ニュース

B&W、“プロジェクト・ノーチラスの到達点”「800 D5シリーズ」10月日本上陸

「800 D5シリーズ」

ディーアンドエムホールディングスは、Bowers & Wilkinsの新たなフラッグシップスピーカー「800 D5シリーズ」を日本で発売する。10月中旬から順次出荷を開始予定。1台の価格は、ブックシェルフの「805 D5」ステルス・ブラック仕上げが1,100,000円、最上位「801 D5」のステルス・ブラックが4,730,000円。各モデルの価格は以下の通り。

  • 「801 D5」
    4,730,000円:ステルス・ブラック
    4,620,000円:ダーク・ウォールナット/ライト・ウォールナット/ウォーム・ホワイト
  • 「802 D5」
    3,630,000円:ステルス・ブラック
    3,520,000円:ダーク・ウォールナット/ライト・ウォールナット/ウォーム・ホワイト
  • 「803 D5」
    2,860,000円:ステルス・ブラック
    2,805,000円:ダーク・ウォールナット/ライト・ウォールナット/ウォーム・ホワイト
  • 「804 D5」
    1,870,000円:ステルス・ブラック
    1,815,000円:ダーク・ウォールナット/ライト・ウォールナット/ウォーム・ホワイト
  • 「805 D5」
    1,100,000円:ステルス・ブラック
    1,067,000円:ダーク・ウォールナット/ライト・ウォールナット/ウォーム・ホワイト
  • 「HTM81 D5」センタースピーカー
    2,090,000円:ステルス・ブラック
    1,980,000円:ダーク・ウォールナット/ウォーム・ホワイト
    ※ダーク・ウォールナットは2027年1月発売予定
  • 「HTM82 D5」センタースピーカー
    1,760,000円:ステルス・ブラック
    1,650,000円:ダーク・ウォールナット/ウォーム・ホワイト
    ※ダーク・ウォールナットは2027年1月発売予定
  • 「FS-805 D5」805 D5専用スピーカー・スタンド
    264,000円(ペア)ブラック/ウォーム・チタニウム
  • 「FS-HTM D5」HTM81 D5/HTM82 D5用スタンド
    220,000円:ブラック/ウォーム・チタニウム
左から801 D5、802 D5
左から803 D5、804 D5、805 D5

プロジェクト・ノーチラスの到達点

B&W「800 Dシリーズ」の歴史は、1979年に誕生した最初の「Matrix 801」に遡る。当時、レコーディング用モニタースピーカーを作るためにプロジェクトチームが発足し、約3年の月日を経て完成させた。“雪だるま”の愛称で親しまれたが、モデル名の由来は「関係者の証言によると、“80年代で一番のスピーカーを作ろう”というコンセプトから、801と名付けられた」(D&Mの澤田龍一シニアサウンドマスター)という。

Matrix 801
D&Mの澤田龍一シニアサウンドマスター

B&WのJohn Bowers氏は長年、スピーカーユニットが“四角い箱に入っている弊害”を問題視し、箱からの脱却を模索した。その理想のスピーカー追求の最終プロジェクトであり、John Bowers氏の遺志を継いだローレンス・ディッキー氏が完成させたのが、1993年のオリジナル「ノーチラス」。ユニットの背後に、ホーンスピーカーとは逆形状を“ノーチラスチューブ”を取り付けた、革新的なスピーカーだった。

オリジナル「ノーチラス」

そのノーチラスで生まれた音響技術を、実用的なリファレンススピーカーに落とし込んだのが、1998年に誕生した「Nautilus 801」。

前身のMatrix 801は、クラシック用のモニターとして多く使われる反面、当時のスタジオでは「ロックコンサートの最大音量(120dB)が出せないと、スタジオモニターとしては使えない」という考えが根強く、ロックやポップスでは使われなかった。

その弱点も克服し、オールジャンルモニターとして開発されたNautilus 801は、アビー・ロード・スタジオにも導入されるなど、大成功を収めた。

「800 D」

そして2005年に、SACDやハイレゾ時代に対応する、高い周波数まで対応できるスピーカーとして、ツイーターにダイヤモンドを使った「800 D」が誕生。ウーファーの振動板には、ペーパーコーンから、軽量発泡樹脂で、新幹線のボディにも使われるロハセルが採用された。

