ニュース
8Kテレビ、'23年3月からEUで販売できない問題。画面暗い“EUモード”実装?
2022年12月21日 07:00
2023年3月から導入予定の欧州省エネ制度について、HDMI LAのCEOロブ・トバイアス氏は「すべての8Kテレビと数種の4Kテレビが販売できなくなる。一部メーカーは、低消費電力で画面を暗くした“EUモード”の実装を検討している」と話した。
これは、先日都内で開催されたプレス向け説明会「HDMI LA 日本向けブリーフィング」での発言。
HDMI2.1a対応ディスプレイは'23年発売。“正規品判別”がウェブでも可能に
該当の省エネ制度とは、EU欧州委員会が'23年3月1日からの運用を目指す欧州エコデザイン指令(Ecodesign Directive)の改訂版。
日本にも「トップランナー制度」(資源エネルギー庁)による省エネ基準が導入されているが、これはあくまで、対象となる機器の製造事業者に対し、“エネルギー消費効率の目標を示して達成を促し、エネルギー消費効率の表示を求める”もの。
それに対し欧州のエコデザイン指令は、EU圏内(加盟27か国)で販売する対象製品に対し、“消費電力の最低要求基準を満たすことを求める”もの。基準をクリアしなければ、EU圏内で製品を販売することができない取り決めになっている。
欧州委員会が運用を目指す次の改訂では、現行基準よりも、もう一段高い省エネ性能が規定されている。
具体的には、フルHDテレビはEEI(Energy Efficiency Index)基準値が0.9から0.75へ、4Kテレビ基準値が1.1から0.9へ変更。そして従来は対象外だった8KテレビやmicroLEDディスプレイに対しては、4Kテレビと同じ基準値0.9を課す。
しかし、8Kテレビは画素が緻密であるが故に、2Kや4Kテレビに比べ開口率が低く、同じ輝度を再現するには大きな電力を必要とする。さらに、映像処理の負荷が大きい分、回路規模やトランジスタなどの部品点数も巨大になり、その分消費電力も増す。構造上、消費電力が大きくならざるを得ない8Kテレビなどにとって、「4Kテレビと同じ省エネ性能値」をクリアするのは現状、ハードルが非常に高い。
ロブ・トバイアスCEOは、最新のHDMI2.1機器の普及に一役買っているのは「大型画面のテレビやディスプレイであり、売上も堅調に推移している」と分析するが、欧州の省エネ規制については「テレビの大きな課題。運用が始まれば、来年3月以降、現在EU圏内で発売されているすべての8Kテレビと、数種の大型4Kテレビが販売できなくなる」と懸念する。
そして「紛争など様々な問題が発生し、エネルギー価格の上昇が顕在化し、エネルギーの安定確保が各国で喫緊の課題になっている」とした上で、「消費電力削減、そして環境への配慮が世界中で叫ばれており、他の国でも(欧州と)同様の制限が検討されていることを踏まえれば、欧州の動きに追従する形になっていくだろう」と話す。
ロブCEOによれば、EUの新しい省エネ基準をクリアするために「一部メーカーは、低電力で画面を暗くした“EUモード”の実装を検討している」という。
なお、前述した日本の「トップランナー制度」においては、液晶テレビは'12年度以降の各年度('25年度まで)または'26年度以降の各年度、有機ELテレビは'26年度以降の各年度が目標年度として設定されている。また省エネ効果は、目標年度('26年度)において、2018年比約32.4%の効率改善達成を促している。