西田宗千佳のRandomTracking

第660回

縦横比はどれがいい? エンタメ目線で考える、サムスン新「Galaxy Z Fold」

Galaxy Z Fold8

サムスンの新スマートフォン「Galaxy Z Fold8」「Galaxy Z Fold8 Ultra」「Galaxy Z Flip8」が、8月7日から発売になる。

Galaxy Z Fold8 Ultra
Galaxy Z Flip8

特に「Galaxy Z Fold8」は、開くと4:3に近い縦横比になることから、「エンタメ志向の製品」と言われている。

では、実際に使ってみるとどう感じるのだろうか?

映像配信や電子書籍、音楽などを楽しむ上で、それぞれの製品がどのような特徴を持っているかを確認してみた。

ここで見えてくることは、今後出てくると噂される「あのスマホ」にも関わってくることだ。

左から「Galaxy Z Flip8」、「Galaxy Z Fold8 Ultra」、「Galaxy Z Fold8」SIMフリーモデルの直販価格は、Fold8 Ultraが296,780円(256GB)から、Fold8が269,880円(256GB)から、Flip8が192,680円(256GB)から

サイズなどをiPad miniと比較

まず、Fold8とFold8 Ultraを、閉じた状態・開いた状態で比較する。Fold8 Ultraが既存スマホのサイズ感に近く、開いた時のサイズもやはり大きい。Fold8は開かない状態だと「コンパクトなスマホ」であるのがわかる。

閉じた状態でFold8 Ultra(左)とFold8(右)を比較
開いた状態でFold8 Ultra(左)とFold8(右)を比較

文字入力中にも十分なスペースを確保でき、2つ以上のアプリを開いて扱うなら、Fold8 Ultraがもっとも有利で、使いやすい形状であることも見えてくる。一般的なスマホの形状に近いFlip8も同様だ。

Fold8 Ultraは、アプリを2つ開き、キーボードを開いても比較的余裕がある
Flip8は普通のスマホと同じ感覚

Fold8はコンパクトであるものの、閉じた時にはどうしても縦が狭くなる。「閉じた状態は確認用で、本格的に使うときには開く」という、Fold8の設計思想がよくわかる。

Fold8を閉じた状態で、iPhone 17 Pro Max(右)と比較。かなり縦が短くコンパクト
Fold8は縦が短いので、キーボードを出すと狭く感じる。キーボード自体をカスタマイズすると広くはなるが……

では、「エンタメに向いたスマホ」とはどういうものなのだろう?

実際のところ、処理性能などで大きな違いがあるわけではない。ゲームでの処理性能は出てくるが、ハイエンド機種と言っていい今回の3製品の場合、どれも十分に高性能だ。

そうなると、中核となる違いは「縦横比」ということになる。

映画やドラマを見るときの「縦横比×サイズ」の組み合わせは、大きなディスプレイであるほど迫力が増し、縦横比の関与度が小さくなる。片手で簡単に持てるサイズであるからこそ、映像以外の無駄な領域が少ない方が没入感は高くなる。

そこで気になるのは小型タブレットの代名詞とも言える「iPad mini」と比較した場合だろう。一般的なスマホ(大型のもの)の例としてiPhone 17 Pro Maxを加え、画面サイズと重量を一覧表にしてみた。

こうして数字だけを比べると、Fold8 Ultraは意外とiPad miniに近く、他はさらに一回り小さいことがわかる。

Galaxy新型3種と、iPad mini・iPhone 17 Pro Maxを比較

ではサイズではなく縦横比を考慮するとどうか? こうなると脳内で想像するのは難しくなってくる。

本体を開き、Fold8とFold8 Ultra、Flip8、iPad mini(A17 Pro)、iPhone 17 Pro Maxを比較してみた。

Fold8(左)とiPad mini(右)に、16:9のYouTube動画を表示
Fold8 Ultra(左)とiPad mini(右)に、16:9のYouTube動画を表示

もっとも注目を集めているFold8と比較すると、iPad miniはやはり少し小さめだ。

Fold8 Ultraも、シンプルに開いただけだと、Fold8より映像の表示領域は狭くなる。Fold8 Ultraを開いた上で90度回転すると、動画のサイズはFold8に近くなる。

Fold8 Ultra(左)とFold8(右)を比較すると、ディスプレイサイズはUltraが大きいが、動画自体のサイズはFold8が大きい
Fold8 Ultra(左)を90度回転させると、Fold8(右)と動画サイズは同じくらいになる

