第167回:REGZA Z7シリーズの実力は? 東芝「55Z7」

~新デザインで正常進化した“新Z”~



55Z7

 東芝 REGZAの2012年秋冬モデルに、クラウドサービスをテーマにしたレグザZ7シリーズがラインナップされた。クラウドサービスについては、AV Watch編集部が後日フォローアップする予定なので、大画面☆マニアとしては、ハイエンドモデルの証であるZシリーズ最新型としての画質の実力の評価にフォーカスする。

 REGZA史上最も狭額縁モデルとなった55Z7の画質は果たしていかほどなのか。探ってみることにしたい。なお、製品写真は都合により47Z7となっているが、評価は55Z7で行なっている



■ 設置性チェック~額縁段差無し。「おまかせドンピシャ」は環境光色選択

狭額縁デザインが光るREGZA Z7シリーズ

 55Z7のディスプレイ部の重量は21.6kg。スタンド部はこれまでのREGZAのようなセクシーな曲線状の脚部を持たない平板のものとなっている。このスタンドは安定性を重視しているためか4.9kgとなかなかの重さ。

 ディスプレイ部の大きさは123.4×6.5×73.6cm(幅×奥行き×高さ)。額縁部が驚くほど狭く、55インチという画面の大きさながらも圧迫感がない。額縁を実測してみたところ、左右がそれぞれ17mm、上が18mm。下はLEDインジケータがあるボディ部までをいれても43mm、入れなければ23mmと、かなりの狭額縁デザインとなっている。また、額縁部と映像表示面との段差のない一枚板デザインとなっているのも55Z7の特徴だ。つまり、どこから額縁なのかも、明確には見た目では分からないのだ(前述の額縁の幅の実測は映像表示部の開始位置から計測)。


スタンド部は左右に±15度の首振り機構を備えているスタンド部は平板デザイン。重量は見た目以上にある

 今回、55Z7を私物の55ZG2の前面に重なるように設置したところ、55ZG2と55Z7の大きさ比較が視覚的にできてしまった。55Z7の方がテレビ台との接合部の位置が低いので、同じ画面サイズながらも、55Z7の方が55ZG2に対して映像の表示位置が約6cmも低かった。

 このディスプレイ部を低くマウントするのは、REGZAに限らず、最近の流行デザインなので、テレビ製品選びの際には留意しておきたい。

最外周のフレームは存在するが映像表示面側に額縁の段差が存在しないベゼルレスな表示面となっているディスプレイ部の厚みは6.5cm

 55Z7の表示面は光沢(グレア)タイプとなっている。高画質モデルは、どうしてもコントラスト性能に優れた光沢タイプを選択する傾向があるが、部屋が明るいとその室内情景が映像表示面に映り込むという「嫌い」がある。

 東芝側の説明によれば、55Z7からは、最表面側(ユーザー側)の偏光板を変更し、グレア特性を弱めたとしている。55ZG2と比較すると、部屋の映り込み具合は若干低減されたような感じも受けるが、全く映り込みがなくなっているわけでもない。相対する位置に窓や照明があるところへの設置は控えたいところだ。ひとたび映像表示が始まってしまえばそれほど気にならない。ただ、暗い映像を視聴する際には、照明を落とし気味にしたほうが良い。


部屋の環境光色を24色から選択可能になった「おまかせドンピシャ高画質」

 55Z7には、設置関連のユニークな新機能が搭載されたので、紹介しておこう。それは室内の環境光にホワイトバランスを調整できる「おまかせドンピシャ高画質」機能だ。

 室内照明色、壁紙色の組み合わせによって室内は微妙な色の環境光が充満する。その色に応じてテレビ側の表示映像のホワイトバランスを調整してやろう、というのがこの機能だ。ユーザーが設定するのは、設置した部屋の環境光を、55Z7が用意した24色から選ぶことだけ。

 白壁の白色照明ならば「白」、暗室ならば「黒」を選べば良い。「緑」系や「赤」系はどういうときに選ぶのか首をかしげてしまいそうだが、実は前者は畳敷きの和室、後者は煉瓦むき出しの壁などを想定したものだとのこと。ここの設定は補助の補助という感じで劇的に画質を変えてしまうものではないため、「気になったときには設定する」というスタンスでいいだろう。デフォルトでは標準設定の「白黒1」という、白壁×純白照明を想定した設定になっている。

