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麻倉怜士が聴く、B&W「800 D5」×マランツ「10シリーズ」が切り開いた、新たなオーディオの境地
- 提供:
- ディーアンドエムホールディングス
2026年10月16日 08:00
Bowers & Wilkinsの、新たなフラッグシップスピーカーとして登場した「800 D5シリーズ」。正面から見た時の外観の変化は少ないが、音の進化は驚くほど大きく、スピーカーの個性や存在が消えて、音楽だけが残るような感覚にもなる。“プロジェクト・ノーチラスの到達点”というのも頷けるサウンドだ。
逆に、“接続したソース機器や、駆動するアンプの実力をそのまま出す”のが800 D5シリーズとも言えるかもしれない。
そこで脳裏をよぎるのが、マランツが昨年に発売した新フラグシップコンポ「10シリーズ」だ。というのも、800 D5シリーズの発表・説明会では、10シリーズのSACDプレーヤー「SACD 10」(198万円)×1台と、プリメインアンプ「MODEL 10」(242万円)×2台を使った、“コンプリート・バイアンプ・ドライブ”で800 D5シリーズが鳴っていたのだ。つまり、800 D5の驚きのサウンドは、10シリーズの実力によって支えられ、引き出されていたわけだ。
マランツの10シリーズ×B&W 800 D5の組み合わせで切り開かれた、新たなオーディオの世界はどんなものか。「麻倉怜士の大閻魔帳」でお馴染み、麻倉怜士氏が迫った。
10シリーズとは、どんなコンポか
10シリーズは、プリメインアンプ「MODEL 10」、SACDプレーヤー「SACD 10」、ネットワークプリアンプ「LINK 10n」(220万円)で構成。いずれも自社工場・白河オーディオワークスで作られている。
MODEL 10の特徴は、“プリメインアンプである事”だ。ピュアオーディオのハイエンドアンプは、プリとパワーが分離したセパレートが多いが、MODEL 10はあえてプリとパワーを一体とした。これには理由がある。
セパレートの場合は、プリとパワーそれぞれで、接続相手としてどんなアンプが来るかわからないため、仕様もそれを前提としたものとなる。だが、プリメインアンプであれば、その心配はない。一般的なゲイン配分にこだわらない開発ができるほか、必要悪であるカップリングコンデンサの最小化、外部のケーブルを使用しないで経路を最短化できるメリットもある。
パワーアンプ部には、デンマークのPURIFI(ピューリファイ)と共同開発した、独自設計のデュアルモノ・シンメトリカルClass Dパワーアンプを搭載。マランツは、2015年の「HD-AMP1」から、ホームシアター用パワーアンプ「AV 10」など、クラスDアンプを積極的に採用しているが、そこで培った技術の集大成となっている。
なお、パワーアンプ回路はバランス回路によるBTL接続で構成しており、出力はマランツのプリメインアンプ史上最高の500W + 500W(4Ω)。アナログアンプと同様に、全可聴帯域(20Hz~20kHz)での出力保証も実現している。
理想のサウンドには「入念に検討されたプリアンプ回路が不可欠」というマランツのポリシーを貫かれ、単品プリアンプ並みの回路も内蔵。低ノイズ、低歪み、高スルーレート、低出力インピーダンスを実現する、最新型のHDAM-SA3を使っている。
SACDプレーヤーのSACD 10は、ディスクリートDAC「Marantz Musical Mastering(MMM)」と、新世代のHDAM回路、独自のSACDM-3メカエンジンを搭載するのがポイント。
デジタルフィルターのMMM-Streamが、独自のアルゴリズムでPCM信号を11.2MHz/1bit DSDに変換、後段のMMM-ConversionがDSD信号をアナログ変換する。オーバーサンプリング、デジタルフィルター、ΔΣモジュレーター、ノイズシェーパー、ディザー、レゾネーターなどを、全て自社開発のアルゴリズム、パラメーターで行ない、理想のサウンドを追求した。
MMM-Stream以降のアナログステージにはもちろん、独自の高速アンプモジュールHDAM、HDAM-SA3の最新型を投入している。
