【CES】大手メーカー以外にも広がる3Dテレビ
-Broadcomは簡易地デジチューナ用LSIなど展示
Samsung、ソニー、パナソニックなど大手メーカーが相次いで、春から夏の製品投入を明らかにした3D対応テレビ。プラズマで先行するパナソニック、液晶のソニー、双方を手掛けるSamsungと違いはあるが、大手メーカーが早期の市場投入に向け、しのぎを削っている。
ソニーはストリンガーCEOが3Dの本格対応をアピール | パナソニックは春にプラズマVIERAで3D対応 | Samsungは10モデル以上の3Dテレビを一斉発表 |
しかし、Blu-ray 3Dの規格化から取り組んできた先行メーカーだけでなく、北米で液晶テレビトップシェアを謳う、VIZIOも8月の3Dテレビ参入を表明。さらに、中国のTCLやHisenseなどのメーカーのブースでも、3D対応テレビは展示されている。多くのメーカーは参考展示にとどめているが、例えばVIZIOは3D対応の「XVTPRO720SV」を8月の発売を予告するなど、製品化の時期はかなり早い。
技術的には、ほぼすべてのメーカーが、240Hzもしくは120Hzの液晶パネルと、アクティブシャッター方式を採用しているため、液晶テレビの3D方式としてはほぼこの方法で固まったといえそうだ。なお、プラズマの発売を予定しているのはパナソニックとSamsung、LGで、こちらもアクティブシャッターメガネを利用する。
VIZIOの「XVTPRO720SV」は8月発売で、LEDバックライトの部分駆動にも対応する | Hisenseの3D液晶テレビ | TCLも240Hzパネルとアクティブシャッターメガネの組み合わせ |
今回展示していたHisenseも製品化を前提としたプロトタイプとしていた。3D対応に必要な部材の供給拡大も見込まれるため、対応製品を早期に市場投入することは可能だという。これらの展示機では、輝度が今一つのものもあったが、クロストークもさほど感じず、十分に3D映像が体験できる(ただし、コンテンツは大手メーカーと比べるとかなり物足りないが)。
東芝はCELL TVで2D-3Dリアルタイム変換を実現 |
もちろん、長期の技術開発の蓄積やシャッターメガネにおけるノウハウなど、先行したメーカーのほうが、画質にアドバンテージはあるだろう。しかし、CESの会場を見る限り、こうした先行メーカーでなければ3Dテレビを発売できないという状況では無いようだ。逆にいえば、付加価値モデルの一機能として対応メーカーが増えることで、3Dが定着する可能性は高くなったといえるかもしれない。
また、Samsungやソニーは2D映像から3Dへのリアルタイム変換機能を付ける予定。東芝はCellの演算能力を使った、3D変換を計画しており、このあたりも今後の「3Dテレビ」の一つの差別化ポイントとなるだろう。
また、PC系の展示においてもLGやSamsungが120Hzのディスプレイを使った3Dを訴求。また、GPU(Graphics Processing Unit)メーカーのAMDやNVIDIAもパソコンでのGPUアクセラレーションを使った3Dを訴求するなど、様々な領域での3Dの立ち上がりが確認できる。
AMDはサイバーリンクの3D対応PowerDVDとGPUアクセラレーションを使った3D映像再生をアピール | LGはPCゲームを使った3Dディスプレイのデモ |
■ Broadcomは低価格地デジチューナ向けLSIなど
BCM7530 |
テレビやデジタル家電向けの半導体を手掛けるBroadcomは、プライベートブースで様々なデジタル家電用ソリューションを展示している。
今回CESで発表したのは、地上デジタル放送の簡易チューナ用のSoc(システムオンチップ)ソリューション「BCM7530」。これは、Dpaの地上デジタル簡易チューナ仕様に則った地デジチューナ用に開発したもので、地デジ移行に向け、既存のCRTテレビなどに接続する簡易チューナの市場が2011年7月までに約1,000万台までに拡大すると予測し、開発したとのことで、すでにメーカー向けのサンプル出荷を開始している。
ISDB-TチューナからMPEG-2 TSデコーダなどをワンチップに統合。ソフトウェアについては、富士ソフトの「FSDTV Middleware Slim」を採用しており、短期間で安価な地デジ簡易チューナを実現可能としている。EPGや省電力機能なども装備している。
また、MPEG-4 AVC/H.264デコーダやDVR機能、HDMI出力機能を備え、ブラジルのデジタル放送にも対応可能という「BCM7540」も発表している。
富士ソフトの「FSDTV Middleware Slim」で各種地デジ放送の機能に対応 | ブラジルのデジタル放送対応の「BCM7540」 |
DLNAベースのホームネットワークソリューションも展示。Broadcomのほか、CISCO、DirecTV、Samsung、Verizonなどにより、提案されている「RVU Alliance」の仕様に則り主にCATV用STBなどでの利用を想定しており、サーバー用のSoC「BCM7420」、クライアント用の「BCM97408C」などを組み合わせて利用する。
利用方法としては、サーバー側のSTBで録画や蓄積した映像や写真をDLNA経由で再生するだけでなく、メインSTBのメニュー画面や受信したチューナ映像も、別のクライアント用STBへIPで家庭内配信できる。このため、2台目のSTBを簡易化でき、一方ユーザーにとっても同軸ケーブルを引きまわす必要が無いため、CATV事業者を中心に訴求を図っていくという。
RVU Alliance仕様のDLNAによるSTB共有のデモ。サーバーSTBのUIやチューナ映像を直接、クライアントSTBから呼び出し可能となっている | サーバーのリファレンスデザイン | サーバーと同じUIやライブ映像を、クライアント側からも呼び出せる |
また、同社LSIを使った3Dデジタルテレビや、3Dテレビ用のフレームレートコンバータなどの技術も展示。「BCM7630」などBlu-ray Discプレーヤー用LSIの機能のデモも実施。SamsungやLGだけでなく、日本メーカーでも採用例があり、BD向けのSoCシェアとしては世界一という。BD再生やBD-Liveなどの基本的なBDプレーヤー機能だけでなく、NetflexやYouTube、VUDUなどのサービスに対応するためのネットワーク機能についても提供している。
3Dテレビのデモ | SamsungやLGのBDプレーヤーにもBroadcomのLSIが採用されている | 中国のデジタルテレビ向けLSIも提供している |
(2010年 1月 11日)
[AV Watch編集部 臼田勤哉]