鳥居一豊の「良作×良品」
3D臨場感倍増の高輝度/高コントラスト映像。エプソン「EH-TW8200W」
重量級KAIJUバトル「パシフィック・リム」の鋼鉄の魅力
(2013/12/27 09:50)
今回取り上げるのは、エプソンの液晶プロジェクタ最上位モデルの「EH-TW8200W」(実売価格284,000円)と、巨大ロボットと大怪獣のバトル・アクション作品「パシフィック・リム」(3D版)だ。
3Dテレビブームは今ではすっかり沈静化してしまった感があるが、映画では3D上映される新作がいくつもあるし、3D映像の撮影方法や演出としての見せ方もかなり熟成が進んできており、良作が数多く揃っている。3Dのためにテレビの買い換えるべきとまでは言えないが、今使っているテレビが3D表示に対応しているならば、3Dメガネを手に入れて最新の3D作品を見て欲しい。改めて3Dの魅力を実感できるはずだ。
今回取り上げるのは3D対応の液晶プロジェクタだ。実は我が家のプロジェクタ「VPL-VW200」は知人からの借り物で、3Dには非対応。そのため、引越後の専用シアタールームでも、3D作品の視聴は以前から使っている26型テレビや、ソニーのヘッドマウントディスプレイ「HMZ-T1」を使うという、少々寂しい状態だった。小画面の3D映像もその密度感の高い映像や、仮想的ではあるが大画面に匹敵するサイズ感が得られるものの、やはりリアルに大画面3Dを楽しみたいという欲求が今ほとんどピークに達していた。そんな個人的な事情もあるし、「パシフィック・リム」は大画面+3Dで満喫したい作品の代表でもある。このソフトを使うなら、3Dプロジェクタを組み合わせるのがベストだと確信したわけだ。
まずは、EH-TW8200Wの概要から紹介していこう。使用する液晶パネルはフルHD解像度でエプソン独自の液晶技術「C2 FINE」搭載のもの。光を効率良く利用できる反射板を備えた「E-TORL」ランプの採用や、光漏れを徹底して抑えた設計などにより深い黒を再現できる「DEEP BLACK」技術など、エプソンのプロジェクタ技術を結集し、2,400ルーメンの高輝度と60万:1の高コントラストを実現している。2,400ルーメンの高輝度となると、一般的な家庭の明るさでも外光をカーテンなどで遮れば十分に明るい画面が得られる。映像が暗くなると思われがちな3D映像でも十分に明るく力強い描写を楽しめ、家庭用プロジェクタとして、この高輝度は頼もしい味方になるはずだ。
ボディサイズは、466×395×140mm(幅×奥行き×高さ)と、一般的なフルサイズのAVコンポより一回り大きい程度。重量も約8.6kgと比較的軽量だ。したがって、ちょっとしたテーブルやAVラックの棚の中にも収まるし、普段は片付けておき、使うときだけ出すといった使い方もできる。放熱口も前方に備わっているため、視聴位置の手前にプロジェクターを配置したとしても、足下の排熱が気になるということもないし、後ろの壁ギリギリに設置してもエアフローの問題が生じにくいので、より大画面投写を実現しやすいメリットもある。
入出力端子はHDMI入力2系統をはじめ、各種映像入力端子を一通り備えている。しかし、本機はWireless HD方式で映像信号を無線伝送できるので、特に本体側に接続する必要はない。
ワイヤレス送信ユニットは、HDMI入力5系統を備えておりHDMIハブのようにも使える。こちらはサイズもコンパクトなので、AV機器のそばに置いて配線しておけば、本体側は電源をつなぐだけで使えるので、配線の引き回しも最小限で使いやすい。また、側面にあるHDMI入力はMHLにも対応しているので、対応スマホなどをつないで撮影した動画や写真、動画配信で購入したコンテンツの視聴なども手軽に行なえる。HDMI出力や光デジタル出力も備えているので、AVアンプやシアタースピーカーなどの組み合わせもしやすい。配線不要なワイヤレスというだけでなく、わずらわしい機器との配線をより手軽に行なえるという点でも、このワイヤレスユニットは便利に使える。
