ヤフー、動画配信をGyaOに統合。有料/無料の2サービスに
無料で初の「時かけ」も。TV局と協力しユーザー拡大へ
ヤフー株式会社は7日、無料動画配信サイト「GyaO! Presented by Yahoo! Japan」と、有料配信サイト「GyaO! ストア Presented by Yahoo! Japan」の2サービスを開始した。対応OSはWindows XP/VistaとMac OS 10.4.8以降。
ヤフーは4月に株式会社GyaOの株式を取得、子会社化しており、秋にYahoo! 動画とGyaOを統合すると予告していた。新サービスにより、従来のYahoo! 動画は終了し、新サイトに引継がれる。なお、携帯電話や家電機器向けなど、パソコン向け以外で展開している配信サービスについては変更は無く、今後はGyaOでのマルチプラットフォーム展開も検討するとしている。
ヤフー子会社の株式会社GyaOが運営していた無料動画配信サービスをリニューアルして、有料動画販売と2サービスで展開。「Yahoo! 映画トピックス」などYahoo! Japanの各サービスと連動することを特徴としている。
無料配信の「GyaO! Presented by Yahoo! Japan」 | 有料配信の「GyaO! ストア Presented by Yahoo! Japan」 |
もう一つの大きな特徴として打ち出しているのは、テレビ局との連携。各局の映像作品が両サイトに提供され、インターネット初配信となる映画「チャーリーとチョコレート工場」や海外ドラマ「フレンズ シーズン5」などのほか、劇場アニメ「時をかける少女」など初めて無料配信される作品、独占先行配信のGLAYライブ「GLAY 15th Anniversary Special Live 2009THE GREAT VACATION in NISSAN STADIUM」(一部楽曲)なども用意する。配信番組数は、有料版が1,400番組、無料が約1,300番組。単品販売と、ドラマ/アニメなどの複数話セット販売を用意し、料金はコンテンツにより異なる。
配信サービスを有料/無料で分けたことにより、無料版でドラマの冒頭話を配信し、続きを有料サイトで販売するといった方式が採られるほか、「理想形としては、無料が新着/期間限定コンテンツ、有料が古くからのアーカイブコンテンツを観られるようにしたい」(株式会社GyaOの川邊健太郎社長)とする。
配信には、有料/無料版とも、マイクロソフトのWebブラウザプラグイン「Silverlight」の最新版である「Silverlight 3」を採用し、ブラウザ上でストリーミング視聴する。採用の理由としてはセキュリティの高さと、既存のWMVコンテンツを再エンコードする必要が無いことなどを挙げている。映像は有料版/無料版ともに解像度640×480ドット/768kbpsのみで、全画面再生には非対応。高画質化については今後検討するとしている。
マイクロソフトのSilverlight最新バージョンを採用しており、Macでも視聴できる |
既報の通り、フジテレビと日本テレビがGyaOに出資することも決まっており、他の局との連携も目指す。有料版には、フジテレビの運営する配信サイト「フジテレビ on Demand」とTBSの「TBSオンデマンド」も出店。今後はテレビ朝日の「テレ朝動画」の出店も予定する。
さらに、ページのUIも見直され、多くのコンテンツが盛り込まれた従来のGyaO! トップページの見せ方から、特集などを中心に見せることでよりシンプルに作品の持つ魅力を伝えるように変更するという。
■ 「“動画”ではなく“映像”を配信する」
「Yahoo! 映像トピックス」と連携し、動画への誘導を図る |
新サービスの開始により、これまでのGyaO! のメインユーザー層だった30~40代を維持しつつ、新たなターゲットとして20代を意識するという。目標ユニークユーザー数は「早い段階で1,000万~2,000万」とし、2010年の早い段階で単月黒字を目指すとしている。
他のYahoo!のサービスとの連携については、1つとして8月26日より開始されたばかりの「Yahoo! 映像トピックス」をYahoo! Japanのトップページに配置して、話題の最新映像をピックアップ。このページは他社の配信を含めた動画ポータルサイトで、その中にGyaO! の無料版への誘導を設け、GyaO! ストアでの視聴にもつなげる狙い。
新サービスのキャッチコピーは「探さなくて良いシンプルさ、ワンクリックで視聴できるシンプルさ、シンプルだけどリッチな映像サイトで、生活はより豊かに」。
GyaOの川邊健太郎社長 |
両サイトの統合発表からちょうど5カ月でスタートを迎えた新サービス発表会で、株式会社GyaOの川邊健太郎社長が配信事業についてのビジョンを説明。「これまでのテキスト/静止画がメインのネットを、映像の力でバージョンアップさせたい」と意気込みを語り、「より五感に訴えかけるメディアになる」とした。
また、川邊氏はこだわりとして「動画、という言葉には、“素材”というイメージと、“投稿サイトの違法なコンテンツを含めたもの”が定着しており、我々がこれから提供する合法なコンテンツのビジネスとは違う。このことから、“映像”または“映像作品”という言葉を意識して使い、プロが作った作品を提供するということを事業の中核に据えていく」と主張した。
“プロのコンテンツ”を配信していくために、テレビ局との今後強めていく連携の具体策としては、放送直後の見逃し配信を有料/無料で行なうことや、共同プロモーションやショッピング企画などを例として挙げた。また、テレビ局が運営している配信事業への配信プラットフォーム提供についても協議しているという。
動画配信に関するGyaOのビジョン | ターゲット層は20代の男女を想定 | テレビ局との協力による企画も予定する |
無料動画配信の要となるCMの方法についても見直され、「テレビに出す広告と、ネットに出す広告は、広告主の視点から見て全然違って当然。そのことを我々がわかっていなかった」と反省の弁を述べ、「ネットだからできること」として、ユーザーの興味や関心に合わせたターゲット型の配信を行なうほか、Silverlightを活かして動画の脇や下に広告を見せる「インタラクティブビジョン」などを展開する。
広告でも既存サービスからの刷新を図る | 「インタラクティブビジョン」の例。動画の脇や下に表示され、同社は「ながら広告」としている | 映画コンテンツを供給するワーナーや角川、Silverlightを提供するマイクロソフトの代表者も来場。川邊社長と手を取り合った |
(2009年 9月 7日)
[AV Watch編集部 中林暁]