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北野武「Broken Rage」14日配信開始。「自分の映画のキャリア自体を“壊す”」

(C)2025 Amazon Content Services LLC or its Affiliates.

2月14日よりプライムビデオで世界独占配信される、北野武最新作のAmazon Original映画「Broken Rage」。“暴力映画におけるお笑い”をテーマに制作された作品だが、去る2月5日に配信記念記者会見が開催されレポートが到着した。

会見には、監督・脚本・主演を務めた北野武氏をはじめ、「SHOGUN 将軍」で第82回ゴールデングローブ賞・助演男優賞を受賞し、本作では主人公のねずみを麻薬捜査の覆面捜査官として捜査協力させようとする井上刑事役を演じる浅野忠信氏、「Dolls(ドールズ)」(、「アキレスと亀」、「アウトレイジ 最終章」、「首」に続き5度目の北野作品への出演で本作では井上刑事とコンビを組む福田刑事を演じる大森南朋氏、そして麻薬売買を取り仕切るヤクザの若頭・富田役の白竜氏、クスリの売人役の國本鍾建氏ら、キタノ組常連俳優陣5名が登壇した。

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北野監督は登壇すると、「Amazonという会社の配信ということで、お茶の間でみる映画とはどういうものかと悩みまして、かなり実験的なものを作らせてもらおうと思って、無理な相談ですがAmazonの方にお伺いしたらやって構わないということで実現できました。劇場とテレビというのは意識していなくてもやはりこれだけ違うものになってしまうのかと。映画が完成した後、エンターテインメントは見る方も作る方も環境が変わると、内容もこれほど変わってしまうのかとつくづく分かるようになりました」と、自身が“実験作”と称する本作の制作を振り返って語りました。

そんな北野監督からオファーを受けた浅野氏は、「このお話を頂いた時に、『首』の作品の中でも監督と大森さんとやらせて頂いていたので、これよりも先にいけるんじゃないかと期待がありましたし、台本を読んだ時に『これは予想以上にすごいものになるな』という風に思いました」とコメント。

続けて「シリアスなパートもコメディのパートも読み直していると本当におもしろくて、面白いと同時に現場でも更なるハプニングが生まれるんじゃないかと不安と期待が入り混じっていました。現場では本当に緊張しましたし、新しいことをやって鍛えられた部分もありました。そばに大森さんと監督がいてくれたので楽しむことができました。」と語った。

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本作で5度目の北野監督作品出演となる大森氏は「監督の作品に呼んでいただくことは幸せなことです。監督の前で”笑い”をやるプレッシャーたるや、僕も浅野くんもハンパない緊張感の中でやっていて、『特にウケなかったけどまあオッケーか……』みたいなことを繰り返しながらですが、本当に現場に行くのが楽しくて幸せな時間でした」と明かし、「最後に浅野くん、ゴールデングローブ賞受賞おめでとうございます」と、浅野氏にメッセージを贈った。

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白竜氏は「北野監督の作品にはたくさん出させて頂いているんですが、今回も『(監督に)お任せします』と。監督に『いくらでも料理してください』という気持ちでやらせていただきました。現場は和気あいあいとしていて、楽しい現場でした」と振り返った。

國本氏は「監督からのオファーはいつでも嬉しい気持ちになって幸せな心もちになります。ただただ感謝の気持ちに尽きます。」とキタノ組の“新たな試み”に参加できた喜びを明かした。

『Broken Rage』予告映像|プライムビデオ

本作は日本の配信映画として初めてベネチア国際映画祭に正式出品され、鑑賞後の観客からは熱狂と共に惜しみない拍手と歓声が送られ、鳴り止まないスタンディングオベーションを北野氏自ら制止するほどに大絶賛と高い評価を受けた。

