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4K HDRで蘇る「ウルトラQ」が“モノクロ超高画質”な理由。UHDブルーレイ制作の舞台裏

ウルトラマンシリーズの原点であり、良質な特撮ドラマとしても人気の『ウルトラQ』。1966年より放送された同作品は35mmフィルムで撮影されており、放送から50年以上を経て4Kリマスター化。4K/HDR映像のUltra HD Blu-ray「ULTRAMAN ARCHIVES ウルトラ Q UHD MovieNEX」として11月20日に発売される。

(C)TSUBURAYA PRODUCTIONS CO., LTD

後のウルトラマンシリーズでも人気の「カネゴン」や「ガラモン」などの怪獣が登場した作品であり、放送当時に最高視聴率39.2%、平均視聴率32.39%を記録。当時の子供たちはもちろん、大人も楽しめる内容で長年愛されている。モノクロであるこの作品が今の技術で4K/HDR化されることによって、どんな映像に生まれ変わったのか?

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リリースを前に、オーディオ&ビジュアル評論家でテクノロジージャーナリストの本田雅一氏がUHD BDを視聴。この映像が実現した背景や、高画質化のポイントなどについて、プロジェクトを進めた円谷プロダクション、レストアを含む工程を進めた東映ラボ・テック、カラーグレーディングを行なった東映デジタルラボの担当者にインタビューした。当時の制作の苦労や、4K/HDRの見どころシーンなど、作品の新たな魅力について語られた。

ULTRAMAN ARCHIVES ウルトラ Q UHD MovieNEX
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「ULTRAMAN ARCHIVES ウルトラ Q UHD MovieNEX」(品番:PCWE-52001)は、35mmオリジナルネガフィルムを初スキャンして4Kデータ化。1話につき約3日間かけたという丁寧なスキャンと、全シリーズで約100万コマに及ぶレストア作業を経て高解像度の4Kデータを作成した、画質面でも注目の作品となっている。当時のスタッフや、識者たちが作品の魅力に迫る映像特典「Premium Talk」なども収録し、価格は10枚組で7万円。購入すると本編映像や特典がストリーミングでも楽しめるサービス「TSUBURAYA MovieNEX」を利用できる。

インタビューに答えてくれたのは、円谷プロダクションの製作本部 製作部 設定・監修チームの池田遼氏と、東映ラボ・テックのアーカイブ事業部 課長でコーディネーターを務める塩田敏広氏、同事業部 業務グループ課長 桐谷周作氏、東映デジタルラボ ポスプロ事業部 カラーリストグループ シニアカラーリストの佐竹宗一氏(以下敬称略)。

左から、東映ラボ・テックの塩田敏広氏、東映デジタルラボ 佐竹宗一氏、東映ラボ・テック 桐谷周作氏、本田雅一氏、円谷プロダクション 池田遼氏
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視聴に使ったのは、パナソニックの自社組立パネルで高画質化したVIERA有機ELテレビ最高峰モデル「TH-55GZ2000」と、HDR画質の高さでも定評のあるUHD BDプレーヤー「DP-UB9000(Japan Limited)」の組み合わせ
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かつての「総天然色」とは別物の、モノクロならではの4K/HDR

本田:円谷プロさんが『ウルトラQ』を4K/HDRでUHD BD化することになったのはどんな経緯からだったのでしょうか?

池田:最初にNHKさんからテレビで4K放送するという話をいただいて(2018年12月よりBS4Kにて)、そこから全編を1年以上かけて制作しました。

円谷プロダクションの製作本部 製作部 設定・監修チームの池田遼氏

塩田︓4K 非圧縮で作業しましたので、データ量が多かったです。白黒フィルムのスキャンからHDR仕上げまではこれまで例のない事で、長期間をかけて、東映ラボ・テックで担当しました(UHD BDへのエンコード、オーサリングはパナソニックAVCディスクサービスが担当)。

本田:『総天然色ウルトラQ』('11年発売のカラー化したBD/DVD-BOX)の時は、HDのテレシネなんですよね。

桐谷:アメリカでテレシネをして、色までついたものがテープで届き、それを日本でカラーグレーディングしました。アメリカの担当者が色付けした“西部劇的”な色を、“日本調”にするなど、物語に沿った形でグレーディングを行ないました。

