発売迫る「とらドラ!」Blu-ray BOXの画質を一足先に体験

-生まれ変わったクリアな映像。こだわりのBOX仕様


試写会は品川にあるソニーPCLで開催された

 12月21日の発売が迫る、テレビアニメ「とらドラ!」のBlu-ray Disc BOX(KIXA-90159~90164/39,900円)。その発売を記念し、一足先にBD-BOXに収録された映像を体験できるファン向けイベントが13日、東京・品川にあるソニーPCLで開催された。

 既報の通り、BD-BOXは全25話をディスク5枚に収録するほか、特典ディスクも同梱した合計6枚組。特典ディスクには、SDキャラになった「とらドラ!」メンバーが活躍するショートアニメ「とらドラ! S.O.S~食いしん坊万々歳~」シリーズや、出演キャストが「とらドラ!」にまつわることに実際に挑戦する「とらドラ! 体験記」シリーズといったコンテンツを収録。


 さらに、BD-BOXのために作られた完全新作エピソードの収録も決定しており、ファンには見逃せない内容となっている。

本編ディスク5枚に特典ディスクも追加した「とらドラ! Blu-ray BOX【完全限定生産版】」。DVDアーカイブブックレットや、新規録り下ろしインタビュー、版権集などを収めたブックレットも付属する
(C)竹宮ゆゆこ/アスキー・メディアワークス/「とらドラ!」製作委員会

 また、本編映像にも特徴がある。この作品はSD解像度で作られたものだが、BD化にあたってはソニーPCLの新アップコンバートサービス「Real Scaling for HD」が使われている。SD制作のアニメを、より高画質にHD化できるという技術であり、その効果のほども気になるところ。イベントではBOXに収録される第1話が上映され、気になる映像クオリティもチェックできる機会となった。




■生まれ変わったクリアな画質

 試写は目黒にあるソニーPCLの試写室で実施されたが、オープニングから、HD化の恩恵が感じられる。スタッフ名などにある、“田”のような漢字部分で、マス目がしっかり描写されており、非常に読みやすい。キャラクターが登場すると、黒い輪郭線がクッキリと力強く描写されており、DVDと比べてコントラストが向上。画面にメリハリが出ている。

ソニーPCL 事業本部デジタルプロダクション事業部 ビジュアルソリューション部 ポストプロダクション技術2課の山崎晴康氏

 髪の毛や背景の単色部分も、色の純度が高く、DVDで感じられた白いモヤがかかったようなコントラストの低下部分も無い。何枚かベールを剥いだようなクリアな映像に生まれ変わったと感じる。

 かといって、シャープネスを強くかけて無理に精細感を出しているわけではなく、ナチュラルさはキープされている。髪の毛の先端や、インコちゃんの鳥籠、背景の電線など、斜め線部分にジャギーは見られない。教室の天井や床などのグラデーションの滑らかさも印象に残った。

 アップコンバートを担当したソニーPCL 事業本部デジタルプロダクション事業部 ビジュアルソリューション部 ポストプロダクション技術2課の山崎晴康氏は、「SD映像をHD化する時に一番難しいのは、やはり斜め線なんです。ジャギーが出ないようにと、最初のプレビュー時にも山中プロデューサーから要望があり、それに応えるべく作業を行ないました。また、黒いトレース線の再現や、細かい模様などのディテールは、嫌味にならない程度にシャッキリ見せるというところを追求しました」という。

 「DVDも、DVDとしては綺麗でしたが、そこから一枚とれたような、抜けが良く感じていただけると思います。また、文字の再現にもこだわりました」(山崎氏)とのこと。作品を手がけたキングレコードの山中隆弘プロデューサーも「1話のクラス分けの文字も判別できるので注目してください」と付け加えた。


ソニーPCLのReal Scaling for HD
(C)竹宮ゆゆこ/アスキー・メディアワークス/「とらドラ!」製作委員会
左写真の枠線部拡大
(C)竹宮ゆゆこ/アスキー・メディアワークス/「とらドラ!」製作委員会
ソニーPCL従来のアップコンバートサービス
(C)竹宮ゆゆこ/アスキー・メディアワークス/「とらドラ!」製作委員会
左写真の枠線部拡大
(C)竹宮ゆゆこ/アスキー・メディアワークス/「とらドラ!」製作委員会