視聴でも映像信号はワイヤレスで行っているが、上映中に映像が途切れるようなことはなく、有線接続と比較して画質的にも差を感じることはなかった。
機器の接続はワイヤレス送信ユニットとBDプレーヤーやAVアンプをHDMI接続しただけ。プロジェクタの場合、AV機器の置き場所とプロジェクタの置き場所が大きく異なるので、長い配線ケーブルが必要になることもあるが、ワイヤレス接続なのでその点は実に有利だ。プロジェクタは電源を接続するだけで使えるので、設置やその後の調整もしやすかった。
EH-TW8200Wは、上下96%、左右47%という広い範囲のレンズシフト機能があるので、設置位置の自由度はかなり広い。レンズシフトは可動範囲ギリギリだとレンズの周辺部を使うことになるので、レンズの歪みなどが出てしまう可能性もあるので、頼りすぎるのは禁物。だが、自分の目の前にプロジェクターを置くのが気になる場合は視聴位置の横に置くこともできるし、設置用のラックの高さを気にする必要もないので、置き場所の制約が大きいリビングなどで使うには便利だろう。
面倒だが、良い映像のためには欠かせない設置および画面の調整
今回の設置では、常設しているプロジェクタと同じく、背の高いラックの上に置いて使っている。設置で肝心なのは、スクリーン面に対してレンズ面が平行になること。プロジェクター自体も傾きがないように水平に置くことだ。これは実際に映像を表示して合わせることもできるが、水平の調整についてはカメラ用アクセサリーの水準器などがあるとより正確な設置ができるだろう。水平の調整は下面にある設置用の脚が長さを調整できるようになっているので、そこを調整して傾きをなくす。
次にスクリーンのサイズに合わせてズームを調整し、フォーカスを合わせる。映像がスクリーンからはみ出してしまうと図形歪みがわかりにくいので、最初は一回り小さいサイズで投写して歪みが出ないように設置位置を調整し、位置が決まったらズームでスクリーン一杯に拡大し、フォーカスを合わせるといいだろう。ちなみにこうした調整では、プロジェクターが備える調整用のグリッドパターンを表示するか、チェック用ソフトなどの同様の映像を使うと歪みが出ているかどうかを確認しやすい。
一般的な使い方ならば、調整はこれで完了だ。初めてプロジェクタを使うときは、多少苦労もするだろうが、慣れてしまえばそれほど大変ではない。使わないときは片付けておく場合でも、ほんの数分でセットできるようになるだろう。今回のテストでは、常設してある張り込み型の120型スクリーンを使用した。スクリーンはオーエスの「ピュアマットIII」(ゲイン1.0)だ。
プロジェクターで最良の映像を楽しむには、もう一手間かけてやる。それが液晶アライメント補正。RGBのそれぞれに液晶パネルを使う3LCD方式では、3枚のLCDパネルの微妙なズレが出ることがある。例えば、黒地に白のグリッドパターンを見てみると、白いはずの線の端に赤や青の光が漏れていることがある。これはLCDパネルがずれているわけで、色ズレのために映像の細部が表現しにくくなる。これをきちんと合わせるわけだ。
アライメント補正はちょっと専門的な作業と思われがちだが、作業自体は簡単。設定メニューから調整モードを呼び出し、緑のパネルを基準に、赤、青のパネルのズレを合わせていけばいい。ただし、画面の4隅を合わせるだけでなく、グリッドパターンのマス目のひとつひとつを個別に調整できるし、精神的にもすべての色ズレをなくしたくなるので、時間はそれなりにかかる。簡単だが単調で時間のかかる作業というわけだ。