 スピーカーは左右10W+10W構成。ウーファユニットは無いが、新設計の35mm×75mmの角形フルレンジユニットに屈折型バスレフ機構を組み込んだため、低音域の再生特性も十分優秀とのこと。

 また、55Z7のスピーカーは本体下部に下向きに設置されているが、この出力音像の定位を上に持ち上げて、画面中央付近からなっているような聴感を創造する「レグザサウンドイコライザー」機能も新搭載されている。

 実際にサウンドを聞いてみると、輪郭のくっきりとしたパワーのあるサウンドを出せているのが実感できた。特に音量を上げたときの出力が、こもらず、ビビらず、口径の大きいスピーカーで鳴らしたような音が出せているのがなかなか感動的だ。高音の粒立ちもよく、ハイハットの高周波までがよく聞こえる。低音はもう少しパワーがあるといい気もするが、そのあたりは「低音強調」の設定「弱」「強」を選ぶことで改善できる。

 定位の持ち上げ機能の効果も良好で、確かに画面の中央から聞こえる。もともと、音像の知覚は映像の影響を受けやすく、人が話している映像を見ているとき、音声がたとえそこから出ていなくても、そこにから出ているように錯覚(心理効果)がもたらされるとされる。しかし、音楽ライブ番組でよくあるような、奏者や歌手が俯瞰視点で映っているときには、音像と映像の定位のズレが露呈しやすい。今回の「レグザサウンドイコライザー」は、そうした定位感の不安定さを十分に低減できており、音楽番組などのサウンド主体のコンテンツを楽しむ際には有用だと思った。

 定格消費電力は218W、年間消費電力量は154kWh/年。エッジ型の白色LEDバックライト搭載モデルとしては若干高めだ。


■ 接続性チェック。別売HDDで“タイムシフト”対応

背面の接続端子パネル側面の接続端子パネル

 接続端子パネルは正面向かって左側の背面と背面側にレイアウトされている。HDMI入力は背面側に3系統、側面側に1系統の総計4系統を配備。うちHDMI1はARC(オーディオ・リターン・チャンネル)に対応する。

 アナログビデオ入力は、D5、コンポジットビデオを備えるが、排他仕様となっている。PC入力端子は無し。PC、PS3との接続はHDMIを利用することになる。PCやPS3などのゲーム機と接続したときに問題となるHDMI階調レベル設定は「機能設定」メニューの「外部入力設定」-「RGBレンジ設定」から行なえる。PCやPS3との接続では、この設定をREGZAとPC、PS3側とで一致させたい。

 HDMIをPC接続に利用した際に、アナログ音声をそのHDMI入力に連動させて利用する機能は、姿を変えながらもZ7シリーズに継承されている。これまでのREGZAでは、PC入力に連動させるステレオミニジャックが用意されていたが、Z7ではこれを省略。その代わりに、アナログビデオとセットになっている音声入力(RCA)をこの用途に利用できる。この機能が利用出来るのはHDMI3だ。

 USB端子は背面に3つ、側面に1つ。側面のUSB端子はキーボードやUSBメモリ、デジカメなどの接続用となっている。背面側の3つのUSB端子はA、B、Cの記号が振ってあり、それぞれ用途が指定されている。

「TOSHIBA」のロゴがあるところがタイムシフトマシン対応USB HDD(THD-250T1)。ディスプレイ部と合体させることが可能

 USB-A、USB-Bはタイムシフト録画用のUSB HDD接続用で、USB-Cは通常録画用のUSB HDDを接続するためのものになる。ここにはサードパーティ製のUSB HDDを接続することもできるが、Z7シリーズの背面中央にアタッチできる「タイムシフトマシン対応USBハードディスク」(THD-250T1)もメーカー純正オプションとしてラインナップされる。店頭予想価格は5万円前後。容量はタイムシフト用が2TB、通常録画用が500GBで、USB-A、B、Cの全端子を占有する。ディスプレイ部と合体できるスタイリッシュな設置スタイルはなかなか魅力的だ。

