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マランツ、最上位ネットワークプリアンプ「LINK 10n」。ディスクリートDACとMODEL 10のプリ部搭載
2024年10月2日 17:00
マランツは、「10シリーズ」の新製品として、リファレンスストリーミングプリアンプ「LINK 10n」を11月下旬に発売する。価格は220万円。カラーはシャンパンゴールドとブラックの2色。
先行して開発されたディスクプレーヤー「SACD 10」と、プリメインアンプ「MODEL 10」で培った技術やパーツを最大限活用して作られた、ネットワークプレーヤー兼プリアンプ。
具体的には、10シリーズの筐体を活用し、SACD 10に搭載している新DACを採用。さらに、MODEL 10のプリアンプ部を組み合わせている。HDMI ARCにも対応する。
10シリーズは5年前に商品企画がスタート。当初は各モデル100万円前後のイメージで企画がスタートしたそうだが、コストの制約をあまり強くせず、音を追求した結果、最終的には約200万円の製品群になったという。
ディスクプレーヤー「SACD 10」、プリメインアンプ「MODEL 10」、ストリーミングプリアンプ「LINK 10n」というラインナップになったのも理由がある。
最初に決まったのがプリメインアンプ。これは、以前の記事で紹介した通り、一体型のスイッチングアンプにする事で、ミニマムパスやゲイン設定の最適化、デカップリング・コンデンサの搭載を最小限に抑えられる事など、テクニカルな面で合理的な選択として決定。MODEL 10を2台使ったLR完全独立駆動を提案する意味でも、一体型筐体のプリメインアンプとする必要があった。
ディスクプレーヤーのSACD 10は、1982年に、CDプレーヤーをオリジネーターとして開発したマランツが、40年を経た集大成としてのSACDプレーヤーを開発したいという想いから、専用機として開発する事に決定。
この決定により、ネットワークプレーヤーも、ネットワークプレーヤー兼プリアンプとして開発する事となり、今回のLINK 10nが誕生した。
開発にあたっては、「最高の音質と利便性の両立」をテーマとして掲げており、アプリで操作できるネットワークプレーヤーの便利さと、プリアンプとしての機能も追求。アナログ出力は、バリアブル出力(可変)と、FIXアウト(固定)の両方を搭載している。
開発にあたり、全てを一から作ると価格が上昇してしまうため、SACD 10とMODEL 10のリソースを最大限に活用。
筐体は2機種のものをベースとしている。LINK 10nはネットワークプレーヤーであるため、内部に光学メカやパワーアンプのヒートシンクなどを収める必要はないが、例えば、筐体を小型化すると、逆にコストが上昇してしまう。そこで、あえて2機種と同じ筐体を使う事で、コストを抑えている。
ネットワークプレーヤーとして、HEOSに対応。DSD 11.2MHz、PCM 384kHzまでをサポート。Amazon Musicに対応したハイエンドのネットワークプレーヤーでもある。Roon Readyにも後日ファームウェアアップデートで対応する予定。
ディスクリートDAC「Marantz Musical Mastering(MMM)」を搭載
DAC部分は、SACD 10と同じディスクリートDAC「Marantz Musical Mastering(MMM)」を搭載する。オリジナルデジタルフィルター「MMM-Stream」と、DSD信号をアナログ変換する「MMM-Conversion」で構成。
MMM-Streamは、独自のアルゴリズムによってPCM信号を11.2MHz/1bit DSDデータに変換し、後段のMMM-Conversionに送り出す。その過程でオーバーサンプリング、デジタルフィルター、ΔΣモジュレーター、ノイズシェーパー、ディザー、レゾネーターなどの処理を全て自社開発のアルゴリズム、パラメーターで行なうことで、理想的なサウンドを追求。
出力回路に使うDフリップフロップと呼ばれるバッファーICを信号毎に独立化し、従来のモデルで使用していた8chのIC×1個から、1chのIC×8個に変更。これにより、出力電流が8mAから24mAに増え、強力に信号をドライブ。また抵抗値が3分の1となり、8.1dBに及ぶSN比向上を達成したという。
MMM-ConversionはMMM-Streamから入力される1bit DSD信号をアナログFIRフィルターによってダイレクトにD/A変換。シンプルな回路でD/A変換することで、原音に忠実なアナログ信号が得られるという。
