「ケーブルテレビショー 2010」開幕。BD対応STBも

-パイオニアはWAVC録画やHDD交換型など。3Dも訴求


会期:6月24日~26日

会場:池袋サンシャインシティ


 国内ケーブルテレビ業界で最大規模の展示会「ケーブルテレビショー 2010」が、東京池袋のサンシャインシティ 展示ホールで開幕した。期間は6月24日から26日まで。主催は日本ケーブルテレビ連盟と日本CATV技術協会、衛星放送協会。入場は無料。

 昨年までは東京お台場の東京ビックサイトで開催していたが、今年は池袋に移動し、土曜日開催を復活した。「一般生活者へのアプローチを強化する」としており、チャンネル占いや3D体験コーナー、特設ステージなどを用意している。

 伝送系や制作システムなどの展示も数多いが、ここではセットトップボックス(STB)など、家庭向けのハードウェア関連展示を中心にレポートする。STBでは、パイオニアやHUMAXなどが、Blu-ray搭載モデルを今回初披露。各社がDLNA対応STBなどをアピールしているほか、IP経由のVODなどの提案も行なわれている。 


■ パイオニア/HUMAXがBD搭載STB。NASカートリッジモデルも

 CATV用STBメーカーでは、Blu-ray搭載モデルの参考展示が目立った。

パイオニア「BD-V8700R」

 既にパナソニックは、Blu-ray搭載のSTB「TZ-BDW900」を発売し、各CATV事業者で採用されているが、今回はパイオニアとHUMAXもBD搭載機を参考出展した。

 パイオニアは、今秋発売予定の「BD-V8700R」を出展。特徴はCATVでは業界初というダブルトランスコーダを搭載し、デジタル放送やCATVを2番組同時にMPEG-4 AVC/H.264で録画できること。最長8.5倍の長時間録画に対応しており、2番組同時AVC録画中でも、BDへの高速ダビングやBDビデオの再生が可能など、高いマルチタスク性能を有している。

 HDD容量は500GBでCATVモデムも内蔵。また、ホームネットワーク機能も搭載予定で、まずはホームサーバーとして同社のホームネットワーク対応STBとの連携を想定している。外形寸法は430×299×68mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約4.5kg。

BDドライブを搭載トップメニュー番組表

 なお、パイオニアはシャープとBDドライブで合弁会社を設立するなど、BD関連事業で連携を強めているが、ドライブは合弁会社で製造したものを採用。さらに、BD-V8700Rでは番組リストなどのGUIがシャープのものに良く似ており、両者の開発成果が取り入れられているようだ。

 また、既発売のSTB「BD-V301」でのホームネットワーク利用も訴求。同STBでは、DLNA/DTCP-IP対応のLAN HDDを接続することで、デジタル放送/CATV番組の録画に対応。録画した番組は、別のネットワーク対応STBや、DLNA/DTCPプレーヤーを搭載したパソコンなどから再生できる。

最長8.5倍の長時間録画に対応録画リスト「BD-V301」のホームネットワーク活用デモ
パイオニアのLAN HDD内蔵型CATV STB

 パイオニアの参考出展STBでユニークなのは、「NAS(LAN HDD)内蔵STB」。アイ・オー・データと共同で開発し、カートリッジタイプのNASをSTBにはめ込んで録画HDDとして利用できる。通常の内蔵HDDのように録画HDDとして利用できるが、NASカートリッジをSTBから取り外せば、外付けのLAN接続HDDにもなるため、STBから複数台のNASを録画先として選択できる。

 HDD搭載STBでは、STBの耐用年数に比べてHDDの耐用年数が短いという課題がある。一般的に3~5年でHDDの故障率が高まるが、その際にSTBそのものを交換しなければならず、また、そのためにサポートの人員を派遣する必要があるなど、保守費用もかかる。

 HDDをカートリッジ式にすることで、故障時にHDDだけ交換するだけという対応が可能になる。さらに、気軽に追加できる形にすることで、ユーザーの利便性向上と共に保守費用の低減も図れる。こうした利点を訴求しながら、CATV事業者などの意見を聞き、製品化を検討していくという。

