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KEFの“音響ブラックホール”搭載機が約8万円から!第9世代Qスピーカーをデスクトップで聴く

第9世代Qシリーズの小型ブックシェルフ「Q1 Meta」

革新的な技術や機能を搭載した製品が登場すると、テンションが上がる皆さん、こんにちは。私もそうです。しかし、ピュアオーディオの場合、「すげぇ!」と興奮する新技術が登場しても、価格を見たら「すみませんでした」とブラウザを“そっ閉じ”するパターンも多い。

そんな我々が待ち望んでいるのが、「ハイエンドモデルだけに搭載されていた“あの技術”が、手の届く価格の製品に降りてきた」時。9月26日から順次登場するKEFの「第9世代Qシリーズ」は、まさにそんなスピーカーだ。

注目ポイントは2つ。

1つは、“音響的なブラックホール”として機能するメタマテリアル吸音技術「MAT」を全モデルに搭載している事。

KEFが開発した「Metamaterial Absorption Technology(MAT)」

もう1つは、それでいて小型ブックシェルフの「Q1 Meta」(9月26日予約販売開始/10月10日発売)であればペア88,000円から購入できるリーズナブルな価格を実現している事。

Q1 Meta

MATとはいったい何なのか? それを搭載する事で音はどう進化したのか? まずは、最もリーズナブルで小型のQ1 Metaを、デスクトップオーディオで使ってみた。結論から言うと、この価格からは想像できないクオリティのサウンドに進化している。

さらに、Qシリーズのブックシェルフとしては最も大型となる、3ウェイの注目機「Q Concerto Meta」(ペア192,500円/9月26日発売)も聴いてみた。こちらはブックシェルフとは思えない低音再生能力も備え、ガチなピュアオーディオのメインスピーカーとしても活躍するクオリティを備えていた。

Q Concerto Meta

MATとは何か?

いきなり“音響的ブラックホール”とか言われても、凄そうなのは伝わってくるが、なんだかわからない。まずはMATに見ていこう。

御存知の通り、スピーカーユニットは、振動板が前後に振幅する事で音を出す。ただ、前方に向かって放出された音はウェルカムだが、振幅するという事は、当然後方に向かっても同じように音が出てしまう。

なんとかするために、通常のスピーカーはユニットを箱に入れて、内部にグラスウールなどの吸音材を入れる。後方に出た音を箱の中で吸音して、外に出さないようにするためだ。

MATは、この吸音材に代わる新たな技術で「Metamaterial Absorption Technology」の略だ。具体的には、写真の通り、円盤のようなパーツを開発。表面に迷路のような溝が作られているのがポイントだ。この溝はまさに迷路として機能し、ユニットの背面から出た音が、この迷路に入り込み、そのまま戻ってこない。それが“音響的なブラックホール”の正体だ。

MATのイメージ。このようにユニットの背後に配置し、背面から出た音を吸音する

この迷路、もちろん適当に作ったわけではない。複雑に入り組んだ各チャンネルが、特定の周波数を効率的に吸収するように計算して作られており、このチャンネルが組み合わさる事で、ドライバー後方の不要な音を吸収する。具体的には、ツイーターの後ろに配置すると、不要な音を99%吸収できるというから驚きだ。

一般的なスピーカーでは、ツイーター背面の音を処理するために、吸音材を使ったり、チューブ形状のパーツを背面に取り付けたりする事もあるが、それらと比べ、MATには利点がある。

1つは既にある素材を工夫して欲しい吸音性能に近づけるのではなく、求める吸音性能を発揮する形状を計算・設計で生み出せる事。2つ目は、プレート状のパーツを背面に置くだけでOKなので、省スペースで済むことだ。

このMAT技術は2020年に発表され、ハイエンドのRシリーズやThe Referenceのスピーカーに使われていたが、それが今回、リーズナブルな価格のQシリーズにも投入された。なお、今回のQシリーズに搭載されているMATは、Q用に再設計されたものとなっている。

KEFと言えば“Uni-Q”ドライバー

特徴はMATだけではない。KEFの代名詞とも言える“Uni-Qドライバー”も、MATと組み合わせるために再設計され、第12世代に進化している。

Uni-Qは、簡単に言えば「同軸型ユニット」の事だ。昔から、スピーカーの理想は“点音源”とされているが、ツイーターやミッドレンジ、ウーファーなど、複数のユニットを並べると、どうしても音が出てくる場所が“点”ではなくなってしまう。