しかし、効果は絶大で、きちんとフォーカスを合わせたはずの映像がさらに一段階フォーカスが決まったかのように映像が締まるのが実感できるはず。シャープにピントが合った気持ち良い映像になるのはもちろんだし、解像感も明らかに向上する。こうした調整が多く、しかも、ほとんどの人は調整を行なわないので、プロジェクタの映像は薄型テレビのような直視型と比べて映像がぼんやりした印象になると思っている人は少なくないが、きちんと調整すれば、100インチを超えるサイズでもテレビとまったく変わらないフォーカス感の高い映像になる。
こうした調整は投写距離などによって変わってしまうので、出荷状態で調整しておくということができない。このあたりが、テレビと比べて気軽に使えるとは言いにくいプロジェクタの弱点だ。調整が面倒、あるいは難しそうという人は、専門店で設置や調整のサービスも一緒にお願いするといいだろう。多少コストは上乗せになるが、設置を含めてプロが念入りに調整してくれるので、ベストな映像を楽しめる。調整方法についても教えてもらっておくといいだろう。
なお、こうした調整は、プロジェクタ内の温度によっても変化するので、最初は仮に合わせておき、数時間使い続けてから再度調整をやり直すようにすると万全。新品から使うときは、1週間くらい経過してからまた確認をかねて調整をしてみるといい。以後は一月くらいごとに定期的に調整するようにすれば、いつでもベストな映像を楽しめる。
日本のお家芸ともいえるロボット&怪獣をハリウッドが料理するとこうなる!?
ではお待ちかねの「パシフィック・リム」の上映だ。監督のギレルモ・デル・トロ監督は、大の特撮ファンらしく、日本の特撮の魅力をよく知っていると感じるし、作中にもオマージュと思えるシーンが数多く出てくる。正体不明の侵略者が太平洋の海底に開けた穴から送り込む巨大な生物を「KAIJU(怪獣)」と呼ぶのもその代表例だろう。
それに対抗するために人類が開発したのが、鋼鉄の巨大なロボット「イエーガー」。操作は人間の脳とロボットの身体をリンクさせて行うのだが、一人では負荷が大きいため、2人の人間が左脳と右脳を分担して操縦する仕組み。科学的にそれが正しいのかはともかく、ロボットの操縦には2人の脳がシンクロする必要があるという設定は、3人のパイロットが合体してロボットになるゲッターロボを思い出す。操作する姿自体は、Gガンダムそのままという感じで、さすがに荒唐無稽な気もするが。
ともあれ、そうした基本設定を語りつつ、怪獣「ナイフヘッド」出現の報せを受けたベケット兄弟が出撃する場面で物語はスタートする。
このあたりの出撃シークエンスのワクワク感は、古くは日本の特撮作品のお約束のようなものだし、新しいところでは「新世紀エヴァンゲリオン」(TVシリーズ版)でも、みっちりと描かれており、こうしたロボット物の導入としては外せないところだろう。
日本の特撮やアニメと、本作の明白な違いは、鋼鉄の重量感だろう。CGを駆使した映像は精密さを極め、ゴツゴツとした質感と重たい巨体がとてつもないパワーで動いているという実感がある。そんな重量級の映像を味わうポイントは、やはり黒の締まりだ。
後ろに配置した光源の光を透過して表示する透過型液晶は、コントラストという点では多少不利だが、光漏れの対策やオートアイリス機構の搭載などにより、黒の締まる映像になる。不要な黒浮きを感じないので、光が当たった部分のハイライト感や細かな質感がよくわかり、重みのある動きと相まって、鋼鉄の巨体の迫力をダイレクトに感じる。
そして3D映像の迫力。最近の3D作品全体にも共通するが、3Dの立体感はかなりスムーズになってきており、演出上アトラクション的な飛び出し効果を加える場合を別にすれば、立体感は見たままの感じにかなり近くなっており、違和感を感じることがほとんどない。それでいて、イエーガーが振り下ろす鋼鉄の拳は眼前に迫るような立体感があるし、重量級の映像とあいまって、ヘビー級のボクサーが目の前でシャドーボクシングをするのを見ているような、リアルな肉体と拳の重みを感じる。
