パナソニック、2012年度にテレビ事業黒字化を目指す

-'11年度は7,721億円の赤字。GT12は「あきらめ」


パナソニック 大坪文雄社長。会見は大阪府枚方市のパナソニック人材開発カンパニーで行なわれ、東京 汐留のパナソニック東京汐留ビルにも中継された

 パナソニックは11日、2012年度の事業方針について説明した。

 大阪府枚方市のパナソニック人材開発カンパニーで会見に臨んだ同社・大坪文雄社長は、「2012年度は、成果が問われる1年。中期経営計画であるGT(Green Transformation)12の最終年度。そして、グループ再編後の初年度。失った信頼を取り戻すのは実行力しかない。新事業体制の真価を発揮し、なんとしてでもV字回復を実現したい」と、黒字化に意欲をみせた。

 2012年度の連結業績見通しは、売上高が前年比3.2%増の8兆1,000億円、営業利益は494.6%増の2,600億円、税引前純利益は1,600億円と黒字転換。当期純利益でも500億円へと黒字転換を図る。

 「2011年度に過去最大の赤字を出した当社にとって、2012年度に求められる成果は、なんといっても収益。水準は高くないが回復にこだわっていきたい」などとした。

 また、大坪社長は、「収益にこだわる」、「商品を鍛える」、「自ら変わる、変える」という3点をグループの基本指針に掲げた。

 課題事業の再建、赤字撲滅に取り組む姿勢をみせる一方、個別事業の強化、『まるごと』による新たな収益モデル構築を掲げる。


2012年度経営見通しグループ基本方針。「収益にこだわる」、「商品を鍛える」、「自ら変わる、変える」収益改善の現状と、今後の方向性

 課題事業のひとつである薄型テレビについては、2012年度の営業利益見通しで約1,300億円の改善を目指し、「セット事業においては、不採算モデルを大胆に絞り込み、大画面シフト、スマートテレビのグローバル展開、原価構築の徹底による大幅ダウンにより、黒字化を図る。また、パネル事業については、非テレビ用途への展開を図ることで、収益を大幅に改善していく」などと語った。

薄型テレビ事業の改善策約1,300億円の改善を見込む
アビオニクスへの取り組み

 また、ソリューション型ビジネスにおいて、強いBtoB事業を創出するとし、その事例のひとつに航空機用AVシステム「アビオニクス」への取り組みを紹介した。

 大坪社長によると、「アビオニクスは、オーディオシステムをベースに機内エンターテイメントシステムへと進化させたものであり、ハードだけでなく、システム、動作検証、認可申請、ソフトウェアやアプリケーションの定期更新までをトータルで提案し、世界50カ国以上で、離陸前のメンテナンスまで行なっている。さらに衛星を利用した機内通信システムも提供している。この事業の本拠地は北米におき、顧客の近くでの現地発想を行ない、M&Aや協業を通じたスピード重視の事業体制を整えている」などとした。


「100本の矢」に取り組む

 そのほか、安定的な収益源としてアプライアンス(白物家電)事業に取り組むこと、リチウムイオン事業においては車載、民生の両面から強化および拡大していくこと、HIT太陽電池ならではの高効率性を生かしたソーラー事業の強化などを成長事業に位置づけたほか、まるごと事業においては、モデルとなる事例を100種類揃える「100本の矢」に取り組むとして、「2012年度は、事業化段階で25本、これから事業化したり、新たな事業に取り組むものとして25本の合計50本をモデル事業として創出する」などと語った。

 なお、次世代テレビとしての取り組みを表明していた有機ELテレビについては、外部からのパネル調達を想定していることも表明した。この件に関する情報は別記事でお伝えしている。



■ GT12の目標指標の達成は「あきらめざるを得ない」

2012年度の位置づけ

 一方、これまでの取り組みについて振り返り、「6年半の社長在任期間において起こったことは、今後のグローバル展開のなかでは起こり得るものであり、暴風雨のなか、頭を低くして、風を避けるのではなく、胸を張って、環境革新企業への道筋を作ることができた」などとしたほか、「グローバルにお客様と直結する体制を確立する一方、クロスセルが行ないやすい環境、電工および三洋電機とシナジーを生みやすい体制、重複事業の重複解消を図るなど、パナソニックにとって過去最大のトランスフォーメーションとなった。構造改革費用として7,671億円を計上し、大きな痛みを伴う意思決定だったが、将来の足かせとなる要素を一気に排除するという、強い意思でこれを断行した。結果として、巨額の赤字を計上することになり、責任を重く受け止めている。また、(中期経営計画の)GT12で目標とした数値の達成は、あきらめざるを得ない。しかし、環境革新企業になるための基盤は構築できた。目指す方向に間違いはないとの思いで、課題に手を打ってきた成果をベースに、再スタートを切りたい」とした。