この点から、動画を見るにはFold8がいい……と言えるわけだ。

参考にFold8(上)とFlip8(下)で同じ動画を表示したときのもの

「ヒンジの軽さ」と「機能」のトレードオフ

もう一つ大きな点として、Fold8は「閉じた状態か開いた状態かの2択」での利用を想定していることが挙げられる。

使ってみるとわかるが、Fold8は非常に手軽に開ける。開くために必要な力が、Fold8 UltraやFlip8に比べ少なくて済む。Fold8に比べると、Fold8 Ultraは完全に開くために「もうひと押し」必要になってくる。

理由は、「フレックスモード」の有無だ。フレックスモードとは、曲げている途中で止められるようになる機能のことだ。Fold8 Ultraを含め、過去のFoldシリーズや他の多くの二つ折りスマホでは同じような機能がある。

Fold8 Ultraで「フレックスモード」を使った様子。折り畳んで机の上に置けるので便利

しかしFold8にはフレックスモードがない。おそらくはそのため、開くのが非常に軽くなっているのだ。

「開いた状態で使うのが前提」になるとすると、軽くいつでも開けることが重要。フレックスモードがないため、以下の写真のような形で動画を見ることはできないわけだが、サムスンは縦横比の選択も含め、「こういう使い方」を前提として設計した、ということだろう。

なお、「机の上に置いて動画を見る」なら、以下の写真のように、「表側で表示し、表側を自分側に向ける」のが良さそうだ。

Fold8は表側を見る感じに折ると、机の上に置いて動画の視聴がしやすい

Flip8については別の視聴方法もある。折り畳んだまま使うのだ。画面は小さくなるが片手で簡単に持てる。過去のFlipシリーズでは、折り畳んだ状態で動作するアプリケーションの制限が厳しかったが、Flip8の場合、その制限がほぼなくなった。登録作業さえすれば、Netflixなども視聴できる。

Flip8では閉じたままコンパクトにして動画を見られるというメリットも

輝度・発色はGalaxyの圧勝。二つ折りには「スピーカーの位置」という課題も

肝心の画質・品質はどうだろう?

新しいGalaxyはどれも十分高画質だ。Fold8は、開いた状態だと多少輝度が落ちるようにも思えるが、不満を感じるほどではない。

むしろ輝度の面ではiPad miniの方が不満を感じる。スペック上は、Fold8がピーク輝度3,000nits、iPad miniがピーク輝度500nitsなので当然なのだが。あくまでスペックのピーク輝度であり、実使用上ここまでの差はない。とはいえ、輝度の分、色の鮮やかさも劣るので、室内で輝度を落として見る場合を除き、画質面ではFold8が有利、と言って差し支えない。

音質については、音質より音場に違いがある。

Fold8もFold8 Ultraも、音場はほんの少し不自然だ。構造上、スピーカーはどうしても左側に寄るし、開いて動画を見る場合には「左側のパネルの上下から出る」形になる。そもそもステレオ感は薄いし、音場の形も少し左側に偏っている。

Fold8を開いたところ。とても薄くて軽いが、構造上スピーカーは左側の上下に来てしまう

iPad miniの場合には、本体を横長に持って使う場合、左右にスピーカーがあるので、ちゃんとステレオかつ、左右に自然にひろがる。

ヘッドフォン・イヤフォンの利用を前提にするなら重要な点ではないが、自宅などで気軽に使うときの音質を考えると、二つ折りは「構造的に厳しい部分がある」ことも認識しておきたい。

電子書籍ではFold8がベスト。「フレーム」の太さでiPad miniとの差が縮まる

次に、電子書籍の利用を考えてみよう。

これはシンプルに、Fold8がベスト、と言っていい。開いたときの縦横比が、より紙の書籍に近いためだ。

左がFold8、右がiPad mini。サンプルとして、鈴木みそ氏著『銭』第一巻を、著者許諾を得て利用
Fold8 Ultra(左)とiPad mini(右)。Fold8 Ultraは90度回転させて見開きモードにした

特にKindleを使う場合、Fold8 Ultraでは、開いた上で90度回転しないと「見開き」にならない。これは、Fold8が「開いた状態では、アプリは横長を基本」として作られているのに対し、Fold8 Ultraは「開いた状態でもアプリは縦長画面を基本」としているためだ。開いたままの状態だと「単ページ」扱いになる。

