大河原克行のデジタル家電 -最前線-

銀座ソニービル50年の歴史を振り返る。ショールームは8月28日営業終了

 東京・銀座のソニービルをリニューアルする「銀座ソニーパークプロジェクト」がスタートしている。ソニービルは、2017年3月31日に営業を終了。その後、ビルを解体して平地に整備し、訪日観光客の増加が見込まれる2018年から2020年の間は「銀座ソニーパーク」としてスペースを開放することになる。

東京・銀座のソニービル
銀座ソニーパークプロジェクトでは、ソニーが銀座に空き地をつくる

 そして、東京オリンピック/パラリンピックが終了した2020年秋以降に、ビルの建設を開始し、2022年秋には新たなソニービルとして営業を再開する予定である。

9月24日にオープンする「GINZA PLACE」。ソニーショールームとソニーストアが入る

 その「銀座ソニーパークプロジェクト」の第1弾として、ソニービルの営業終了に先立ち、2016年8月28日には、ソニーショールームおよびソニーストア銀座が営業を終了する。さらに、ソニーイメージングギャラリー銀座も、2016年9月8日に営業を終了。いずれも、9月24日から銀座4丁目交差点にオープンする「GINZA PLACE」ビル内へと移転し、同ビルの4~6階の3フロアを使って、再び営業を行なうことになっている。

 ソニービルは、1966年4月29日に、ソニー創業者の一人である盛田昭夫氏が、「東京・銀座の玄関として、ソニー本来のショールームの役割とともに、より有意義な建物を建設すべきである」と考え、それに基いて建設、開業した建物だ。

ソニービルのオープンを告知する新聞広告。「お知らせすべきかどうか いくども迷いました」というユニークなメッセージ
かつての「SONY」ロゴは赤い表示だった。1973年からコーポレートカラーは現在の青としたが、1989年にガイドラインの整備を図り、1990年以降は青に統一している

 当時の文献を紐解くと、盛田氏は、「世界一地価が高い贅沢な場所に、電機専業メーカーがビルを建てることは、思い上がりも甚だしいと言われるかもしれない。だが、建てると決めた以上は最大の効果をあげるべく全力を尽くす」と発言しており、その一方で、「こんな地価が高いところでは、どんな商品を売っても採算があわない」と分析。ソニー製品だけに留まらず、各社の商品が展示できる総合ショールームにすることを決断したという。オープン当初は、自動車メーカーやオートバイメーカー、楽器メーカーなどの製品も展示されていた。

未来型のコンセプトカーも展示されていた
楽器やオートバイも展示されている
新聞広告に掲載された当時のフロアレイアウト

 同社では、「ソニーのブランド発信基地としてだけでなく、よりすぐった一品を一堂に集めることで、すでに海外展開をはじめていたソニーが主導して、銀座を国際的なロケーションへと導くためのショールームビルとしてソニービルは誕生した」と位置づけている。

 さらに、かつてはマキシム・ド・パリが入居し、現在でもサバティーニ・ディ・フィレンツェが入居するなど、話題の高級レストランが入っていることでも知られた。

 もちろん、ソニーにとっても歴史的な拠点である。

 世界初のトリニトロン方式カラーテレビの発表は、ソニー創業者である井深大氏自らが、ソニービルで記者会見を行なったほか、1994年12月に発売したプレイステーションも、発売に先駆けてソニービルでお披露目イベントを開催している。

かつては大型のブラウン管テレビなどが展示されていた
2001年のプレイステーション2発売1周年フェアの様子
1996年にはなんとアップルがイベントを行なったこともあった
1994年のウォークマン発売15周年記念イベント

 そして、ユニークなのは、数寄屋橋交差点という角地にあるにも関わらず、角部分には入口を設けず、そこを33平方メートル(約10坪)に屋外公共広場「ソニースクエア」にしたことだ。

 ここは、銀座の街との一体化を目指したエリアで、電機メーカーの枠を超えた盛田氏の強い思いが反映されている。

ソニービルの屋上から数寄屋橋の交差点を見るユニークな構図の写真
1966年、ソニースクエア最初のイベントとなったあせび(馬酔木)の展示。4月29日から6月3日まで行なわれた

 1966年のオープン時には、八丈島などから取り寄せた約2,000株のあせび(馬酔木)を植えたり、その後も、四季折々の変化に応じたイベントや、その時々のテーマにあわせたイベントを開催する場として広く活用されている。ソニービルをよく訪れる人にとっては、大型水槽を使ったソニーアクアリウムや、沖縄美ら海水族館との連動イベント、愛の泉チャリティイベントなどの定番企画を思い出すかもしれない。

1968年の最初のソニーアクアリウム。奄美徳之島の熱帯魚
1975年の愛の泉では、「GINZA DE DATE」を提案
はなびら構造の模型

 そしてもうひとつの特徴は、「はなびら構造」と呼ばれるレイアウトだ。階段状のフロアがいくつにも重なっている構造で、階段を昇ったり、降りたりしながら、次のエリアへと進むことができる。