そして、SACD 10に搭載しているディスクリートDACと、MODEL 10のプリアンプ部を組み合わせ、HDMI ARCにも対応したのがネットワークプリアンプのLINK 10nだ。
これらのモデルはいずれも、1.2mm厚の銅メッキ鋼板を使ったメインシャーシに、3.2mmと1.2mmのボトムプレートを追加した3層構造にするなど、非常に剛性の高い筐体を採用。また、MODEL 10は、どこまでも広がるようなナチュラルな空間表現を実現するため、トップカバーに非磁性体のステンレス製のメッシュを使った「Waved Top Mesh」仕上げとなっている。
2台のMODEL 10を使ったコンプリート・バイアンプ・ドライブ
ハイエンドアンプとしては珍しいプリメインのMODEL 10は、それを活かして“コンプリート・バイアンプ・ドライブ”が可能だ。左右の各チャンネルに、1台ずつMODEL 10を使うもので、複数台のMODEL 10のボリュームやセレクターを連動できる(最大4台、8チャンネルまで対応)。
これにより、プリ部も含めて、L/Rが完全に独立駆動される、「究極のチャンネルセパレーションの世界が楽しめる」というリッチな仕様だ。
800 D5シリーズの進化点
B&Wの新たなフラッグシップ、800 D5シリーズに共通する進化点は、エンクロージャー全体の剛性が飛躍的に向上したこと。
内部にMatrix構造を採用し、曲面積層合板技術を使っているのは従来モデルから受け継ぐ特徴だが、D5では金属を使った補強をさらに押し進め、例えばバッフルのアルミダイキャスト製プレートの厚みは、D4と比べて厚さが約2倍になり、ウーファーの振動を強固に受け止めている。
エンクロージャーの強度が弱い背面部分には、アルミ製スペースフレームを投入。縦の部分はアルミ押し出し、横を繋ぐ部分はダイキャスト製という、非常に剛性の高いフレームで補強をしている。
804 D5以上のモデルはアルミダイキャストの台座を備えているが、その台座の裏側に、ほぼ純鉄で出来ている重りも追加。各モデルの台座を解析し、たわみやすい部分に取り付けられている。
ユニットで大きく進化したのは3ウェイモデルのウーファー。磁気回路にネオジウムマグネットを使っているが、交流磁界による変調を防ぐために、2つのマグネットの間に、絶縁体のセラミックディスクを入れた。これで歪を発生しないようにしているが、この構造にすると駆動力が減少するため、それを補うために、ネオジウムマグネットを、より強力なものに変更している。
「MODEL 10」1台で801 D5の実力を引き出す
スピーカーはD5シリーズの最上位、「801 D5」(1台4,620,000円~)を用意。プレーヤーは「SACD 10」。アンプは、コンプリート・バイアンプ・ドライブも気になるところだが、まずは「MODEL 10」を1台だけ使って鳴らしてみる。
麻倉氏のUAレコードが手掛けた、「情家みえ/BONHEUR(ボヌール)」(MQACD+UHQCD)から、1曲目の「ラバー・カムバック・トゥ・ミー」を再生する。
冒頭、ピアノのアルペジオから始まるが、麻倉氏はその立ち上がりに注目。「無音の空間からピアノの音が立ち上がりますが、SACD 10 + MODEL 10で聴くと、まずその空間がたいへん静かで、音が何もない。そこから瞬時に空気を震わせてピアノが立ち上がるので、ビックリします」。
「ピアノの音自体もたいへん優れる。レコーディングは代々木のスタジオで行なったのですが、そのスタジオを選んだ理由は、置いてあったスタジオのフルコン(フルコンサートグランドピアノ)が、すごく良い音をしていたから。このピアノは久石譲さんが使っていたものなのですが、その音のハイクオリティさが、このシステムで聴くとわかる。音が綿密に詰まっていて、立ち上がりも鋭く、そしてブリリアント。そんなスタインウェイらしさが、最初のピアノの音からしっかりわかる。MODEL 10 1台でも、801D5の表現力をしっかり引き出していますね」と麻倉氏。
「MODEL 10」2台のコンプリート・バイアンプによる、新たな世界
では、「MODEL 10」を2台接続し、プリアンプ段階から分離したコンプリート・バイアンプ・ドライブで鳴らすとどうなるのか……。