 THD-250T1のほか、バッファローやアイ・オー・データ機器からもタイムシフトマシン用のHDDが発売される予定だ。
 
 このほか、Ethernet、光デジタル音声端子、アナログ音声出力(ミニジャック)、ヘッドフォン出力などを装備。IEEE 802.11a/b/g/nの無線LANも装備する。



■ 操作性チェック ~リモコンのボタン配置やメニュー構成が変更

 リモコンは、ここ最近のREGZAに採用されている同一デザインのものがそのまま採用されている。ただ、ボタンはXシリーズのような硬質タイプではなく、普及モデルのREGZAと同じゴムのような軟かいものだ。Z7シリーズは上位機なので、ここの質感はもう少しよくなれば、と思ったりもする。

リモコン。デザインは従来モデルと同じだが、数字の文字サイズが多きくなっていたり、ボタン配置が異なっていたり、と小変更が施されている

 チャンネル操作用の数字ボタン、そして「チャンネル」「音量」の調整ボタンは太字で、しかもボタン一杯一杯に大判印字されたものになっている。これは見やすさを重視した配慮だと思われる。

 また、REGZAはリモコンの基本デザインは同じでも、新モデルが登場するごとにボタン配置を変更することが通例となっているが、今回も幾つか気になる変更があったので簡単に取り上げておこう。

 ネット関連機能は55Z7では「クラウド」機能に集約され、これまでの「ブロードバンド」はなくなった。クラウド機能については、評価中はネット連動機能も含めて、サービス開始されていなかったため評価していない。この辺りについては、追って本誌で別記事が掲載される予定となっているのでそちらを参照して欲しい。

 視聴中/再生中の番組情報を表示してくれる「番組説明」ボタンは、フタ下にあるボタンながら私物のレグザでよく使っていた操作なのだが、このボタンが55Z7ではなくなってしまい、ここには[もっとTV]のボタンが来ている。個人的にはちょっと残念である。

 さらにフタ下のボタンパネルを観察していくと、Z7シリーズでは意外にも大きくレイアウトが変更されていることに気がつく。

 まず、このフタ下に3D立体視関連の操作を行なう[3D]ボタンが来ているところ。これまで[3D]ボタンは、レグザでは最上段にあったものだが、最下段、それもフタの下に隠れる位置に移動されてしまった。まるで3Dブームの沈静を反映したかのような移設劇である。

 実際に、使っていて便利だったのは、このフタ下に新設された[節電]ボタン。ここを押すたびに「標準」状態を含めて3段階にバックライトを暗くして節電モードでの視聴が出来るようになっている。付けっぱなしで何かの作業をする「ながら見」には有効な操作系だ。気になるシーンになったときにはボタン操作一発で通常モードにも戻せるのも使いやすい。

 新設機能でやや「?」なのは、フタ下に新設された[時計]ボタン。文字盤そのまま画面に時刻が表示されるだけの機能だ。これまでのREGZAでも(そして55Z7でも)、[番組表]ボタンを押せば、番組表と共に時刻表示は行なえるので、なぜ、この機能のためにボタンを新設したのかはちょっと不思議に思える。

「始めにジャンプ」が最上段に。クラウド機能の「ざんまいプレイ」操作ボタンもこの位置に

 現在視聴中のリアルタイム放送されている番組を、タイムシフト機能を駆使して、最初から見られる[始めにジャンプ]ボタンは、位置こそ変わったが健在だ。これは、個人的にはカットもされず、フタ下に追いやられず、位置変更程度で良かったと思っている。

 それと、55Z7では、メニュー周りにずいぶんと大きな手が入れられたことも触れておきたい。

 以前のレグザでは「詳細調整」メニューに、ぎっしりとページ切換付きで調整項目が並び、ほとんどカオス状態になっていたが、55Z7では、これを一新、整理して、各調整項目をカテゴライズしてまとめなおしている。


構成ががらっと変わった「映像調整」メニュー

 ノイズリダクション関連、超解像関連は「精細感・ノイズ調整」、質感リアライザー、LEDエリアコントロールなどは「コントラスト調整」、色温度、色解像度などは「色詳細調整」、倍速ワイドエリア補間、プログレッシブ処理などは「プロ調整」にまとめられている。希望の調整に比較的明解にアクセスでき、上下カーソルを何度も押さなくても希望の調整項目にたどり着けるので扱いやすくなったと思う。

