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FIIO“価格破壊的DAP”新モデル「JM21 2026」とCDプレーヤー風「Snowsky DISC」から読み解く、FIIOのDAP戦略

昨年、DAPの世界で最も話題だったのはFIIOの「JM21」だろう。デュアルDACやパワフルなヘッドフォンアンプを搭載しながら、早割キャンペーン価格で約29,700円という低価格で、“価格破壊的DAP”として注目を集めた。その後は通常価格の約33,000円に戻ったものの、それでもコスパの高さは圧倒的なままで、e☆イヤホン2025年間ランキングでも、DAP部門の売上“個数”ランキングではJM21が堂々の1位になった。

JM21

そんな“手に取りやすい入門DAP”としての地位を築いたJM21に、なんと新モデルが登場した。その名も「JM21 2026」。価格はオープンで、実売は約39,600円と、少し値上がりしたのだが、内部のメモリが1GB増の4GB、ストレージは2倍の64GB、バッテリーも29%増の3,100mAhと、“DAPとしての大事な基礎能力”が大きく向上。実際に使ってみると、前モデルで“惜しい”と感じた部分を改善、「愛用するなら新モデルの方が良い」と感じる。まさに、オーディオ好きな人が初めて手に取る“入門DAPの定番”にふさわしい完成度になっいている。

JM21 2026

一方で、デザイン面から「なにこれ!?」と多くの人から注目を集めているのが、ポータブルCDプレーヤーのような可愛いデザインのDAP「Snowsky DISC」だ。JM21 2026がオーディオファン向け入門DAPなら、こちらは、オーディオファンじゃない人も惹きつけて、DAPを手にしてもらおうというFIIOの意欲作だ。

Snowsky DISCは5月22日から発売されており、価格はオープン、実売17,930円前後と、JM21 2026と比べてもさらにリーズナブルだ。値段だけ聞くと、ぶっちゃけ「デザインだけで、音は二の次なのでは?」と思いがちだが、聴いてみると、良い意味で予想を裏切る“高音質なの小型DAP”に仕上がっていた。

Snowsky DISC

オーディオファンも、そうでない人も、ポータブルオーディオの世界にグッと引き込み、市場自体を拡大させようというFIIO DAP戦略。それを象徴するJM21 2026、Snowsky DISCを使ってみる。

左からSnowsky DISC、JM21 2026、JM21

JM21 2026の進化点

JM21 2026は、モデル名からわかるように、「JM21の後継機種」というよりも、「JM21の2026年バージョン」という位置付けで、要するにマイナーチェンジモデルだ。しかし、実際に使ってみると、JM21からの進化は大きいと感じる。

JM21 2026、JM21

進化点は前述の通り、メモリが3GBから1GB増の4GBになり、ストレージが32GBから2倍の64GBになり、バッテリー容量も3,100mAhになった。

ストレージメモリの倍増と、バッテリー容量増加は恩恵がイメージしやすい。ストレージが増えれば、多くの音楽ファイルを持ち歩けるし、音楽配信アプリで事前にダウンロードしておく音楽ファイルも増やせる。

JM21 2026の側面

バッテリー容量の増加により、既存のJM21のシングルエンド接続時の再生時間は12.5時間だったが、JM21 2026は最大16時間の再生が可能になった。平日の通勤通学で毎日2時間使ったとしても、JM21 2026であれば追加充電しなくても、余裕をもってこなせるだろう。

注目はメモリ容量が4GBに増えたこと。JM21/JM21 2026は、OSにAndroid 13を採用しているのだが、このOSはメモリの使用量がそれなりに大きいので、メモリが不足すると、アプリの動作が重くなったり、動作が不安定になったりする。スマホを使っている時、動作がガクガクして、他のアプリを終了させたり、スマホ自体を再起動した経験は誰しもあると思うが、DAPもそれと同じで、メモリに余裕があったほうが、動作がサクサク安定するわけだ。この効果は後ほど、試してみよう。

それ以外のスペックは既存のJM21と同じで、チップセットはQualcommの「Snapdragon 680」を搭載。DACは、シーラスロジックのフラッグシップDAC「CS43198」をデュアルで搭載している。

ヘッドフォンアンプは、SGマイクロ製「SGM8262」を搭載した、フルバランス・オーディオ構成を採用。4.4mmと3.5mmのイヤフォン出力を備え、バランス出力で最大700mWと、エントリーとは思えないパワフルな出力も可能だ。

JM21 2026のイヤフォン出力

DAPの音質を高めるためには、電源部も重要となるが、JM21 2026はそこも抜かりはない。デジタル回路とアナログ回路で独立した電源を搭載しており、DAC、電圧、電流増幅の3段階で電源供給処理を行なっている。

加えて、4チャンネルのヘッドフォンアンプには、4つの独立した高精度なLDOレギュレーターを搭載し、ノイズも抑えた。ジッターを低減するため、44.1kHz系/48kHz系独立構成のフェムト秒クロックも備えるなど、スペック面を見ると、エントリーDAPとは思えない充実ぶり。