同じ「ラバー・カムバック・トゥ・ミー」を再生すると、音が出た瞬間、麻倉氏は「いやぁ、これは凄い」と呟く。
「MODEL 10 1台でも801 D5の能力をフルに引き出していると感じましたが、コンプリート・バイアンプで聴くと、さらにその先がある」という。「高度な透明感があり、見通しがクリヤーなだけでなく、音に血が通った感じがしますね。スタインウェイのピアノは、基本的にブリリアントな音なのですが、それがより深く、綺羅びやかな音の後ろに、濃密な音があり、それが胸にジーンと響く。そんなスタインウェイの魅力が、コンプリート・バイアンプでは感じられる。スタインウェイに血が通った印象です」。
ジャズピアノの即興は、右手がメインとなるが、右手の表現はMODEL 10×1台の時と、そこまで違いはないという。しかし、「2台でドライブすると、左手の描写が違う。コードが、どの音とどの音で構成されているかが、より見えてきます」。
細かい音の情報量も増加すると麻倉は語る。
「ラバー・カムバック・トゥ・ミーはスタジオで録音しましたが、ミックスダウンの時にほんの少しだけリバーブをつけました。それが、コンプリート・バイアンプ・ドライブではしっかり聴こえるようになりました。相当な微小信号まで、キチッと再現しているのがわかりました」。
「こうした能力の高さがあるから、アーティストが“きっと、こう考えながら演奏しているのだろうなぁ”と想像できる。アーティストをより生々しく、人間的に感じさせてくれる方向に、音が進化しますね」。
“ピアノ自体の音の違い”も明瞭だ。
ピアニストのイリーナ・メジューエワが、1925年製のニューヨーク・スタインウエイのビンテージを弾いた、ベートーヴェンの「ワルトシュタイン」第1楽章を再生する。
「先ほどのスタインウェイは、ドイツ・ハンブルク工場で作られたものでしたが、こちらのスタインウェイはニューヨーク製。ハンブルクの音は“重さを持った剛直感のあるブリリアント”でしたが、ニューヨークは“軽やかでワイドレンジなブリリアント”。その違いがよく聴き取れます。そして、そんなニューヨーク・スタインウェイの特徴を、メジューエワさんが、すごく活かした演奏をしているのもわかりますね」。
続いて聴くのは、ベルリン室内弦楽アンサンブルの「ロッシーニ:弦楽のためのソナタ」。
「編成は少ないですが、それゆえ、音場と音像の関係がよくわかります。MODEL 10×2台 + 801 D5で聴くと、音場がとてもクリアなので、その中にある音像の数や位置がハッキリわかる」。
その音像から出る倍音の“出方”も、「今まで聴いたことがないクオリティ」と語る麻倉氏。
「3度くらいの音程で音が重ねられてハーモニーになっていますが、その音の構成がよくわかります。チェロがラブリーなメロディを弾き、最初は低音で、次に高音と出てきますが、その対比の音楽的な面白さがよく伝わってきます。“倍音の美しさ”“音場の美しさ”“ハーモニーの美しさ”が、透明な音場の中で羽ばたいていますね」。
シャルル・ミュンシュ指揮 ボストン交響楽団によるベートーヴェン交響曲第3番「英雄」。歴史的オリジナル3ch音源を、ビクターの高音質CDであるXRCDで復刻したものだ。
録音されたのは1957年と古いが、麻倉氏が「まるで昨日録音したようだ」と語るほど、新鮮な音が801 D5から流れ出した。
「シャルル・ミュンシュはフランスのアルザス地方に生まれましたが、この地方は歴史の中で何度もドイツ領とフランス領を行き来した場所で、ドイツ的な雰囲気も残っています。それもあって、今までこの演奏からは、彼のドイツ的でマッシブな勢いを感じていました。しかし、今日のシステムで聴くと、そこからさらに細かいところが見えてきました」。
「ベートーベンのスコアは、弦があったら対旋律としてフルートがあり、また弦がでてくる……と、ダイナミックな音のやり取りが面白い。その魅力が、このシステムの新鮮な音で聴くとたいへんよくわかる。“ここがポイントだったのか!”と、新たな気付きがありました」。
当時のRCAの録音は、直接音がメインで入っているという。しかし、この作品では、「このシステムで聴くと、直接音の背後に、ホールトーンも存在しているのが分かります。ホールトーンも重視して収録するようになるのは1980年代なので、この作品はそれよりも前の時代ですが、それでもしっかりホールトーンが入っているのが聴き取れました。この演奏を、こんな風に聴いたことは、今までなかったですね」と、感心する麻倉氏。