それを理想に近づけようというのが同軸型ユニット。その名の通り、ウーファーとツイーターを同軸上に配置している。

第12世代Uni-Qドライバー

上の写真が、Q1 MetaのUni-Qドライバーを撮影したものだが、一見するとユニットは1つだけに見える。しかしよく見ると、中央の銀色の部分の中央に25mmのアルミニウムドームツイーターがあり、それを取り囲むようにドーナツ型の130mm径アルミニウムコーンのウーファーが配置されている。つまり、1つに見えるユニットが、2ウェイ・2スピーカーを重ねたものというわけだ。

黒いエッジの内側にある白い部分が130mm径アルミニウムコーンのウーファー。中央の花のようなパーツがウェーブガイド、その奥にあるのが25mmのアルミニウムドームツイーターだ

KEFが初めてUni-Qドライバーを設計し、特許を取得したのは1988年。そこから進化を重ね、最新は第12世代になった。進化点としては、ツイーターの背面にMATを配置し、そこに効率的にエネルギーが伝達されるように再設計。ツイーターのリア・チャンバー・ベント面積は250%拡大され、より多くの音がMATに到達し、その効果を発揮するという。

また、ドーム背面の音圧が大幅に低減される事で、ツイーターがよりリニアに動けるようになり、歪みを抑える事も可能になったそうだ。

ツイーターのギャップ・ダンパーも再設計されており、多孔質材料を使った2つのリングを配置。共振などを排除し、ディテールと透明度を高めた。ツイーターの周囲には円錐形のウェーブガイドも配置している。

このUni-Qドライバーをエンクロージャーに固定する方法も進化した。上位機で使っている「フレキシブル・デカップリング・シャーシ」を使うことで、ミッドレンジの振動がエンクロージャーに伝わらないようにしている。振動が伝わってしまうと、エンクロージャー自体が鳴いて、不要な音が出てしまうためだ。

Q1 Meta

リーズナブルな小型ブックシェルフであるQ1 Metaは、このUni-Qドライバーのみを搭載した2ウェイタイプ。背面にバスレフポートを設けている。外形寸法は180×277×302mm(幅×奥行き×高さ)。重量は6.1kgだ。

後ほど使うブックシェルフの上位機種Q Concerto Metaは、Uni-Qドライバーと165mm径のハイブリッドアルミニウムコーンウーファーを加えた3ウェイ構成。こちらもリアバスレフで、サイズは210×315×415mm(幅×奥行き×高さ)で9.5kgと、より背が高く、一回り大きい。

左からQ1 Meta、Q Concerto Meta
Q Concerto MetaのUni-Qドライバー

なお、Q1 MetaとQ Concerto Metaで搭載しているUni-Qドライバーの世代は同じだが、サイズが異なり、Q1 Metaは25mmツイーターと130mmウーファー、Q Concerto Metaは19mmツイーターと100mmミッドレンジという構成になっている。

背面のバスレフポートは、単なる丸い穴ではなく、CFD(数値流体力学)でモデリングする事で、雑音の原因となる乱流を抑える形状になっている。

背面のバスレフポート
背面のスピーカーターミナル

クロスオーバーネットワークも音質では重要な部分だ。エンジニアが、英メイドストーンにある無響室で、特注のリファレンス・マイクロホン・アレイを使い、各スピーカーを1,000回以上の徹底的に測定。その測定情報を活用したシミュレーションと試作を繰り返し、より正確なクロスオーバー設計を実現したとそうだ。

フロントパネルの上部には、KEFのロゴが入ったプレートが配置されている。てっきりデザインとして取り付けられているだけだと思っていたが、これも高音質再生のためだというから驚き。「シャドーフレア」と呼ばれるもので、キャビネットに音波がぶつかって発生する不要な回折を低減する効果があるそうだ。

KEFのロゴが入ったプレートには、キャビネットに音波がぶつかって発生する不要な回折を低減する効果がある
第9世代Qシリーズはブックシェルフのほかに、フロアスタンド型の「Q7 Meta」(左)と「Q11 Meta」(右)もラインナップされる。10月10日発売で、9月26日より予約販売を開始している

