西田宗千佳のRandomTracking
第660回
縦横比はどれがいい? エンタメ目線で考える、サムスン新「Galaxy Z Fold」
2026年8月6日 08:00
サムスンの新スマートフォン「Galaxy Z Fold8」「Galaxy Z Fold8 Ultra」「Galaxy Z Flip8」が、8月7日から発売になる。
特に「Galaxy Z Fold8」は、開くと4:3に近い縦横比になることから、「エンタメ志向の製品」と言われている。
では、実際に使ってみるとどう感じるのだろうか?
映像配信や電子書籍、音楽などを楽しむ上で、それぞれの製品がどのような特徴を持っているかを確認してみた。
ここで見えてくることは、今後出てくると噂される「あのスマホ」にも関わってくることだ。
サイズなどをiPad miniと比較
まず、Fold8とFold8 Ultraを、閉じた状態・開いた状態で比較する。Fold8 Ultraが既存スマホのサイズ感に近く、開いた時のサイズもやはり大きい。Fold8は開かない状態だと「コンパクトなスマホ」であるのがわかる。
文字入力中にも十分なスペースを確保でき、2つ以上のアプリを開いて扱うなら、Fold8 Ultraがもっとも有利で、使いやすい形状であることも見えてくる。一般的なスマホの形状に近いFlip8も同様だ。
Fold8はコンパクトであるものの、閉じた時にはどうしても縦が狭くなる。「閉じた状態は確認用で、本格的に使うときには開く」という、Fold8の設計思想がよくわかる。
では、「エンタメに向いたスマホ」とはどういうものなのだろう?
実際のところ、処理性能などで大きな違いがあるわけではない。ゲームでの処理性能は出てくるが、ハイエンド機種と言っていい今回の3製品の場合、どれも十分に高性能だ。
そうなると、中核となる違いは「縦横比」ということになる。
映画やドラマを見るときの「縦横比×サイズ」の組み合わせは、大きなディスプレイであるほど迫力が増し、縦横比の関与度が小さくなる。片手で簡単に持てるサイズであるからこそ、映像以外の無駄な領域が少ない方が没入感は高くなる。
そこで気になるのは小型タブレットの代名詞とも言える「iPad mini」と比較した場合だろう。一般的なスマホ(大型のもの)の例としてiPhone 17 Pro Maxを加え、画面サイズと重量を一覧表にしてみた。
こうして数字だけを比べると、Fold8 Ultraは意外とiPad miniに近く、他はさらに一回り小さいことがわかる。
ではサイズではなく縦横比を考慮するとどうか? こうなると脳内で想像するのは難しくなってくる。
本体を開き、Fold8とFold8 Ultra、Flip8、iPad mini(A17 Pro)、iPhone 17 Pro Maxを比較してみた。
もっとも注目を集めているFold8と比較すると、iPad miniはやはり少し小さめだ。
Fold8 Ultraも、シンプルに開いただけだと、Fold8より映像の表示領域は狭くなる。Fold8 Ultraを開いた上で90度回転すると、動画のサイズはFold8に近くなる。
この点から、動画を見るにはFold8がいい……と言えるわけだ。
「ヒンジの軽さ」と「機能」のトレードオフ
もう一つ大きな点として、Fold8は「閉じた状態か開いた状態かの2択」での利用を想定していることが挙げられる。
使ってみるとわかるが、Fold8は非常に手軽に開ける。開くために必要な力が、Fold8 UltraやFlip8に比べ少なくて済む。Fold8に比べると、Fold8 Ultraは完全に開くために「もうひと押し」必要になってくる。
理由は、「フレックスモード」の有無だ。フレックスモードとは、曲げている途中で止められるようになる機能のことだ。Fold8 Ultraを含め、過去のFoldシリーズや他の多くの二つ折りスマホでは同じような機能がある。
しかしFold8にはフレックスモードがない。おそらくはそのため、開くのが非常に軽くなっているのだ。
「開いた状態で使うのが前提」になるとすると、軽くいつでも開けることが重要。フレックスモードがないため、以下の写真のような形で動画を見ることはできないわけだが、サムスンは縦横比の選択も含め、「こういう使い方」を前提として設計した、ということだろう。
なお、「机の上に置いて動画を見る」なら、以下の写真のように、「表側で表示し、表側を自分側に向ける」のが良さそうだ。
Flip8については別の視聴方法もある。折り畳んだまま使うのだ。画面は小さくなるが片手で簡単に持てる。過去のFlipシリーズでは、折り畳んだ状態で動作するアプリケーションの制限が厳しかったが、Flip8の場合、その制限がほぼなくなった。登録作業さえすれば、Netflixなども視聴できる。
輝度・発色はGalaxyの圧勝。二つ折りには「スピーカーの位置」という課題も
肝心の画質・品質はどうだろう?
