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ラジオが再び熱い! 進化したラジコで聞き逃し番組やNHKも。快適なスマートスピーカー連携

 普段、ラジオをどれくらい聞いているだろうか? 「朝起きたら時計代わりにつける」 、「仕事中はずっと」、「引っ越してから全然聞かなくなった」、「そもそもラジオ受信機を持ってない」など、色々な答えが返ってくるかと思う。ラジオが身近な人もそうでない人も、スマートフォンがあれば簡単に聞けるラジオがネット配信サービスの「ラジコ(radiko)」だ。

 テレビやネット動画と比較すれば、音声だけが全てのラジオはやや地味な存在かもしれない。しかし、スマホ全盛の今、ラジコの登場によって、ラジオ受信機がなくても、電波が届きにくいエリアであっても、「聞き逃した番組」すらも、手軽に高音質で聞ける時代へと突入した。

 こうした“ラジオの進化”を支えるラジコは、2010年の誕生当初から、IPサイマルラジオとして既に画期的なサービスではあったが、約8年を経てさらにその機能やコンテンツを拡充している。どんな事ができるのか、どこが便利なのか。改めておさらいしつつ、スマートスピーカー連携など今ならではの使い方も紹介したい。

スマホが無料のラジオに。ユーザー登録不要でとにかく手軽

 ラジコとは一言で説明すると「AM/FMラジオで放送されている番組をネットでリアルタイムに聞けるサービス」である。際立った特徴は以下の3つ。基本の確認なので、既にご存じの方は、次の項まで読み飛ばしていただきたい。

・無料(パケット代は必要)
・スマホやPCがあれば専用受信機は要らない
・実際の放送から数秒~数十秒程度の遅れでリアルタイムに聞ける

 今すぐラジオを聞こうと思ったら、ラジオ受信機を使う必要はなくなった(もちろん受信機を使うことのメリットはあるのだが)。今手元にあるスマホにアプリさえインストールすれば、ユーザー登録すら不要で今すぐにでも聞ける。アプリ画面を見ると、今いる地域で放送されている番組がリストアップ。チャンネルを選べばすぐに再生がスタートする。

 多くの音楽再生アプリなどと同様に、バックグラウンド再生も可能。SafariやChromeなどでネットを見ながら、音声はラジコで、という使い方ができる。

Androidスマホ版ラジコアプリ画面。チャンネルをタップすれば再生。右は番組の詳細画面で、フリックすればチャンネルが変わる

 パケット通信量も、YouTubeなどのネット動画に比べればはるかに少ない。聞く番組にもよるが、筆者の体感値ではおよそ1時間で25~30MBほど。月20GBプランを契約していれば余裕だし、5GB程度のプランであっても負担はかなり少ないはずだ。家にWi-Fiがあれば、通信量を気にする必要もない。この手軽さが、ラジコのアドバンテージである。

 無料で聞ける番組は、基本的には地域に依存する。例えば東京に住んでいる方ならTBSラジオ/文化放送/ニッポン放送/ラジオNIKKEI第1・第2/InterFM897/TOKYO FM/J-WAVE/ラジオ日本/bayfm78/NACK5/FMヨコハマ/放送大学を選局できる。AM/FMを問わず、東京地域で電波放送されている民放ラジオ局がほぼすべてカバーされている。もちろん北関東だったり、北海道や大阪であれば、当然その地域の放送局が聞ける(GPSなどに基づいた位置情報で、聴取エリアがコントロールされている)。基本的には「地元の民放局がほぼ聞ける」と考えてもらっていい。

 また、放送されている内容は原則として電波放送と同じ。ネット配信するという技術的な仕様上、数秒~数十秒程度の遅れはあるが、ほぼリアルタイムで番組を楽しめる。肝心の音声はクリアで、アンテナの向きを変えるようなチューニングの苦労もない。

 ここまでがラジコの基本的な機能。そして、これまでの機能アップデートなどにより、細部の洗練は、どんどん進んでいる。

放送から1週間以内の番組を後から聞き直せる「タイムフリー」

 約8年のラジコの歴史の中で、最も革命的な進化がこの「タイムフリー」だと断言したい。2016年10月にスタートし、その後も少しずつ仕様が改善されている。利用にあたっての追加料金はかからない。

 タイムフリーは、放送から1週間以内の番組を聞き直せる機能。これまでも、番組によっては放送内容をポッドキャストなどの形でオンデマンド配信する例があったが、それとは規模感が比べものにならないほど大きい。

 対象は、ラジコで聴取できるほぼすべての番組。週5で放送される朝の生番組はもちろん、週末のアニメ・声優番組、野球中継などまで無料聴取できる。予約などの操作は要らないし、早送り/巻き戻しも自在。番組表から選択して、たとえば放送開始から30分経った部分から聞き始めることもできる。