 電源オン操作から地デジ放送画面が映るまでの所要時間は約2秒。地デジ放送のチャンネル切換所要時間は約1.5秒でまずまずの速さだ。入力切換所要時間はHDMI→HDMIで約1.5秒、HDMI→D5で約1.5秒と、こちらもまずまずの速さ。

 アスペクトモードの種類はスーパーライブ、ズーム、映画字幕、フル、ノーマル、HDスーパーライブ、HDズーム、DVDファイン、ゲームフル、ゲームノーマル、レトロゲームファイン/SDゲームファイン、ポータブルズーム、Dot By Dotなど。

 「DVDファイン」「レトロゲームファイン」「SDゲームファイン」などの「ファイン」系モードは自己合同性型、再構成型の超解像処理、色の超解像処理が適用されるモードで、480p/480i映像に対して、横解像度方向は2倍オーバーサンプリングを行なって、縦解像度方向は二重化を行なう。非整数次倍のスケーリング回路を通らないのでボケ味が少ないが、全画面表示にはならない点に留意したい。切換速度はファイン系モードやゲーム系モードに変更する際に限り約2.0秒ほどの暗転を伴うが、それ以外のアスペクトモード間の変更所要時間はほぼゼロ秒だ。


■ 画質チェック~「コンテンツモード」の実力は? 3Dは偏光に

画素形状は逆「く」の字形。フォーカス感もあり、くっきりとしている

 液晶パネルはLG製のフルHD(1,920×1,080ドット)解像度のIPSパネルを採用している。画素構造をルーペで確認してみると、逆「く」の字形のRGBサブピクセル構造で、最近のレグザのIPSパネル採用モデルではよく見られるタイプのものになる。

 冒頭で述べたように55Z7は、映像表示部と額縁部との境目がない一枚板デザインとなっているが、ソニーのBRAVIA HXシリーズのように液晶パネルと表示面の間を樹脂で埋めるような構造はとっていない。しかし、BRAVIA HXシリーズのテレビ石的な見え方に近い、なんというか映像が表示面に張り出しているかのように見える。斜めから見ると実際には、表示面に対して液晶パネルが数mmほど奥まっていることが分かるのだが、55Z7のこの映像の見え方は好感触だ。

 バックライトは白色LEDで、ユニットがディスプレイ部の下辺にエッジ実装される形態になる。分割数は非公開とのことだが、縦方向に十数分割となっているようだ。

 実際に白色オブジェクトを移動させるテスト映像を表示させてみたが、画面上のX座標(横軸)上に明るいオブジェクトがあると、その同軸縦帯状にバックライトの輝度が明るくなる。明暗が適度に分散する一般的な映像ではほとんど気がつかれることはないと思うが、同一縦帯上に暗い背景と明るいオブジェクトが同居した場合には、若干の黒浮きを感じる事があるかも知れない。

 暗い映像における黒浮き具合は、最近のIPS液晶パネル採用機と比較すると大きく変わった部分はないと感じる。液晶テレビらしく、暗部よりは明部の伸び具合でコントラスト感を稼ぐタイプの画作りだ。

同一輝度の緑を全面に表示させた例。下辺エッジバックライトシステムのためか左右端は若干暗い。しかし、気になるほどではない

 狭額縁モデルで気になるのは表示面外周と中央部とで輝度差が感じられる問題だが、55Z7は、若干左右端が暗いが、気になるほどではない。

 「コントラスト感調整」-「LEDエリアコントロール」で「オフ・弱・中・強」の設定が選べる。「弱」と「強」では明部の伸び具合はそれほど変化しないが、「強」の方が暗部の沈み具合を強める傾向がある。黒浮きを抑え込むことを重視したいユーザーは「強」設定がいいかもしれない。


LEDエリアコントロール=オフLEDエリアコントロール=弱
LEDエリアコントロール=中LEDエリアコントロール=強。強に近づいていくにつれて画面右側がドラスティックに暗くなっていくのが分かる

 発色は極めて良好。赤は朱色やオレンジに寄らず純度の高い発色だ。緑や青も暗部まで自然でなおかつ純色は深い色味を伴っている。REGZA 55X3では、これまでのレグザとは傾向の異なる発色を感じたものだが、55Z7では元々のREGZA系発色に戻されたような感覚だ。

