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KEF、エントリー機に“音のブラックホール”投入。第9世代「Qシリーズ」

Qシリーズ初の3ウェイのブックシェルフ型「Q Concerto Meta」

KEFは、“音のブラックホール”とも呼べる「メタマテリアル吸音技術(Metamaterial Absorption Technology/MAT)」をシリーズで初搭載したエントリーモデルスピーカーとして、第9世代「Qシリーズ」全8機種を発表した。3ウェイのブックシェルフ型「Q Concerto Meta」のみ9月26日発売。ほか7機種は26日から予約を受け付け、今冬より順次発売する。価格は2ウェイブックシェルフ型の「Q1 Meta」で80,000円/ペアから。

第9世代Qシリーズのラインナップ

QシリーズはKEFのエントリーラインではあるものの、「2ch運用だけでなく、シアターを組むなど、エントリークラスであっても、いろいろな使い方をしていただきたい。幅広い使い方をエントリークラスからご提供したい」としてラインナップがアップデートされ、全8モデル展開となった。仕上げはサテンブラック、サテンホワイト、ウォルナット。


    フロアスタンド型
  • 3ウェイ・バスレフ型「Q11 Meta」 320,000円/ペア
  • 3ウェイ・バスレフ型「Q7 Meta」 240,000円/ペア

    ブックシェルフ型
  • 3ウェイ・ バスレフ型「Q Concerto Meta」 175,000円/ペア
  • 2ウェイ・ バスレフ型「Q3 Meta」 110,000円/ペア
  • 2ウェイ・ バスレフ型「Q1 Meta」 80,000円/ペア

    センタースピーカー
  • 3ウェイ密閉型「Q6 Meta」 100,000円/ペア

    イネーブルドスピーカー
  • 2ウェイ密閉型「Q8 Meta」 100,000円/ペア

    オンウォールスピーカー
  • 2ウェイ・バスレフ型「Q4 Meta」 116,000円/ペア

2017年に登場した第8世代からのリニューアルで、最大の特徴はQシリーズで初めてMATを採用したこと。MATは複雑な迷路のような構造のパーツで、入り組んだ各チャンネルが特定の周波数を効果的に吸収。このチャンネルが組み合わされると音響的なブラックホールとして機能し、ツイーター後部で発生する不要な音を99%吸収する。これにより音の歪みを排除して、よりピュアで自然な音響パフォーマンスを実現する。

第9世代Qシリーズのドライバー周辺には「Metamaterial Absorption Technology」の文言があしらわれる

このMATは「The Reference」シリーズや「Rシリーズ」など上位モデルに搭載されており、今回エントリークラスのQシリーズでも初採用となった。MAT発表当初は、同技術をQシリーズに導入する方針はなかったものの、サイズやコストなどの課題をクリアできたため、今回の採用に至ったとのこと。Qシリーズでは専用に再設計されたMATを搭載している。

独自の同軸ユニットであるUni-Qドライバーも、MATによる性能向上を最大限引き出すために再設計された最新の第12世代で、こちらもをQシリーズ用に専用設計したものが搭載されている。Uni-Qドライバーの周囲にはキャビネットによる回折現象を効果的に抑えるという「シャドーフレア」も採用した。

ツイーター・ドームを新しいメタマテリアル・アブソーバーに結合する円錐形のウェイブガイドは、その奥行きに基づきカスタマイズされたドライバー用に特別に設計。再設計されたツイーター・ギャップ・ダンパーは、多孔質材料の2つのリングを機能的に配置することで、共振と不完全性を効果的に抑制し、ディテールと透明度を大幅に向上させるという。

ツイーター・モーター・システムも再設計し、ツイーター後部からMATアブソーバーへのエネルギー伝送を最大化。ツイーター・リア・チャンバー・ベントの面積が250%拡大され、より多くの音がMATに届くようになり、その効果を発揮する。ドーム背面の音圧を大幅に低減することで、ツイーターがよりリニアに動作し、低歪みを実現している。

上位モデルのBladeやThe Referenceで採用した「Flexible Decoupling Chassis(フレキシブル・デカップリング・シャーシ)」も採用。ミッドレンジの振動がキャビネットに伝わることで生じる音のカラレーションを減少させている。また、従来のデカップリング方式で発生していた、ドライバーバスケットによる付帯音の問題も解決したという。

巨大なミッドレンジモーターをUni-Qのシャーシからデカップリングすることで、その振動がキャビネットに伝わることで不要な音として放射される前に、消散させる仕組みになっている。

イギリス・メイドストーンにある無響室で、特注のリファレンス・マイクロホン・アレイをつかった1,000回以上の測定を行なって高度なシミュレーションとプロトタイピングによる正確なクロスオーバー設計を実現している。