'11年度の大規模な構造改革事業再編でできたこと今後の方向性

■ 2011年度業績は7,721億円の最終赤字に

2011年度連結業績

 パナソニックが発表した2011年度通期連結業績は、売上高が前年比9.7%減の7兆8,462億円、営業利益は85.7%減の437億円、税引前純損失は前年の1,788億円から赤字転落し、マイナス8,128億円の赤字、当期純損失は前年の740億円からマイナス7,721億円の最終赤字となった。最終赤字は過去最大となる。

 上野山実常務取締役は、「世界的な景気低迷、超円高、タイ洪水などの影響を受け、大幅な減収減益となった。課題事業の抜本的対策と新体制の構築に向けた構造改革により、過去最大の純損失を計上した。だが、第3四半期(10~12月)を底にして、営業利益は増益基調に転換。最終損失は2月の公表値からは若干改善している」などとした。

 地域別では、国内が8%減の4兆1,620億円、米州が2%減の9,665億円、欧州が10%減の7,436億円、中国が11%減の1兆430億円、アジアが9%減の9,311億円となった。

 セグメント別では、AVCネットワークの売上高が前年比21%減の1兆7,135億円、営業損失がマイナス678億円の赤字。

 テレビの出荷台数は1,350万台強。内訳は、プラズマテレビが約450万台強、液晶テレビは900万台強とした。

大坪社長(左)と上野山実常務取締役(右)

 液晶テレビの売上高は28%減の3,923億円、プラズマテレビが41%減の2,838億円。デジタルカメラは20%減の1,466億円。BDレコーダおよびプレーヤーが2%減の1,145億円となった。

 アプライアンスの売上高は3%増の1兆5,342億円、営業利益は3%減の815億円。システムコミュニケーションズは売上高が10%減の8,408億円、営業利益が64%減の173億円。エコソリューションズは売上高が前年並の1兆5,258億円、営業利益が2%増の589億円。オートモーティブシステムズの売上高が7%増の6,532億円、営業利益が78%減の49億円。デバイスの売上高が16%減の1兆4,046億円、営業損益はマイナス166億円の赤字。エナジーは売上高が3%減の6,149億円、営業損失はマイナス209億円の赤字。その他事業では、売上高が18%減の1兆8,809億円、営業利益が61%減の236億円となった。

 なお、今回の決算発表からセグメントを変更している。

2011年度セグメント別実績セグメント変更について

■ 2012年度は最終黒字へのV字回復を目指す

'12年度連結業績見通し

 2012年度の連結業績見通しは、売上高が8兆1,000億円、営業利益は2,600億円、税引前純利益は1,600億円。当期純利益でも500億円へと黒字転換を見込む。

 「売上高はアジアと中国が牽引し、国内、海外ともに増収を確保。構造改革の刈り取りと売り上げ増により利益は大幅に改善。すべてのセグメントで増益を実現する。大規模な事業構造改革にも区切りがつく」(上野山常務取締役)とした。

 セグメント別では、デジタルAVCネットワークの売上高が前年比1%増の1兆7,300億円、営業利益が黒字転換を図り、600億円の黒字。デジタル一眼カメラやPCが伸張して増収。薄型テレビの大幅な改善によって、黒字を見込むという。

 テレビの出荷台数計画は、プラズマテレビが約250万台、液晶テレビが約1,000万台の合計1,250万台としている。

 「前年に比べて約100万台販売台数が減少し、さらに平均単価は15%程度下落しているとみている。金額では約1割程度は落ちるだろう。だが、プラズマテレビでは70%が50型以上になると見込んでおり、液晶テレビでは40型以上が30%を占める」(大坪社長)とし、「これにBtoBのビジネスが加わり、金額では前年並みになる」(上野山常務取締役)とした。

 アプライアンスの売上高は6%増の1兆6,300億円、営業利益は23%増の1,000億円。システムコミュニケーションズは売上高が7%増の9,000億円、営業利益が38%増の240億円。エコソリューションズは売上高が5%増の1兆6,000億円、営業利益が2%増の600億円。オートモーティブシステムズの売上高が10%増の7,200億円、営業利益が264%増の180億円。デバイスの売上高が1%増の1兆4,200億円、営業利益が黒字転換し400億円。エナジーは売上高が7%増の6,600億円、営業利益は黒字転換し、30億円。その他事業では、売上高が12%減の1兆6,600億円、営業利益が2%増の240億円としている。

 大坪社長は、「2012年4月をみると、大半のドメインにおいて計画を上回るスタートを切っている」などと、V字回復に向けて順調な出足であることを強調した。

AVCネットワークスとアプライアンスの見通しオートモーティブとデバイスの見通しシステムコミュニケーションズとエコソリューションズの見通し

(2012年 5月 11日)

[ Reported by 大河原 克行]