「800 D2」

2010年には「800 D2」が誕生。駆動力を高めるため、ツイーターの磁気回路にネオジウムマグネットを4個組み合わせた「クワッド・マグネットシステム」と、ウーファー用にネオジウムを2基組み合わせた「プッシュプル・マグネットシステム」を搭載。

「800 D3」

2015年の「800 D3」では、筐体の形状が進化。前側がラウンド形状になり、背面が平坦な「リバースラップ・キャビネット」となり、音響放射特性の理想を追求。ミッドレンジの振動板も進化し、従来のケブラーコーンから、現在に至るコンティニュアムコーンに。ウーファーには、潜水艦の圧力壁にも使われるエアロフォイルが採用された。

「800 D4」

2021年の「800 D4」では、ミッドレンジのダンパーに、布ではなく、バッタの足のようなバイオミメティック・サスペンションを導入。理想のピストンモーションをさらに追求させると共に、前側がラウンド形状のリバースラップ・キャビネットが「804 D4」と「805 D4」にも拡大された。

「800 D5」

そして、新モデルの「800 D5」は、「プロジェクト・ノーチラスの到達点であり、技術的な集大成」と位置付けられた。外観的な違いはあまりないが、進化点は多く、内部の構造剛性と外部の音響特性を360度から最適化。ハイブリッド構造のエンクロージャーや、新開発ウーファーのマグネットなども進化している。

ハイブリッド構造エンクロージャー

800 D5シリーズ全モデルに共通する進化点として、エンクロージャー全体の構造剛性が飛躍的に向上した。

Nautilus 801から受け継がれてきた内部のMatrix構造と曲面積層合板技術を使いながら、従来モデルで主にバッフル面に用いられていた金属補強をさらに進化させたのがポイント。

わかりやすいのは背面で、背骨(スパイン)のアルミフレームが、従来モデルよりも強固になった。このフレームにはネットワークを収めているが、縦の部分はアルミの押し出し、横を繋ぐ部分はダイキャスト製で、非常に剛性が高くなった。

左が805 D4の背面、右が805 D5の背面。アルミフレームやパネルの形状が変わっている
背骨のアルミフレーム

800 D5のエンクロージャーは、上から見ると馬蹄形で、積層合板を曲げて形作っている。内部に補強板も入れているため、全体としての剛性は高いが、前側と比較した場合、背後の剛性は少し弱くなる。これを補うために、背面のアルミフレームを強化した。

D4の背面
D5の背面。D4では鋭角だった角が、D5では滑らかになっている

アルミの補強は背後だけではない。ウッドキャビネットの奥には、湾曲したアルミダイキャストのプレートが配置されており、ウーファーはウッドキャビネットではなく、アルミプレートに固定されている。D5では、このアルミプレートの厚さが、D4のほぼ2倍の肉厚なものとなり、ウーファーの振動をよりしっかり受け止められるようになった。

805 D4のウーファーを外したところ。内部のアルミプレートが見えている。これがD4よりも約2倍に厚くなっている
D5のウーファーを近くから見たところ。よく見ると、ウッドキャビネットとウーファーのパーツの間に、少し隙間があるのが見える。ウッドキャビネットとは接続しておらず、内部にあるアルミプレートに固定されている

アルミの補強は、804 D5でも徹底。上位モデルの801、802、803とは異なり、ミッドレンジにタービンヘッドは使われていないが、804 D5のウッドキャビネットの内部に、ミッドレンジ用としてアルミ押し出しのインナーケースを内蔵。「疑似タービンヘッドのようなものが、内部に配置されている」(澤田氏)という。

804 D5の内部。肉厚なアルミフレームやフレームが使われている
左は上位モデルのタービンヘッド。右が804 D5のミッドレンジ用アルミ押し出しインナーケース

また、804 D5以上のモデルはアルミダイキャストの台座を備えているが、その台座の裏側に、ほぼ純鉄で出来ている重りが取り付けられている。これは、各モデルの台座で、一番たわみやすい部分の補強として取り付けたもので、モデルごとに最適化され、個数や形状が異なっている。

