【レビュー】PlayStation Vitaとtorne 3.5の連携機能を試す
-クイック書き出しでストレスの少ない連携
torne+PS3とPlayStation Vita |
17日に発売されたPlayStation Vitaにあわせ、PlayStation 3用地上デジタルチューナ「torne」も3.50にアップデートした(その後不具合修正のため3.51に更新)。3.51の最大のトピックは、torne録画番組のVitaへの転送機能だ。
従来もtorneからPSPや、ウォークマン/nav-u(有償)での番組書き出しに対応していたものの、Vitaでは5型/960×544ドットの大画面有機ELディスプレイを搭載し、ビデオ再生品質にも期待が持てる新デバイス。torneのVita書き出し対応により、Vitaのディスプレイの魅力をさらに高める機能になりそうだ。
それ以外にも、書き出し時間を大幅に短縮する「クイック書き出し」やVitaでのリモートプレイ対応、ソニー製レコーダとの連携強化などが図られている。早速Vitaとtorne 3.51の連携機能をテストした。
■ Vita用メモリーカードが必要
PlayStation Vita |
PlayStation Vitaでtorne番組書き出しに対応するためには、Vita専用メモリーカードが必要となるほか、専用アプリ「uke-torne」をインストールする。今回メモリーカードは16GBを用意(購入価格4,950円)した。
torne側の準備としては、3.51にアップデートした後、「クイック書き出し」の設定でPlayStation Vitaを選択する必要がある。クイック書き出しの設定を行なわずともVita用に書き出しはできるのだが、その場合Vita用ファイルへの変換を伴うため、書き出し時間は実時間以上となり、30分番組で約40分の書き出し時間が必要となる。クイック書き出しを選択していれば、5分程度でVitaへの転送が完了する。
クイック書き出しの選択で出力先のデバイスとして「PlayStation Vita」を選択。画質モードとして「高画質」と「標準画質」の2種類が用意される。いずれも解像度は720×480ドットで、NHKの15分の朝ドラ「カーネーション」を転送したところ、高画質が154MB、標準画質128MBとなった。
Vitaのハードウェアでは、最高720p(1,280×720ドット)のMPEG-4 AVC/H.264(High/Main/Baseline Profile)に対応しているため、できれば720pでの出力に対応してほしかった。
クイック書き出し | PlayStation Vitaを選択 | 画質モードは2種類 |
uke-torne |
転送を行なうためにはVitaとPS3をUSBケーブルで接続し、専用アプリ「uke-tonre」を起動。初回のuke-torne起動時にメモリーカード上に録画番組の保存領域を作成する。この保存領域にはほかのアプリケーションのデータを保存できないので、ゲームやアプリの利用が多い人は注意が必要だ。また、2GB以下しか残量が無い場合も領域作成はできない。
利用するメモリーカードの容量によって作成できる保存領域が異なっているほか、1台のVitaのuke-torneで使用できるメモリーカードの数は4枚までとなる。4枚を超えると初めてビデオを受け取った日時が古いカードから再生できなくなる。
【メモリーカードに作成できるビデオ専用領域】
容量 | 領域 |
32GB | 24GB、12GB、6GB、2GB |
16GB | 12GB、6GB、4GB、2GB |
8GB | 6GB、4GB、2GB |
4GB | 2GB |
ビデオの保存場所を作成 |
「ビデオを受け取る」にして転送 |
領域作成した後は、uke-torneで「ビデオを受け取る」をタップするだけ。するとVita側のビデオの受け取り準備が完了するので、torneの(VIDEO ビデオ)から任意の番組を選択して、「ビデオの書き出し」-[PlayStation Vita]を選ぶだけだ。クイック書き出し対応の番組には[Quick]の目印が表示される。
SCEによれば、クイック書き出しを使うことで、torneの3倍モード(標準画質)で録画した30分番組を5分で書き出し可能とのこと。
今回、15分番組をDRモードと3倍モードで録画し、Vitaにクイック書き出し(高画質)したところ、3倍モードが2分18秒、DRモード番組が2分29秒となった。やはり3倍モードのほうが早いが、それほど大きな差でもないという印象。ただし、同じ番組をクイックではなく、変換出力(Vita標準画質)したところ約20分かかった。クイック書き出しの効果は非常に大きいし、torneの使い勝手を大幅に向上するものだ。
torneのVideoから書き出し | クイック書き出し対応番組には目印が | 書き出し中 |
