ヒビノ、ビクターと協力し3D対応LEDディスプレイを発売

-「ChromaLED 3D」。業界最小4㎜ピッチの製品も開発


「ChromaLED 3D6」を24台組み合わせて構成した280型ディスプレイ

 ヒビノは、業界最小となる4㎜ピッチの3D対応業務用LEDディスプレイシステム「ChromaLED(クロマレッド) 3D4」を開発したと発表した。また、3D対応で6㎜ピッチ「ChromaLED 3D6」の受注を10月22日より開始した。

 「ChromaLED 3D」シリーズは、コンサートやイベント会場、企業イベント、博物館、テーマパークのアトラクション、スポーツ中継のパブリックビューイング、モーターショーなどでの利用を想定した製品。複数のLEDディスプレイユニットを縦横に並べて結合することで大画面化が可能で、「ChromaLED 3D6」の場合は38~520型(フルHD解像度)まで対応できる。

 今回の新製品は、JVC・ケンウッド・ホールディングスと、ヒビノとの戦略的提携における取り組みの第1弾として発表。22日より販売される「ChromaLED 3D6」は、ビクター製のリアルタイム2D-3D変換プロセッサ「IF-2D3D1」や、ヒビノの3Dフォーマットコンバータ「IF-FC1000H」などと組み合わせて提供され、価格はシステムにより異なる。なお、4㎜ピッチ「ChromaLED 3D4」の発売時期は未定。


6㎜ピッチの「ChromaLED 3D6」(写真は280型構成)4㎜ピッチ「ChromaLED 3D4」(76型構成)3D方式の違い。「ChromaLED 3D」はドットバイドットを採用している

 6㎜ピッチの「ChromaLED 3D6」は、38型/128×96ドットのLEDユニット「LVD-638-3D」を組み合わせて画面を構成。3D/2D両対応で、3D表示は円偏光方式を採用する。輝度は730cd/m2、LED素子寿命は5万時間以上(輝度半減)。LEDユニットのサイズは768×576㎜(縦×横)で、重量は約40㎏。発表会場では、縦に4台/横に6台並べて280型(1,024×576ドット)の画面サイズを表示。この場合の最大消費電力は19.2kWとなる(白色100%点灯時)。

 3D表示は、右目/左目に見せる映像を、市松模様のように1画素ずつ交互に表示する「ドットバイドット方式」を採用。面積解像度は、水平方向で1列おきに右目/左目の映像を見せる「ラインバイライン方式」と同様に元の半分になるが、斜め線などの滑らかな表現を可能としている。また、画素の前面の偏光フィルタ部分に独自技術が採用され、水平100度/垂直100度という広視野角を実現。円偏光方式により、顔を多少傾けても3D効果が維持できる。

 4㎜ピッチの「ChromaLED 3D4」は、38型のLEDユニットで構成。輝度は510cd/m2、縦/横に各2台並べて76型画面を構成する場合は解像度384×288ドット、最大消費電力は2.8kW(白色100%点灯時)。3D/2D両対応で、3D表示の方式は6㎜ピッチのモデルと共通。画面サイズは、フルHD解像度程度まで対応可能としている。

ドットバイドット方式とラインバイライン方式の表示の違い独自の偏光フィルタなどにより画質を改善。偏光メガネの採用により低コストで立体視を実現したとしている
280型「ChromaLED 3D6」の背面76型「ChromaLED 3D4」の背面「ChromaLED 3D4」の側面
LEDディスプレイと合わせて提供される、ビクターの3D変換プロセッサ「IF-FC1000H」(上段)。下段は業務用BDレコーダ「ChromaLED 3D6」の仕様「ChromaLED 3D4」の仕様


■ ヒビノ「LEDを成長戦略に」、ビクター「業務向けの売上300億円を目指す」

ヒビノの野牧幸雄副社長

 8月に、ヒビノはJVC・ケンウッド・ホールディングス子会社のビクターアークスの発行済株式の35%(24,500株)を取得すると発表。両社が業務用音響/映像機器で提携し、技術協力や販路拡大などの相乗効果を追求するとしている。

 ヒビノは、青色LED開発で知られる日亜化学工業と協力して研究開発を行なっているほか、徳島大学とLEDの立体映像で共同研究を展開している。今回のディスプレイは、それらの共同開発技術と、ビクターの2D-3Dコンバータによる3D画像処理技術を組み合わせた形で提供される。

 ヒビノ副社長の野牧幸雄氏は、「ChromaLED」を同社の“育成事業”と位置付けていると説明。「モノづくり事業を強化し、成長戦略の一つとして重点投資している」という。急速に展開されつつあるコンシューマの3Dに対し、同社はB to Bをターゲットとして事業展開。野牧氏は「パブリックスペースなどに利用できる機動性に優れたシステムを開発した。3D映像に留まらない、3Dの新たな世界を創出できれば」と述べた。

 ビクターは、今回の提携により、ヒビノのLED製品の販売を開始することを発表。日本ビクターの落合信夫取締役 ビジネスソリューション事業部長は新製品について「両社で取り組むプロフェッショナル事業として、期待が持てるシステム」と自信を見せた。

 同社は前述の3D変換プロセッサ「IF-2D3D1」や、業務用3Dモニタ「GD-463D10」など3D製品の販売に加え、撮影から編集までトータルで3D映像制作を担当するビデオテックの事業などを展開している。今回のヒビノのLED製品取り扱いにより、3Dビジネスをさらに拡大。今後はサイネージ製品などの取り扱いも検討し、「'13年度のビジネスソリューションの国内売上で約300億円('10年から30%増)を目指す」とした。

日本ビクターの落合信夫取締役JVCケンウッドとヒビノの提携内容ビクターは今回の協業で、既存の3D事業と合わせてビジネス領域の売上拡大を見込む


(2010年 11月 22日)

[AV Watch編集部 中林暁]