Q1 Metaをデスクトップで使ってみる

まず、シリーズで最もコンパクトなQ1 Metaを、パソコンと組み合わせてデスクトップスピーカーとして使ってみる。

前述の通り、Q1 Metaの奥行きは277mmと、デスクトップオーディオ用としては少し大きいが、今回使った机は奥行きが650mmあるので問題なく設置できた。近年はディスプレイを複数台設置するため、奥行きや横幅が長い机が増えているので、そうした机の方がデスクトップオーディオはやりやすいだろう。

なお、机にスピーカーを直接置くと、スピーカーの振動が机に伝わって、机自体から音が出たり、逆に机の振動がスピーカーに伝わるのでインシュレーターを挟むといいだろう。今回は手持ちのインシュレーターを使ったところ、より音像定位がクリアになったので、インシュレーター有りで試聴している。

Q1 Metaはパッシブスピーカーなので、アンプが必要。デスクトップオーディオなので、小さい事が重要で、できればUSB-DAC機能もあると良い……という事で、フォステクスの「PC200USB-HR」(26,400円)を用意した。外寸は95×86×52mm(幅×奥行き×高さ)と小さいが、15W+15Wのデジタルアンプと、96kHz/24bitまでサポートするUSB-DACを内蔵。バネ式のスピーカーターミナルも備えているので、Q1 Metaのようなピュアオーディオ用スピーカーを接続できる。天面に傾斜がつけられ、大きなボリュームノブを搭載していて、デスクトップでの使い勝手も良好だ。

フォステクスの「PC200USB-HR」

キーボードの両脇にQ1 Metaを設置。PC200USB-HRを接続し、パソコンのAmazon Musicアプリから、ハイレゾ楽曲をストリーミング再生してみた。

映画「天気の子」より、RADWIMPSの主題歌5曲フルバージョンを収録したアルバム「天気の子 complete version」から「グランドエスケープ feat.三浦透子」を再生。この楽曲は、ピアノソロからスタートし、女性ボーカルが入ってくるのだが、まずピアノの音のクリアさ、生々しさ、そしてその響きが広がる空間の広さに驚く。

そしてボーカルが出現すると、「うぉっ」と思わず声が出る。デスクトップの上、ディスプレイのさらに上に、本当に透明の歌手が出現したような生々しさだ。歌声が生々しいだけでなく、口を開く時のかすかな音や、歌い始める寸前に「スッ」と息を吸い込む音まで、細かな音が全て聴き取れる。この細かなリアリティが集結して「眼の前に本当に歌手がいる感」を生み出している。

「葬送のフリーレン」のサントラから「Journey of a Lifetime ~ Frieren Main Theme」を再生すると、眼の前に広大な空間が出現、そこでオーケストラが演奏していて、自分はそれを空中から見下ろしているような気分になる。

デスクトップオーディオというと「机の上でこじんまりと音楽を楽しむ」イメージがあるかもしれないが、Q1 Metaの音場の広さは、まったく違う。デスクトップという範囲を大きく超えた超広大な音場が展開し、そこに自分から頭を突っ込んでいるような感覚。サラウンドシステムなんていらないと思えるほどの、圧倒的な音場の広さで、開放的な気分で音楽が楽しめる。

前述の通り、Q1 Metaは同軸2ウェイのUni-Qドライバーのみを搭載したモデルで、ユニット構成としてはシリーズで最もシンプルだが、逆に言えば、スピーカーの理想と言える点音源の利点を最も体現していると言える。その効果こそが、この圧倒的な音場の広さだろう。

音色も極めてナチュラル。付帯音は少なく、固有のキャラクターはほとんど感じられない。人の声は生々しく、アコースティックギターは木の響きがしっかりと温かく、電子楽器の音は鋭くシャープと、音の違いを的確に描写している。高域はシャープで繊細だが、過度にキツかったり、輪郭を強調し過ぎるようなこともない。不要な音を抑えつつ、トランジェントの良さや音圧はしっかり活かしている。このあたりに、MATを搭載した効果が感じられる。

音楽を聴きながら、頭の位置を変えてみたり、椅子にもたれかかる角度を変えたりしたが、耳に入る音のバランスがほとんど変化しないのも素晴らしい。例えば、上部にツイーターを、その下にウーファーを搭載した一般的な2ウェイスピーカーの場合、ツイーターを見下ろすような角度で聞くと、高い音が多く耳に入り、逆に下から見上げるように聞くと低域が多く感じられたりする。

