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マランツ、新開発デジタルアンプ採用の史上最高音質プリメイン「MODEL 10」。2台で究極L/Rセパレーション

プリメインアンプ「MODEL 10」シャンパンゴールド

マランツは、新たなリファレンスシリーズとしてプリメインアンプ「MODEL 10」とSACDプレーヤー「SACD 10」を10月下旬に発売する。価格は、アンプが242万円、SACDが198万円。カラーはシャンパンゴールドとブラックを用意。ここではアンプのMODEL 10について紹介する。SACD 10については別記事を参照の事。どちらのモデルも、自社工場の白河オーディオワークスで作られている。

左からプリメインアンプ「MODEL 10」、SACDプレーヤー「SACD 10」

マランツ史上最も高音質なプリメインアンプであり、アンプ・デザインの新たなリファレンスとして開発。既存の製品をベースに改良を加えたものではなく、最新のテクノロジーと最高グレードのパーツが惜しみなく投入し、まったく新しいコンストラクションおよび回路構成で作られた。

セパレートではなくプリメインとしたのは、設計の自由度を選択したため。外部機器としての接続性を前提としないプリメインアンプは、プリアンプ、パワーアンプが一体となる前提で設計できるため、必要悪の存在であるカップリングコンデンサの最小化、外部のケーブルを使用しないで最短の経路で最小ロスで伝送できる、プリ・パワーアンプの一般的なゲイン配分にこだわらずに作れる、といったメリットがある。

マランツのエンジニアリング・チームとサウンドマスターが、「これまでの歴史の中で培ってきた電気設計、機構設計、そしてサウンドチューニングのノウハウのすべてを駆使し、数え切れないほどの時間を費やして完成させた」とのこと。

MODEL 10の主な特徴は、新開発のデュアルモノ・シンメトリカルClass Dパワーアンプと、さらに高音質化したHDAM採用のフルバランス・プリアンプを搭載している事。

プリメインアンプ「MODEL 10」ブラック

新開発のデュアルモノ・シンメトリカルClass Dパワーアンプ

マランツがHi-FiオーディオでClass D方式のパワーアンプを採用したのは2015年の「HD-AMP1」から。以来、プリメインのフラッグシップ「PM-10」や、「MODEL 30」、ホームシアター用の16chパワーアンプ「AV 10」などにも採用し、技術とノウハウを蓄積してきた。

MODEL 10の設計には、この過程で培われたClass Dアンプ開発にまつわる回路設計技術やパーツ選定、サウンドチューニングのノウハウなど、あらゆる成果を活用している。

搭載するパワーアンプは、デンマークのPURIFI(ピューリファイ)と共同開発した、独自設計のデュアルモノ・シンメトリカルClass Dパワーアンプ。「マランツが作りたいClass Dアンプの要望をPURIFIに提出し、PURIFIの技術も活用しながら開発した」というもので、サプライヤーの設計したモジュールを購入して製品に組み込むのではなく、パワーアンプおよびSMPS(スイッチング電源回路)の基板設計からパーツ選定まで、すべてを新規で行ない、自社工場で作り上げることで、マランツ独自のサウンドチューニングと優れた品質を実現したという。

新開発のデュアルモノ・シンメトリカルClass Dパワーアンプを搭載している

また、Class Dパワーアンプを採用する事で、パワーアンプ部の小型化を実現。これにより、セパレートアンプグレードのプリアンプ部を、1つの筐体に内蔵できたという。

パワーアンプ回路は完全なバランス回路によるBTL接続で構成。出力はマランツのプリメインアンプ史上最高となる500W + 500W(4Ω)を達成している。

「世の中のスイッチングアンプで、帯域保証されているものはほとんど無い。そこでマランツは、Class Dであっても帯域保障されているものを作りたかった」という。その結果、MODEL 10はアナログアンプと同様の、全可聴帯域(20Hz~20kHz)での出力保証を実現。さらに、PM-10と比べて、定格出力は25%アップ。単体モノラルパワーアンプに匹敵する低歪とハイパワーを実現している。

可聴帯域における周波数特性についても極めてフラットな特性を実現。接続するスピーカーの負荷インピーダンスに影響されることがないため、組み合わせるスピーカーに関わらず、優れたサウンドを再生できるという。