801 D5の台座の裏。先端に重りがついているのがわかる
こちらは804 D5の裏。重りのサイズや位置が違う

さらに、ウッドキャビネットと台座を接続する脚部も、従来より太くなった。これらにより、例えば801 D5では6.5kgほど重くなったという。

ウッドキャビネットと台座を接続する脚部も、従来より太くなった

801、802、803の“肩の部分”、つまりタービンヘッドの下にあるプレートも進化。タービンヘッドはプレートからフローティングしているが、プレートの形状を工夫し、よりタービンヘッドに当たらない構造になった。プレート内側の補強リブも増加している。

肩の部分のプレート。内側にリブが増えている

こうしたエンクロージャーの進化について、B&Wは「これまでの800シリーズで一番静かなキャビネットが完成した」としている。

スピーカーターミナル。左がD5、右がD4。プラス・マイナスの順番が変わった

ユニットも進化

ダイヤモンドツイーター自体は、D4から変更はない。保護するグリルメッシュが、800 Series Signatureで開発された、縦目の新しいメッシュになっている。ミッドレンジはD4から変更はない。

ツイーターのグリルは縦目の新しいメッシュになっている

進化したのはウーファーのプッシュプル・マグネットシステムの部分。805 D5以外の、3ウェイモデルのウーファーでは、2つのネオジウム・マグネットを使っているが、その間に交流磁界による変調を防ぐ工夫を施している。

D5のウーファー

アンプボイスコイルへ交流の音声電流が流れると、交流磁界が発生。それが、磁気回路の中を通ると、渦電流が発生し、歪の原因となる。この問題への対策として、既発売のSignatureモデルでは、4つある鉄製パーツの内、2つをカーボンやシリコンの含有が多い鉄に変更。電気抵抗を2倍とし、電流が流れにくいようにした。

今回のD5では、2つのネオジウムマグネットの合間に隙間を設け、そこに絶縁体のセラミック板を配置。交流磁界による変調が発生しないように対策した。セラミックのディスクは機械的な強度や熱伝導性が高いために選ばれた。

左がD4のウーファー、右がD5のウーファー。ネオジウムマグネットの間に、白いセラミックディスクが入っている

一方で、この構造にすると駆動力が減少してしまう。それを補うために、ネオジウムマグネットの中でも、従来より1.5倍強力なものを採用。駆動力を落とさず、より歪の少ないクリーンな再生ができるようになったという。

2ウェイの805 D5のウーファーでは、ボビンが長いため、上位機のような構造を採用するのは難しく、通常型のフェライトマグネットを採用している。その代わりに、専用の対策として、ボトムヨークの形状を、ギアのようなギザギザ状に最適化した。

これは、磁気回路から出る磁束をシミュレーションした時にわかる、磁束の密度の違いを活用したもの。交流磁界が発生し、それが磁気回路の中を通ろうとした時に、磁束密度が高いと入り込みにくいことから、意図的に磁束の局所的な集中箇所を作り出した結果、この形状になったという。

805 D4ウーファーの背面
805 D5のウーファー背面。ボトムヨークが、ギアのようなギザギザの形状になった

ネットワーク部分はD4をベースとしているが、全てのフィルムコンデンサーのリードを、従来のOFCから、ムンドルフのCopper Angelique Wires(高純度銅に一定の割合で銀と金を加えた線材)にグレードアップした。

ネットワーク部分

D5シリーズの音の進化を体験

短時間ではあるが、D5シリーズのサウンドを試聴したので、ファーストインプレッションを記載する。

既存の805 D4

従来モデルとの比較としては、「805 D4」と「805 D5」、そして「801 D4 Signature」と「801 D5」を聴き比べたが、進化の方向性はどちらも同じ印象だ。

新モデル「805 D5」

最大の変化点は“箱鳴りの無さ”だ。特に中低域でわかりやすいが、ボワッとした余分な音の膨らみがD5では無くなり、ボーカルや楽器の音像がよりクリアに感じられる。さらに、その左右や背後に広がる音場も、D5の方がより深く、音の響きが広がる様子も遠くまで見通せる。

