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「IMAXシアターのクオリティを家庭でも」。コンテンツ・機器の普及が進むDTS:X

dts Japanは10月23日、立体音響フォーマット「DTS:X」対応の製品やコンテンツが拡充されてきたことを受けて、メディア向けの説明会を開催し、「IMAXシアターの迫力を自宅でも楽しめる」と魅力を紹介した。

DTS:Xは、2015年に米DTSが発表したオブジェクトベースのオーディオフォーマット。IMAXとDTSが行なっているライセンスプログラム「IMAX Enhanced」のオーディオフォーマットとしても採用されている。

「映画製作者の意図や、IMAXシアターのクオリティを、そのまま家庭にお届けしたい」という考えのもとに進められているIMAX Enhancedは「色鮮やかで階調度の高い映像、DTSでリマスタリングされた迫力ある低音が特徴のサウンド、そしてIMAXの特徴である独自のアスペクト比を活かした画面サイズ」が家庭でも楽しめるもの。

2024年5月には、動画配信サービスのディズニープラスがDTS:X対応のコンテンツを「IMAX Enhancedサウンド」対応コンテンツとして配信開始。国内では「アベンジャーズ」などのマーベル作品や、クイーンが1981年に行なったライブ「Queen Rock Montreal」など、19作品がIMAX Enhancedサウンドのコンテンツとして配信されている。

そのほか国内ではソニーの動画配信サービス「SONY PICTURES CORE(旧BRAVIA CORE)」、欧州ではRakuten TV、中国ではiQIYI、Youkuなどがストリーミングパートナーとなっている。

DTS:XやIMAX Enhancedに対応したテレビ/ディスプレイやAVアンプ、プロジェクターなども市場に増えている。テレビ/ディスプレイ製品ではソニーやTCL、ハイセンス、シャオミが、AVアンプではソニー、デノン、マランツ、JBL、オンキヨー、パイオニアなどが対応製品を発売。またサウンドバーではフィリップスやLG、プロジェクターではXGIMIなども対応製品を展開していると説明された。

説明会には、ソニー、シャオミ、オンキヨー・パイオニアブランドの製品を手掛けるプレミアムオーディオカンパニーテクノロジーセンター(旧オンキヨーテクノロジー)の担当者も登場。

「BRAVIA Theatre Quad」
DTS:XをサポートするソニーのAVアンプ「STR-AN1000」

ソニーは、IMAXとDTSが重要なパートナーであり、DTS:XやIMAX Enhancedに対応している製品を年を追うごとに拡充しているとコメント。特に'24年は「Cinema is Coming Home」をブランドメッセージと掲げており、最上位モデル「BRAVIA 9(XR90)」を筆頭としたブラビアや「BRAVIA Theatre Bar9/Bar8」などのサウンドバー、ワイヤレスでサラウンド環境を構築できる「BRAVIA Theatre Quad」など、7製品がIMAX Enhanced、DTS:Xに対応していると説明した。

動画配信サービス「SONY PICTURES CORE」でもDTS:X対応を検討中。担当者によれば今冬が目処だという
「SONY PICTURES CORE」ではIMAX版アスペクト比などを採用した作品はすでに配信中

また現在は映像のIMAX Enhancedにのみ対応している「SONY PICTURES CORE」では、今冬を目処にDTS:X対応を検討しているとのこと。映画「ヴェノム」シリーズや「ゴーストバスターズ/フローズン・サマー」、「スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース」といった作品からDTS:Xでの配信を目指しているという。

シャオミのDTS:Xに対応した量子ドット×ミニLEDのスマートテレビ「TV S mini LED」。画像は65型のもの
対応コンテンツを再生するとピクチャーモードに「IMAX」が表示される

シャオミは、昨年から日本導入しているチューナーレステレビ「Xiaomi TV」でIMAX EnhancedとDTS:Xをサポート。現在は、Xiaomi TVでディズニープラスを視聴すると、DTS:X対応コンテンツでもステレオ再生されてしまうが、アップデートに向けて作業を進めているという。

プレミアムオーディオカンパニーテクノロジーセンターの担当者は、技術的な側面からIMAX Enhanced/DTS:Xについて説明。多くの映画作品では、ディスク/配信化する場合、映画館向けにミックスされているサウンドを一般家庭向けに“ニアフィールドミックス”して収録することが一般的だが、IMAX Enhanced作品の場合、そういった一般的なニアフィールドミックスをしないため、映画館のIMAXシアターと同じクオリティのサウンドを自宅でも楽しめるのが特徴だと説明。

そのポテンシャルをホームシアターでも引き出すためにオンキヨーではハイカレントアンプ設計やノンフェーズシフトアンプ設計、パイオニアではフルバンドフェーズコントロール、MCACCといった技術を駆使しているとした。

オンキヨーブランドのDTS:X対応AVアンプ「TX-RZ70」
パイオニアブランドのDTS:X対応AVアンプ「VSA-LX805」

ディズニープラスでDTS:Xを楽しむ方法は?

