VOCALOID情報を発信するイベント「ボカファーレ」開催

-「鳥の詩」Liaの声を使ったIA他。がくっぽいどのV3版も


ニコファーレでイベントは行なわれた

 ドワンゴは16日、東京・六本木にあるニコファーレで、VOCALOID関連の情報を紹介するイベント「vocafarre(ボカファーレ) ~第0章~」を開催。ヤマハが発売した「VOCALOID 3」に関連した、音声ライブラリキャラクターについての新情報が発表された。

 今回のイベントは、その「VOCALOID 3」に対応した音声ライブラリをメインとしており、2011年冬から2012年春にかけて登場するキャラクター達が紹介された。

 12月16日にヤマハから発売されるのが「SV01 SeeU」(シユ)と「兎眠りおん」(とねりおん)。さらに、VOCALOIDを使った楽曲を投稿している有名クリエイター(ボカロP)達の、VSQデータを収録した「ボカロPデータシリーズVol.2」(3,000円)も発売される。


 「SV01 SeeU」(ライブラリ単体14,800円/スターターパック21,800円)は、史上初となる韓国生まれのキャラクターで、2012年デビュー予定のK-POPガールグループ「GLAM」のメンバー、ダヒさんが声を担当している。日本語だけでなく、韓国語にも対応した初のバイリンガルVOCALOIDとなっており、声の特徴は「低音域ではハスキー、高音域では澄んだ声で歌う」という。

SV01 SeeU2012年デビュー予定のK-POPガールグループ「GLAM」のメンバー、ダヒさんが声を担当しているSV01 SeeUのパッケージ

 「兎眠りおん」(ライブラリ単体9,800円/スターターパック17,800円)は、秋葉原に店舗を構える、秋葉原ディアステージで働く新人アイドル。ディアステージが企画・制作し、制作・製造・販売はヤマハが担当する。発表会にはモエ・ジャパンの福嶋麻衣子社長(通称:もふくちゃん)が登場。りおんの歌声について「幼く、可愛い感じのする、他にはない萌え系の声です。いろんな歌を歌わせてあげてください」とアピールした。

右のキャラクターが兎眠りおん。左はモエ・ジャパンの福嶋麻衣子社長モエ・ジャパンの福嶋麻衣子社長キャラクター達の紹介は、ヤマハのyamaha+推進室の大島治技師補が担当した

 サードパーティー製製品として、12月22日にインターネットから「CUL(カル)」(ライブラリ単体11,340円/スターターパック17,640円)、AHSから「結月(ゆづき)ゆかり」(ライブラリ単体11,800円/スターターパックなし)が発売される。

 「CUL」は、声優の喜多村英梨さんの声を元に制作された音声ライブラリ。「低域から中高音域まで、パワフルに、様々なジャンルに合わせて歌える」という音声ライブラリ。ユーザー登録者には、ミックス専用ソフト「OPUS Express for Windows」がプレゼントされる。声質について、インターネットの村上昇代表取締役は「喜多村さんの地声で収録していて、ロックでパワフルな声になっている。今後は喜多村さんのラジオ番組とも、何か一緒にできないかと考えている」という。さらに、喜多村さんもビデオメッセージを寄せ、「どんどんCULちゃんを使って、いろんな曲を作って欲しい」とコメントした。


CUL。ロックやパワフルな楽曲を得意とする声優の喜多村英梨さん

 また、インターネットでは「Lily」(名称未定)のVOCALOID 3用ライブラリも来春発売に向けて開発中。価格はライブラリ単品が11,340円、スターターパックが17,640円の予定。「VOCALOID 2のLilyから、“さらに人間らしく”をテーマに、声の収録もやり直している」という。さらに、「がくっぽいど」のVOCALOID 3用データも「春過ぎ頃に予定している」とのこと。こちらも声は新録で、既に収録は済んでいるという。

インターネットの村上昇代表取締役発売中のメグッポイドについても紹介が行なわれ、声を担当した中島愛さんもビデオレターを寄せた

 「結月ゆかり」は「情感豊かな表現、スローバラードも歌い上げられる事をテーマに開発した」(AHSの尾形友秀代表取締役)という。さらに、商品には、ブレス、補助子音、笑い声、吐息など400種類以上追加した音声素材「exVOICE」や、サンプル楽曲データ集も付属する。

 1st PLACEが企画・制作・製造し、2012年1月27日に発売されるのは、「Air」の「鳥の詩」などで知られるアーティスト・Liaの声をサンプリングしたキャラクター「IA」(イア/ライブラリ単体12,800円/スターターパック19,800円)。音声ライブラリだけでなく、「鳥の詩」のVSQXや、インスト版WAVファイルも付属。クリエイター陣によるコンピレーションアルバムも同梱される。

結月ゆかり
Liaの声をサンプリングしたキャラクター「IA」

 アニメスタジオのスタジオディーンと、サーファーズパラダイスによる「i-style Project」で生み出されたのが、2012年4月上旬の発売を予定している「蒼姫ラピス」(あおきらぴす/ライブラリ単体1万円前後/スタータパック2万円前後/いずれも予価)。名前や、声の担当者も公募する企画で、声の担当が福岡在住の江口菜子さんに決定した。江口さんは「VOCALOIDには可愛くて、カッコイイキャラクターが沢山いますが、ラピスちゃんが一番可愛いです! 発売されたら沢山の人に使って欲しいと思います」と、ビデオメッセージを寄せた。