機能も豊富で、USB DACとして使うこともでき、384kHz/32bitのまでの再生が可能だ。USB DACとして長時間使用すると、その間にバッテリーを過充電してしまう問題があるが、それを防ぐため、内蔵バッテリーではなく本体へ直接給電する「充電停止モード」まで備えている。

快適度が増したJM21 2026

実際に、JM21とJM21 2026の両方を使ってみると、スペックの数値だけでなく、実感として「快適になった」というシーンが多々ある。

チップセットに違いはないので、DAPの起動時間は2機種でほぼ同じなのだが、その後、QobuzやAmazon MUSICアプリを起動させ、プレイリスト画面に移動し、聴きたい曲までスクロールすると、アルバムアートの読み込み、表示が明らかにJM21 2026の方が高速だ。

JM21は、読み込み・表示が追いつかず、指でスクロールしてもガクガクして途中で止まってしまう事があるのだが、JM21 2026は一瞬でアルバムアートが表示され、滑らかに最後までスクロールできる。

音楽配信アプリのプレイリストをスクロールさせると、JM21 2026の方が滑らかだ

JM21も、時間をかけて最後までプレイリストを読み込みさえすれば滑らかにスクロールはできるのだが、やはり、最初の段階でカクついてスクロールが途切れると、目的の音楽を見失ったりして、ちょっとストレスを感じる。多くのプレイリストを使い分けたり、音楽配信サービス側が用意している「ニューリリース」や「ランキング」などのリストにアクセスする時も、JM21 2026の滑らかさだと、まったくストレスが無い。

実際のその違いを、動画でも撮影してみたのでご覧いただきたい。Qobuzよりも、アプリ自体がやや重いAmazon Musicでは、“快適さの差”がより顕著に出るようだ。

QobuzやAmazon Musicアプリで、JM21 2026とJM21の速度比較

家の中で、ゆっくり聴く時はあまり問題にならないかもしれないが、DAPは通勤通学の電車内で、ササッと使いたい事も多いので、細かなストレスが無いというのは大きなメリットと感じる。前述の通り、JM21 2026は実売約39,600円と少し高価にはなったが、このサクサク動作、ストレージの多さ、使用時間の長さを考えると、「長く愛用するならJM21 2026の方がやっぱり良いな」という納得感はある。

JM21 2026のサウンド

音質の面で、JM21とJM21 2026はほぼ同等だ。詳しくは、以前掲載したJM21のレビュー記事をご覧いただきたいが、音を聴いてみると、“エントリーDAP”とは思えない、堂々としたサウンドクオリティを実現している。

finalのS3000(+ケーブルはBrise Works MIKAGE 4.4mm)を接続し、Qobuzで「グレゴリー・ポーター/When Love Was Kin」を再生すると、SN比が良く、クリアで透明感のあるサウンドが流れ出してくる。音場がしっかり広く、デュアルDACの効果を感じる。

低音も本格的だ。グレゴリー・ポーターの深みのある低音ボイスが、音楽をしっかり下支えする。深いだけでなく、肉厚な低音だ。それでいて、不必要に膨らまず、タイトさもある。例えば「ダイアナ・クラール/月とてもなく」のアコースティックベースは、倍音がゆったりと響きつつ、その中にある、弦が揺れてぶつかる「ブルン、ゴリン」という音はシャープに描写してみせる。ヘッドフォンアンプの駆動力の高さを感じる部分だ。

低音から高音までバランスがとれており、例えば「エントリーDAPだから中低域を持ち上げて派手目にしておこう」みたいな、小手先の迫力を求めたりしていない。とても“真面目なHi-Fiサウンド”で好感が持てる。

JM21 2026の価格を考えると、スマホにUSB接続する、ドングルDACもライバルになりそうだが、やはりSN比の良さ、低域の深さ、音場の広さといった部分で、“単体DAPだからこそ出せるクオリティ”を感じる。

他社の単体DAPと比較しても、より効果な、ミドルクラスの製品とも十分戦えるサウンドであり、その点で見ても、JM21 2026のコストパフォーマンスの良さは驚異的なままだ。

Snowsky DISCも使ってみる

Snowsky DISC

可愛いポータブルCDプレーヤー風DAP「Snowsky DISC」も使ってみよう。外形寸法は68×68×12.9mmと、胸ポケットにも簡単に収まるコンパクトさで、重量も77.2gと軽い。JM21 2026もDAPとしては薄くて軽量な部類だが、Snowsky DISCはより大胆にコンパクトだ。

中央に1.8型の円形ディスプレイを備え、設定すれば、再生中にアルバムアートが、CDプレーヤーのように回転する。

再生中にアルバムアートが、CDプレーヤーのように回転する

右上側面に電源ボタン、右側面に再生/一時停止、ボリュームボタンを搭載。下部には、USB-Cと、4.4mmバランス、3.5mmアンバランスのイヤフォン出力を備える。3.5mmは同軸デジタル出力も兼ねている。