カートリッジタイプのNASを本体に内蔵する。NASはアイ・オー・データ開発の試作品NASの背面。単体でも利用できる利用イメージ
パイオニアのSSD搭載STB

 また、HDDではなくSSDを内蔵したSTBも参考出展。静音性と低消費電力、故障率の低さが特徴で、コスト以外の点ではSSD化のメリットが多い。特にHDDからSSDにすることで、ファンレス化も実現可能ということも訴求している。ただし、現時点では発売の予定は無いという。


伊藤忠ケーブルシステムはHUMAXのBD搭載STBやHDD搭載STBを展示

 伊藤忠ケーブルシステムは、開発中の「HUMAX」のBlu-ray搭載STBと、HDD搭載STBを参考出展している。2011年前半の発売を予定しているという。

 いずれも500GB HDDとOFDM/QAMのWチューナを搭載し、2番組同時録画に対応。HD解像度の長時間録画機能も搭載予定で、EthernetやUSB端子も装備する。まだ最終仕様は固めておらず、今回のショーなどで意見を聞きながら、製品化に向けて開発を進める計画。現時点では「ホームネットワークで他のSTBに映像配信には対応して欲しい」という意見が多いとのこと。

 同社では「技術的には大抵の機能に対応できるが、HUMAXの強みは“価格”なので、価格と機能のバランスを取りながら判断したい」としている。また、IPベースのSTBなども参考出展している。


HUMAXのBlu-ray搭載STBHDD搭載STBも参考出展IP STBも参考出展

 


■ パナソニックは3Dソリューションを訴求

3D VIERAと二眼式3Dカメラ「AG-3DA1」を利用した3D中継デモ

 パナソニックは、3D VIERA「VT2シリーズ」を使った3D放送対応などをアピール。8月に発売予定の二眼式3Dカメラ「AG-3DA1」やBlu-ray搭載のSTB「TZ-BDW900」や「TZ-HDW600」などを組み合わせた、3D放送システムをアピールしている。

 また、最新STB「TZ-HDW600」のDLNAサーバー/クライアントや、DIGAへの「IPダビング」などの機能も紹介。高付加価値なSTBの魅力を訴求している。

 HDW600は、CATV事業者向けサービスプラットフォーム「CATVユニバーサルポータル」にも対応。JavaScrpit対応の新ブラウザにより、従来のBMLやHTMLでは扱いの難しかった3Dグラフィックスをポータル画面で導入可能としている。これにより、IPストリーミングを組み込んだトップメニューや動的なメニュー構成なども可能としている。

 ITSCOMとの共同実証実験では、自治体サービスとの連携や、ユーザーの視聴履歴やブラウズ履歴を学習し、お勧めコンテンツを提示する「お勧め番組ナビ」、「おまかせ自動録画」などの機能を実装。今後、各CATV事業者に採用を働きかけていくという。

IPダビングのデモCATVユニバーサルポータル

 ソニーは、3D制作システムなど展示しているほか、CATVやスマートフォンなどに地域に紐づいたコンテンツを配信可能な、コンテンツ管理配信システム「OPSIGATE」を出展している。

 同システムは、コンテンツの登録/管理と、さまざまな機器への配信を実現するもので、企業内の情報発信などでも活用されている。これを地方自治体の議会中継やオンデマンド配信、CATV事業者の独自番組などを、PCやスマートフォンなどで簡単に視聴できるシステムとしてCATV事業者に呼びかけている。

 魅力的なコンテンツをIPベースで提供することで、CATV契約だけでなく、インターネット回線契約や携帯電話契約の獲得推進に利用できる点などを訴求していくという。

ソニーの「OPSIGATE」OPSIGATEを使ってスマートフォンやPCへコンテンツ配信スマートフォンでの視聴

 


■ モトローラは新STBや3D対応を訴求

モトローラ ホームビジネス担当の鈴木寛取締役

 モトローラは、「ケーブルテレビショー 2010」にあわせて事業方針説明会を開催。同社は、KDDIの光ファイバーサービス「auひかり」向けに、地上/BS/110度CSデジタルチューナを搭載し、IP多チャンネル放送のHD番組を視聴可能なHDD内蔵STB「HD-STB(VIP2060)」を提供している。

