ミニレビュー
愛用イヤフォンをLDAC/aptX HDで高音質ワイヤレスに。期待のBluetoothレシーバを使った
2018年7月3日 07:00
手持ちのイヤフォンに装着することでワイヤレス化できるBluetoothレシーバの新製品として、ついに高音質コーデックであるLDACとaptX HDの両方に対応したモデルが登場。6月上旬に発売されたエレコムのMMCX端子搭載Bluetoothワイヤレスレシーバ「LBT-HPC1000RC」を使ってみた。
MMCX端子でケーブル交換できるイヤフォンをBluetooth対応にできる製品で、イヤフォンは付属しないレシーバ部分(ケーブル)のみ。手持ちのMMCX搭載イヤフォンのケーブルから付け替えることで、スマホやオーディオプレーヤーなどとワイヤレス接続できるようになる。
MMCX端子を持つBluetoothケーブルは他社からもいくつか発売されており、これまでWestoneやShureの製品を使ってみたが、今回の「LBT-HPC1000RC(以下HPC1000RC)」が新しいのは、ワイヤレス伝送のコーデックとしてLDACとaptX HDの両方に対応したこと。ウォークマンNW-ZX300を使う筆者にとって、せっかくのハイレゾ音質をなるべく損なわずにワイヤレスでも楽しむ方法として期待し、4月のヘッドフォン祭で発表されてから発売を待ち望んでいた。
実売価格は19,800円前後で、ケーブル単体として考えると少し高価に思うかもしれないが、ウォークマンやAstell&Kernなどのハイレゾポータブルプレーヤー、Xperiaなどが対応するLDACやaptX HDの両方に対応したMMCX搭載レシーバとしては今のところ唯一の存在。有線のイヤフォンでお気に入りのモデルがある人にとっては、それを活かしつつワイヤレスにできるのがうれしい。
イヤフォンのケーブルを交換して高音質ワイヤレス化
HPC1000RCは、ケーブルとリモコン部、バッテリ部で構成する。さっそく、筆者が普段使っているAKG「N40」を接続してみた。MMCX端子のイヤフォンとケーブルで、無視できないのが端子部が問題なくつながるかどうかという点。同じ「MMCX対応」と書かれた製品でも、メーカーによってサイズ感が微妙に異なる場合があるからだ。
もちろん、今回のレシーバも正式なサポート対象としては同じメーカー(エレコム製イヤフォン)での接続となるのは基本だが、「MMCXなのだから、なるべく多くの製品とつながって欲しい」と思うのも正直なところ。
AKGの純正ケーブルと接続した場合に比べるとわずかに緩くも感じたが、カチッとした手応えがあり、すぐ外れそうという不安はなかった。Nシリーズのイヤフォンは、MMCX端子周りのスペースが狭めなので、端子部が太いイヤフォンケーブルだと干渉してうまく繋がらない場合もあるが、HPC1000RCは問題なく接続できてよかった。
AKG N40はケーブルを耳にかけて装着するイヤフォンだが、HPC1000RCのケーブルも耳掛けで問題なく着けられて、ケーブルの長さについても、足りなかったり余る感じもなくちょうど良かった。なお、エレコム製イヤフォンと接続する場合は耳掛けではなく下に垂らす形となる。レシーバ部の重量は12gで重みは感じず、有線で使っている人にとって、ケーブルからの解放感は大きいだろう。
次はいよいよ音を出してみる。ウォークマンNW-ZX300のBluetooth設定を、最高音質となるように「LDAC音質優先」を選択し、ペアリングした。
HPC1000RCには、リモコン部に3つのボタンがあり、中央の一番大きなボタンが電源や再生/一時停止。その上下にあるのが音量+と-のボタンだ。中央のボタン長押しで電源ONになり、そのまま押し続けるとペアリング待機状態になる。ウォークマン(やスマホなど)側のBluetooth設定で「HPC1000」と表示されたデバイスに接続するとペアリング完了。なお、NFCには対応していないのでかざしてペアリングはできないが、一度ペアリングすれば、次回以降は電源を入れた時に自動でつながる。ウォークマンとスマホの同時ペアリングもできる。
接続したウォークマンで音楽を再生。イヤフォンのN40(フィルタは「リファレンス サウンド」を装着)が持つ高域の繊細な表現力と、ゆったりした低域、余計な味付けのないサウンドをそのまま活かした形でワイヤレスでも聴けた。
最高990kbps伝送のLDACで接続したことで、ハイレゾ音源の情報量もしっかりと伝送。低域の量感なども、ワイヤレスということを意識させず十分に楽しめる。この音質を、ネックバンドだけのイヤフォンで楽しめるのはうれしい。「ワイヤレスはスカスカで音が悪い」と感じている人にも一度聴いてほしい、豊かな情報量で聴けた。
安定した接続にはユーザーの工夫も
Bluetoothイヤフォンでもう一つ重要なのは、接続が安定しているかどうか。筆者はソニーのヘッドフォンMDR-1000X('16年発売)を、電車や飛行機など主に長距離移動時に愛用しており、組み合わせはだいたいウォークマンとのLDACで接続だが、新宿などのターミナル駅周辺では特に、音が途切れてしまうことは多い。1000Xに限らず、電波が多く飛び交う都心部などでは、同様の悩みを持っているBluetoothヘッドフォン/イヤフォンのユーザーは少なくないだろう。