スイッチングアンプの入力直前に接続されている電圧増幅アンプには電流帰還型を採用。高性能なスイッチングアンプの性能を活かす為には、低ノイズ、低歪み、高スルーレート、低出力インピーダンスであることが高いレベルで求められるが、そのために最新型のHDAM-SA3を投入。回路構成は従来と同一だが、厳選した低ノイズ、低歪みのトランジスタを使用することでこれまで以上の高音質化を果たした。

高音質化したHDAM採用のフルバランス・プリアンプ

アンプの内部

マランツは、理想的なマランツサウンドの実現のために、「入念に検討されたプリアンプ回路が不可欠」という考えを持っており、Class Dパワーアンプを採用する事で、余裕が生まれたスペースに単品プリアンプ並みの回路規模を高密度に実装。プリアンプ専用のリニア電源も搭載するなど、以前のリファレンスプリアンプ「SC-7S2」と同規模の回路を搭載している。

超高域に至るまでの優れたチャンネルセパレーション、音の実在感、そして広大かつ安定した空間表現力のためにフルバランス構成を採用。4層基板を採用し、電源とグランドを強化。基板レイアウトを最適化した2階建て構造としており、シグナルパス、接続ケーブルを最小化している。

セパレートアンプグレードのプリアンプを搭載

高性能なステレオボリュームコントロールICと、高音質化された最新型のHDAM + HDAM-SA3による電圧帰還型アンプ回路で構成された、デジタル制御の可変ゲインアンプによってボリュームを高精度に調節する「リニアコントロール・ボリューム」を搭載。

-13dB以下の音量の範囲内ではプリアンプでの増幅を行なわず、パワーアンプのみで増幅する可変ゲイン型にすることで、大幅にノイズの低減を実現。機械式ボリュームでは構造上避けられない左右チャンネル間のクロストークや音量差が生じないため、定位の正確性および空間表現力も向上したという。

-13dB以下の音量の範囲内ではプリアンプでの増幅はせず、パワーアンプのみで増幅する可変ゲイン型

L/Rにそれぞれ1つのボリュームコントロールICを用いたバランス構成とすることで、チャンネルセパレーション、SN比を向上させた。可変抵抗体を使用していないため、ボリュームパーツの経年劣化に伴う音質の変化もなく、長期にわたり安心して使えるとする。

DCサーボを採用したことで、信号経路のカップリングコンデンサーが不要となり、より損失の少ない信号伝送も実現。

搭載する最新型のHDAMは、入力にJFETカスコードデバイスを追加することで、さらなる低歪み化を実現。トランジスタについても2素子が1パッケージ化された2 in 1パッケージのトランジスタを用いることで、動作の安定性を向上させた。

RCA端子からの入力信号を変換するアンバランス-バランス変換回路にも最新型のHDAMとHDAM-SA3を用いた電圧帰還型回路を採用。変換に伴う音質の変化を最小化している。

プリアンプおよび左右のパワーアンプそれぞれに専用の強力な電源回路を搭載

電源回路も、独立したプリアンプ専用電源回路と、2つのパワーアンプ用スイッチング電源回路を搭載することで、回路間および左右チャンネル間の相互干渉を徹底的に排除。セパレートアンプに匹敵する低歪みとチャンネルセパレーションを実現したという。

プリアンプ用のアナログ電源回路には、専用の銅メッキシールドケースを備えたトロイダルトランスを搭載。サウンドマスターと音質担当エンジニアがサプライヤーと試作と試聴を繰り返して共同開発した、マランツ専用のカスタム・ブロックコンデンサーやハイスピードな電源供給を可能にするショットキーバリアダイオードを採用している。

パワーアンプ用のスイッチング電源回路には、Class Dパワーアンプ回路同様に自社設計による完全オリジナルのSMPSを搭載。基板上のレイアウト、個々のパーツの選定、放熱設計など、すべてを独自に開発することで、MODEL 10にとって理想的な電源回路になったという。

大電流を伝送する純銅製のバスバーをはじめ、ここにもサウンドマスターが厳選したカスタムパーツ、高音質パーツをふんだんに投入している。

フォノイコライザーも内蔵。MM型、MC型両方式に対応する「Marantz Musical Premium Phono EQ」で、20dBのゲインを持つMCヘッドアンプと、40dBのゲインを持つHDAM + HDAM-SA3の無帰還型フォノイコライザーアンプの2段構成を採用。1段当たりのゲインを抑え、低歪みを実現した。

フォノイコライザー

音声信号が通過する信号経路はすべてディスクリート回路により構成。JFET入力とDCサーボ回路によってカップリングコンデンサーを排除し、繊細な音声信号の純度を損なうことなく増幅する。