 肌色の発色も素直で、白色LEDバックライト機でしばしば見られるような黄味が乗る感じもない。ハイライト部の肌は透明感のある白さで輝き、陰影部は血の気を感じる暖かみを伴っている。

 総じて、白色LED光源から作り出される色としては、かなり良質な色を絞り出せていると思う。

画調モード=あざやか画調モード=標準画調モード=ライブプロ
画調モード=映画プロ画調モード=ゲーム画調モード=PC

 55Z7には補間フレーム技術とバックライトスキャンによる残像低減機構が搭載されている。この機能に対してのインプレッションも述べておこう。

 補間フレームのロジックは基本的にはREGZA 55X3などのレグザエンジンCEVO世代から変更はないとのこと。なので、「倍速モード」設定を、補間フレーム挿入ありの「スムーズ」や「クリアスムーズ」の「スムーズ」系に設定すると、うまく補間が決まればスムーズで美しいが、そうでないときはしばしばピクセル振動が出てしまう特性に変わりは無い。ただ、「倍速ワイドエリア補間」設定を「ワイド」として、広範囲にまで各ピクセルの動きベクトル検出をさせると、そうしたピクセル振動を低減させることも出来るようだ。

 なお、55Z7は、下辺エッジバックライトシステムなので、従来REGZAの左右辺エッジバックライトによる上下縦方向スキャニングではなく、3エリア分割の左右横方向スキャニングとなっている。

 今回も評価用に「ダークナイト」(ブルーレイ)の冒頭、ビル群を飛ぶシーンを見てみたが、「効果がそれほど期待できないのでは?」という先入観とは裏腹に、奥から手前に移動してくるビルの輪郭がぶれて見えるホールドボケが低減されることが確認できた。「ダークナイト」のような毎秒24コマ映像(1080/24p)では補間フレームを挿入しない「倍速モード=フィルム」としてリアル24コマ表示相当の方が安心してみられると感じる。補間フレームを挿入せず、バックライトスキャンを組み合わせる「倍速モード=クリアフィルム」設定は補間フレームエラー時のピクセル振動に怯える必要も無いため、原信号主義の人にもお勧めできる。

 55Z7の調整機能で、特に、注目しておきたいのは新設された「コンテンツモード」だろう。これは、いわゆるプリセット画調モードである「映像メニュー」とは別に設けられた項目になる。「映像メニュー」(画調モード)は、画調の全体方針を決める項目で、「コンテンツモード」は、表示映像の特性を「そのコンテンツが持つ特質」に最適化するためのものになる。つまり、ユーザーが見る画調は「映像メニュー」×「コンテンツモード」の組み合わせのバリエーションがあることになる。

ヒストグラムにおいて肌色の分布が分かるようになった図版やアニメのような単色で塗りつぶしたような映像は、このようにヒストグラムは離散的なものになる緑色も肌色の分布も分かる

 この「コンテンツモード」機能の根幹となっているのがリアルタイムヒストグラム解析ロジックで、従来モデルに搭載されていたヒストグラムロジックを時分割で異なる色分布を取得するように拡張。これによって特定色の頻度が高い映像や、階調が平坦な映像に対しての処理を的確に行えるようになっている。

 具体的には「グラフィックスNR」「色階調リアライザー」「色質感リアライザー」の3つが、この拡張されたヒストグラムロジックを応用して開発された新処理系になる。

 「グラフィックスNR」は、アニメのべた塗り領域に対するノイズを低減させる機能、「色階調リアライザー」はアニメのようなべた塗り映像に置ける「スキッ歯」状になる暗部ヒストグラムに対して補正を掛ける機能、「色質感リアライザー」は「緑」領域のヒストグラムに着目して、緑のガンマ補正を適性に調整する機能になる。なぜ「緑」かといえば、それはゴルフ放送を美しく見せるためだ。

 このようにZ7で新設された「コンテンツモード」は、アニメ番組やゴルフ番組などを視聴する際に威力を有効に発揮できる機能ということになる。

色質感リアライザー=オフ色質感リアライザー=緑検出。緑色の階調が豊かになる

 コンテンツモードをゴルフに設定した際には、ゴルフ番組では、コースの芝の緑色や階調が、液晶パネルの緑の表現領域を最大限に活用して表示されるようになり、緑のダイナミックレンジがまるで拡大されたように見える。効果としてはグリーン上の起伏が立体的に見えたり、コースの奥行き方向の空気感のようなものがリアルに見えてくるようになる。この「緑ガンマ補正」は緑付近の色に対して選択式に行われるため、選手が着ている白い衣服の陰影が白飛びしたりすることはない。

