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【IFA 2013】Audyssey、“スタジオ品質”をベースにテレビの音質向上へ

AudysseyのCTO Chris Kyriakakis氏(右)と、ビジネスディベロップメントディレクターの山中幹大氏(左)が説明

 Audysseyは、ドイツ・ベルリンで11日(現地時間)まで開催されている「IFA 2013」に合わせて、市内のホテルで最新技術のプライベート展示を行なっている。今回、同社は「ExpertFit for TV」と「AudioZoom」という新技術を発表した。

ExpertFit for TV

「ExpertFit」利用の流れ

 現在同社が提供している技術「ExpertFit」は、世の中にある様々なヘッドフォン個別のプロファイルをAudysseyがデータベース化して、ユーザーが手持ちのヘッドフォンに合わせて、それに合った音質でストリーミング音楽配信サービスなどを楽しめるというもの。高音/低音を個別に調整するのではなく、人間の知覚に合わせた自然な形で連動させて調整するため、より正確な調整が行なえるという。

 同社はiOS/Android向けにSDKを用意。ミュージックプレーヤー、ゲーム、ビデオプレーヤーなどのアプリベンダーがそれを利用すると、低いプロセッサパワーで動作する対応アプリを実現可能としている。プロファイルのデータベースはクラウド上にあり、必要なものだけアプリ内でダウンロードすることから、メモリを圧迫せず、シンプルに、より多くの人にとって使いやすいという。

 同社のホームシアター音響向け技術である「MultEQ」をヘッドフォン向けに最適化しており、歪みや音圧、周波数特性などのデータをもとに、各ヘッドフォン向けにプロファイルを作成。クラウド上に蓄積する。プロファイルを作成する際、ハリウッドのスタジオにおいて、ミキシングエンジニアが小さなマイクを耳の中に装着し、エンジニアが聴く音をそのまま測定して活用。この音をリファレンスとするため、各ヘッドフォンの音をスタジオクオリティの高音質に近づけられるとしている。

 同社は既に250以上のヘッドフォンのプロファイルを持っており、現在もデータを追加している。現在、米国のベンダーが提供している音楽再生アプリでは採用例があり、Audysseyの調査では、そこから850,000のプロファイルがダウンロードされている。なお、最も多くダウンロードされているのは、(iPhoneなどに付属する)アップル製ヘッドフォンのプロファイルだという。

ExpertFitの主な特徴
ExpertFitの補正技術
EQのデータベースをクラウドに蓄積している
アプリで手持ちのヘッドフォンのプロファイルを検索して、適用する
利用者の属性などの調査

 IFA 2013に合わせて発表された「ExpertFit for TV」は、このExpert Fitをテレビの音声に適用するもの。テレビに接続するサウンドバーなど外部スピーカーのプロファイルを、ユーザーがダウンロードして適用できることが特徴。テレビのメニュー内で、サウンドバーなどのメーカーを選び、プロファイルをダウンロードすると、Audysseyの技術に基づき、より高音質に楽しめるようになる。また、テレビメーカー側にとっても、音声機能を外部のスピーカーに特化させることで、よりスマートにテレビ開発ができるようになることがメリットだという。

「ExpertFit for TV」のデモ画面。使用しているスピーカーのプロファイルをリストから探す
メーカー選択画面

Audio Zoom

 ビデオ撮影時に、話者にズームで寄っていくと、音声もそれに合わせて回りの声が消え、話者の声クリアに聴こえるというノイズ低減技術。Skypeなどのアプリで複数人と通話しているときに、“いま話している人”の声を中心に聴くといったことにも応用可能としている。この技術も、前述の「ExpertFit」などと同様に、スマホアプリのベンダーなどに向けてSDKを提供する。

Audio Zoomのデモ。人にズームで近づくと、その人の声がよりクリアに聞こえるようになった
「Quietype」の設定画面

 そのほか、Skypeなどで通話している時に“タイプ音”で相手が聴こえづらくならないようにする技術が、2013 International CESでも発表された「Quietype」。主にノートPCなどに実装して提供するもので、アルゴリズムは既に完成しているという。現在は、半導体メーカーと協力し、サウンドカードへの実装や、CPUへ直接ドライバのレベルで実装することについても検討していくという。

 今回、デモ音声で「Quietype」を体験したところ、気になるタイプ音がONにすると、ほとんど聞こえないレベルまで下がり、それと同時にエアコンのような他の環境ノイズも低減され、人の声の中域部分がより強調され、聞き取りやすくなったのを感じた。

 同社がこれまで取り組んできたスピーカー/ヘッドフォンなど“音を聴く側”の技術だけでなく、ビデオ撮影や通話など“音を出す/録る側”に対する技術も充実してくることで、様々な機器で音をより正確に、快適に聴けるようになることに、今後も期待したい。

(中林暁)