しかし、Uni-QドライバーのみのQ1 Metaの場合は、そうした変化がほどんど無い。これはニアフィールドで聴く、デスクトップスピーカーとしては大きな利点と言えるだろう。

逆に、Uni-Qドライバーのみでは、低域が不足するのでは?という心配もあったが、実際に聴いてみると、そんな印象はない。

「大橋トリオ&THE CHARM PARK/キャンディ」では、中低域の張り出しがパワフルで、大橋トリオの低い声が非常に心地良い。ギターとボーカルが重なっても、それぞれの音が明確に描き分けられるので、音楽の一体感を楽しむ事もできるし、意識を向けると1つ1つの音に注目する事もできる。自分の耳の性能が良くなったような感覚が味わえる。

「友成空/鬼ノ宴」では、冒頭のビートがしっかり深く沈む。胸で振動が止まらず、下っ腹まで「ズンズン」と沈む低音がちゃんと出ている。それでいて、低域にキレがあるため、聴いていると思わず体が動いてしまう。ニアフィールドでQ1 Metaだけ聴いていると、まったく不足感は無かった。

サランネットを取り付けたところ

Q1 Metaをスタンドに設置して聴いてみる

デスクトップを離れて、スタンドに設置して、より本格的に聴いてみよう。スタンドは、Qシリーズブックシェルフ向けに新たに開発された「SQ1 Floor Stand」(今冬より発売予定)を試用した。ソースはデノンのネットワークプレーヤー「DNP-2000NE」、プリメインアンプは同「PMA-A110」だ。

Qシリーズブックシェルフ向けに新たに開発された「SQ1 Floor Stand」

スタンドに設置して「ダイアナ・クラール/月とてもなく」を再生すると、同軸2ウェイ・ブックシェルフスピーカーの魅力がさらに開花する。

広大な音場が広がり、そこにボーカルやピアノ、アコースティックベースといった楽器が定位するのだが、その定位の明瞭さが素晴らしい。ボーカルなどは、口の位置を指でなぞれそうなほどだ。

先程のニアフィールド再生で感じられた、声の生々しさ、ブレスのリアリティといった細かな描写は、距離をとってのリスニングでもしっかりと味わえる。

デスクトップ再生での音場と比べると、スタンド設置では特に奥行きが深くなり、音場がより立体的に感じられる。

圧巻は「手嶌葵/明日への手紙」。冒頭のピアノパートから、音場が広大すぎて、一瞬とまどうほど。その空間の中央に、スッとボーカルが立ち上がり、口が空中に浮かぶ。高さがしっかり出ており、音像の位置が揺るがない。実力派ブックシェルフスピーカーの醍醐味のようなサウンドだ。

「米津玄師/KICK BACK」のような、激しい曲も聴いてみた。低域のトランジェントが抜群なので、ベースラインがタイトに描写され、非常に気持ちが良い。欲を言えば、もう少し低域に重さと音圧が欲しいところだが、これはこれでハイスピードで気持ちが良い。

コンパクトなブックシェルフなので、当然だが、地鳴りのような低音は出ない。だが、中低域はタイトに、キレ良く描写してくれるので、不足感はあまりない。日本の一般的な家庭では、低音が出すぎると近隣の迷惑になるため、逆にQ1 Metaは使いやすいスピーカーと言えるかもしれない。

ややモニターライクとも言える、優等生的な万能サウンド。個人の好みを超えて、幅広い人にオススメできるサウンドだ。

圧巻の低音、Q Concerto Meta

Q Concerto Meta

Q1 Metaのクオリティを体験すると、「これの上のモデルはどんな音なのだろう?」と興味が湧いてくる。そこで登場するのが、Uni-Qドライバーに165mm径のハイブリッドアルミニウムコーンウーファーを組み合わせた、3ウェイのQ Concerto Metaだ。

「米津玄師/KICK BACK」を再生すると、「うおおお」と一気にテンションが上がる。ベースラインの低音にズッシリと重さが出て、一気に音楽に凄みが生まれる。低音が増えた事で、全体のコントラストも深まり、よりクッキリとした音に聞こえる。

「ダイアナ・クラール/月とてもなく」を再生しても、ボーカルの低音がより深くなる事で、ドッシリした音となり、ボーカル自体に貫禄が出たように聴こえる。アコースティックベースも、木の筐体で増幅された響きが「ヴオン」とパワフルに押し寄せてきて、より聴いていてグッとくる。