 東芝によればモード名こそ「ゴルフ」だが、「緑が主体の比較的明るい番組であれば効果は大きい」とのことだったので、「プロ野球のクライマックスシリーズ」をこれで見てみたのだが、なるほど、球場内のダイアモンドフィールドの緑が平坦なものから、より奥行き方向に広がって見えるようになることが実感できた。グラウンドの緑のダイナミックレンジが広がって見えているが、選手の白いユニフォームの陰影も破綻せずちゃんと見えている。この他、緑が支配的な海外の国立公園を取り上げた世界遺産番組などを見てみたが、同様の効果が得られていた。「ゴルフ」というモード名に惑わされず、広く活用が出来そうなモードである。

コンテンツモード=オフコンテンツモード=ゴルフ。鴨の階調には触られず、芝の陰影が豊かになっていることが写真でも分かる

 コンテンツモードのアニメは「アニメ(放送)」と「アニメ(BD)」が用意されており、前者はノイズ低減、輪郭線先鋭化重視志向の画作りとなり、後者は精細感重視志向の画作りとなる。

 なお、デフォルトではアニメのためのあつらえられたはずの「色階調リアライザー」が「アニメ(放送)」と「アニメ(BD)」のいずれにおいても、なぜかオフとなっている。これをオンにして、実際に「マギ」「ちびまる子ちゃん」などの地デジ放送アニメを見てみたが、暗色で塗りつぶされた領域の階調が持ち上げられ、セルアニメ(最近はそう見えるものまでもがCGベースだが)の良さが強調されるらしい鮮明な画作りとなる。やや暗部が一緒にブーストされる感じもあるので、「使うか使わないか」の好みは分かれるかも知れない。そうした印象に配慮してデフォルトではオフにしているのだろう。

コンテンツモード=オフコンテンツモード=レトロアニメ。モスキートノイズが低減される

 個人的には、蛍光灯照明下の明るい部屋では、この色階調リアライザーの副作用である暗部の過度の持ち上げ感はほとんど感じないので、そうした状況ではオン常用でも問題ないと思われる。

色階調リアライザー=オフ色階調リアライザー=オン。想定された映像とは異なるが、オンにすると暗部の階調が持ち上げられることが写真でも分かる

 REGZAの高画質機能の代名詞的存在「超解像」機能については、REGZA ZP3などから搭載された「レゾリューションプラス7」へと進化している。初代超解像から採用されている「再構成型超解像技術」、複数フレームからの情報を元に超解像処理を行なう「三次元フレーム超解像技術」、自身の類似性を元に超解像処理を行なう「自己合同性型超解像技術」、YUV=4:2:0で伝送される放送映像の1/4に間引かれた色情報を復元する「色超解像技術」までが「レゾリューションプラス6」で、これの効果についてはZP2編で詳細に解説、インプレッションを行っているのでそちらを参考にして欲しい。

 本稿ではレゾリューションプラス7で新設された「カラーテクスチャ復元」についてのインプレッションを述べておきたい。

 これは「6」までの各種超解像技術によって陰影(輝度情報)を先鋭化するだけでなく、高彩度の高周波描写領域に対して色情報にまで超解像の影響を展開する処理系になる。実際に、自然を撮影した映像を見てみたが、草花の葉脈、昆虫や鳥類の羽根模様などのディテールが豊かに浮かび上がるようになる。「カラーテクスチャー」はデフォルトでは「オート」になっているが、美しい動植物や自然を捉えた番組などを視聴する際には強制的に有効化する「オン」を明示設定しても良いと思う。このカラーテクスチャ復元の処理モードを決定する「復元モード」設定は「オート」のままでいい。