 同社ホームビジネス担当の鈴木寛 取締役は、デジタルCATVとともに、IPTV用STBを強化する方針を説明。CATV、衛星、IPTVだけでなく、視聴環境もテレビや携帯電話などさまざまな領域に広がっており、こうしたマルチスクリーン対応を積極的にすすめていくという。

 日本向けの対応についてもVIP2060を例に引き、日本方式のデジタル放送(ISDB)や、IPTV、LISMOといった日本独自の音楽配信、AVCへのトランスコーディングなど、“進んだ”日本の環境に積極的に対応するとした。

auひかりで提供開始されたモトローラの「HD-STB(VIP2060)」放送/IPTVをまたいだ番組検索も可能携帯電話連携などの機能を搭載

 3Dについては、既に米国のAT&Tなどで対応STB「DCX3400」が採用。同STBを使ってデモを行なっている。HDMI 1.4aに対応し、サイドバイサイド(3D)、トップアンドボトム(3D)、2Dを自動検出/切替な可能な点もアピール。さらに、今後は業界内で標準化が進められているフルHD 3Dの放送方式への対応も進めていくという。

3Dデモも実施3D対応のSTB「DCX3400」

 


■ KDDIはスマートフォンとSTBを連携した“お勧め”システムを展示

次世代パーソナライズド情報提供システム

 KDDIは、Android搭載スマートフォン「IS01」と、STBを組み合わせ、個人の状況や嗜好に合わせた番組/コンテンツや、生活情報などを提供する「次世代パーソナライズド情報提供システム」のデモを行なっている。

 タッチパネルを備えたIS01を、無線LAN経由でSTBのリモコンとして使用可能で、チャンネル変更や放送波変更、録画番組の再生などが可能となっている。

 特徴は視聴/録画履歴などの「嗜好推定技術」と、GPS情報など「状況推定技術」を組み合わせ、スマートフォン/STBの機能にあわせてレコメンドを行なうという点。

 放送中の番組や、放送予定の番組、VODコンテンツから、ユーザーにお勧めのものをスマートフォンに表示。それをタッチすることで、STBのコンテンツ再生や録画予約が可能きるという。この“お勧め”には、嗜好推定技術が使われる。

スマートフォンをSTBのリモコンとして活用スマートフォンで番組を選択し、STBで出力

 外出先でも状況推定と嗜好推定を組み合わせ、現在時刻と位置から推定した状況(自宅にいるのか、会社にいるのか、休日か、など)に応じて、お勧め情報をスマートフォンに提示。例えば、利用シーンと好みの食事を類推し、付近の飲食店をお勧めし、合わせてクーポンや地図も表示できる。列車乗換案内なども利用でき、天気予報では、現在地の天気に加え、推定された目的地や、良く行く地域の天気予報を自動表示する機能も用意する。

GPSを活用し、近隣の天気予報や、良く行く場所の予報を表示次世代パーソナライズド情報提供システムの概要

 


■ アダルト3Dのデモも実施

 委託放送事業者など、コンテンツ供給各社が集まる「サプライヤーゾーン」では、今後チャンネル展開予定の人気番組や、3D対応チャンネルなどを各社が訴求している。

 アダルトコーナーは、20歳以上のみ参加可能となっており、「ミッドナイト・ブルーHD」のブースでは、3D BRAVIAを使ったアダルト3Dのデモも行なっていた。

「ミッドナイト・ブルーHD」のブースではアダルト3Dをデモお勧めコンテンツをスマートフォンに表示アダルトコーナーは、20歳未満入場不可
チャンネルNECOは、7月のDEATH NOTE特集にあわせて巨大なリュークを設置東北新社は今秋公開映画の「牙狼」などを3DでデモNECは放送用の超解像トランスコーダを出展。既にフジテレビなどでの導入事例があるという
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(2010年 6月 24日)

[AV Watch編集部 臼田勤哉]