プレイバック2015
音楽制作は「DSD対応」へと動き始めた by 藤本健
(2015/12/24 09:30)
「ハイレゾ」が一般用語として使われ、家電量販店においてもPCを使った様々なハイレゾ再生機器などが展示・販売されるようになる中、まだまだマニアックなイメージもある1bitオーディオ=DSD。11月からHDtracksがDSD配信をスタートさせるなど、海外でもDSDフォーマットのデータが普及し始めたようだが、まだ実質的には日本国内がメインという状況だとは思う。
ただ、そのDSDも2015年は大きく飛躍した年だった。最大のポイントは年末にコルグから発売された録音可能なDSD対応USB DAC、つまりはDSD対応のオーディオインターフェイス「DS-DAC-10R」が登場したことだ。
これまでもコルグのMR-2やMR-2000R、TASCAMのDA-3000など単体でDSD録音可能な機材は存在していたが、PCを使ってDSD録音可能にする機材としてはDS-DAC-10Rが初。正確にいえば10年ほど前のパソコンであるVAIOに搭載されていたオーディオチップの「SoundReality」で実現はしていたが、DS-DAC-10Rは、どのPCにでも接続できるようにした初の一般向けの機材といえる。
一方で、今後コルグに続くメーカーが存在することを、オーディオ周りのファームウェアやエンジン部分を開発するインターフェイス株式会社が明らかにしている。既にDSDの4ch入力を可能にするシステムもできているようなので、2016年にはそうした機材が複数社から出てくるのではないだろうか?
DSDに対応するソフトウェアが複数登場してきたのも、2015年の大きなトピックだったと思う。まずはCakewalkが出したDAW「SONAR」の新バージョン。Cakewalkは昨年、日本のローランド傘下からアメリカのギブソン傘下へと移るという大きな変化があった。国内ではすでにギブソン傘下にあったティアックと兄弟会社になったことで、DSDで実績を持つティアックとの関係が強化されたのだ。実際、国内でSONARはティアックが流通させるようになったが、開発においても関係性が持たれることになり、ティアックがエンジニアをCakewalkへ派遣したことでSONARにDSD機能が搭載されたのだ。
もっとも、この時点でDS-DAC-10RのようなDSD対応のオーディオインターフェイスが存在していなかったこともあり、搭載されたのはDSDファイルのインポート機能と、PCMからDSDへのエクスポート機能に絞られている。これは、編集/加工を主眼とするDAWの性質上仕方ないところではあるが……。ただし、オーディオインターフェイスが登場してきた現在、今後はDSDレコーディングやDSDネイティブでトラックを扱う機能といったものも考えられそうだ。そうなるとPCMとの整合性が難しくなるため、別ソフトへと分化する可能性もあるわけだ。
一方、国内ソフトメーカーである株式会社インターネットも、歴史ある波形編集ソフトの最新バージョン「Sound it! 8」にDSD機能を搭載。これも実質的にはPCMとの変換機能を搭載したものだが、DSDを扱えるツールが増えてきたのは事実。
さらに、ティアックはフリーウェアとしてDSDネイティブ編集と再生を可能にするTASCAM Hi-Res Editorを無料で公開。そして年末のコルグのDS-DAC-10Rの登場に伴い、AudioGateも4.0へと進化。DSD編集機能だけでなく、録音機能も搭載するなど、まさにDSD対応ツールのラッシュとなった1年だった。
まだ各社バラバラな動きという印象はあるものの、DSDの芽があちこちで吹き出した2015年。それが大きく成長していく2016年であることに期待したい。
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