このイベントのためだけに作られたという、DVDとBDの比較映像サンプルも上映。一目瞭然の違いに会場から驚きの声も聞かれた
(C)竹宮ゆゆこ/アスキー・メディアワークス/「とらドラ!」製作委員会

 その他の注目ポイントとして山崎氏は、街中の遠くに見える背景などの“曖昧な表現の部分”を挙げる。「こうした部分の忠実さを保ったままHD化するのは、結構大変なんです」とのことで、実際のBD-BOXで注目したい部分だ。

 最後に山崎氏は、「Real Scaling for HDのアルゴリズムと凄くマッチした作品で、Real Scaling for HDの能力を引き出せていると自負しています。そして、細かい部分までこだわる山中プロデューサーの要求に応え続け、認めていただけた事が嬉しいです。作業中は、作品のファンの皆さんの事ばかり考えていて、満足していただけるよう、いかに綺麗にやるかだけを考えていました。発売を楽しみに待っていてください」と、作品の仕上がりに自信を見せた。




■新作も収録

左からキングレコードの山中隆弘プロデューサー、BDAのABI氏

 「とらドラ!」のBD-BOXは、Blu-ray Disc Association(BDA)のWebサイトで実施された、BD化を期待する作品に投票する企画「あなたの力でBD化プロジェクトランキング」を発端として実現したもの。同作品はBD化プロジェクトの投票でも健闘し、プロジェクトの第2回で2位を獲得。しかし、1位ではなかった事からBD化は実現せず、「週刊トロ・ステーション」において、同作品の大ファンであるクロが、山中プロデューサーに直訴。第3回で遂に総合1位を獲得し、ファンの願いが届く形でBD-BOX化が実現したという経緯がある。イベントではBDAのABI氏と、山中プロデューサーが司会を担当した。

 ABI氏は、BDの仕上がりに「やばいですね、かなり綺麗です!」と興奮気味。BOX発売に向け、1年間“とらドラ!断ち”をしていたとのことで、「事前にも見ていなかったので、今の試写をガッツリ見てしまいました。大河が可愛かった!!。山中プロデューサーはBD化にあたり、“応援してくれた人がこれだけいるんだから、BDの名に恥じないクオリティで出さないと失礼。世の中にあるBDの最高峰を目指そう”という意気込みで取り組んでいた。その成果が出ていますね」と大満足の様子だった。

 映像のHD化だけに留まらず、山中プロデューサーは新作エピソードの収録も提案。「ただBD化するだけではつまらないので、監督や制作会社に“新作を作りたいんです”と話しました。最初は“本当に?”という感じだったのですが(笑)、”そこをなんとか、やりましょうよ”と話をして、スタッフ皆がやりたいエピソードを新作として作る事になった」という。このあたりの経緯の詳細は、BD-BOXのブックレットに収録されているとのこと。

 なお、新作「弁当の極意」は、テレビシリーズの様々なキャラクターが出てくるエピソードである事も、新作に選ばれた理由だという。

 特典ディスクにはほかにも、DVDに特典として収録された「とらドラ! S.O.S~食いしん坊万々歳~」や、「とらドラ! 体験記」なども収録されている。山中プロデューサーによれば、SDキャラが活躍する「とらドラ! S.O.S~食いしん坊万々歳~」も、ソニーPCLでHDにアップコンバートされたという。一部マスターが存在しないものもあったというが、「最大限頑張りました」(山崎氏)という。


イベント会場の入口には、トロとクロの姿も

 また、本編はディスク5枚にわたって収録されるが、1枚目に4話、2枚目に4話、3枚目に5話、4枚目に6話、5枚目に6話という不思議な構成になっている。「1枚目で4話まで収録すると、亜美が出てくるまで。次の4話ではプールの話まで、次の5話で文化祭まで、6話で修羅場を迎え、残りの6話で大修羅場大会と、ストーリーの区切りに沿った形にしています。1人の視聴者として、物語がちょうど良いところでディスク交換するのは嫌じゃないですか(笑)」と、ここにも山中プロデューサーならではのこだわりが隠れていた。

 最後に山中プロデューサーは、「長いBD化プロジェクトになりましたが、高画質・高品質なものになったと思っています。これが皆さんのお手元に届くのを凄く楽しみにしています。ちょっとはやいクリスマスプレゼントとして、楽しんでいただければ」と、BOXに込めた想いを語った。



(2011年 12月 14日)

[AV Watch編集部 山崎健太郎]