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8Kテレビ、'23年3月からEUで販売できない問題。画面暗い“EUモード”実装?

ドイツで販売されている85型8Kテレビ「GQ85QN900BTXZG」(Sumsung)

2023年3月から導入予定の欧州省エネ制度について、HDMI LAのCEOロブ・トバイアス氏は「すべての8Kテレビと数種の4Kテレビが販売できなくなる。一部メーカーは、低消費電力で画面を暗くした“EUモード”の実装を検討している」と話した。

これは、先日都内で開催されたプレス向け説明会「HDMI LA 日本向けブリーフィング」での発言。

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該当の省エネ制度とは、EU欧州委員会が'23年3月1日からの運用を目指す欧州エコデザイン指令(Ecodesign Directive)の改訂版。

日本にも「トップランナー制度」(資源エネルギー庁)による省エネ基準が導入されているが、これはあくまで、対象となる機器の製造事業者に対し、“エネルギー消費効率の目標を示して達成を促し、エネルギー消費効率の表示を求める”もの。

それに対し欧州のエコデザイン指令は、EU圏内(加盟27か国)で販売する対象製品に対し、“消費電力の最低要求基準を満たすことを求める”もの。基準をクリアしなければ、EU圏内で製品を販売することができない取り決めになっている。

EU圏内で使用されている省エネ性能表示ラベル

欧州委員会が運用を目指す次の改訂では、現行基準よりも、もう一段高い省エネ性能が規定されている。

具体的には、フルHDテレビはEEI(Energy Efficiency Index)基準値が0.9から0.75へ、4Kテレビ基準値が1.1から0.9へ変更。そして従来は対象外だった8KテレビやmicroLEDディスプレイに対しては、4Kテレビと同じ基準値0.9を課す。

出典:Commission Regulation (EU) 2021/341 of 23 February 2021 amending Regulations (EU) 2019/424, (EU) 2019/1781, (EU) 2019/2019, (EU) 2019/2020, (EU) 2019/2021, (EU) 2019/2022, (EU) 2019/2023 and (EU) 2019/2024 with regard to ecodesign requirements for servers and data storage products, electric motors and variable speed drives, refrigerating appliances, light sources and separate control gears, electronic displays, household dishwashers, household washing machines and household washer-dryers and refrigerating appliances with a direct sales function

しかし、8Kテレビは画素が緻密であるが故に、2Kや4Kテレビに比べ開口率が低く、同じ輝度を再現するには大きな電力を必要とする。さらに、映像処理の負荷が大きい分、回路規模やトランジスタなどの部品点数も巨大になり、その分消費電力も増す。構造上、消費電力が大きくならざるを得ない8Kテレビなどにとって、「4Kテレビと同じ省エネ性能値」をクリアするのは現状、ハードルが非常に高い。

ロブ・トバイアスCEOは、最新のHDMI2.1機器の普及に一役買っているのは「大型画面のテレビやディスプレイであり、売上も堅調に推移している」と分析するが、欧州の省エネ規制については「テレビの大きな課題。運用が始まれば、来年3月以降、現在EU圏内で発売されているすべての8Kテレビと、数種の大型4Kテレビが販売できなくなる」と懸念する。

そして「紛争など様々な問題が発生し、エネルギー価格の上昇が顕在化し、エネルギーの安定確保が各国で喫緊の課題になっている」とした上で、「消費電力削減、そして環境への配慮が世界中で叫ばれており、他の国でも(欧州と)同様の制限が検討されていることを踏まえれば、欧州の動きに追従する形になっていくだろう」と話す。

ロブCEOによれば、EUの新しい省エネ基準をクリアするために「一部メーカーは、低電力で画面を暗くした“EUモード”の実装を検討している」という。

なお、前述した日本の「トップランナー制度」においては、液晶テレビは'12年度以降の各年度('25年度まで)または'26年度以降の各年度、有機ELテレビは'26年度以降の各年度が目標年度として設定されている。また省エネ効果は、目標年度('26年度)において、2018年比約32.4%の効率改善達成を促している。

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