 制限としては、放送後1週間以内であることに加え、「タイムフリー再生を開始してから24時間以内かつ合計3時間まで」聴取できる。CMなども放送時のものがそのまま聞ける。

タイムフリーの例。4月17日18時の時点では、4月10日朝5時の番組を聞けた
CMなどは放送時点のままで、差し替えられたりはしないため、注意文が出る
早送り/巻き戻しもOK。タイムバーをスライドさせると「冒頭から何分目か」ではなく、「○時○○分」といった表示がなされる

 同じ番組を延々と聞くことはできないため、録音とは異なるが、それでもタイムフリーは、まるで「ラジオ版全録機」を実現したかのような機能といえる。「馴染みの深夜番組をうっかり聞き逃した」とか、「ネットで話題になった番組を後から聞きたい」といった時に重宝する。

 先日、お笑いコンビ・バナナマンの日村勇紀がレギュラー出演している深夜ラジオ番組「バナナマンのバナナムーンGOLD」で自身の結婚を発表した。ネットニュースはもちろん、テレビのワイドショー番組でも「ラジオ番組で発表」の部分がクローズアップされたが、タイムフリー機能を使って、その時の臨場感を余すところなく体感できた。

スマートスピーカーでも聴取OK、音声操作の素晴らしさよ

 2017年後半あたりから日本でもスマートスピーカーの販売が本格化しているが、ここでもラジコは存在感を高めている。Google Homeシリーズのほか、Amazon Echoや、LINEのClova WAVEでもラジコの各番組を聴取できる。

 ラジコの聴取機能は上述したスマートスピーカー3種の標準的な機能となっており、スマートスピーカー側のWi-Fi接続など基本セットアップが完了してしまえば簡単に使える。なお、各スマートスピーカーの設定方法やできることの詳細はラジコのヘルプページで、Google HomeAmazon EchoClova WAVEのそれぞれについて案内されている。

Google Home mini。機器のセットアップを行なえば、アプリの追加インストールなどをすることなく、ラジコが聞ける
Google Homeシリーズのヘルプ。こんな感じで発声すると、ラジオ聴取をコントロールできる

 筆者宅の仕事部屋兼寝室にはGoogle Home miniをセットアップしているのだが、それはもう日常的に「ねぇGoogle、○○ラジオを再生して」(○○は局名)と喋りかけ、ラジコ機能を利用している。再生停止や音量の上下も当然音声でOK。筆者はもともとラジオ好きでラジオ受信機を準備しているのだが、その利用率が下がるほどだ。電源ボタンなどに一切触れる必要のない、言わば“スイッチレス”なラジオとしてのスマートスピーカーが本当に便利で便利でしかたない。

 もし「スマートスピーカーってどう使えばいいか分からない」という人がいるなら、「ラジコこそがキラーコンテンツ」だと答える。それくらい絶対オススメの機能だ。

「エリアフリー」なら全国の番組が聞ける! オススメはプロ野球中継

 タイムフリー、スマートスピーカー対応に並ぶ重要機能がもう1つ、それが「エリアフリー」だ。冒頭で「地元の民放局が無料で聞ける」と書いた通り、月額378円(税込)のプレミアムプランを契約すれば、地域による制限なく全国のラジコ対象局・番組が聞けるようになる。なお、厳密にはエリアフリー聴取対応局および番組に限られる。

 一番ありそうな使い方は、好きなアーティスト・タレントが出演する番組を、その放送エリア外から聞きたいといったケース。関東ローカルの番組を九州から聞く、あるいはその逆などがあるだろう。

PC版(ブラウザ版)ラジコでエリアフリー聴取。左上に「TOKYO」と表示、東京圏域から聴取していることがわかるが、福岡のFM局を聞ける

 使い勝手が良いと感じているのが、野球中継だ。筆者が住む関東圏では平日夜のプロ野球中継は読売ジャイアンツ戦が主体。もちろんBS/CSテレビの有料チャンネルや、映像配信を契約すればそれ以外のチームの試合をチェックできるが、電車帰宅中にラジオで聞きたいとなると、途端にお手上げだ。

 だがエリアフリーで北海道の各局にチャンネルを合わせると、関東では到底お目にかかれない北海道日本ハムファイターズ戦のラジオ中継をやっている。これは相当に新鮮だ。関東在住の阪神ファンにも是非お試しいただきたい。

 ちなみに、エリアフリーとタイムフリーは同時に利用できる。例えば3日前の深夜に四国で放送された番組を、東北エリアから聴取するといったことも可能だ。なお、エリアフリーやタイムフリーは、後述するスマートスピーカーでの利用には対応していない。