外に持ち出してみると、常に途切れずに聴き続けるというのは難しく、どうしても音が切れてしまう場合はある。特にLDACのような高ビットレート通信をする仕組み上でも、現状は難しいようだ。ただ、使い続けるうちにつながりやすいポジションが少しずつ分かってきた。
着けている時、レシーバの部分は首の後ろなので、ウォークマンはズボンの前ポケットではなく、例えばカバンの外側のポケットに入れて肩にかけると、スムーズにつながり続けていた。それでも途切れる場合、ウォークマンZX300でコーデックを選べるので「LDAC接続優先(自動)」を指定。それでも接続が良くない場合はaptX HDやaptXなど、他のコーデックを試すと良さそうだ。身も蓋もない言い方だが、せっかく良い音でも途切れてしまうと残念な気持ちになるので、使う環境に合わせて、安定して接続できる方を選びたい。
なお、接続中のBluetoothコーデックは、HPC1000RCのリモコン背面のLEDでも確認できる。このLEDは7秒ごとに点滅し、再生中に青2回だとSBC、青1回はAAC、青3回はaptX、緑1回はaptX HD、緑2回はLDACで接続していることを示す。
内蔵バッテリでの連続再生時間は約6時間。LDACなどに対応しているが、使える時間が極端に短くならないのは良かった。充電はリモコン部のmicroUSB端子経由で行なう。
なお、ウォークマン以外の機器の接続性を試すため、Astell&Kernの「AK70」も使ってみた。この製品はaptX HDもサポートしているので、対応機器との接続時には「aptX HDを使用しています」と明示される。
LDACは最大96/48kHz対応なのに対し、aptX HDは最高48kHz/24bitと数字ではやや下回るものの、SBCなどに比べて、ハイレゾのデータをなるべく損なわずに聴けることはうれしい。実際に聴いてみても、クラシック音楽の広いダイナミックレンジをしっかり再現されていた。
aptX HDの接続安定性については、“どんな場所でも完璧につながったまま”とはいかなかったが、LDAC同様に持ち方の工夫などでカバーはできた。現状、Bluetoothの高音質(高ビットレート)接続については、電波が飛び交う繁華街などでの利用は避けた方が無難かもしれない。
LDAC接続は、ヘッドフォンのMDR-1000Xでさえ途切れる場合があるので、小さなイヤフォンのレシーバでもつながり続けることは簡単ではないとは思う。コーデックの選択ができる機器を上手に利用して、使う環境に合わせた組み合わせを選ぶといいだろう。
リモコン部分のデザインは角ばっていて、ボタンの形を含めて最近のBluetoothイヤフォンとしてはやや大きめに感じる。ただ、手触りだけでボタンがはっきり分かるのは使いやすい。首の横あたりにあって視界には入らないので、とっさの時にもすぐ押せる安心感がある。リモコンの音量+/-ボタンは長押しすると曲送り/戻しができる。
“意外にいい音”の純正イヤフォンも
別のMMCXイヤフォンとも接続した。使ったのはShureのSE215。N40に比べると、MMCX端子部がより確実につながったように感じた。また、エレコムのイヤフォンである「EHP-RH2000ABK」と接続すると、純正なので当然ではあるが一番しっかりと装着できた。
エレコムのイヤフォンは、あまりじっくり使ってみたことはなかったこともあり、せっかくなのでハイレゾ対応モデル「EHP-RH2000ABK」を使って、実際の音を聴いてみた。豊かながら膨らみすぎずに締まった低域が印象的で、ダイナミック1基のシンプルな構成で高域までつながり良く、5,000円を切るイヤフォンとは思えない仕上がりの良さ。「意外にいい音、エレコム。」という同社のキャッチコピーをそのまま表す製品の一つだと感じた。
なお、MMCX端子のイヤフォンを使っていない場合は、同じエレコムのHPC1000シリーズで、ケーブルにイヤフォンが直付けされた「LBT-HPC1000MPGD」と「LBT-HPC1000AVGD」というモデルもある(これら2つは売り場が違うだけで製品は同じ)。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は22,800円前後。イヤフォンと別々に購入するよりは手軽に、いい音のワイヤレスを手に入れられる。
最近のBluetoothイヤフォンは標準のSBCコーデックのみのモデルでも良い音の製品は多くなってきたし、左右分離(完全ワイヤレス)のイヤフォンも増え、Bluetoothの選択肢は広がっている。今回試したHPC1000RCの良さが最も活きるのは、LDACやaptX HD対応のプレーヤーまたはスマホとの組み合わせなので、まだ恩恵を受けられるユーザーは限られるとはいえ、ソニーやAK以外でも徐々にこれらのコーデックに対応した製品は増えている。ケーブルに邪魔されず自由に音楽を聴けるワイヤレス音楽で、より良い音質も楽しめる新しい選択肢ができたことを歓迎したい。
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