題はドライブ調達、その中でチャレンジしたアイ・オー・データ
製品を維持するという上で課題となるのは、記録型Blu-rayに対応したドライブの調達である。
世界的にまだ需要があるBlu-ray「プレーヤー」向けのドライブはともかく、日本にしかニーズがないとなると、製造してくれるメーカーは少なくなる。
家電向けの前に、PC向けのドライブはすでに市場から払底しつつある。光学ドライブを搭載するPC自体が減っている現状、記録型DVD以上の書き込みメディアに対応するドライブのニーズも少ない。
そんな中、アイ・オー・データ機器がPCに接続して外付けHDDのテレビ番組を保存する「BDレコ」を発売するのは特筆に値する。アイ・オー・データ機器だけが潤沢にドライブの供給を受けられるとは考えづらく、少なくなった販路の確保と数量のコミットによって「厳しくなった時期だが製品化にこぎつけた」と考えるのが自然だ。調達と製品化の努力には頭が下がる。必要だと思う方は購入をお勧めする。
なお、メーカーの中でもパナソニックがBlu-rayレコーダーを継続できるのは、同社が各種部材を自社向けに生産しているからでもある。当然数量は減るので、価格は上がらざるを得ない。
シャープについては現状情報がないが、厳しいのは他者と同様のはず。できるだけ長期のビジネス継続を期待したい。
「再生メディア」としてのBlu-rayも永遠ではない
最後に問題になるのは「Blu-rayというメディアはいつまで続くのか」という点だ。
前出のように、再生専用のBlu-ray「プレーヤー」は、ソニーもまだ販売を続ける。パナソニックにも製品はあるし、ハイエンド品を売るメーカーも存続している。Blu-rayレコーダーと違って、国際的なニーズがあるからだ。
だから当面、Blu-rayディスクが再生できなくなる日は来ないだろう。
ただし、未来永劫、Blu-rayプレーヤーがいつでも買える……というわけではない。
ディスクメディアには寿命があるとはいえ、ちゃんと保管すれば20年・30年は再生できる。慎重に扱えばもっと先まで大丈夫かもしれない。
しかし、Blu-rayをはじめとした光ディスクを再生可能なドライブは、いつまで生産されるだろうか? 当面は大丈夫、と言いつつ、筆者は一抹の不安を感じざるを得ない。
なぜなら、すでに海外では「ディスクを売る」行為が急激に減り、プレーヤーのニーズも同時に減っているからだ。
以下の写真は、2024年の秋にアメリカで、量販店「Target」のソフト売り場を撮影したものだ。もはやCDやDVDは少なく、音楽用のレコードが目立つ。Blu-rayの姿も見えない。レコードが目立つのは音質が良いからではなく、ジャケットが大きくて「アーティストのグッズとしての価値が高い」からだ。
ゲームも同様だ。ハードウェアの姿は見えるが、ディスクメディアの陳列量は極端に少ない。一部の中古を扱う店に行けばあるが、新品を売る店には、パッケージソフトはごく少量しかない。
こうした傾向は一般量販だけでなく、家電量販店でも同様だ。2000年代には店舗の5分の1をディスク販売が占めていたが、もはやその面影はない。
ECサイトでの通販やマニア向けのビジネスとして、ディスクメディアによる映像販売はまだ存在する。過去に比べ販売数量は落ちているが、映像の権利者にとって、重要なマネタイズ手段の1つであることに変わりはない。
とはいえ、そこに新しい顧客はなかなか入ってこない。専用プレーヤーの市場がここから盛り上がる、というビジョンは描きづらい状況だ。
また、現在のゲーム機(PlayStation 5とXbox)には光学ドライブが付いているが、次世代にも残るのかどうか、筆者も100%の確信は持てない。ゲームはすでに7割から8割がダウンロード販売で、儲けの大半もサービス型のゲームになってきているからだ。
ディスクプレーヤーを使う人がいて、その人々がちゃんと定期的にプレーヤーを買っていくのであれば、生産は維持されるだろう。だが、減っていけば難しくなる。
特に今は、半導体や光ピックアップなどのパーツが問題だ。Blu-rayはすでに古くなった、20年前の技術。それを再設計して今のラインで生産してもらうには、ちゃんと「それで儲かる」という算段が必要だ。かといって、CDやDVDほど「安くて簡単な技術」というわけでもない。コーデックや暗号化の仕組みなどにライセンスコストも発生する。
結局のところ、Blu-rayはその後継規格を用意できなかった。DVDは(競争の結果主要企業が入れ替わったとはいえ)Blu-rayという後継があって続いた。
ディスクなのかはともかく、「パッケージメディアとしてのBlu-ray系列の後継」は今のところ存在しない。そうした存在を作ろう、という話も聞こえてこない。
問題の本質はそこにある。
Blu-rayも数年は問題ないだろうが、5年後・10年後に安泰か、というと不安は出てくる。その先でパッケージメディアはどうなるのだろうか。
答えがない以上、「必要ならば、Blu-rayプレーヤーは早いうちに買い替えておく」ことをおすすめする。
そして業界としても、10年後・20年後を考え、「個人の手に残る作品供給方法」を検討する必要があるだろう。それがネットしかないなら、消費者保護を含め、「ネット配信でも長く安心して見られる方法」を考えるべきなのだ。