 これは建築家の芦原義信氏が考案したもので、田の字型のいずれのスペースも100平方メートルの広さを持ち、それを90cmずつ、高さをずらすことで、1階から8階まで連続したひとつの空間を作りあげた。実に25層にもわたるフロアがひとつのフロアとして感じられる構造なのだ。

フロアは階段状の「はなびら構造」になっている。各フロアがA~Dまでの4層で構成。2階は2A~2Dというように各スペースを呼ぶ
「はなびら構造」を考案した建築家の芦原義信氏

 2016年は、ソニーにとって創業70周年の節目であり、ソニービルも開業50年目の節目を迎えている。

ソニービル「OPUS」では2016年7月10日まで銀座ソニーパークプロジェクト展を開催していた

 ソニーの平井一夫社長兼CEOは、「銀座ソニーパークプロジェクトは、成長に向けて変革を続けるソニーを象徴する、非常に大きな意味を持つ事業。『人が見たことのないものを作ろう。これまでになかった感動を作り出そう』という、ソニーの創造と挑戦の理念は、ソニービルという場においても引き継がれていく。このソニーらしいチャレンジを通じて、感動や驚きを届けていく」とコメントしている。

銀座ソニーパークプロジェクト展会場の様子
様々な資料が展示されていた
記録写真集も展示。紙焼きに使用可、使用不可を指示している生々しいもの
会場で配布されていたポストカード

 すでに営業終了まで1週間を切ったソニーショールームおよびソニーストア銀座、そして、営業終了まであと約半年となったソニービルの歴史を、写真を通じて振り返ってみる。

 そして、ソニービルが、すべてのフロアを営業しているのは8月28日が最後。この最後の機会に、ソニービルを訪れてみるのもいいだろう。

新たなソニービルへの期待を書いてもらうコーナーも
そこには多くの期待の声が集まっていた

銀座ソニービル50年の歴史

ソニービルの地鎮祭の様子
1964年のソニービルの建設当初の様子
1965年のソニービルを建設している様子
当時としては大型ビルの建設であったことがわかる
1966年にオープンしたソニービル。周りに高いビルが少ない
完成記念贈答品として用意されたソニービル型ラジオ
ソニービル完成記念の特別切符も発売された
ソニービル10周年記念本では紙で立体模型を作ることができた
オープン当初のソニービル。壁面にはブラウン管が埋め込まれている
ビルの壁面に埋め込まれた2300個のブラウン管の様子
ブラウン管でトリニトロンの文字を映し出した
銀座のランドマークとしての役割を果たしていた
年末には「よいお年を」の文字も
オープン当時のソニービルの内部の様子
ソニーショールームの様子
資料をみるとオープン当初は、ソニー以外のテナントが入っていたのがわかる
ソニープラザストアの様子
トヨタも出店。幻の名車「トヨタ2000GT」が展示されていた
ファッションメーカーなども出店していた
こちらはマックスファクターのフロア
ソニービルの設計図
ソニービルの設計図
設計図には芦原義信建築設計研究所の文字がある
ソニービルには当時として最新の様々な工夫が凝らされていた
1966年にソニースクエアで行なわれたおもちつきの様子
南米からペンギンがやってきたことも。1967年のことだ
1967年にはオランダのチューリップ配布イベント
1967年11月~12月にかけて行なわれたサンタの工場
1968年には祇園祭の山鉾「長刀鉾(なぎなたほこ)」を展示。大型企画が多かった
恒例の「愛の泉」チャリティイベントは1968年からスタートしている
ネオンによる大きなクリスマスツリーが登場したこともあった
ソニーフェアとしてメビウスの輪を展示
1972年には鉄道開業100年のイベントを開催
1973年のコンピュータアート展「動くて」の展示
1975年にはWWFと連動したイベントを開催
1975年のエリザベス女王陛下を歓迎するイベントも実施
1976年のソニービルのパーティーの様子
伝説となった宇崎竜童氏のストリートライブ。1981年に行なわれた
ストリートライブはスクランブル交差点にまで人が広がるほどの盛況ぶりだった
1982年の映画「ロッキー3」の公開にあわせてシルベスター・スタローン氏が訪れた
1985年には科学万博つくばと連動したイベントを開催
1985年には伊勢神宮式年遷宮にあわせたイベントを開催
1985年にはほたるのイベントを開催。「矢掛のほたる」を体験できた
1986年のソニービル20周年記念の様子
1986年には下呂温泉から温泉を持ってきた
1990年には屋久杉を展示してみせた
1991年のさっぽろ雪まつりと連動した大氷像の展示も
2003年のPSXの発売を告知するイベント
2008年に行なわれたシネマ歌舞伎の様子
2011年に行なわれた日本ラグビーフットボール協会によるチャリティイベント
高血圧の日にあわせてノバルティスファーマが実施したイベント
2014年には、アメイジングスパイダーマン2

