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8K放送開始に向けたNHKのSHVシアター。「Hybridcast 2.0」でスマホのTV連携が進化

 映像、情報、通信の総合展示会「CEATEC JAPAN 2014」が10月7日~11日にかけて、幕張メッセで開催されている。8K放送や、Hybridcastの新しい取り組みなどを紹介しているNHK/JEITA共同ブースの内容をレポートする。

NHK/JEITAブースは8Kシアターが目印

8K放送に向けシアターや22.2chスピーカー内蔵ディスプレイ設置

 9月に発表された総務省の新たなロードマップにおいて、8K放送の開始が2018年に前倒しされたことなどもあり、今年のCEATECでは8Kスーパーハイビジョン関連の展示が充実している。

 8K視聴のイメージとして、シアター形式の150型スクリーンで最新の8Kコンテンツを上映。「8Kならではの超高臨場感を体感できる」という。これまでパブリックビューイングなどにも使われていた8Kシネマプロジェクタでスクリーン背面から投写するリアプロジェクション方式で、音声は22.2ch。昨年の第64回紅白歌合戦や、長岡まつり大花火大会などの模様を上映している。

 その他にも98型液晶ディスプレイ3台を使って、8Kコンテンツを上映するデモや、ディスプレイのフレーム部分にスピーカーユニットを配置した「ディスプレー一体型スピーカー」による8K/22.2ch上映などの展示を行なっている。

8K/150型映像と22.2ch音響のシアターが人気
「ディスプレー一体型スピーカー」も展示

 次世代放送推進フォーラム(NexTV-F)のコーナーでは、4K試験放送のChannel 4K番組や、リモート視聴機能などについて紹介。また、日本ケーブルラボは、4K対応CATV用STBへの取り組みを紹介しており、HUMAX製のSTBを展示している。

Channel 4Kの番組などを紹介
日本ケーブルラボのコーナーに、4K対応STBなどが展示

Hybridcast 2.0で放送局の共同開発アプリも登場

 放送関連の新しい取り組みでは、6月に策定された「ハイブリッドキャスト技術仕様 V2.0」(Hybridcast 2.0)に応じたサービスの例を、NHKや民放各局などがデモ用コンテンツで紹介している。

 放送通信連携システム仕様 2.0版の特徴は、チャンネルを変えても継続して使えるアプリ(放送外マネージドアプリ)や、EPGアプリからのVODコンテンツの再生に対応する点など。

 NHKは、総合テレビの他にEテレやBS1、BSプレミアムでもHybridcastをスタートしており、「あさイチ」や「しごとの基礎英語」、「Biz+サンデー」、「世界ふれあい街歩き」といった番組で活用。放送外マネージドアプリの例として、天気や占いなどのコンテンツを用意。チャンネルを変えても右下にアプリを表示し続けるといったデモを行なっている。また、タブレット連携のデモとして、CEATEC展示のために用意した双方向クイズ番組「体感クイズ さわって教えて」をデモ。番組で出題されるクイズにスマートフォンで回答するサービスを体験できる。

NHKのHybridcast紹介コーナーで、対応番組を案内している
放送外マネージドアプリの例(画面右下)
放送外マネージドアプリの場合、チャンネルを変えても同じアプリの表示が続く
タブレットを使ったクイズ画面の例
手元のタブレットにタッチして回答する

 関西テレビは、Hybridcast 2.0向けコンテンツとして、競馬中継の番組を試作。レース開始前はHybridcastで出走馬のデータを確認できるほか、レース中は先頭馬のいる場所のマーカーや、コーナータイム、ゴール順位などの情報をレースに連動して表示する。テレビに情報を表示するタイミングは、放送の信号で送られるイベントメッセージ(放送局が送るトリガー信号)を活用する。

関西テレビによるHybridcast 2.0向けの競馬番組デモ

 さらに、直前のレースの振り返り映像をVODのように再生できることも特徴。放送中の画面と合わせて、昨年のレースをテレビに表示したり、手元のタブレットなどで再生することが可能。この動画は一般的なVODコンテンツとは異なり、番組を受信している間のみ再生できるようにするため、追加料金を必要とせず同じ番組に含まれるコンテンツとして提供することを想定している。

 今回のデモで使われた競馬番組は特に、放送画面にデータを表示するのに適していることから、他のスポーツでも同様に関連データを画面に表示するといった検証を行なっていく。

レース中は先頭馬の位置をマーカーで表示
過去のレースをVODで再生
タブレットで再生することも可能
SyncCastのデモ

 在阪テレビ局5社(MBS/ABC/TVO/KTV/YTV)が共同で開発している「SyncCast」は、Hybridcast 2.0を活用し、放送局が開発したスマホ/タブレット用セカンドスクリーンアプリが利用できることを目指して開発が続けられている。既にSyncCastのスマホアプリは提供されており、今後のアップデートで放送と連動する予定。

 現在のHybridcast対応スマホアプリは、テレビなどの機器メーカーが開発したものだが、放送局が開発したアプリを使えるようになることで、より番組内容に即した情報を提供しやすくなるという。使い方の主な例として、CM時にもスマホへ関連情報を表示させ、気になった場合は検索できるようにしたり、番組内に登場する店のデータを「お気に入り」に登録し、後からでもチェックできるといった機能を紹介している。アプリの制作ツールも開発している。

SyncCastアプリ
アプリからテレビを選局できる
お気に入りのコンテンツを蓄積して、後からチェックすることも可能

 また、新しい動きとして日本テレビ、テレビ朝日、TBSテレビ、テレビ東京、フジテレビの在京キー局とNHKもHybridcastの共通アプリを開発することを提案。前述のSyncCastと同様に、放送局がアプリを作ることで、テレビの機種を問わず、番組の内容に沿った共通の使い勝手を目指す。そのためにはメーカーの協力が必要なため、今回のCEATECに来場したメーカーの反応なども見ながら開発を行なうという。

日本テレビ、テレビ朝日、TBSテレビ、テレビ東京、フジテレビの在京キー局とNHKによる共通アプリのデモ
文字入力はタブレットやスマホで行なう
タッチパッドで絵を描き、番組に投稿するといった活用方法も提案

 10月1日から「民放初のHybridcast本格運用を始めた」というTBSは、トップ画面に、ニュースや天気、電車の運行状況などからどのウィジェットを表示するかを選べるカスタマイズ機能や、スマートフォンでのニュース動画のオンデマンド視聴が行なえるといった点を紹介している。

TBSのHybridcastトップ画面

 テレビ朝日は、アニメ「クレヨンしんちゃん」で、スマホを持って「あっちむいてホイ」を遊べるというデモを用意。テレビのHybridcast画面上に指のマークが出現したタイミングでスマホを上下左右のどれかに向けて、しんちゃんが向いた方向と同じだった場合は「勝ち」、違うと「負け」という文字と画像がテレビとスマホそれぞれに表示される。データ放送の場合は、リモコンで事前に選択するが、Hybridcastではスマホでリアルタイムに楽しめるのが特徴。

画面に指が表示されたところで、スマホを上下左右のどれかに向ける
勝った場合の画面
負けた場合。スマホにも「負け」と表示される
Hybridcastコンテンツ制作用のツールも各社が出展。写真はアシアルの「Monaca for Hybridcast」
メディアキャストの制作ツールを用いたゲーム

(中林暁)