蒼姫ラピス蒼姫ラピスの声を担当する江口菜子さん

 さらに、「みんなのボカロ計画」から誕生した「Ring Suzune」というキャラクターは、有志による「VOCALOID NEXT」という企画に引き継がれる形で開発が進められており、今後のイベント等で情報が発信されていく予定。ステージには声を担当したDaisy×DaisyのMiKAさんが登場。「Ring Suzune」を題材としたゲームも開発されているとのことで、ゲームは歌詞をプッシュしていくタイプの「音ゲー」になるという。

Ring Suzune
Ring Suzuneを題材としたゲームのPVDaisy×DaisyのMiKAさん


■ヤマハによる有料の使い方講座も

 イベント冒頭では、VOCALOIDの生みの親でもある、ヤマハのyamaha+推進室の剣持秀紀 主管技師が、VOCALOID 3の特徴を解説。

 従来バージョンでは、楽曲制作ソフトのVOCALOID Editor(主に入力などのインターフェイス部分)と、歌声ライブラリ(歌手などの声のデータベース)を一体化した形でコンシューマに販売(クリプトン・フューチャー・メディアの初音ミクなど)されていたが、新バージョンからはそれぞれ分離して販売。ユーザーは1つのEditorをベースに、様々な歌声ライブラリを選択して追加できるようになったのが大きな特徴。

VOCALOIDの生みの親でもある、ヤマハのyamaha+推進室の剣持秀紀 主管技師がVOCALOID 3を解説

 ほかにも、より使いやすいユーザーインターフェイスを導入。剣持氏はその場でアニメ「キューティーハニー」のオープニングの歌詞を打ち込み、伴奏ファイルと組み合わせて再生するデモも実施。誰でも手軽にVOCALOIDに“歌わせられる”ツールである点をアピールした。

 さらに、編集機能を拡張するものとして、「VOCALOID Job Pluguin」機能も紹介。例えばスタッカートやレガートといった歌声の表情を加える作業などが、外部プラグインで可能になるもの。既存のプラグインを使うだけでなく、VOCALOID STOREから開発ツールをダウンロードし、自作する事も可能で、ユーザーが作成したプラグインをアップロードする機能もSTOREには備わっている。このサービスは16日から開始されている。剣持氏は「ベタ打ちした歌詞に表情を追加したり、歌詞を入力するだけでメロディを返してくれるプラグインなど、様々なものが考えられる」と可能性の広さを強調。

「VOCALOID Job Pluguin」で、機能拡張が行なえる

 さらに、人間の歌声から、歌声合成のパラメータを自動推定する「VocaListener」も、プラグインとして開発中だという。他にも、VOCALOID 3用のアップデータ3.0.3を近日中に配布する計画も明らかにした。

 また、ヤマハでは、VOCALOID 3の使い方を解説するオンラインの有料講座「VOCALOID Lesson online」も実施中。動画で使い方を紹介するだけでなく、VSQXデータもダウンロード可能。有名ボカロPもゲスト講師として登場し、データをみながら使いこなし方法などが会得できるという。10月末から開始されており、「今後はVOCALOIDだけにとどまらず、DTM講座などにも手を伸ばしていきたい」(ヤマハ)という。

会場には、第一興商のカラオケで、VOCALOIDの人気楽曲を歌う事もできる「LIVEDAM」の特別モデルが参考展示。ソフトウェアで動作するVOCALOIDをハードウェアのチップに落とし込んだもので、これをカラオケ機会に接続。VOCALOIDのVSQXデータを読み込ませ、「LIVEDAM」で歌わせられるという装置になっている。商品化や、実際のカラオケボックスでの展開などは予定されていないが、可能性の一つとして参考展示しているという


■AR技術を駆使したライヴも

 イベントの第2部として、前述のVOCALOIDキャラクター達が登場するライヴも開催された。会場では、IMAGICAの「ライブグラフィックスサービス」と、プレミアムエージェンシーの「LiveAR」を活用。ライブ会場で撮影している映像に、VOCALOID 3キャラクターのCGをリアルタイムで付加し、会場のスクリーンおよびニコニコ生放送にて、キャラクターが現実にライヴをしているかのような映像が繰り広げられた。

TRFのSAMさんも登場。2010年のデジタルコンテンツエキスポで、VOCALOID技術で歌い、ダンスも披露した二足歩行ロボ「HRP-4C」の振り付けを担当した事が縁で、今回のARダンスのプロデューサーも担当。「リアルな人間以外の振り付けをする面白さにハマっている」とのこと今回のライヴではCGキャラクターをリアルタイムで動かす試みが行なわれた会場に表示された映像。VOCALOIDキャラクターがセンターで歌っているように見える
実際の会場。バックダンサーのみで、VOCALOIDキャラクターは存在しないギタリストの肩にキャラクターがちょこんと座るという演出も会場が突然、コンビニのローソンに!?
ローソンのVOCALOIDこと、あきこロイドちゃんが登場メグッポイドの登場で会場&ニコ生視聴者のボルテージは最高潮にあきこロイドちゃんとメグッポイドの夢の共演も実現!!

(2011年 12月 16日)

[AV Watch編集部 山崎健太郎]