カラーテクスチャー=オフ
カラーテクスチャー=オン。紫色の花びらの葉脈が先鋭化されて質感がより分かりやすくなていることが分かる

 55Z7は3D立体視にも対応した3Dテレビ製品だ。これまで、東芝REGZAはゲームユーザーやパーソナルユースに特化したZP系には偏光方式の3D立体視を採用していたが、今季からは上位シリーズであるZ7においても偏光方式とした。最近はアクティブシャッター方式ではなく、偏光方式の3D立体視に切り換える動きが強くなっているのは東芝だけではない。アクティブシャッターグラス方式を強く推進してきたパナソニックでさえ、偏光方式のVIERAを発売している。

 さて、実際に55Z7で、3D映像として「怪盗グルーの月泥棒」を見てみたが、やはり偏光方式の強みである「明るい3D映像」が、まず実感される。蛍光灯照明下で見ても「3D映像だから暗い」というネガティブさを感じない。

 それと左右の目が、逆の目用の映像を知覚してしまうクロストーク現象も、ほぼ皆無だ。クロストーク現象の評価確認用に使用している「怪盗グルーの月泥棒」のジェットコースターのトンネルのシーンは、クロストークがシビアに出るシーンなのだが、このシーンでも二重映りは全く知覚されない。

 偏光方式は左右の目用の映像を、液晶パネルの偶数ラインと奇数ラインで振り分けて表示させていることから、各目が見ることになる映像は1ライン分が抜けた映像になる。1舞の液晶パネルの解像度の半分ずつを左右の目用の映像表示に使っているのだから当然のことだ。このことが偏光方式3D立体視の「弱み」として指摘される。

 実際に55Z7での3D映像を見た感じでは、映像が動いている限りはそうした「歯抜け」感は感じられない。しかし、丸い物体などを静止させて見ると、曲面表現で多少のジャギー感を露呈させることはできる。これは、筆者がよく言っていることなのだが、交互に左右の目の映像が表示されるアクティブシャッターグラス方式の3D立体視と違い、常に両目で3D映像を見ることになる偏光方式の3D立体視は動いている物体を見た際の遠近感が把握しやすい。いわゆる「運動視差」が知覚しやすいのだ。これはゲームプレイなどには没入感の増強や遊びやすさに対して良好に作用する。

 いずれにせよ、「時々、カジュアルに3Dコンテンツを楽しむ」という向きには、55Z7の採用した偏光方式3D立体視はマッチしていると考える。「商品」として「3D立体視に対応させる追加コスト」もこの方式の方が小さいはずなので、今後、REGZAにおいては、偏光方式の3D立体視への流れを強めていくと思われる。

 レゾリューションプラス7の「カラーテクスチャ復元」を3D映像にも効かせられるか試してみたが、ちゃんと効果は現れる。「怪盗グルーの月泥棒」では、キャラクター達の「髪」「眉」の線表現がくっきりと描き出されるようになるなど、効果は体感できた。好みに応じて使ってみるといいだろう。


■プリセット画調モードのインプレッション

【あざやか】

 輝度優先のモードだが、REGZA X3のときのような黄味の強さは感じない。全体的に彩度は高めだが、純色も特定の色が強いとか、特定の色にシフトしていると言うこともなく、バランスはいい。コントラスト重視の画調だが、階調の破綻も少ない。アニメやCG映画などとの相性がよい画調モードだ。

【標準】

 輝度は「あざやか」と比較するとだいぶ押さえられるが、発色の傾向は「あざやか」とよく似た傾向だ。ただし、若干色温度は「あざやか」よりも低いので肌の発色には暖かみがある。「標準」というその名の通り、万能性が高い画調で、一般的なテレビ放送はこのモードの常用でOK。

【ライブプロ】

 コントラスト感よりも階調のリニアリティと情報量を重視した画調。ピーク輝度は押さえ気味で、人肌はより暖かみが増す。暗室に近い状態で視聴するのに適しており、「映画プロ」と並んで、映像鑑賞用に適したモードだ。なお、モード名の「ライブ」は音楽ライブからのネーミングではなく、テレビ放送を見るためのもの、という意味が込められているらしい。

【映画プロ】

 「ライブプロ」とよく似た画調だが、「ライブプロ」よりもさらに色温度が落ちている。個人的には、最近の映画と組み合わせるよりは、昔の映画との組み合わせに適した画調だと感じた。