ちなみに3D設定では、投写する画面サイズの設定(60~300インチ)、奥行き感調整(-10~+10)、3D明るさ調整(高・中・低)などを調整できる。奥行き感調整は立体感を強めすぎると目の負担が大きくなるので、見た目の自然な見え方や目の負担に合わせて調整するといい。3D明るさ調整は、暗い場面が見づらい場合は明るく(高く)する方向にすればいい。もともと高輝度な映像で十分な明るさが確保できているので、個人的には出荷時設定の「中」のままで良好な3D映像が楽しめた。
唯一気になったのは、付属の3Dメガネの装着感。というのも僕は視力矯正用のメガネの上に3Dメガネを重ねて視聴するため、メガネに干渉してずれやすいのが気になった。どうやら鼻に当ててホールドするためのアダプターが大きいことが原因のようで、簡単に取り外せそうになかったし、取材用の借り物のため無茶に取り外して壊すのも問題なのでそのまま使ったが、メガネを重ねて使う場合はアダプターを外してしまうといいだろう。
なお、3DメガネはBluetooth規格採用のRF方式で、軽量なうえ視聴しながら顔を動かしても信号が途切れてしまうようなこともなく、快適に3D映像を楽しめた。ちなみに充電はワイヤレス送信ユニットにあるUSB端子を使用する。
120インチのスクリーンで展開する3D映像は、そのサイズ感もあって臨場感は抜群で、巨大な怪獣とロボットのバトルを大迫力で再現した。このサイズ感は26型の吸い込まれるような箱庭的な見え方とは大きく印象が異なるし、高コントラストで力強い映像ということもあり、映像が迫ってくるような圧力を感じる。
小サイズから50型前後のテレビで楽しむ3Dを否定する気はない。ただ、本作のような巨大な怪獣やロボットの迫力を味わうには100インチ以上の大画面が欲しくなると感じた。
高コントラスト&高輝度のパワフル映像。色乗りもかなり濃厚
特撮映画やロボットアニメ好きの心を鷲掴みにしたであろう、1stバトルは文句なしの出来。しかし、その戦いでパートナーを失ったローリー・ベケットはイエーガーのパイロットを引退してしまうといういきなりの急展開だ。しかも怪獣たちはどんどん進化し、数多くのイエーガーを葬ってしまう。人類はイエーガーによる対抗をあきらめ、太平洋沿岸に巨大な壁を作って怪獣の侵入を防ごうとするが……。
パイロットを辞して、その壁の工事に従事しているローリー・ベケットが再び……と、物語は急展開するが、巨大な壁のような大きなオブジェクトの大きさ感が3D映像で実によく描かれている。高所作業のため、その高さ感もかなりのものだ。EH-TW8200Wの3D表示は、左右の映像が割れて見えてしまうクロストークもほとんど気にならず、スムーズでありながら奥行き感たっぷりの映像をリアルに再現してくれる。
香港にあるイエーガーたちの基地にローリー・ベケットが足を踏み入れる場面も壮観だ。巨大ロボットをかつては数百機格納していたというハンガーの広さ、整備を受ける世界各国のイエーガーたちの勇姿も見応えがある。その広いスペースに作業スタッフやパイロットなど、膨大な数の人間が忙しく動き回っている。その広さ感や人と巨大ロボットのサイズ感の違いなどが実にリアルで、3D映像ならではの体感的な説得力を感じる。
ストーリー展開はかなりテンポがよく、しかも次々と怪獣とのバトルが始まるというサービス満点の出来。ロボットの造形がユニークで大好きなロシアの第1世代型イエーガー「T-90 チェルノ・アルファ」と中国人の3人兄弟が乗る3本腕のイエーガー「クリムゾン・タイフーン」が2体同時出現した怪獣を迎え撃つ場面で、画質調整を追い込んでみた。
画質モードは、2D映像では明るい部屋用のダイナミック/リビング、暗い部屋用のナチュラル/ステージ(演劇などの舞台用)/シネマ(映画・音楽用)がある。3D映像では3Dダイナミック/3Dシネマとなる。