説明会では、IMAX EnhancedとDTS:Xに対応した配信コンテンツをどのように視聴するのか、ディズニープラスを例に紹介された。

ディズニープラスの場合、IMAX版の拡大アスペクト比はすべての対応デバイスで視聴可能だが、DTS:Xで配信されている音声(IMAX Enhancedサウンド)を楽しむには、DTS:X対応で、IMAX Enhanced認証を受けているAndroid/Google TV搭載テレビが必要。また料金プランも最高画質が4K HDRの「ディズニープラス プレミアム」(月額1,320円)への加入が必要となる。

対応テレビと対応プランを用意したあとは、ディズニープラスのアプリを立ち上げて対応コンテンツを検索。アプリ内で「IMAX Enhanced」と検索すれば対応コンテンツが一覧で表示される。またアプリのマーベル作品一覧ページには「IMAX Enhancedで視聴できる作品」の項目も用意されている。

初めてIMAX Enhancedサウンド対応コンテンツを再生すると音声オプションに関するポップアップが表示される
一度設定をオンにすると、作品概要ページにも「DTS:X」ロゴが表示される

初めてIMAX Enhancedサウンド対応コンテンツを再生すると、DTS:XでIMAX Enhancedサウンドを再生するかを確認するポップアップが表示されるので、ここで設定をオンにすればIMAX Enhancedサウンドで再生される。設定のオン/オフは視聴中に表示される歯車アイコンから切り替えられる。

テレビ側でIMAX EnhancedサウンドをオンにするとAVアンプ側の表示も「IMAX DTS:X」に切り替わる。画像はマランツのAVアンプ「AV8805」

またDTS:X対応のAVアンプやサウンドバーを用意すれば、HDMI(eARC)経由でテレビに接続してIMAX Enhancedサウンドを楽しむこともできる。ちなみに、dts Japanの担当者によれば、ストリーミングで使われているDTS:Xのデータは配信用に最適化されたものになっているとのこと。

現時点ではDTS:Xに対応し、IMAX Enhancedの認証を受けたAndroid/Google TV搭載テレビを用意する必要があるため、対応テレビを持っていない場合、視聴のハードルは高いが、対応製品やOSは今後も拡充予定とのこと。早ければ2025年1月のCESなどで発表があるかもしれない。

会場にはDTS:Xに対応したマランツのAVアンプ「CINEMA 30」も展示されていた。

DTS:Xサウンドの体験してみた

実際に環境を整えて、ディズニープラスでコンテンツを視聴してみた

対応環境をセットアップして、実際にディズニープラスで配信されているIMAX Enhanced/IMAX Enhancedサウンド対応コンテンツを視聴してみた。今回、テレビはソニー「BRAVIA 9」の85型「K-85XR90」、AVアンプにはマランツ「AV8805」、パワーアンプには同じくマランツ「MM8077」、スピーカーにはKEF「Q950/Q350/R650/KC92」を用意した。

まずはマーベル「ソー:ラブ&サンダー」から冒頭のアクションシーン、ソーが大斧「ストームブレイカー」片手に乱闘を繰り広げる場面では、映画館のIMAXシアターで味わうような身体の芯に響く重低音が味わえる。ソーが高所から着地したときの「ドシンッ!」という音もしっかりと響き渡るため、より映画の世界観に入り込めた。

続いてもマーベルから「アベンジャーズ:エンドゲーム」のクライマックス、“アッセンブル”の場面。窮地に立たされたキャプテン・アメリカの背後に、ドクター・ストレンジが操るポータルが開き、ヒーローたちが再集結する場面では、ポータルから聴こえる「サラサラ」と砂がぶつかるような音や、仲間の登場に息を呑むキャプテンの様子、スパイダーマンのウェブシューターから糸が発射される「プシュ!」という細かな音もしっかりと聴き取れる。

それと同時に、巨大化したアントマンが瓦礫の山から飛び出す際の衝撃音や、低音が響き渡るBGMなどもしっかりと再生されていた。

酒井隆文