大河原克行のデジタル家電 -最前線-
銀座ソニービル50年の歴史を振り返る。ショールームは8月28日営業終了
2016年8月23日 08:00
東京・銀座のソニービルをリニューアルする「銀座ソニーパークプロジェクト」がスタートしている。ソニービルは、2017年3月31日に営業を終了。その後、ビルを解体して平地に整備し、訪日観光客の増加が見込まれる2018年から2020年の間は「銀座ソニーパーク」としてスペースを開放することになる。
そして、東京オリンピック/パラリンピックが終了した2020年秋以降に、ビルの建設を開始し、2022年秋には新たなソニービルとして営業を再開する予定である。
その「銀座ソニーパークプロジェクト」の第1弾として、ソニービルの営業終了に先立ち、2016年8月28日には、ソニーショールームおよびソニーストア銀座が営業を終了する。さらに、ソニーイメージングギャラリー銀座も、2016年9月8日に営業を終了。いずれも、9月24日から銀座4丁目交差点にオープンする「GINZA PLACE」ビル内へと移転し、同ビルの4~6階の3フロアを使って、再び営業を行なうことになっている。
ソニービルは、1966年4月29日に、ソニー創業者の一人である盛田昭夫氏が、「東京・銀座の玄関として、ソニー本来のショールームの役割とともに、より有意義な建物を建設すべきである」と考え、それに基いて建設、開業した建物だ。
当時の文献を紐解くと、盛田氏は、「世界一地価が高い贅沢な場所に、電機専業メーカーがビルを建てることは、思い上がりも甚だしいと言われるかもしれない。だが、建てると決めた以上は最大の効果をあげるべく全力を尽くす」と発言しており、その一方で、「こんな地価が高いところでは、どんな商品を売っても採算があわない」と分析。ソニー製品だけに留まらず、各社の商品が展示できる総合ショールームにすることを決断したという。オープン当初は、自動車メーカーやオートバイメーカー、楽器メーカーなどの製品も展示されていた。
同社では、「ソニーのブランド発信基地としてだけでなく、よりすぐった一品を一堂に集めることで、すでに海外展開をはじめていたソニーが主導して、銀座を国際的なロケーションへと導くためのショールームビルとしてソニービルは誕生した」と位置づけている。
さらに、かつてはマキシム・ド・パリが入居し、現在でもサバティーニ・ディ・フィレンツェが入居するなど、話題の高級レストランが入っていることでも知られた。
もちろん、ソニーにとっても歴史的な拠点である。
世界初のトリニトロン方式カラーテレビの発表は、ソニー創業者である井深大氏自らが、ソニービルで記者会見を行なったほか、1994年12月に発売したプレイステーションも、発売に先駆けてソニービルでお披露目イベントを開催している。
そして、ユニークなのは、数寄屋橋交差点という角地にあるにも関わらず、角部分には入口を設けず、そこを33平方メートル(約10坪)に屋外公共広場「ソニースクエア」にしたことだ。
ここは、銀座の街との一体化を目指したエリアで、電機メーカーの枠を超えた盛田氏の強い思いが反映されている。
1966年のオープン時には、八丈島などから取り寄せた約2,000株のあせび(馬酔木)を植えたり、その後も、四季折々の変化に応じたイベントや、その時々のテーマにあわせたイベントを開催する場として広く活用されている。ソニービルをよく訪れる人にとっては、大型水槽を使ったソニーアクアリウムや、沖縄美ら海水族館との連動イベント、愛の泉チャリティイベントなどの定番企画を思い出すかもしれない。
そしてもうひとつの特徴は、「はなびら構造」と呼ばれるレイアウトだ。階段状のフロアがいくつにも重なっている構造で、階段を昇ったり、降りたりしながら、次のエリアへと進むことができる。
これは建築家の芦原義信氏が考案したもので、田の字型のいずれのスペースも100平方メートルの広さを持ち、それを90cmずつ、高さをずらすことで、1階から8階まで連続したひとつの空間を作りあげた。実に25層にもわたるフロアがひとつのフロアとして感じられる構造なのだ。
2016年は、ソニーにとって創業70周年の節目であり、ソニービルも開業50年目の節目を迎えている。
ソニーの平井一夫社長兼CEOは、「銀座ソニーパークプロジェクトは、成長に向けて変革を続けるソニーを象徴する、非常に大きな意味を持つ事業。『人が見たことのないものを作ろう。これまでになかった感動を作り出そう』という、ソニーの創造と挑戦の理念は、ソニービルという場においても引き継がれていく。このソニーらしいチャレンジを通じて、感動や驚きを届けていく」とコメントしている。
すでに営業終了まで1週間を切ったソニーショールームおよびソニーストア銀座、そして、営業終了まであと約半年となったソニービルの歴史を、写真を通じて振り返ってみる。
そして、ソニービルが、すべてのフロアを営業しているのは8月28日が最後。この最後の機会に、ソニービルを訪れてみるのもいいだろう。