2D映像で一通り各モードを試してみたが、ダイナミックやリビングはかなりのレベルの明るさで、薄型テレビと変わらないレベルの明るさ。これならば直射日光さえカーテンで遮れば十分な明るさの画面を得られるだろう。好みにもよるが、カラーバランスがやや青みが強く感じたので、多少色温度を低くした方が自然な色になると感じた。
照明を落とした環境用のモードでは、カラーバランスも自然で映像的にはテレビ放送のような明るめの画面に合わせたくっきりとした再現となる「ナチュラル」が使いやすそうだ。テレビドラマなどのほか、ゲームなどとも相性がよいだろう。
3D用のモードでは、明るさ抜群の「3Dダイナミック」と階調感とコントラスト感のバランスが良い「3Dシネマ」の2択となる。視聴では「3Dシネマ」を選択し、これをベースとして、テストディスクの映像を使って標準的な画質に調整した。プリセットのままでも素性の良い画質モードで、明部と暗部の階調再現、画面全体の明るさは調整不要で、色の濃さがやや強めだったので多少下げ、カラーバランスも適正なバランスに調整した程度だ。
シャープネスは、スタンダードとアドバンスの2つの種類があり、スタンダードは「-5」~「+5」の調整、アドバンスでは高域強調/低域強調/水平シャープネス/垂直シャープネスと個別の調整が可能。シャープネスを上げていっても過度なリンギング(りんかく周辺の白いふちどり)はあまり目立たず、あまりクセっぽい映像にならないのが良い。プリセットはスタンダードの「0」だが、これだとややエッジの再現やディテール感がソフトに感じたので「+2」とした。
このほか、色温度やカラーバランス以外に「肌の色調整」というものもある。肌の色を鮮やかに出るもので、本作のように白人や黒人、アジア人とさまざまな肌の色の人間が登場する作品ではなかなか役に立つ。調整は「0」から「6」まであり、肌色付近の色が変化する。肌色を乗せすぎると厚化粧になり肌の質感が失われやすいので注意しよう。結果的にはプリセットのままの「3」としているが、微妙な肌の色の違いだけでなく肌の質感や油で汚れた様子などが実に生々しく再現された。肌の色はふだんからよく見ている色だけに違和感を感じやすいので、好みに応じて活用するといいだろう。
この状態で見てみると、カラーバランスが好ましいバランスになったこともあり、パワー溢れるやや派手な印象から、力強さはそのままながら登場人物たちの表情や使い込まれたパイロットスーツの汚れやキズの表現がよりリアルに感じられるようになった。本機の色乗りの良さは大きな魅力ではあるが、イエーガーの機体色がオモチャっぽい鮮やかさになりがちだ。全体に暗いシーンが多めで色調も暗色の多い重たい印象の作品だからよけいに色彩の派手さが目立ちやすいので、少し控えめにした方が映像のリアリティーが増す。特にクリムゾン・タイフーンの真っ赤な機体が引き締まり、精悍なフォルムの機体のアクションもよりカッコよく見えてくる。
また、怪獣たちも生物的なディテールを持った表皮は色味をあまり感じないが、身体中にある模様がシアン系の蛍光色で発光している。また、体液も鮮やかな蛍光色だ。色味を落とした方が映像はリアルになるが、落としすぎると地球外の生物の象徴である違和感のある鮮やかさが失われてしまうので、注意したい。
お待ちかねの市街戦!! 太平洋バトルなど、怒濤の展開
かすかなロマンスを感じさせる場面や、怪獣の秘密などが明らかになるにつれ、ドラマも盛り上がってくる。しかし、それ以上にテンションが上がっていくのは、もちろん、イエーガーVS怪獣のバトルだ。香港の港湾部からビル街で破壊のかぎりを尽くす大バトルは大きな見どころだ。