塩田:BD作成の当時はテレシネですので、HDの解像度しかなく、テレシネはネガではなくプリントしたフィルムを使用しました。今回はオリジナルのフィルムから4Kスキャンしています。その一番のメリットは、幅広い階調がとれて濃淡を表現できることですね。後でグレーディングしたときにも、より幅広い色で作業できます。スキャンは、フィルムの外のパーフォレーションまで含めて4.5Kくらいでデータをとっていて、仕上げも少し広くなっています。

東映ラボ・テックのアーカイブ事業部 課長でコーディネーターを務める塩田敏広氏

本田:この作品は「丁寧にスキャンを行なった」とのことですが、1話につきどれくらい時間をかけたのでしょうか? 丁寧にとはいっても、機械ではできるスピードは決まっていると思います。

本田雅一氏

塩田:スキャンは1話につき2~3日かけました。オリジナルネガを、フィルムスキャナーのARRISCANの通常とは違う、フィルムを痛めない方法で録りました。結果として、高い画質を維持したまま、より時間をかけてスキャンすることになったのです。

本田:レストアの技術も進化していると思いますが、従来のモノクロと比べてどう違うのか、特に気をつかったところなどはありますか?

塩田:特に、フリッカー(ちらつき)なども除去していますし、“窓ゴミ”などの消しもの作業に時間をかけました。枠でギリギリ見えていたものも全部消しています。フィルムのキズやゴミなどを1つ1つ除去する“パラ消し”も、細かく行なっています。

本田:作品がモノクロというのもありますが、「レストアで解像度を出している」のではない、情報量の多さを感じました。これは何か理由がありますか?

塩田:スキャンの状態で広く録れていますから、情報量がすごく多いですね。

本田:グレイン(フィルム特有の粒子)ものっていますね。これは、後から(追加して)のせているわけではないですよね。

塩田:元のデータよりも除去しています。その取り具合を、円谷さんと相談しながら「これぐらいにしよう」と決めています。

本田:「総天然色」の時はテレシネということもありましたが、グレインの粒度が大きくて、ブツブツが動いている感じがしましたが、今回はスパイクのような時もあれば、粒度感が違うと感じたシーンもありました。

塩田:シーンや仕上げによっていろいろあります。もちろん好みもありますが、どちらかというと今回は“残し気味”ですね。

池田:最初のチェックでいくつかのパターンを見せていただき、その中では一番残っていたものを使っています。映画にも近い質感が出ていました。取り過ぎてツルツルだとフィルムの作品らしさが損なわれてしまいます。また、取り過ぎると、圧縮ノイズのように見えてしまうようなこともあったので、残し気味のものを選択しました。

本田:圧縮したときに問題が出たりすることもありますからね。

塩田:圧縮もそうですが、HDRの時にどう見えるかを確認しながら作りましたね。

4Kで改めて分かる当時のこだわり。“お手本”がない中で重視した点

本田:円谷さんとして、特に4K化した中で印象的だったシーンや、エピソードなどはありますか?

池田:4K解像度で観て驚いたのは、当時のミニチュアの精巧さ、怪獣の皮膚のゴツゴツ感などですね。特に10話の「地底超特急西へ」のオープニングの新東京駅などは印象的です。全体を通して見ると、怪獣の眼の光だとか、昔は真っ白に見えていた部分が、少しグラデーションが出て生物感が増しているのが分かります。人の肌のツヤ感なども全然違って、自然に出ていますね。

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本田:キャッチライトだとか、怪獣のツノなどもHDRで見え方がよりリアルですね。

塩田:それは1話の「ゴメスを倒せ!」で苦労した部分ですね。最初の話ということもあり、グレーディングをどうするか、いろいろと相談しながら決めました。

佐竹:セットなどが見え過ぎると、“作り物感”がでてしまいます。だからといって、SDRと同様に“見せない”ようにしてしまうと、目新しさがない。そこは探りながら作っていきました。ゴメスの毛の感じなどのディテールは、今まで見えていなかった部分ですね。

HDRであっても、“オリジナル”を追求しすぎるとSDRっぽくなってしまうのが難しいところです。グレーディング的には、円谷さんと相談しながら、新しく作り直す部分もありました。

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本田:キラッと光る部分などを強調するとリアリティは高くなるけれど、目の瞳孔は小さくなりますから、暗部の見通しは悪くなったりしますよね。そういったバランスをどうするかは、数字でなく見て判断するということですか?