新しいGalaxyはどれも十分高画質だ。Fold8は、開いた状態だと多少輝度が落ちるようにも思えるが、不満を感じるほどではない。
むしろ輝度の面ではiPad miniの方が不満を感じる。スペック上は、Fold8がピーク輝度3,000nits、iPad miniがピーク輝度500nitsなので当然なのだが。あくまでスペックのピーク輝度であり、実使用上ここまでの差はない。とはいえ、輝度の分、色の鮮やかさも劣るので、室内で輝度を落として見る場合を除き、画質面ではFold8が有利、と言って差し支えない。
音質については、音質より音場に違いがある。
Fold8もFold8 Ultraも、音場はほんの少し不自然だ。構造上、スピーカーはどうしても左側に寄るし、開いて動画を見る場合には「左側のパネルの上下から出る」形になる。そもそもステレオ感は薄いし、音場の形も少し左側に偏っている。
iPad miniの場合には、本体を横長に持って使う場合、左右にスピーカーがあるので、ちゃんとステレオかつ、左右に自然にひろがる。
ヘッドフォン・イヤフォンの利用を前提にするなら重要な点ではないが、自宅などで気軽に使うときの音質を考えると、二つ折りは「構造的に厳しい部分がある」ことも認識しておきたい。
電子書籍ではFold8がベスト。「フレーム」の太さでiPad miniとの差が縮まる
次に、電子書籍の利用を考えてみよう。
これはシンプルに、Fold8がベスト、と言っていい。開いたときの縦横比が、より紙の書籍に近いためだ。
特にKindleを使う場合、Fold8 Ultraでは、開いた上で90度回転しないと「見開き」にならない。これは、Fold8が「開いた状態では、アプリは横長を基本」として作られているのに対し、Fold8 Ultraは「開いた状態でもアプリは縦長画面を基本」としているためだ。開いたままの状態だと「単ページ」扱いになる。
ただ、この辺の扱いはアプリによっても変化する。「ebookJapan」アプリは、Fold8 Ultraでも「開いた状態では見開きを基本」としていた。
また、漫画や雑誌ではなく、いわゆる「文字もの」書籍の場合、見開きによる問題は起きづらい。表示量が単純に増えるので、Fold8 Ultraの方がいい、という人も出てきそうだ。
もう一つ面白いのは、電子書籍は白バックであることが多いので、ディスプレイ周辺のフレームが目立ってしまうことだ。結果として、動画に比べ、Fold8でもFold8 Ultraでも、iPad miniとの差を感じづらい。
iPad miniに比べ、重量が90g以上軽くなることを考えても、Fold8はかなり有利である、といえそうだ。
漫画では大きな課題になる「パンチホール」
使ってみて、もう一つ気になったのは「パンチホールの位置」の問題だ。
インカメラのための穴のことだが、iPad miniはフレームの中にあって目立たない。一方でFold8もFold8 Ultraも、パンチホールは右側のパネルの上にある。
動画を見るときは、動画の外にパンチホールが来るので問題は少ない。
だが電子書籍を読む場合には、画面全体を使う関係上、パンチホールが「絵の中に入る」こともある。Fold8でもFold8 Ultraでも、これは回避しにくい。
しょせん小さな穴だし、慣れてしまえば……というのは事実なのだが、知っておいてほしいことではある。
「噂の新スマホ」は、Fold8とどう違う製品になるのか
こうやってみていくと、Fold8は確かにエンターテインメント向けだ。一方でFold8 Ultraに価値がないわけではなく、通常のアプリを使うなどの場合には、こちらの方がいい。これまでのGalaxy Z Foldシリーズを使ってきた人には、Fold8 Ultraの方が支持されるのもわかる。
iPad miniとの間には十数万円の価格差があり、そこは大きな問題だ。安く済ませるなら「二つ折りでなくiPad miniを」というのは、論理的ではあるだろう。しかし、「いつも持っているデバイスで最大限コンテンツを楽しむ」「iPad miniより画質は良い」ことも考えると、「スマホを買い替えるときに二つ折りを選ぶ」のも1つの選択肢だと考える。
その上で気になるのは、秋にやってくると「噂される」iPhoneの二つ折りだ。
噂なので、出てこない可能性だってあることには留意が必要である。同時に、いくつか噂はあるものの、細かな違いは発表されるまで明確にはならない、ということも考えておきたい。
この記事でわかるように、二つ折りの価値は縦横比だけでは決まらない。ヒンジがどんな構造なのか、スピーカーはどこにあるのか、インカメラはどのように搭載されているのかといった要素が、細かく影響してくる。
今回のGalaxyの新型は、どれも良くできた製品だ。ただ、どれも一様に高価である。高価であるだけの価値はあると思うが、自分の用途に向く・向かないといった部分には、まさに「細かい部分の作り」が効いてくる。既存のアプリがどんな画面で表示されるのか、縦中心なのか横中心なのか、それとも切り替えが簡単なのか。そこも使い勝手には響いてくる。
サムスンはFold8とFold8 Ultraの性格を変える、という選択をした。他社はどうなるのか。
そういうことを、サムスンの新機種から考えるのも面白いのではないだろうか。







