「モニタースピーカーとしても使われる801 D5は、音楽を分析的に聴くこともできる。しかし、粗探しをするような音ではない。むしろ、“音楽を分析することが、こんなに面白いのか”と気付かされるサウンドですね。エンタメとして音楽をより楽しめる音。曲や演奏が、どのような考えで作られているのかを楽しく分析できる。音楽の楽しみ方を教えてくれるようなスピーカーです」。
続いて、ネットワークプリのLINK 10nを使い、Qobuzで配信されている楽曲も試聴する。
ホルスト「惑星」の初演者であるエイドリアン・ボールト。彼が、ニュー・フィルハーモニア管弦楽団と指揮した、1966年録音の「惑星」も聴いてみる。再生したハイレゾは、最新のリマスター版だ。
「60年前の録音ですが、昨日録音したかのような鮮烈さですね。本曲の持つスケールと、綺羅びやかさを、オーケストラを活かして表現している。“ここをうまく聴かせるんだ”という、初演者ならではのツボの抑え方がわかりますね」。
「中間部の弦は全部ユニゾンで、そこにホルンが加わるのですが、ホルンと弦のハーモニーがすごく心に迫ります。お馴染みのメロディが素晴らしいのはもちろんなのですが、このホルンと弦のハーモニーが、聴く人を感動させる。2つの楽器のユニゾン、響きの素晴らしさを感じます」。
若手指揮者クラウス・マケラとパリ管弦楽団による「Sibelius」も再生する。
「第4楽章の行進曲では、高音と低音の対比、弦と金管の対比が特徴です。こうしたコントラストを上手く使いながら、全体の音場を作っていくマケラの演出力がわかります。演奏中の機微、タイミングを目配せしている様子も、Qobuzの配信から感じ取れる。音楽配信でこうした音を出すのは難しいのですが、LINK 10n + MODEL 10×2台では、それがキッチリ出ています」。
人間的な音のするモニターB&W「800 D5」と、その実力を引き出すマランツ「10シリーズ」
試聴を終えた麻倉氏は、B&Wの800 D5シリーズの進化として、「どのモデルも、ものすごく透明感があり、音場も深く、立体的。そして、音場があるだけでなく、その空間に音楽が緻密に充填されている」と評価。
「音の細かなディテールが見えるだけでなく、それが見えることで、音楽がどう面白いのか、どんな意味を持っているのかが見えてくる。音楽の機微を高解像度に描写するスピーカーですが、“高解像度”と言っても、輪郭をシャキッと強調したような音ではない。むしろすごく自然なフレーバーを持っている」。
「805 D5から801 D5まで全モデル試聴もしましたが、全てのモデルで、このような進化が感じられました。音楽がより深く、クリアに浮かび上がり、そこに実体感もある。目の前のガラスの曇りが晴れたような、非常に細かいところまで見える。音の細かさというよりも音楽的な細かさに、凄くフィーチャーしたスピーカーですね」。
「ブックシェルフである805 D5の進化も素晴らしかったですが、集大成は801 D5ですね。風格があり、音楽全体のとらえかたが明瞭で明確。それでいて、B&Wらしい、えも言われぬグロッシーな感じも備えている」。
D5は、エンクロージャーの剛性が向上し、鳴きが少なくなった。しかし、麻倉氏は「剛性を追求するだけではないのがB&Wのポイント」と指摘する。
「金属パーツに木を巧みに組み合わせることで、モニター的でありながら、響きの良さも兼ね備えており、音楽が自然に出現するような、“ヒューマンな音のするモニタースピーカー”になったと感じます」。
そして、801 D5を通して、マランツ10シリーズの実力の高さも再確認した。「10シリーズは、これまでも、非常にクリアで、ブリリアントなサウンドである事はわかっていましたが、801 D5をコンプリート・バイアンプで聴くことで、その先にある、楽器の音に血の通った世界を聴かせてくれました。10シリーズの表現力と801 D5が組み合わさると、ここまで感動性が高まるというのが驚きでした」。