佐竹:実際に見てトライアンドエラーですね。流してみて、ツヤ感を印象付けたいと判断した結果、あえて(ダイナミックレンジを)上に伸ばしています。

塩田:特に最初の話なので、こだわっている部分ですね。

本田:この作品は初の4K/HDR化でリファレンスとなるものが無い中、三社の皆さんの作業の中でどのようにコンセンサスをとっていったのですか?

佐竹:円谷さんが実際に立ち合いの元で作業しています。その場で見て意見を聞きながら調整しました。

池田:各話で注意して作業していただきたい点はあらかじめチェックしておいて、それを元に事前仕込みをしていただき、さらに実際に立ち会っています。

佐竹:終始“HDRっぽさ”を前面に出すのではなく“緩急を付ける”という方針は、円谷さんからありました。例えば最初の数分間は強調し、中盤は落ち着いて、最後のクライマックスでも強調するという調整などですね。

東映デジタルラボ ポスプロ事業部 カラーリストグループ シニアカラーリストの佐竹宗一氏

本田:僕らの時代、フィルムで写真を撮った時は、プリント以外にスライドプロジェクターで見ると、紙焼きよりダイナミックレンジが広くて細かいところまで見えると感じたものです。フィルムの中にある情報量がしっかり出ていて。今回の4K/HDR版を見て、そんなことを思い出しました。フィルムのなかを直接ライトテーブルで見ているような感じといいますか(笑)。

実際、モノクロ作品という中で、HDRによって作品の良さをどうやって引き出そうとされたのでしょうか?

池田:我々(円谷プロ)がカットを選ぶ中で基準にしていたのは、HDR/SDRというよりも「この話の中で、怪獣の見え方が重要なのか、それとも全体の明るさ/暗さが演出として重要なのかといった点です。話の流れの中で違和感がないようにしたり、「この怪獣が出たときの驚き、恐怖感を強調した方がいいよね」などのポイントを重視しました。

本田:4K/HDRによって、ストーリーテリング、演出の幅が広がったので、それを引き出せるようにしたということですね。今回はパナソニックの4K/HDR対応有機ELテレビで観ていますが、一方で、この作品をSDRで観る人もいると思います。そこにも気をつかわれていますか?

佐竹:NHKの放送用にはHLG(HDR非対応テレビで観た場合も最適な映像で観られる「ハイブリッドログガンマ」)でマスタリングしていますので、100nitsのモニターで観た時も考慮してグレーディングしていますね。

4K/HDR化で“見えすぎ”になることも?

本田:ファンとしては、4Kになって、HDでは見えなかった部分もいろいろ見えた方がうれしいと思いますが、作る側としては“見えてはいけないもの”もあったりしませんでしたか?

池田:4Kになって、HDのときよりも見えすぎたところもあって、調整した部分はあります。

桐谷:合成や、複製がかかっているカットだと、すでに枠が付いてしまっている部分もありましたので、何もかも見せるかというと、そうではありません。

本田:“見えすぎ”を防ぐという点では、例えば19話「2020年の挑戦」に登場する“ケムール人”のシーンなど、どこまで見えるのか検討を重ねたという話を聞きました。

池田:初登場のシーンで、見え具合を工夫した部分ですね。フィルムに情報としては多く残っていたと思いますが“印象としての暗さ”を重視しました。

塩田:「クモ男爵」(9話)などもそうですね。

ケムール人の登場シーン
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本田:(実際のUHD BD映像を観ながら)それにしても、こんな形で4K/HDR映像として観られると当時は思われていなかったでしょうが、4Kで観てもしっかりとピントがきていますね

池田:(撮影内容を確認する)ラッシュはもちろんしていたと思いますが、こういう形では見ていなかったと思います。ですが、こうして見てもしっかり作り込まれているのが分かる。

桐谷:制作時のラッシュは、場合によっては16mmで見ていると思います。こうやってみると印象的ですね。

塩田:当時、ここまでは見えていなかったでしょうね。

今観ても新鮮な、4K/HDRならではの見どころは?