第9世代Qシリーズでは、筐体仕上げにマッチしたカラーのグリルが付属する。着脱はマグネット式

また前モデルで別売りだったグリルは製品に付属する仕様に変更。カラーも筐体仕上げにマッチしたものが付属する。壁掛けブラケットやフロア型用の金属スパイクは別売り。

フロア型2モデル

「Q11 Meta」

フロア型は前世代では3モデル展開だったが、第9世代では2モデル展開に変更。従来はパッシブラジエーターを含めた“2.5ウェイ”構成だったが、新モデルではパッシブラジエーターが廃止され、すべてアクティブウーファーを搭載した3ウェイ構成に進化した。

これにより周波数帯域が分離され、Uni-Qドライバーが高域と中域を、新設計のウーファーが低域を担当。明瞭度と臨場感を高めている。

ウーファーは、ペーパーコーンの上に浅く凹んだアルミニウムスキンを載せたハイブリッド構造で、「低音のパンチとスピードを向上させるピストンのような動きを実現する剛性」を確保。3D FEA(3次元有限要素回析)で最適化したサラウンド形状と組み合わせることで、高エクスカーションでのリニアリティも高めている。

「Q11 Meta」のドライバー構成は、Uni-Qのツイーターが19mm径のMAT搭載ベンテッド・アルミニウム・ドーム、ウーファーが100mm径のアルミニウム製。これに、165mm径のハイブリッド・アルミニウム製ウーファー×3基を組み合わせている。

再生周波数帯域は37Hz~20kHz、クロスオーバー周波数は480Hz、2.7kHz、インピーダンスは4Ω。外形寸法は317×380×1,112mm(幅×奥行き×高さ/ターミナル・台座込み)、重さは22.5kg(1本あたり)。

「Q7 Meta」

「Q7 Meta」のドライバー構成は、Uni-QがQ11 Metaと同じで、165mm径ウーファー×2基を組み合わせている。再生周波数帯域は46Hz~20kHz、クロスオーバー周波数は440Hz、2.3kHz、インピーダンスは4Ω。外形寸法は317×315×1,001mm(同上)。重さは18.kg(1本あたり)。

ブックシェルフ型3モデル

「Q Concerto Meta」

Qシリーズのブックシェルフ型は前世代では2モデル展開だったが、今回はシリーズ初となる3ウェイモデル「Q Concerto Meta」がラインナップに加わり、3モデル展開となった。

このQ Concerto Metaは、1969年にKEF初のブックシェルフスピーカーとして登場した3ウェイの「Concerto」へのオマージュを込め、そのヘリテージモデルと同じく「ハイフィディリティサウンドをより多くの人々が利用しやすくする」というコンセプトで開発されている。

Q Concerto MetaのUni-Qドライバーはフロア型と同じく、19mm径MAT搭載ベンテッド・アルミニウム・ドーム+100mm径アルミニウム製ウーファーの組み合わせ。165mm径のハイブリッド・アルミニウム・コーン・ウーファーも搭載する。

再生周波数帯域は40Hz~20kHz、クロスオーバー周波数は430Hz、2.9kHz、インピーダンスは4Ω。外形寸法は210×305×415mm(幅×奥行き×高さ/ターミナル・台座込み)、重さは9.5kg(1本あたり)。

「Q3 Meta」

残るブックシェルフ型2モデルの「Q3 Meta」「Q1 Meta」は、どちらもUni-Qドライバーのみの2ウェイ構成だが、口径が異なっており、Q3 Metaは今回のQシリーズでもっとも大きな25mm径MAT搭載ベンテッド・アルミニウム・ドーム+165mm径アルミニウム製ウーファーの組み合わせ、Q1 MetaはQ Concerto Metaなどよりも大きな25mm径MAT搭載ベンテッド・アルミニウム・ドーム+130mm径アルミニウム製ウーファーの組み合わせとなっている。

Q3 Metaの再生周波数帯域は42Hz~20kHz、クロスオーバー周波数は2kHz、インピーダンスは4Ω。外形寸法は210×305×357mm(同上)、重さは8.2kg(1本あたり)。

「Q1 Meta」

Q1 Metaの再生周波数帯域は47hz~20kHz、クロスオーバー周波数は2.1kHz、インピーダンスは4Ω。外形寸法は180×277×302mm(同上)、重さは6.1kg(1本あたり)。