MCカートリッジ用のインピーダンス切り替え機能も搭載。使用するカートリッジのインピーダンスに合わせて3つのポジション(33/100/300Ω)から選択できる。

フォノイコライザー基板は、1.2mmのボトムケースと銅色にアルマイト処理されたアルミニウム製のトップカバーでシールド。外来のノイズによる音声信号への影響を排除した。

フォノイコライザー基板をアルマイト処理されたアルミニウム製のトップカバーでシールド

ヘッドフォン出力専用に、電流帰還型のフルディスクリート・ヘッドフォンアンプを搭載。低インピーダンスのヘッドフォンでも、性能を引き出すために出力インピーダンスを下げることに注力して開発。HDAM-SA3とマランツの従来製品で定評のあるダイヤモンドバッファーを組み合わせた回路構成を採用している。オペアンプを使用しないフルディスクリート構成で、きめ細かな音質チューニングを行なっている。

2台のMODEL 10を使ったコンプリート・バイアンプ・ドライブ

コンプリート・バイアンプ・ドライブ

このように、オーディオ市場では珍しい“1筐体のハイエンドアンプ”だが、この仕様を活用し、2台のMODEL 10を連動動作させる機能を持つ。各チャンネルにひとつずつMODEL 10を使うもので、2台のボリュームやセレクターを完全に連動できる。

また、連動のためのケーブルにもフローティング処理がされているため、音質の悪影響もないという。「L/Rが完全に独立駆動されたアンプだけが実現することができる、究極のチャンネルセパレーションの世界が楽しめる」という。

この動作はコンプリート・バイアンプ・ドライブと名付けられ、最大4台(8チャンネル)までMODEL 10のボリュームを連動できる「F.C.B.S.機能」で実現する。

複数のMODEL 10を使ったバイアンプドライブに加え、マルチアンプドライブ、サラウンドシステムの構築も可能。

天面は「Waved Top Mesh」

どこまでも広がるようなナチュラルな空間表現を実現するために、これまでマランツは非磁性体のアルミニウムトップカバーを採用してきたが、MODEL 10ではこの考え方をさらに進めて、非磁性体のステンレス製のメッシュ構造を採用。

「Waved Top Mesh」と呼ばれる新しいトップカバーは、美しさだけでなく、放熱孔を設けたアルミニウムトップカバーよりも大きな開口面積を備え、高い放熱性と、開放感に優れた空間表現を可能にするという。

「Waved Top Mesh」

筐体内にはイルミネーションが配置され、部屋の明かりを落とすと、美しく設計・レイアウトされたトロイダルトランスや回路基板、高品位なパーツが浮かび上がるようになっている。

筐体内にはイルミネーションを配置

フロントパネルは、一塊の巨大なアルミニウム・ブロックを切削加工して作られており、その厚みは最大45mmに達する。振動が音声信号に与える悪影響を低減することにも貢献しており、サイドカバーも同様に最大15.8mm厚のアルミニウム製としている。また、正面および側面からはネジが見えないようデザインされている。

アルミニウム・ブロックを切削加工して作られたフロントパネル

メインシャーシには1.2mm厚の銅メッキ鋼板を使用。プリアンプ、パワーアンプ、電源回路をそれぞれ専用のスペースに隔離することで、回路間の干渉を排除した。

1.2mmのメインシャーシに3.2mmと1.2mmのボトムプレートを追加した3層構造とすることにより、高剛性を実現。アルミニウムの無垢材と銅板を組み合わせたハイブリッド型のインシュレーターも採用している。

前面
アルミニウムの無垢材と銅板を組み合わせたハイブリッド型のインシュレーター

RCA端子には純銅削り出しのピンジャックを採用。スピーカーターミナルにも同様に純銅削り出しのスピーカーターミナル「SPKT-100+」を採用している。

背面

音声入力端子は、バランス×2、アンバランス×3、Phono(MM/MC)×1、POWER AMP IN(バランス)×1、POWER AMP IN(アンバランス)×1。音声出力はPRE OUT(バランス)×1、PRE OUT(アンバランス)×1、RECORDER(アンバランス)×1。その他に、F.C.B.S.入出力×1、モートコントロール入出力(RC5)×1、フラッシャーIR入力×1も備えている。

消費電力は270W、待機電力は0.1W。外形寸法は440×473×192mm(幅×奥行き×高さ)。重量は33.7kg。