普通のメーカーであれば、この小ささと価格のDAPなら3.5mmのイヤフォン出力だけ搭載しそうなものだが、4.4mmバランス出力まで搭載しているのが実にFIIOらしい。

さらに驚くべきは、内部にはシーラスロジックのDACチップ「CS43131」を2基も搭載。この時点で“可愛いだけのDAP”ではなく、“可愛いくせに中身がガチなDAP”だとわかる。ヘッドフォン出力もバランスで280mW+280mW(32Ω)、アンバランスで125mW+125mW(32Ω)と十分パワフルだ。

さらに、BluetoothはLDACに対応、AirPlayもサポート。2TBのmicro SDカードスロットも備え、USB DAC機能まで備えている。「なんかガチ過ぎるんですけど」とツッコミをいれたくなるDAPだ。

円形ディスプレイはタッチ操作に対応し、ツリー状のメニューをたどりながら、ストレージ内の音楽ファイルを再生できる。ディスプレイが長方形でないので最初は戸惑うが、慣れると操作性は悪くない。時計も表示できるので、使わない時は卓上時計として使うのもアリだろう。

ボリューム表示
再生制御画面
メインメニュー
カテゴリで楽曲を探しているところ
アルバムのリスト表示
時計として使うことも可能だ

なお、OSはAndroidではなく、音楽配信サービスのアプリをインストールするような機能はない。ただ、AirPlayやに対応しているので、スマホで再生している音楽配信のサウンドを、Snowsky DISCから聴くことは可能だ。

驚くSnowsky DISCのサウンド

小型で薄いDAPなので、正直「デザイン重視で、音は二の次なのかな?」と想像したのだが、finalのS3000(+ケーブルはBrise Works MIKAGE 4.4mm)を接続して音を出すと、驚きのサウンドが出てくる。

「機動戦士ガンダムUC」のサントラを再生すると、SN比が非常に良く、静かな音場が広がり、そこにオーケストラが鮮烈に浮かび上がる。音が広がる余韻も、奥行きが感じられる。デュアルDAC搭載だけあり、非常に情報量が多く、クリアなHi-Fiサウンド。“オモチャっぽいDAP”なんてとんでもない、音は十分本気のDAPだ。

Adoの「うっせぇわ」を聴くと、メリハリの効いたビートが気持ち良い。Adoのパワフルなシャウトも肉厚に迫ってきて、デュアルDACだけでなく、ヘッドフォンアンプのパワーもしっかりと感じられる。満足度の高い音だ。

ただ、例えばJM21/JM21 2026のような、よりグレードの高いDAPと比べると、及ばない部分はあり、低域の深さ、重さがもう少しあれば、より満足度は高くなるだろう。ただ、Snowsky DISCのコンパクトさ、気軽に持ち歩ける利便性を考えると、十分期待以上のサウンドクオリティを実現している。

DAP魅力を気軽に体験できる2機種

JM21 2026は、エントリーDAPとして非常にレベルが高かったJM21を、さらに進化させた事で、「とりあえずDAPに興味がある人は、これを第一候補にすれば間違いない」と言える完成度だ。

価格を考えると、サウンドクオリティやアンプの駆動力は申し分ないし、機能も充実している。JM21 2026になって、動作もサクサクになり、末永く愛用できると考えれば、少し値上がりしたとはいえ、まだまだコストパフォーマンスでは他を寄せ付けない強さを持っている。

JM21 2026

一方で、Snowsky DISCもDAPの世界に気軽に触れ、楽しめる1台として非常に魅力的だ。デザインが可愛く、常にポケットに入れて誰かに見せたい、使わない時でも机の上に飾りたくなる魅力がある。

ゆっくり回転する音楽ファイルのアルバムジャケットを眺めていると、CDプレーヤーのよでもあり、小さなレコードプレーヤーのようにも見えてくる。音楽配信の普及で、好きな音楽を所有している実感が得にくい昨今だからこそ、ちょっとアナログライクな見た目で音楽が楽しめるSnowsky DISCには、独特の魅力がある。

アルバムアートがゆっくり回転する

“デザインだけ”で終わらないサウンドクオリティの高さも良い。どんなに可愛いDAPでも、音がイマイチならば、すぐに使わなくなってしまうと思うが、Snowsky DISCはエントリーDAPとして、期待を超えるサウンドを備えている。価格も実売17,930円前後と手に取りやすいので、誰かへのプレゼントにしても喜ばれそうだ。

このSnowsky DISCに似合う、有線イヤフォンや有線ヘッドフォンと組み合わせ、“レトロだけど、サウンドは最新クオリティ”というギャップを楽しむのも、オーディオ趣味の1つのカタチと言えるだろう。

Snowsky DISC
山崎健太郎