本田:レストアや、カラーグレーディングを実際に進めた東映ラボ・テックと東映デジタルラボの皆さんが、特にお気に入りのエピソードや観て欲しいシーンなどありますか?

塩田:やはり1話のゴメスですね。最初に苦労したというのもあります。また、「地底超特急西へ」(10話)は、「セットをここまで作り込んだのか」というのが面白いと感じました。しかも、最後に爆破するんですよね。1回きりのシーンだったとのことですが、見事に作られていました。

「地底超特急西へ」(10話)の爆破シーン
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本田:こうして映像を観ていると、黒をベースに光を重ねるような録り方が、いま見返してもスタイリッシュですね。

池田:センスが全然古くないですよね。

本田:「総天然色」の時のモノクロと、このモノクロとはルックが違いますよね。これをSDRに変換したとしても同じにはならないはずです。ピアノ線の見え方なんかも違いますが、総天然色がオリジナルのウルトラQだと思ってるファンもいるのではないでしょうか。

池田:一番違うのは、総天然色は我々でパラ消しをしてないところでしょうね。

桐谷:アメリカから来たテープはパラ消しまで済んだものとして、色調整だけしていました。カラー化が主体だった仕事でしたからね。当時もカラコレは時間をかけて行ないましたが。

本田:トーンカーブが全然違うなと。特に暗い部分などですね。

桐谷:ローコンのポジを素材にしていましたので、今回のネガからのスキャンとはだいぶ違いますね。

塩田:ピアノ線は実は残していて、レストアでの消し具合は変わっていません。ただ、解像度が上がり、スキャンしてからより細かく取れているので、正確に、フィルムに近い表現になっているのではないでしょうか。

佐竹:私が一番記憶に残っているのは「クモ男爵」(9話)ですね。全編ナイター録影で、ライト、ろうそくなどの光と影の世界。車のヘッドライトの見え方などは、今までのSDRでは描けなかったと思います。

塩田:一番グレーディングに時間をかけた部分ですね。

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佐竹:館の中を見ると“暗くても見えている”表現が、SDRだと黒を浮かせて見せなければいけなかったところが、HDRでは表現できるようになりました。

本田:ヘッドライトの模様までもHDRだと見えますね。

佐竹:懐中電灯の玉が見えたりとか、光源の見え方が非常に違いますね。

本田:カットが切り変わると当然露出も変わりますよね。そのズレも合わせ込んでいるんですよね。

佐竹:流れで見て、違和感ないようにもっていったり、絵柄によってはあえて合わせていないところもあります。壁の質感、ディテールも、黒が浮いていない状態ですね。しっかり立体感ある状態で描けています。

SDRの時は、見えてないところはつぶれてしまうしかないんですよね。コントラストをつけるか、柔らかくするか、どちらかしか選べなかった。

塩田:テレシネだと、背景の暗い部分に“何かある”のが分からず、ベタッとした黒だったと思います。

桐谷:'66年の放送当時は、16mmに縮小したプリントで納入されていますから、放送局側で生でテレシネするのがほとんどでしたからね。

東映ラボ・テックのアーカイブ事業部 業務グループ課長 桐谷周作氏

佐竹:SDRだとコントラストをつけた時に(白が)飛んでしまうんですよ。HDRだと、コントラストを付けても、出したい部分は暗部が残っていて、ハイライトも抜けが残っている状態を作れるので、画に立体感が出てきますね。

随所にある“遊び心”発見も

池田:見どころはたくさんあるので、絞るのはとても難しいですが、すごくマニアックな楽しみ方をすると、メインタイトルも全部見え方が違います。話のテイストも、ホラーあり、SFありと様々です。

一つ、今回の取り組みの中でたまたま見つけたのですが、脚本家の金城哲夫さんがカメオ出演しているシーンで、名札をよく見ると「銀城」と書いてあるんですね。お茶目な方だとは聞いていましたが、そういった見えない“遊び”も作品にあるんですよね。探してみると、他にもそういった部分を発見できるかもしれません。