2016年現在のソニービルの様子

今年3月にオープンした東急プラザ銀座から見るソニービル
ソニービルのエレベーターは当時最速と呼ばれたものを採用。秒速3メートルという性能。盛田氏の要望だという
エレベーターのボタンはわかりやすく大きいものに改装した
1階から4階までがソニーショールーム
1階のソニーショールームの入口の様子
1階フロアはフィーチャードゾーンとして、アクションカムを展示
2Aから2Dフロアまではデジタルカメラのコーナー。ジオラマを使った撮影体験コーナーを用意
ぼけ味効果の撮影体験コーナーも設置。季節にあわせた木々を採用。風を当ててひまわりが揺れているなかでの撮影体験ができるこだわりも
レンズは自由に試してみることができる。これも直営ショールームならではの体験だ
αの強みは暗所での撮影。真っ暗な場所での撮影を体験できる
2Bフロアではコンパクトデジカメの体験ができる
2Cフロアではデジカメセミナーが行えるスペースを用意。土日は満杯になるという
2Dフロアでは、話題のRX10IIIを展示。実際に試すこともできる
アクションカムの展示スペース
アクションカムはアクセサリーとの組み合わせで具体的な利用シーンを示す
ハンディカムのコーナー。最新機種を一堂に取り揃える
3AフロアはVAIOおよびXperiaのコーナーとなっている
3AフロアにはSmartBandなども展示している
3Bフロアはプレイステーションを展示。Playstation VRの体験もできる
ソニーストア限定モデルなども展示している
3Cフロアはホームシアターのコーナー
ホームシアターの提案も行なっている
音声検索のデモストレーションを行ない、シニア層に新たなテレビの使い方を提案する
透明のアクリル板を使うことでX9300Dの裏面をみせるといった工夫も
3DフロアはLife Space UXの各種製品を展示
4K超短焦点プロジェクターを展示しているのは都内ではここだけだ
4Aのフロアはソニーがショールームを最初に設置したフロアとなる
4Aフロアはハイレゾオーディオの展示コーナーとなっている
ハイレゾオーディオの様々な体験を提案している
レコードプレーヤー「PS-HX500」の実演もできる
シアタールームも用意されている
シアタールームでは発売前の製品を先行展示することも。先行展示はソニーショールームならではの特徴だ
4Bフロアはホームオーディオのコーナー
オプションを用意して様々なオーディオの楽しみ方を提案している
4Cはソニーストア銀座が入居しており、実際に商品が購入できるようになっている
ソニーストア限定の刻印モデルも販売している
4Dは英語および中国語が話せるスタッフが常駐して、製品を販売しているツーリストフロア
ソニーお客様ご相談カウンターも4階フロアにある
5月20日からオープンしたイノベーションラウンジ
SONYのロゴを椅子にしている
ここでは社内ベンチャー育成プログラム「ソニー アクセラレーション プログラム」で製品化されたものを試すことができる
イノベーションラウンジ内にはFUTURE LABプログラムのコーナーも設置
リモートコントローラのHUIS。電球や扇風機などの家電製品を操作できる
スマートウォッチ「wena wrist」
バンド部分も柄を変えることができるFES WATCH
どこでも香りを楽しむことができるAROMASTIC
MESHは様々な機能を組み合わせて利用するツール
Life Space UXの具体的な利用シーンを提案してみせる
生活シーンに溶け込んだ様子を演出している
6階にはソニーイメージングギャラリーを開設
プロカメラマンによる作品を展示。カメラメーカーとしての本気ぶりを感じることができる
ソニー・イメージング・プロ・サポート窓口。会員向けのサポートを行う
8階にあるOPUS。各種ベイントのほか、記者会見にも使用された
1階のPUB CARDINALは来年3月まで営業している

大河原 克行

'65年、東京都出身。IT業界の専門紙である「週刊BCN(ビジネスコンピュータニュース)」の編集長を務め、2001年10月からフリーランスジャーナリストとして独立。BCN記者、編集長時代を通じて、20年以上に渡り、IT産業を中心に幅広く取材、執筆活動を続ける。 現在、ビジネス誌、パソコン誌、ウェブ媒体などで活躍中。PC Watchの「パソコン業界東奔西走」をはじめ、クラウドWatch、家電Watch(以上、ImpressWatch)、日経トレンディネット(日経BP社)、ASCII.jp (アスキー・メディアワークス)、ZDNet(朝日インタラクティブ)などで定期的に記事を執筆。著書に、「ソニースピリットはよみがえるか」(日経BP社)、「松下からパナソニックへ」(アスキー・メディアワークス)など