Fold8 Ultra(左)とFold8(右)。開いただけだと、Fold8 Ultraは「単ページ」扱いに
Fold8 Ultra(左)を90度回転させると見開きモードになる

ただ、この辺の扱いはアプリによっても変化する。「ebookJapan」アプリは、Fold8 Ultraでも「開いた状態では見開きを基本」としていた。

また、漫画や雑誌ではなく、いわゆる「文字もの」書籍の場合、見開きによる問題は起きづらい。表示量が単純に増えるので、Fold8 Ultraの方がいい、という人も出てきそうだ。

Fold8(左)とiPad mini(右)。サンプルには、拙著『ネットフリックスの時代』を利用
Fold8 Ultra(左)とiPad mini(右)。文字ものだと不利とは感じない。

もう一つ面白いのは、電子書籍は白バックであることが多いので、ディスプレイ周辺のフレームが目立ってしまうことだ。結果として、動画に比べ、Fold8でもFold8 Ultraでも、iPad miniとの差を感じづらい。

iPad miniを持ったところ。電子書籍だとフレームが気になる
Fold8を持ったところ。軽量だが、見えている範囲はiPad miniに比べそこまで小さくない
Fold8 Ultraを持ったところ。90度回転して見開きにしている。こちらだとiPad miniにサイズがより近くなる

iPad miniに比べ、重量が90g以上軽くなることを考えても、Fold8はかなり有利である、といえそうだ。

漫画では大きな課題になる「パンチホール」

使ってみて、もう一つ気になったのは「パンチホールの位置」の問題だ。

インカメラのための穴のことだが、iPad miniはフレームの中にあって目立たない。一方でFold8もFold8 Ultraも、パンチホールは右側のパネルの上にある。

動画を見るときは、動画の外にパンチホールが来るので問題は少ない。

動画視聴中はパンチホールは動画内に食い込んでこないので気にならない

だが電子書籍を読む場合には、画面全体を使う関係上、パンチホールが「絵の中に入る」こともある。Fold8でもFold8 Ultraでも、これは回避しにくい。

Fold8では、絵の中にパンチホールが入ってしまう
Fold8 Ultraの場合、このページではたまたまパンチホールは絵にかかっていないが、状況はFold8と同じだ

しょせん小さな穴だし、慣れてしまえば……というのは事実なのだが、知っておいてほしいことではある。

「噂の新スマホ」は、Fold8とどう違う製品になるのか

こうやってみていくと、Fold8は確かにエンターテインメント向けだ。一方でFold8 Ultraに価値がないわけではなく、通常のアプリを使うなどの場合には、こちらの方がいい。これまでのGalaxy Z Foldシリーズを使ってきた人には、Fold8 Ultraの方が支持されるのもわかる。

iPad miniとの間には十数万円の価格差があり、そこは大きな問題だ。安く済ませるなら「二つ折りでなくiPad miniを」というのは、論理的ではあるだろう。しかし、「いつも持っているデバイスで最大限コンテンツを楽しむ」「iPad miniより画質は良い」ことも考えると、「スマホを買い替えるときに二つ折りを選ぶ」のも1つの選択肢だと考える。

その上で気になるのは、秋にやってくると「噂される」iPhoneの二つ折りだ。

噂なので、出てこない可能性だってあることには留意が必要である。同時に、いくつか噂はあるものの、細かな違いは発表されるまで明確にはならない、ということも考えておきたい。

この記事でわかるように、二つ折りの価値は縦横比だけでは決まらない。ヒンジがどんな構造なのか、スピーカーはどこにあるのか、インカメラはどのように搭載されているのかといった要素が、細かく影響してくる。

今回のGalaxyの新型は、どれも良くできた製品だ。ただ、どれも一様に高価である。高価であるだけの価値はあると思うが、自分の用途に向く・向かないといった部分には、まさに「細かい部分の作り」が効いてくる。既存のアプリがどんな画面で表示されるのか、縦中心なのか横中心なのか、それとも切り替えが簡単なのか。そこも使い勝手には響いてくる。

サムスンはFold8とFold8 Ultraの性格を変える、という選択をした。他社はどうなるのか。

そういうことを、サムスンの新機種から考えるのも面白いのではないだろうか。

西田 宗千佳

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、AERA、週刊東洋経済、週刊現代、GetNavi、モノマガジンなどに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。 近著に、「生成AIの核心」 (NHK出版新書)、「メタバース×ビジネス革命」( SBクリエイティブ)、「デジタルトランスフォーメーションで何が起きるのか」(講談社)などがある。
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