桐谷:私が印象的だったのは「2020年の挑戦」(19話)ですね。スライム状のものが、子供心に気持ち悪いものだったのを覚えていますが、液体のギラギラ感ですとか、光ったり反射したりなど、こうして見るとリアルで……。

本田:以前の映像では、細かな質感の差までは分からなかった部分もありましたが、こうやって観てみると、元々こだわって作られていたのが分かりますね。

桐谷:飛び込み台からジャンプした人や、飲み物を飲んだ人が消えてしまうなどの、合成のシーンもとてもシャープなんですよ。(元フィルムの)35mmの力なんでしょうね。

佐竹:凹凸が出せるから立体感が違いますよね。

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本田:皆さんはこれまでも多くの作品を手掛けられていると思いますが、今回のプロジェクトで、最初に想像した部分と、実際に取り組んでみて違った発見などはありましたか?

塩田:フィルムの状態がよかったのが想像以上でした。アーカイブ用に作られたスキャナではなかったですが、一番いい状態で録れました。レストアを行なう際もフォーカスがしっかり来ていましたしね。ノイズなどをしっかり消せたのも、状態がよかったから。やはり35mmというのは大きかったですね。

佐竹:最初に見た時にびっくりしたのは「こんなに情報が残っているのか」という点でしたね。普段はSDRで旧作を担当することも多いですが、「どこかを出すと、どこかを引っ込めないと」いけない。

HDRの領域を使えるとなると、逆に迷うこともあります。モノクロだからここまでできた、というのもありますね。1966年当時のカラーフィルムと、モノクロを比べたら、モノクロはその頃が“到達点”になっているからかもしれません。退色もないですし。

本田:レストアものはたくさん観てきましたけれど、かなりレベルが高いですね。

塩田:相当な時間をかけていますね。色ムラは無いですけど、フリッカーや揺れもありそれを除去しています。

佐竹:いろんなものが見えてくる分、やはりごまかしは効かない部分はありますね。

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大人が楽しめるドラマと、それを支える映像の高いクオリティ

本田:ウルトラマンシリーズというと『ウルトラマン』の子供向け番組というイメージが強いですが、『ウルトラQ』には社会性もあるし、分からないものに対しての探究心をくすぐられる作品だと強く感じます。これまでのファン以外の人にも、どのように楽しんでほしいですか?

池田:今作っているウルトラマンシリーズも、主に子供をターゲットにしていますが、その原点である『ウルトラQ』は「上質なSFドラマのオムニバスを作ろう」とテレビ界、映画界から多くのスタッフが集まって作った、奇跡のような作品です。

怪獣が出ない話でも、恋人が巨大化して思い悩む女性など、子供だましではない、大人が楽しめる要素が随所にあります。文明への警鐘、人間の心の動きの描き方など、まったく古びていないですよね。若いクリエイターが見ても、刺激を受けるのではないでしょうか。スタッフがいい意味で遊んでいる、楽しんでチャレンジしているのがものすごく伝わってきます。これを50年以上前に、当時20代、30代の若者たちが作っていたというのは、私は30代ですが信じられないなという思いがあります。

東宝さん含めた映画のスタッフ、テレビディレクター、様々な人が集まり、ハイブリッドで一つのオムニバスのドラマを作るという凄さ、ぜいたくさ、丁寧さ、クオリティの高さを感じていただけたらうれしいですね。

本田:だからこそUHD BDにして価値があるものですね。作品の中身がしっかりしていて、しかもフィルムの状態も良かった。それが、今の技術と皆さんの力できちんとしたものに仕上げられた。

桐谷:役者さんの表情で、作り物でも本物に見えてくるということも改めて感じます。人の表情、光り方などの細かい部分を含めて、全体でいい方向に作れたと思っています。

佐竹:古臭さがないですよね。旧作は、SDRだと懐かしさを含んだ目で見てしまいますが、HDRで観ると、白黒だけど街並みなども新鮮です。「当時はこんな車が走っていたんだ」などとリアルに感じられます。懐かしんで観る人ももちろんいると思いますが、初めて観る人も新鮮な興味を持てるのではないでしょうか。