現代的な感覚では、批判的な声もあるかもしれないが、あくまでも映画の中の一場面として、逃げ惑う民衆の背後に巨大な怪獣が迫るという映像は、怪獣映画にはなくてはならない場面。その怪獣が高層ビルと並んで立つことでその巨大さが一層際立つ。また、アスファルト舗装の道路をめり込ませながら駆けてくるイエーガーの活躍も興奮ものだ。
日本の特撮による怪獣映画やロボットアニメを愛する筆者としては、造形にしろ戦い方にしろ、「リアル」よりも「らしさ」を優先する感覚が強く、イエーガーはもうちょっとスマートでカッコよくしてほしいし、怪獣も生物的なグロテスクさだけでなく怖さを出してほしいという気もする。しかし、巨大な鋼鉄の塊であるロボットが武器代わりにタンカーを引きずって現れる場面には感激したし、破壊されるビルや巨大な橋の映像のリアルな説得力は、日本の特撮では到達できなかったものだ。荒唐無稽な怪獣映画に巨額の費用を投じ、大成功させてしまうハリウッドの底力を感じるし、日本にもがんばって欲しいと思う。
実は僕は、嫉妬混じりの感情もあって、最初に近場の映画館で2Dで見たときにはあまり感心しなかった。要所は押さえているけれど、バタ臭いアメリカ風味の特撮だな、と。しかし、別の機会にかなりの大スクリーンの3D上映で再見して、印象がかなり変わってしまった。映像に漲るパワーと重量感、3Dの圧倒的な迫力。この映画のポイントはここなのだろうと思う。イエーガーと怪獣のバトルの迫力、重みを感じる殴り合いのインパクトが大きく違う。
BDが発売され、26型のテレビで見たときも、やはり迫力不足を感じてしまった。もちろん、精密に描かれたCGなど見どころはあるのだが、本作はとびきりの大画面と3Dで楽しまないと魅力半減だと感じる。肘の部分に仕込んだロケットブースターでパンチの威力をブーストするアメリカ式ロケットパンチ「エルボーロケット」が本当に自分に向かって飛んでくるような迫力がないと、「パシフィック・リム」の魅力が伝わらない。巨大な鉄の塊を実感できる、重さと迫力。それを見事に表現した映像のパワーをしっかりと伝える力強さは、EH-TW8200Wの最大の魅力だと思う。大画面投影や3Dを堪能できる高輝度と十分な高コントラスト、明るさで薄まらない濃厚な色。よりディテールに優れるとか、CGなしの自然な映像をデリケートに描くものなど、プロジェクターにもさまざまな個性や魅力があるが、パワフルな映像という点では抜群に魅力的。なんだかんだ言いながら、ハリウッドのドンパチ映画やアクション映画が大好きで、しかも3Dも大好物の僕のような人間にはぴったりのモデルだと思う。
薄型テレビの3D機能は多くの人が求める機能ではなく、しかし、映画館の3D上映は割高な価格にも関わらず今でも盛況だ。となると、3D+大画面の相乗効果が大きいのだと思う。とはいえ、70型以上となるとフルHDテレビでも決して身近な価格とは言いにくい。30万円前後の価格で100インチを実現できるプロジェクタは、3D+大画面を楽しむためのベターなプランではあると思う。
投写のために必要な距離を見てみても、本機の場合は60インチならば1.77mで、100インチでも2.98mとなる。投写する壁のサイズも考慮する必要もあるが、6畳間ならば60~70インチ、8畳以上のリビングならば100インチも実現できる。しかも天井吊りなどをするのでなければ、設置のための工事は不要。スクリーンは専用のものがあった方がいいが、白い壁に投写するとか、シーツなどの生地でも代用できる。
もちろん、地デジが見られるチューナがあるわけではないし、機能的には表示のためのディスプレイでしかないので、テレビのように便利に使える機器ではない。しかし、「パシフィック・リム」のような映画が大好きな人にはぜひともお薦めしたい。きっと3D映像の面白さだって、実感できるはずだ。
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