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“強い”だけじゃないコーニング「Gorilla Glass」。100型対応/抗菌/曲面などの展開も

コーニングジャパン

 コーニングジャパンは19日、「Gorilla Glass(ゴリラガラス)」や超薄型のフレキシブルガラス「Willow Glass(ウィローガラス)」など、同社製品に関する説明会を開催した。

 「Gorilla Glass」は、キズや破損に強い特徴を持ち、スマートフォンやテレビなどのディスプレイ用カバーガラスとして使われていることで知られる。'07年に初代製品が発売されてから、現在は第3世代まで製品化され、スマートフォンなどに採用されている。

 さらに、0.1mmという超薄型のフレキシブルガラス「Willow Glass」も'12年に開発。従来のシート・ツー・シート製法ではなく、ロール・ツー・ロール方式による高温かつ連続的な生産が可能なことなどが特徴で、現在はパイロット生産を行ない、様々なメーカーに対し、採用に向けた働きかけを行なっている。

 これらの新製品について、改めて特徴や用途などを紹介するとともに、現在取り組んでいる技術や、今後のビジネスの方向性などについて担当者が説明した。

米国本社のCorningは、1851年創業。社名は、本社のあるニューヨーク市コーニングから付けられた
Corningの事業部門
事業部門別の売上高

Gorilla Glassが割れにくい理由。今後は「抗菌」や「曲面」も

Gorilla Glassなどを説明した、コーニングジャパン LCGグループ 製品技術部長の進藤克彦氏

 最新のGorilla Glass 3は、Google「Nexus 5」やシャープ「AQUOS PHONE SERIE SHL23」などのスマートフォンのほか、ASUSのUltrabook「ZENBOOK」の天板などにも使われている。さらに、BMW i8のリアウィンドウにも採用されたという。

 初代Gorilla Glassが製品化された'07年時点では、スマートフォンのカバーガラスには主にプラスチックが使われていたが、タッチパネル端末で使う場合、誘電率の高いガラスの方が有利なこともあり、採用が広まった。また、Gorilla Glassはカバー専用としてだけでなく、強度の高い構造材として利用することで、全体の構造をシンプルにできることも特徴。

 傷に強く、割れにくいのがGorilla Glassの大きな特徴。そもそも、ガラスが割れる主な要素には「傷」と「引張応力(引っ張る力)」の2つがあり、このどちらかを防ぐことで割れにくいガラスとなる。「スマートフォンを落としてガラスが割れる」という現象も、同社調査などによれば、落とす前に(ポケットにいっしょに入れたカギなどで)傷が入っていたケースが多いという。

イオン交換により「圧縮応力」を持たせ、割れにくくした

 Gorilla Glassで最初に取り組んだのは、「引張応力」を抑えること。ガラスの組成を工夫することで、傷ついても割れにくいガラスを目指した。具体的には「イオン交換」というプロセスにより、大きなイオンをガラス表面に入れ込んで「圧縮応力」(縮める力)を生じさせることで、割れにくくした。

 さらに、最新のGorilla Glass 3は、Native Damage Resistance(NDR)により、Gorilla Glass 2に比べ「傷つきにくさ」を3倍とし、キズが付いても見えにくくなった。これにより、強度としても40%向上したという。

従来ガラスなどとの強度比較
実際に従来のガラスやGorilla Glassに金属の棒で圧力をかけて、割れるかどうかを体験。筆者の力では、Gorilla Glassにヒビを入れることはできなかった

 新たな取り組みとしては、「ガラスそのものに機能を持たせる」ことに注力。例えば、今年発表したのは「抗菌機能」で、単にガラス表面に抗菌物質などをコーティングするのではなく、ガラスの最表面に銀イオンを埋め込むことで「半永久的に抗菌になる」というもの。

最新の取り組み
銀イオンを埋め込むことで、ガラスそのものに抗菌機能を持たせるという

 また、タッチパネルの大型化に伴い、カバーガラスの大型化も検討が進められており、「まだ時間はかかる」としたものの、50~70型、将来は100型までのサイズも見据えているという。

 そのほか、新たな高付加価値モデルとして曲面も実現できる「3D-Shaped Gorilla Glass」をG-Tech Optoerectronics(GTOC)と共同で開発したと1月に発表。2014年内の製品化を目指しており、既に量産体制は整っているという。スマートフォン用だけでなく、車のインパネなど車載用なども開発を進めている。「将来的には、ベンダブル(手などで曲げられる)なものも検討していきたい」とのこと。

スマートフォン用の曲面Gorilla Glassは、既に量産体制ができているという
サイズが大きい車載用も開発中

 なお、既報の通り同社は Gorilla Glassの生産を、日本の静岡工場から韓国の牙山(Asan)工場に移管することを3月に発表。2015年6月までに移管を完了させ、静岡工場の東側を閉鎖する。これについては、牙山工場の低コスト生産能力を活用するなどの目的があるが、最終的な製品については「(日本から移管しても)変わることは無い」としている。同社生産拠点は、アメリカ、台湾、中国にもあり、既に量が足りない時などは他の拠点から補うといった共通化ができており、例えば台湾で作ったものを日本市場に持っていくといったことは以前から行なわれているという。

0.1mmの超薄型「Willow Glass」は、ロール生産でコスト削減へ

 フレキシブルガラス「Willow Glass」は、“コピー紙とほぼ同等”という0.1mmの超薄型が特徴。現在のスマートフォンなどの液晶用ガラスは、0.5~0.7mmの板材2枚を薬液に付けて0.2~0.3mm×2枚に引き延ばしているのに対して、余分な工程を省き、環境にも配慮できるという。薄いほどガラスの曲げ径も小さくなって用途が広がるほか、より低コストな製造プロセスを可能にするロール生産を目指している。ロール生産に移行できた場合、現在の約半分まで生産コストを減らすことも可能だという。

Willow Glassなどについて説明した、コーニングホールディングジャパン コーニングディスプレイテクノロジー アジア コマーシャル テクノロジー・ジャパンの川西直之マネージャー
Willow Glassのロール
横から見ても非常に薄い

 「Willow Glass」については、技術的には既存ディスプレイに使われているガラスの置き換えも可能だが、それよりも、セットメーカーと共同で最終製品のビジョンを共有し、「Willow Glassならでは」のビジネスをしていくことが、結果的に成功につながる例が多いという。「昼から夜の間に透過率をコントロールすることで、環境に優しい窓ガラス」や、「柱に巻きつけられる有機EL照明」といった、様々な構想を持っている。こうしたアイディアについて、どう実現するかを他社と話し合い、既に複数のプロジェクトが実現に向けて進められているという。

Willow Glassの特徴など
様々な用途を想定
セットメーカーとの協力で、最終製品を見据えた製品づくりを目指す

(中林暁)