ミニレビュー

KEF、10万円台のワイヤレススピーカー「LSX II LT」と、約23万円「LSX II」聴き比べた

ワイヤレススピーカー「LSX II LT」

KEFは22日、発売したばかりのワイヤレススピーカー「LSX II LT」(ペア137,500円)のマスコミ向け体験会を開催。製品の特徴を解説すると共に、既存の「LSX II」(ペア231,000円)との比較試聴も実施した。

LSX IIとLSX II LTの違い

「LSX II LT」

LSX IIとLSX II LTはどちらも、ブックシェルフタイプのワイヤレススピーカー。KEFの代名詞とも言える、第11世代Uni-Qドライバーを搭載。点音源により、音を均等に分散するKEF独自の技術を活用。独自のDSPであるMusic Integrity Engineも搭載。同軸のウーファーとツイーターを個別のクラスDアンプで駆動する。

アプリから制御してAmazon Musicなどの音楽配信サービスをスピーカー単体で再生したり、PCとUSBで接続してPCスピーカーとして使ったり、AirPlay 2やBluetoothでのワイヤレス接続も可能。HDMI ARCも備え、テレビとHDMIケーブル1本で接続し、テレビのサウンドを再生することもできる。詳細はニュース記事やレビュー記事を参照のこと。

LSX II LTは、LSX IIをベースとしながら、より幅広いユーザー層にアプローチするために開発されたモデルで、約10万円ほど低価格になっている。仕上げはストーン・ホワイト、グラファイト・グレー、セージ・グリーンの3種。

「LSX II LT」の仕上げはストーン・ホワイト、グラファイト・グレー、セージ・グリーンの3種

大きな違いは、左右スピーカー間の接続方法。LSX IIは左右間をワイヤレス接続できるが、LSX II LTは付属のUSB-C(USB 3.0/付属3M)ケーブルで接続する。そのため、デスクトップ配置で使いやすいのはLSX II LT、広い部屋の中で、離して、なおかつケーブルを見せずに配置するような使い方にはLSX IIが適している。

また、LSX IIはUSB-C、HDMI ARC、光デジタル、AUX入力を備えているが、LSX II LTはAUX入力を削除。さらにLSX II LTはMQAやRoon Readyに非対応という違いもある。

LSX IIとLSX II LTの比較表

使い勝手の面では、LSX IIは左右筐体それぞれに電源を内蔵し、左右スピーカー個別に電源ケーブルが必要(電源ケーブルが2本必要)となる。LSX II LTはプライマリーのみに内蔵。USB-Cを介して、セカンダリースピーカーへ音楽信号と電源を一緒に伝送するため、電源ケーブルはプライマリー側の1本だけで済む。なお、入力データとしては384kHz/24bitまでサポートするが、左右間の伝送は96kHz/24bitとなるため、再生は96kHz/24bitとなる。

左右間の接続に使うUSBケーブルには、USB 3.0の規格に合わせつつ、KEFが自社で動作をチェックした「C-Linkスピーカー間ケーブル」という名称が付けられている。オプションとして今後、8mのUSB-Cケーブルも8,800円で販売予定。オプションとしては他にもデスクトップスタンドや、フロア用スピーカースタンドも用意している。

「LSX II LT」の背面

LSX II LTとLSX IIの音はどう違うのか

外側がLSX II、内側がLSX II LT

気になるのは、LSX II LTとLSX IIの筐体サイズが同じで、同じ第11世代Uni-Qドライバー、アンプを搭載するなど、共通点が多いので、サウンドも同じなのか? という点。

体験会の会場でLSX II LTとLSX IIを同じS1フロアスタンドに設置。同じボリューム値で、「ダイアナ・クラール/夢のカリフォルニア」を聴き比べてみた。

まずLSX IIから聴くと、同軸ユニットかつブックシェルフという特性を活かし、音場が広大に広がり、そこにボーカルや楽器がシャープに定位する。音像は立体的で、音はクリア。ただ、クリア過ぎて硬い音ではなく、女性ボーカルのホッとするような質感もしっかり描写できている。

小型のスピーカーながら、リアバスレフによる低域はパワフルで、ベースがグイグイとこちらに押し寄せてくるような音圧の強さを感じる。低音の響きも豊かで、モニタースピーカー寄りではなく、かなりドラマチックなサウンド。映画やゲームを聴いても、満足度が高いだろう。

LSX II LTに再生をチェンジすると、音のクリアさ、音場の広大さなど、基本的なサウンドの方向性は同じだ。ただ、まったく同じ音ではない。グイグイと低音が押し寄せるLSX IIと比べると、LSX II LTの低音は主張が控えめだ。ただ、ベースの沈み込みはしっかり描写できており、低音自体はちゃんと再生できている。どちらかというとLSX II LTの方が、タイトでモニターライクなバランスと感じる。

この違いはおそらく、LSX IIの方が左右個別に電源を供給しているのに対して、LSX II LTはプライマリー側にだけ電源があるという部分が大きそうだ。

ただ、どちらが良いか、悪いかという違いではなく、聴く距離によってマッチする機種が違うという印象。今回の試聴のように、広い部屋で、ある程度離れた距離で聴く場合は、空間をパワフルなサウンドで満たすLSX II、デスクトップ設置で比較的近い距離から楽しむのであればLSX II LTがマッチする……という印象を受けた。

前述の通り、LSX IIは左右スピーカー間をワイヤレス接続できるため、ケーブルの長さに縛られず、設置の自由度が高い。価格の違いはもちろんだが、どんな場所で、どんな風に聴くかで選ぶのがよさそうだ。

「幅広い人に原音再生を体験してほしい」

KEF JAPANのグレイス・ロー社長

KEF JAPANのグレイス・ロー社長は、60年以上の歴史を持つHi-FiスピーカーメーカーのKEFが、約10年前にアクティブスピーカーに参入した理由を、「世の中の、もっと幅広い人に原音再生を体験していただきたいと考えた」と説明。

「一般的に、Hi-Fiオーディオは男性の趣味というイメージがありますが、最高の音質を提供するという対象は、ジェンダーを超えられるはずだと考えています。また、この10年で、配信される音楽のクオリティや、ワイヤレスサービス、そしてスピーカーに内蔵するDSPは大幅に進化しており、これらよってストリーミングサービスが活性化し、それがユーザーの中に“音質へのこだわり”を芽生えさせている」と分析。

さらに「良い音を聴き分けられる耳を持っていないから、良いオーディオ機器を購入しても……と言う人は多いのですが、そんなことはありません。そういう方はまだ、良い音と出会うという体験をしていないだけ」と語り、昨年末に東京・青山に誕生した「KEF Music Gallery Tokyo」は、その体験場所としてオープンしたという。ここを拠点に、LSX II LTなど、KEFが追求する原音再生を、より手軽に楽しめる機器を訴求していく事をアピールした。

昨年末に東京・青山に誕生した「KEF Music Gallery Tokyo」
山崎健太郎