D4だけを聴いていると、そのような印象はあまり無かったのだが、D5を聴いてからD4に戻ると、「ああ、箱が鳴っているな」とわかるようになってしまう。D5シリーズが、ハイブリッド構造エンクロージャーの進化で剛性を上げた効果がよくわかる。

その一方で面白いのは、剛性が上がったからと言って、ガチガチの、スパルタンなサウンドにはなっていない事だ。サウンド自体はあくまでナチュラルで、ゆったりと聴ける優しさも備えており、金属筐体のスピーカーと比べ、D5シリーズがアルミフレームと曲面積層合板のハイブリッド構造である魅力も維持されている。

シリーズの中でも、音質の進化幅が大きいと感じるのは804 D5で、前述の通りミッドレンジ用にアルミ押し出しのインナーケースを内蔵した事で、音場の広大さ、音像のシャープさなどが、上位機の803 D5にかなり肉薄したと感じる。804は、D3からD4への音質進化も著しかったが、804 D5でもその印象は継続されており、価格も含めて、要注目モデルと感じる。

804 D5

また、804 D5、803 D5、802 D5と、シリーズで音の印象が綺麗に揃っているのも見事だ。上のモデルに行くにつれ、音のスケールがアップし、全身が音に包まれていくが、音場の広さ、膨らみの少なさ、解像度の高さなどは共通している。

803 D5
802 D5

そしてやはり別格は801 D5で、これ以下のモデルと比べ、明らかに解像度が高く、微細な音がより聴き取りやすくなる。これはD4世代と同じだが、801 D5のみの特徴として、ミッドレンジの磁気回路の中央に配置するショートリングの素材が、銅よりも電気抵抗低く、電流歪みの抑圧効果が高い純銀を使っているのが要因だ。

そのサウンドは、D5でより広大になった音場、クリアになったサウンドの魅力を、さらに引き出し、別の次元へと昇華させており、一聴の価値がある。801 D5は、新たなD5シリーズのハイエンドモデルであると同時に、長年続いてきた800シリーズの集大成である事を、音で実感させる完成度の高さだ。

801 D5

各モデルのユニット構成

ユニット構成は以下の通り。


    【801 D5】
  • 25mm ダイヤモンド・ドーム・ツイーター×1
  • 150mm ContinuumコーンFSTミッドレンジ×1
  • 250mm Aerofoilバス×2
    【802 D5】
  • 25mm ダイヤモンド・ドーム・トゥイーター×1
  • 150mm ContinuumコーンFSTミッドレンジ×1
  • 200mm Aerofoilバス×2
    【803 D5】
  • 25mm ダイヤモンド・ドーム・トゥイーター×1
  • 130mm ContinuumコーンFSTミッドレンジ×1
  • 180mm Aerofoilバス×2
    【804 D5】
  • 25mm ダイヤモンド・ドーム・トゥイーター×1
  • 130mm ContinuumコーンFSTミッドレンジ×1
  • 165mm Aerofoilバス×2
    【805 D5】
  • 25mm ダイヤモンド・ドーム・トゥイーター×1
  • 165mm ContinuumコーンFSTバス/ミッドレンジ×1

センタースピーカーは以下の通り。


    【HTM81 D5】
  • 25mm ダイヤモンド・ドーム・トゥイーター×1
  • 150mm ContinuumコーンFSTミッドレンジ×1
  • 200mm Aerofoilバス×2
    【HTM82 D5】
  • 25mm ダイヤモンド・ドーム・トゥイーター×1
  • 130mm ContinuumコーンFSTミッドレンジ×1
  • 165mm Aerofoilバス×2
HTM81 D5
HTM82 D5

外形寸法と重量(いずれも台座含む)は以下の通り。

  • 801 D5
    447×597×1,221mm(幅×奥行き×高さ)、106.4kg
  • 802 D5
    413×589×1,218mm(同上) 91.4kg
  • 803 D5
    359×499×1,165mm(同上) 63.7kg
  • 804 D5
    308×392×1,101mm(同上) 40.3kg
  • 805 D5
    241×363×439mm(同上) 16.4kg

センタースピーカーは以下の通り。

  • HTM81 D5
    846×363×334mm(幅×奥行き×高さ) 33.4kg
  • HTM82 D5
    715×363×289mm(同上) 10.5kg