スマホアプリでエリアフリー。北海道日本ハムファイターズ戦中継が。しかも2局同時
エリアフリーかつタイムフリーもOK。日曜のデイゲームも中継しているようだ

 エリアフリーを利用するためのプレミアムプランでは、メールアドレスやクレジットカード番号を登録し、ログインが必要。なお、登録初月は無料なので、まずはどんな風に使えるか、お試ししてみてもいいと思う。

ついにNHKも! チャンネル&コンテンツ増加中

 タイムフリー、スマートスピーカー対応、エリアフリーの3大新機能以外でもオススメしたいポイントは色々ある。例えば、NHKラジオの扱い。NHKラジオ第1・NHKラジオ第2・NHK-FMをネット聴取したい場合、これまではラジコとは別の「らじる★らじる」サービスを利用しなければならなかった。

実験という扱いだが、NHKラジオ各局がラジコアプリから聴取できる

 だが近年、ラジコ上でNHKラジオを配信する実験が進められている。2018年度は4月12日にスタートし、その実験エリアが全国に拡大された。これにより47都道府県いずれの地域からもNHKラジオ各局をラジコで聞けるようになった。ユーザーから見た場合、アプリを2つインストールして切り替える必要がないのはメリットだ。ただし、ラジコではNHKのエリアフリー・タイムフリーに対応していない点には注意したい。この実験配信の期間は2019年3月末となっている。

 さらに、4月1日からは、ジャニーズ事務所所属タレントが出演する番組がエリアフリーおよびタイムフリー聴取の対象となった事が発表された。これまでジャニーズ事務所のタレントが出た番組はエリアフリー/タイムフリーで聞けなかったが、ファンにとってこれほどの朗報はないだろう。

 試しに岡田准一が出演する「GROWING REED」(J-WAVE)をラジコでチェックしてみたのだが、確かにタイムフリーで聞くことができた。今回は試していないが、恐らく関東以外の地域からでも聞けるはずだ。

岡田准一出演の「GROWING REED」を聴取。4月1日以降だからこそ、タイムフリーで聞けるようになった番組だ

「ながら」で番組を楽しもう

 今回はラジコの機能をおさらいしたが、8年かけて着実に、それでいて驚くような変貌を遂げていたことを実感した。今後も更なる進化が期待される。

 また、そもそものラジオ局・ラジオ番組の魅力について、出演者やその放送内容の質の確かさに加え、「ながら」で楽しめるという点にも言及しておきたい。スマホ版ラジコアプリがあれば、それはもう事実上無料の携帯ラジオ。電車で通勤しながら、自宅で家事をしながら、仕事をしながら、車を運転しながら──つまり、何か別の作業をしつつ、同時に耳だけでコンテンツを楽しめる。

 筆者は、テレビゲームでレベル上げ作業をしながらラジオ(ラジコ)を聞いている。例えばYouTube動画を2本同時に視聴しても、内容をしっかり理解するのは難しいと思うが「ラジオ+○○」なら、意外といけるはず。聴取者の数だけ、ラジオとの向き合い方があるのではないだろうか。

 ラジオ未体験者にはまず「スマホ版ラジコアプリ」の利用をオススメする。朝はニュース、夜は娯楽といった具合に、ラジオは生活パターンを想定して番組編成されている。一度起動すれば、SNSやニュースアプリなどを使いながらでも聞けるし、何となく流しているだけで、きっと何かしらの発見があるはず。事故・災害時の一報を得るのにも役立つ。

 さらにステップアップとして、ぜひスマートスピーカーでラジコを聞いてみてほしい。音声インターフェイスゆえの制限もあり、現状ではタイムフリー/エリアフリーが適用されないが、リアルタイム聴取だけで十分実用的。朝目覚めた瞬間、布団の中から「ねえGoogle、○○ラジオをつけて」と呟いて欲しい。激押しする理由の一端を感じてもらえるだろう。

スマートスピーカーは勢いのあるジャンルだけに、今後のラジコ連携にも期待がかかる

 エリアフリーは有料サービスのため、初めて使うのは躊躇するかもしれない。普段は通常聴取とタイムフリーを無料で聞けば十分。その上で慣れてきたら、エリアフリーの出番。はるか遠くの街のラジオ局から届く「今日はちょっと肌寒いですねぇ」という声、そして地元感あふれるCMになぜか興奮してしまったら、もうラジオの虜といえる。初月無料制度を上手く活用し、試してみてほしい。

森田秀一

1976年埼玉県生まれ。学生時代から趣味でパソコンに親しむ。大学卒業後の1999年に文具メーカーへ就職。営業職を経験した後、インプレスのWebニュースサイトで記者職に従事した。2003年ごろからフリーランスライターとしての活動を本格化。主に「INTERNET Watch」「AV Watch」「ケータイ Watch」で、ネット、動画配信、携帯電話などの取材レポートを執筆する。近著は「動画配信ビジネス調査報告書 2017」「ウェアラブルビジネス調査報告書 2016」(インプレス総合研究所)。