Q Concerto Metaに搭載されているウーファーには特徴があり、ペーパー・コーン振動板の上に、浅く凹んだアルミニウム・スキンを載せた構造になっている。これが、低音のパンチとスピードを向上させるピストンのような動きをしつつ、剛性も高める役割があるそうだ。

ペーパー・コーン振動板の上に、浅く凹んだアルミニウム・スキンを載せた構造のウーファー

また、ちょっとマニアックな話になるが、従来のQシリーズの上位機種は2.5ウェイだったが、今世代から3ウェイになった。Uni-Qドライバーが高域と中域を担当し、そこに低域用のウーファーを組み合わせるというカタチだ。各周波数帯域に合わせて、最適化したドライバーが使えるため、1つのドライバーにかかる負担を低減でき、各ドライバーが、その性能をより発揮しやすくなっているようだ。

Q Concerto Metaは、総じて「さすが上のモデルだけはある」という迫力のサウンドだが、比較して、Q1 Metaの方が優れていると感じる部分もある。それは、音像定位のクリアさだ。

Q1 Metaは、ビシッと輪郭にフォーカスが合い、それがシャープなのだが、Q Concerto Metaの場合は輪郭が少し太く、フォーカスが甘くなる。それよりも、全体的なスケール感の豊かさで聴かせるサウンドだ。

大編成クラシックやジャズ、映画のサントラなどをスケール感豊かに楽しみたい場合はQ Concerto Metaを、ボーカルがメインで、低音はそれほど必要じゃないという場合はQ1 Metaを選ぶと良さそうだ。

また、個人的にQ Concerto Metaは、ちょっと低域が出過ぎとも感じる。そんな時は、背面のバスレフポートに入れて、低音を調整できるスポンジを同梱しているので、それを入れてみると良いだろう。

バスレフポートに付属のスポンジを入れて、低域を調整できる

「プリンス/レインボー・チルドレン」を聴きながら、スポンジをキッチリと全部入れてみると、擬似的な密閉型となり、低域の量感がかなり抑えられる。近隣への影響が気になる場合は、こうすると良いだろう。疑似密閉状態にしても、Q1 Metaよりもパワフルな低音は出ている。個人的には、スポンジを入れたサウンドの方が好みだ。

もう少し低域を出したい時は、スポンジの内部がくり抜かれているので、外側だけをポートに入れれば、理想的なバランスになるだろう。大事なポイントは、「たっぷり出る低音を締めることはできる」が、「もともと出ていない低音をあとから出す」のは無理ということ。ここにQ Concerto Metaの魅力があると言ってもいいだろう。

ポータブルオーディオファンのスピーカー入門にも

Q1 Meta、Q Concerto Metaを両方聴いて感じるのは、第12世代Uni-QドライバーとMATが生み出す、明瞭な定位と、中高域のナチュラルで色付けの少ない高解像度サウンドの魅力だ。

細かな音の描写が細かく、雑味が無く、ダイレクトに情報量の多さが味わえる。この感覚は、高級ヘッドフォンを聴いている時にも似ている。それでいて、ヘッドフォンではなかなか味わえない、前方に展開する広大な音場や、そこに触れられそうなほどリアルに定位する音像といったブックシェルフスピーカーならではの体験もできる。

そういう意味で、今までポータブルオーディオをやってきたけれど、スピーカーには手を出していなかったという人にも、新たなQシリーズはオススメ。特にペアで約8万円で購入できるQ1 Metaは、ピュアオーディオへの入口として最適。一気により本格的な世界を体験したいのであれば、Q Concerto Metaも候補になる。

すでにスピーカーを使っているが、ちょっと古めだという人も、最新のQシリーズを聴くと、最新技術が生み出す情報量の多さに、きっと驚くだろう。

じっくり試聴したい時は直営店が便利

東京・青山にある直営店KEF Music Galleryでは、今回使ったQ Concerto Metaを実際に見たり、試聴もできるとのこと。試聴予約をすれば、じっくり試聴も可能なので購入を検討している人はぜひ。公式オンラインストアでは、Qシリーズ全モデルを取り揃えている。

KEF Music Gallery
https://x.gd/411GP
公式オンラインストア
https://x.gd/xcBIx

山崎健太郎