なお、クイック書き出しのモードは1種類しか選択できないので、Vitaで高画質と標準画質を使い分けたいという場合には、片方は再変換しながらの出力(実時間以上の出力時間が必要)になってしまう。同様にVitaとウォークマン、PSPといった複数のデバイスでクイック書き出しはできないので注意したい。ただし、クイック書き出しはVitaだけでなく、PSPなどでも利用できるので、Vitaを持っていないPSPユーザーでもクイック書き出しを活用できる。従来のtorne+PSPユーザーにもうれしい機能強化といえる。
■ HDに迫る解像感。タッチ“だけ”の操作は残念
Vitaのビデオ |
torneから転送した番組は、Vitaの「ビデオ」-[録画した番組]からアクセスできる。
実際に同じ番組で「高画質」と「標準画質」を比べてみたが、どちらも画質が良く、一見すると違いが判らないほど。間接照明の居間に強い朝日が差し込むという、比較的ノイズが出やすいシーンにおいても目立った破たんは感じさせず、解像度も十分に高い。特に高画質の場合は、一見するとHD解像度かなと思うほどの解像感がある。ディスプレイのコントラストが高く、色再現性も高いということもあるだろうが、思っていた以上に画質は良い。
PSPでは480×270ドットだった解像度が720×480ドットに高精細化されているほか、ディスプレイ性能も明らかに向上している。PSPをビデオ中心に使っていたユーザーは、Vitaへの買い替えを検討してもいいだろう。
ビデオの[録画した番組]で、torneから転送した番組にアクセス | ビデオの削除や日時別ソートも可能 | ビデオ再生画面 |
シーンサーチ |
あえて超高輝度のLED照明を大量に使った歌番組(AKB48リクエストSPECIAL 2011)を見てみると、さすがにLEDが強烈に明滅しながら、ダンスするようなシーンでは結構ノイズが乗り、輪郭も崩れることもある。とはいえ、おそらく放送の段階でかなり歪んでいるという厳しい条件でも、表情や動きなどは十分すぎるくらい確認できる。
シーンサーチ機能も装備。タッチパネルに触れて呼び出したUIの右上アイコンをクリックすることで、サムネイルが区切られ、シーンを選んで任意の箇所までスキップできるというもの。シーンの間隔は、15秒/30秒/1分/2分/5分から選択できる。選択中のサムネイルは動画プレビューも可能で、レスポンスもとても良く、使いやすい。
ビデオの操作用UI。15秒スキップ |
また、ビデオの15秒スキップ/バックやタイムバーサーチ(タイムバーの任意のポイントを選んでスキップ)、再生停止などの操作はディスプレイのタッチ操作で行なう。操作自体は難しくないが、方向キーや左右2本のアナログスティック、○/×/△/□ボタン、L/RキーなどせっかくのVitaのハードウェアキーがほとんど生かされていないのは意外だし、残念だ。
特に両手で持っている場合は、タッチパネル操作よりハードウェアキーのほうが押しやすい。ゲーム機として入力インターフェイスにこだわって開発しているはずなだけに、ビデオ再生時でももう少し積極的にハードウェアキーを活用してほしいと感じた。
その他、新たにVitaからのリモートプレイにも対応。リモートプレイの解像度もVita向けに高解像度化した。なお、3G経由のリモートプレイには対応せず、無線LAN経由でのみとなる。
■ とても優れたテレビ番組持出しソリューション
Vita連携に加え、ソニー製BDレコーダとの連係動作「レコ×トルネ」も強化。BDレコーダ「BDZ-SKP75」の内蔵スカパー! HDチューナで録画した番組再生にも対応する。また、BDレコーダの内蔵HDD残量表示がtorneから確認できるようになり、BDレコーダに録画された番組の番組情報表示も可能となった。
さらに、ver.3.00以降に発売された「ウォークマン」NW-Z1000シリーズ、及び「nav-u」NV-U97VT/U97Vにも対応(ウォークマン/nav-u対応は有料)。従来よりも高解像度でビデオの書き出しができるようになる。また、BGMと効果音の音量調整にも対応。新デザインテーマ「ウッドフレーム」も追加された(有料)。
サウンド設定で、BGMや効果音のサウンド設定に対応 | 新デザインテーマ「ウッドフレーム」 |
PlayStation Storeからビデオ購入 |
Vitaでは、PlayStation Storeからのビデオ購入など、torne連携以外にも多くのAV機能強化が図られており、AVプレーヤーとしてはより一層魅力を増している。やや残念なのはパソコンとの連携がUSBストレージでなく、専用のユーティリティ「コンテンツ管理アシスタント for PlayStation」が必要になったことだろうか。どんなパソコンでも転送できるというUSBストレージの利便性が無くなってしまったほか、現時点ではMac対応が行なわれていない。このあたりは今後の改善を望みたい。
ともあれ、高品位な大型ディスプレイを持つVitaという新デバイスと、クイック書き出しというtorneの新機能の連携により、双方の魅力を大幅に高めてくれていると感じる。Vita/torne双方の操作性、レスポンスの良さもあり、テレビ番組持出しソリューションとしての完成度は非常に高い。
(2011年 12月 19日)
[ Reported by 臼田勤哉 ]