ブックシェルフスピーカーには第9世代Qシリーズ専用のスタンドとして「SQ1フロアスタンド」を別売りで用意する。

「Q3 Meta」の背面

センタースピーカーなど

センタースピーカー「Q6 Meta」

第9世代のQシリーズではセンタースピーカー、イネーブルドスピーカーに加え、壁掛け式のオンウォールスピーカーもラインナップする。前世代では2モデルだったセンタースピーカーは「Q6 Meta」のみの展開で、19mm径のMAT搭載ベンテッド・アルミニウム・ドーム、ウーファーが100mm径のアルミニウム製のUni-Qドライバーと、165mm径ウーファーを2基搭載した3ウェイ仕様。

再生周波数帯域は52Hz~20kHz、クロスオーバー周波数は560Hz、2.7kHz、インピーダンスは4Ω。外形寸法は629×303×210mm(同上)、重さは14.1kg。

イネーブルドスピーカー「Q8 Meta」

イネーブルドスピーカー「Q8 Meta」は、25mm径MAT搭載ベンテッド・アルミニウム・ドーム+130mm径アルミニウム製ウーファーのUni-Qドライバーを搭載した2ウェイ密閉型。再生周波数帯域は96Hz~20kHz、クロスオーバー周波数は2.7kHz、インピーダンスは4Ω。外形寸法は180×259×176mm(同上)、重さは4.5kg(1本あたり)。

オンウォールスピーカー「Q4 Meta」

新登場となるオンウォールスピーカー「Q4 Meta」はバスレフ型で、25mm径MAT搭載ベンテッド・アルミニウム・ドーム+130mm径アルミニウム製ウーファーのUni-Qドライバーを搭載した2ウェイ構成。再生周波数帯域は52Hz~20kHz、クロスオーバー周波数は1.8kHz、インピーダンスは4Ω。外形寸法は250×142×400mm(同上)、重さは5.7kg(1本あたり)。

音を聴いてみた

右が「Q3 Meta」、左が前世代の「Q350」

まずはブックシェルフの2ウェイモデルから前世代の「Q350」と、最新の「Q3 Meta」で聴き比べ。なお、今回スタンドはR3用スタンド「S3 Floor Stand」を使っている。

女性ボーカルとして、手嶌葵の楽曲を聴いてみると、イントロのピアノが流れた時点で、Q3 Metaではベールが1枚剥がれたような解像感の高さを味わえる。

ボーカルもよりクリアに、くっきりと聴こえるほか、伴奏のピアノの反響音のような余計な響きもなくなり、鮮明なサウンドで音楽を楽しむことができた。これはUni-Qドライバーが第11世代から第12世代に進化したことで反応速度が向上したこと、そして新モデルにMATが搭載されたことによる効果だという。

続いてはブックシェルフ3モデルをピアノアンサンブルで聴き比べてみる。Q3 Metaは中域に厚みがありつつ、高域もスッと伸びていく。サウンドステージも広めに感じられる。

「Q1 Meta」

それに対し、口径の小さいUni-Qドライバーを搭載するQ1 Metaは、高域の伸びはQ3 Metaには及ばないものの、中域の厚みやサウンドステージの広さなどは変わらず、楽曲の世界感に引き込まれる。

そして3ウェイのQ Concerto Metaは、Q3 Metaでも充分だったサウンドステージがもう1段階広がって、より広大なホールで演奏を味わっている感覚になる。低域の沈み込みや迫力はQ3 MetaやQ1 Metaよりもグッと強くなり、より力強いサウンドを味わえた。

「Q7 Meta」

フロアスタンド型の「Q11 Meta」も前世代の「Q950」と聴き比べ。こちらでは「トレイシーの肖像/ブライアン・ブロンバーク」やオーケストラなどを聴いてみたところ、Q11 Metaでは、低域がより明瞭になりつつ、中高域の解像感も増しており、「トレイシーの肖像」では、ベースの弦の動きがよりハッキリと見通せるようになった。

左が「Q7 Meta」、右が「Q11 Meta」

低域の迫力についてはQ950と比べると、Q11 Metaのほうが少し抑えめに感じられたが、オーケストラの迫力を味わうには十分な低域感だった。

Q11 Metaよりもウーファーが1基少ないQ7 Metaでは、中高域の解像感やサウンドのクリアさは変わらず、低域部分だけがよりスッキリしたサウンドを楽しめる。

従来のQシリーズのフロアスタンド型はモデルごとに搭載しているドライバー径などが違っていたが、今回のQ7 MetaとQ11 Metaは搭載しているUni-Qドライバーやウーファーの口径は同じ。違いはウーファーの基数と筐体サイズなので、「エアボリュームに合わせて選択していただけるようになった」とのことだった。

センタースピーカー「Q6 Meta」
イネーブルドスピーカー「Q8 Meta」
オンウォールスピーカー「Q4 Meta」