北野監督とともにベネチア国際映画祭に登壇した浅野氏は「僕も皆さんがどうやって見るのかを本当に楽しみにしていたんです。シリアスパートが始まった時はキタノ映画を観るテンションを感じていたんですけど、Bパートが始まって皆が最初に笑ったとき、いきなり劇場の雰囲気が変わって、アットホームな感じになったんです。家族で同じおもしろい映画を観ているような感じになって、僕も一緒になって笑っていました」と、肌で感じた観客の熱い反応を明かした

大森氏は「劇場に入るところで武さんのファンがたくさんいらっしゃっていて、サインしてくれと写真を差し出すんです。僕のもたまにあるけど、『サインください』と差し出されたのは浅野君の写真だったんです。大森って書いておきました、(笑)」と、ベネチアで起きたまさかの出来事を話して会場を笑わせた。

記者会見では、会場に集まったメディアによる質疑応答も行なわれた。本作は約60分の映画を前半と後半のパートに分けており、前半では、警察とヤクザの間で板ばさみになった殺し屋が生き残りをかけて奮闘する骨太のクライムアクションが描かれる。そして後半は、前半と同じ物語をセルフパロディという手法を使いコメディタッチで描かれている。

そうした“「世界のキタノ」による映画としての新たな試み”について質問されると、北野監督は「編集する前は2時間半くらいあるかなと思っていたし、映画館で上映する作品ならもう5秒延びるところもあるなと思ったけど、お茶の間で見る感覚で編集したらだいぶ短くなったんです。同じテンションで撮っているのに、これだけ変わるのかと思いました」と明かした。

また、北野監督の代表作のひとつである「アウトレイジ」シリーズを彷彿とさせる“本作のタイトル『Broken Rage』に込めた想い”について聞かれると、北野監督は「おかげさまで『アウトレイジ】シリーズはそれなりの成功を収めたので、暴力映画としては自分なりに昔のヤクザ映画じゃない、現代的な映画が撮れたと思っているんですけど、それに対するパロディという意味もあります。自分の映画のキャリア自体を“壊す”という意味で、タイトルにつけました。あまり深い意味はないんですよ」と、北野監督の挑戦作となった本作のタイトルに込めた想いを明かした。

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海外メディアからの“これまでのお笑いでのキャリアが映画監督としてどう生かされているか”という質問に対して、北野監督は「映画は総合芸であって、音楽や美術や歴史やあらゆる要素を含んでいるから映画は面白いと思う。小説で細かく書こうが、映像で一瞬見せたらすべて分かってしまうこともある。映画は総合芸術の中で、今はNO.1だと思っていますが、それに関われて仕事にできているのは非常に嬉しいことで、今考えればコメディアンとして舞台に立っていたことやいろんなものを経験していたことが、最終的に映画に繋がってくるなと。今、自分が楽しめる一番のエンターテインメントは映画だなと思います」と答えた。

また、北野監督は「映画自体は無声映画から始まって、その前には8コマとかの時代があって、70ミリになったり、音響効果があったり、ネズミを放したり、映画がお客さんを楽しませるために努力したり無茶をやった時代があった。映画を撮っている時は我々もお客さんを楽しませることを意識していますし、見せ方もいろいろ考える。今までは劇場に足を運んでくれるお客さんを対象にしてばかりいましたが、これだけ発達した時代にエンターテインメントはどういう方法をとるのかなと、過渡期というか試されている時期なので、その渦中にいる我々はいろいろチャレンジしたいと思っています」と、映画監督としてこれからのエンターテイメントの可能性について語った。

会見の最後に、北野監督は「自分としてはかなり実験的な映画なんですけど、グレードとしてはひどくない。すごいとも言いませんが、あまり損したとは思わないだろうという感覚です。おかげさまでここにいる役者さんたちが上手くて、一生懸命やってくれたので映画としての形にできましたし、この映画の目指すところはまた違う映画として花咲くと思います。できたら、是非見てほしいと思います。」と本作の配信を楽しみにしている人々に向けてメッセージを贈った。