【ゲーム】

 「標準」に近い画調。倍速モードなどにおいて補間フレーム挿入がキャンセルされるなど、低遅延の画調モードとなる。

【PC】

 色温度は「標準」に準拠するが「ライブプロ」の高輝度版のような色調となる。階調もバランスが取れており、人肌もなかなか美しい。モード名の割には応用範囲の広そうなモードだ。

・表示遅延

 55Z7には「3Dゲームターボ」と言われる、低遅延表示モードが搭載されている。テレビ側の機能としては「ゲームダイレクト」と呼ばれる機能名に集約されてしまっているが、この機能により、55Z7では、表示遅延は公称値約12ms(60Hz時約0.7フレーム)を実現している。

画調「ゲーム」モードでは26ZP2とほぼ完全に同一の表示内容を示す結果に

 実際に、テレビ製品としては業界最速の表示遅延3ms(60Hz時約0.2フレーム)を有するREGZA 26ZP2と比較計測してみた。以下の写真で小さい画面の方が26ZP2だ。配線にはHDMI分配機を用いて時間軸上のズレは理論値的には起こらないようにし、EXILIM「EX-FC150」を用いて240Hz撮影を行なっている。

 画調モード「ゲーム」では、測定した結果としては26ZP2とほぼ同一の表示内容となり、遅延が公称値通りかなり小さいことがうかがえる。

 画調モード「ゲーム」のまま、補間フレームありの倍速駆動モードを活用した際の表示遅延も計測してみたが、こちらは約19ms(60Hz時約1.1フレーム)であった。補間フレームありでもこの低表示遅延性能はかなり優秀だと言える。

 画調モード「ゲーム」のまま、サイドバイサイドの3D立体視映像の表示遅延も計測してみたが、こちらは約78ms(60Hz時約4.6フレーム)となった。

 参考までに画調モード「標準」でも、遅延を計測してみたが、こちらは約57ms(60Hz時約3.4フレーム)となり、一般的な液晶テレビの表示遅延と同等であった。逆に考えれば、「ゲーム」モードの結果は、それだけ特別な手が掛かっていると言うことがうかがえる。

画調「ゲーム」モードで、「補間フレームあり」とした場合は約19ms(60Hz時約1.1フレーム)の遅延画調「ゲーム」モードでは約78ms(60Hz時約4.6フレーム)の遅延画調「標準」モードでは約57ms(60Hz時約3.4フレーム)の遅延

■ 薄型・狭額縁・下辺エッジライトでも高画質。55型オーバーの大画面機も欲しい

 REGZA ZG/ZTシリーズは、従来モデルも実力は高かったのだが、タイムシフト機能を標準搭載していたことから「売価が競合機よりも高め」となっていた。今回のZ7では、タイムシフト機能をオプション化したことで、見かけ上の売価が下がり、商品としての競争力は上がったと言える。

 また、このタイムシフト機能のオプション化は、デザインの一貫性さえこだわらなければ、サードパーティのHDDで容量変更などもできることから、上級ユーザーにとっては歓迎されそうだ。

 画質面においては、総じてこれまでのREGZAの上位モデルのポテンシャルを正常進化させたような作りになっていると感じた。薄型デザイン、狭額縁デザイン、下辺エッジライト…といったデザインコンシャスな作りになっても、画質面では、従来のZシリーズの実力をちゃんともっている。REGZA Z7はそんなモデルだ。

 1つ、今秋冬モデルに要望があるとすれば、REGZA J7にある65インチのような、大画面サイズがZ7にも欲しかったという点だ。他社の競合製品でも、上位機には大画面サイズが用意されることが多い。今後、4K2Kパネルの84インチのレグザが製品化されるはずで、その4Kモデルに配慮し、東芝としては55インチオーバーの上位機は4K対応にしていくという戦略があるのかも知れないが。


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(2012年 11月 1日)

[Reported by トライゼット西川善司]

西川善司
大画面映像機器評論家兼テクニカルジャーナリスト。大画面マニアで映画マニア。本誌ではInternational CES他をレポート。僚誌「GAME Watch」でもPCゲーム、3Dグラフィックス、海外イベントを中心にレポートしている。映画DVDのタイトル所持数は1,000を超え、現在はBDのコレクションが増加中。ブログはこちらこちら。近著には映像機器の仕組みや原理を解説した「図解 次世代ディスプレイがわかる」(技術評論社:ISBN:978-4774136769)がある。