基板も刷新。MMMは従来の4層から8層基板へ。デジタル基板も4層から8層とすることで、低ノイズ、低インピーダンス化を実現している。
MMM-Stream以降のアナログステージには、独自の高速アンプモジュールHDAM、HDAM-SA3の最新型を搭載。出力信号の低インピーダンス化、低歪化を実現。純銅製フィルムを用いた高音質コンデンサーやメルフ抵抗など、使用パーツも再選定し、音質を高めている。
ノイズ対策として、アナログフィルター部は、基板の上下に配置し、シールドケースで低ノイズ化。L/R間、アナログフィルターとユニティゲインバッファーの間には銅の板を配置してシールド。8層基板を使うことで、電源、グランドを強化している。
ノイズの相互混入を防ぐために、デジタル・アナログは独立電源を採用。デジタル回路用には、銅メッキケース入りのトロイダルトランスを、アナログ回路専用には銅メッキケース封入のトロイダルトランスとリニア電源回路を使っている。トランスベースは10mm厚。
理想的なマランツサウンドを実現するプリアンプ部
ネットワークプレーヤーの筐体に収めるため、プリアンプの回路を高密度に実装する一方で、音質に重要な電源部は、プリアンプ専用のリニア電源を搭載した。
また、4層基板を採用し、電源とグランドを強化。基板レイアウトを最適化した2階建て構造とし、シグナルパス、接続ケーブルを最小化している。
高性能なステレオボリュームコントロールIC「MUSES 72323」と、高音質化された最新型のHDAM + HDAM-SA3による電圧帰還型アンプ回路で構成された、デジタル制御の可変ゲインアンプによってボリュームを高精度に調節する「リニアコントロール・ボリューム」を搭載。
-13dB以下の音量の範囲内ではプリアンプでの増幅を行なわず、パワーアンプのみで増幅する可変ゲイン型にすることで、大幅にノイズの低減を実現。機械式ボリュームでは構造上避けられない左右チャンネル間のクロストークや音量差が生じないため、定位の正確性および空間表現力が向上する。
搭載する最新型のHDAMは、入力にJFETカスコードデバイスを追加することで、さらなる低歪み化を実現。トランジスタについても2素子が1パッケージ化された2 in 1パッケージのトランジスタを用いることで、動作の安定性を向上させた。
独立したプリアンプ専用電源回路には、銅メッキシールドケースを備えた、バイファイラー巻きトロイダルトランスを搭載。カスタム電源コンデンサや、SiC(炭化ケイ素)ショットキー・バリア整流器、銅メッキシールド、熱伝導プレートも使っている。
フォノイコライザーも内蔵。MM型、MC型両方式に対応する「Marantz Musical Premium Phono EQ」で、20dBのゲインを持つMCヘッドアンプと、40dBのゲインを持つHDAM + HDAM-SA3の無帰還型フォノイコライザーアンプの2段構成を採用。1段当たりのゲインを抑え、低歪みを実現した。
MCカートリッジ用のインピーダンス切り替え機能も搭載。使用するカートリッジのインピーダンスに合わせて3つのポジション(33/100/300Ω)から選択できる。
フォノイコライザー基板は、1.2mmのボトムケースと銅色にアルマイト処理されたアルミニウム製のトップカバーでシールド。外来のノイズによる音声信号への影響を排除した。
ヘッドフォン出力専用に、電流帰還型のフルディスクリート・ヘッドフォンアンプを搭載。低インピーダンスのヘッドフォンでも、性能を引き出すために出力インピーダンスを下げることに注力して開発。HDAM-SA3とマランツの従来製品で定評のあるダイヤモンドバッファーを組み合わせた回路構成を採用している。オペアンプを使用しないフルディスクリート構成で、きめ細かな音質チューニングを行なっている。
他にも、サウンドマスターが厳選した高音質パーツを多数投入。事前検討を含めた音質検討時間は、通常モデルの10倍にも及んだという。製造は白河オーディオワークス。
ネットワークプレーヤー用として、同軸デジタル入力×1、光デジタル入力×2、USB-A×1、USB-B×1、アナログRCA出力×1、アナログXLR出力×1、同軸デジタル出力×1、光デジタル出力×1を装備。HDMI ARCも搭載。LAN端子、BlueSoundの送受信機能も備えている。
プリアンプとしては、Phono×1、アナログRCA入力×1、アナログXRL入力×1、アナログRCA出力×1、アナログXLR出力×1、サブウーファー出力×1を備える。消費電力は75W。外形寸法は440×472×192mm(幅×奥行き×高さ)、重量は33.3kg。