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ソニー、第3四半期決算は過去最高の売上高を記録
-DVDレコーダのシェア30%を獲得するも、利益貢献は少ない


湯原隆男執行役常務兼グループCFO
1月28日発表


 ソニーは28日、2003年度第3四半期の連結決算を発表。売上高が前年同期比0.7%増の2兆3,234億円と四半期ベースでは過去最高の売上高を記録したと発表した。

 売り上げ増加の要因は、エレクトロニクス分野において、ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズの携帯電話端末が好調であったことに加え、フラットパネルテレビ、PSXを含むDVDレコーダー、パソコンのバイオ、デジタルスチルカメラのサイバーショットなどが貢献したため。

 同社の湯原隆男執行役常務兼グループCFOは、「エレクトロニクス部門では、3年ぶりに現地通貨ベースで全地域2桁の増収を達成した」という。

エレクトロニクス分野の地域別売上

 主力のエレクトロニクス分野の売上を地域別に見ると、スゴ録、PSX、携帯電話端末が好調な日本が15%増。バイオ、グランドベガ、フラットパネルテレビが好調な米国が11%増(現地通貨ベース)、フラットテレビ、携帯電話端末、デジタルカメラが堅調な欧州が10%増(同)、その他地域がパソコン用ドライブ、デジタルカメラの成長によって19%増となった。

 だが、全社の営業利益は、前年同期比20.4%減の1,588億円、税引前利益が21.8%減の1,578億円、当期純利益が26.2%減の926億円と2桁の大幅な減益となり、第3四半期の業績は増収減益となった。

 減益の要因は、退職関連費用を中心とした構造改革費用の増加が影響。さらに、映画分野において前年にはヒット作品を擁していたものの今年はそれがなかったことの反動や、ゲーム部門における半導体向け研究開発費の増加などが響いたとしている。


■ DVDレコーダ市場で30%のシェアを獲得するも、利益貢献は少ない

製品カテゴリ別の売上高/営業利益

 エレクトロニクス分野全体では、売上高が前年同期比0.4%増の1兆4,747億円。営業利益は39.7%減の495億円。退職関連費用で379億円増加したことや販売単価の下落、円高ドル安の影響などかあったという。

 米国におけるパソコン事業では増収に貢献するほどの堅調な伸びを見せたとしており、「米国ではクリエが競争激化でマイナスだったが、デザイン、機能で差異化したバイオは売り上げ増加に貢献した。これにより、情報・通信部門は前年同期の赤字から黒字に転換した」(湯原グループCFO)という。

 日本市場において、年末の目玉商品として投入したDVDレコーダーの「スゴ録」および「PSX」に関しては、「DVDレコーダーの市場において30%以上のシェアを獲得したものの、利益で大きく貢献しているわけではない。将来的に数がまとまり、継続的に事業を進めることで収益につながる事業モデルになっている」として、第3四半期での利益貢献は少ないとした。

 なお、同社はPDP/LCD、DVDレコーダ、PSX、バイオ、カムコーダー、デジタルカメラの6商品を「重点商品」と位置づけ、戦略的な投資や製品投入を進めてきたが、前年には全社売上高に占める構成比が37%であった重点商品が、この1年間で35%増の伸びを見せ、構成比では約48%と半分近くを占めている。

重点商品プロジェクトの一覧 重点商品の売上

 中でも、薄型のPDP/LCDテレビでは27機種をラインナップ。店頭での価格戦略などによって25%までシェアを上昇させ、同社のテレビ製品の全売上高の約2割をこれら製品が占めた。また、カムコーダーでは、国内で投入した300万画素の「DCR-PC300K」が高い人気を誇り、製品シェアでは15%を突破。メーカーブランドシェアでは40%という高いシェアを獲得する好調ぶり。さらに、デジタルカメラのサイバーショット「DSC-T1」や「DSC-F828」が人気となり、T1は年末商戦でトップシェアを獲得するなど、重点商品が軒並み好調だった。

 だが、湯原氏は「これらの好調な製品群を、いかにトップとして維持できるかが課題。一時的なシェア上昇は重要ではない」と手綱を引き締めた。

 ゲーム分野に関しては、前年同期比4.5%減の3,670億円、営業利益は1.6%減の705億円の減収減益。プレイステーション2用のソフトが四半期としては過去最高の販売本数となり、同社の想定を大きく上回ったものの、本体の価格を戦略的に引き下げたことや、研究開発投資が減収減益に影響した。

 今年度のプレイステーション2が2,000万台、PSおよびPSoneが300万台の生産計画は変わらないが、ソフトの生産本数は10月時点に比べて1,000万本増加の2億5,000万本とした。

プレイステーションのハード/ソフト生産出荷数 ハードの生産出荷台数推移 ソフトの生産出荷台数推移

 音楽部門は、売上高が3.1%減の1,821億円、営業利益が50.3%増の303億円。映画部門は売上高が29.3%減の1,812億円、営業利益が82.3%減の56億円。金融部門は、収入が3.2%増の1,373億円、営業利益が307.5%増の127億円となった。

 なお、第4四半期は、エレクトロニクス分野における構造改革で787億円を計上し、同部門での営業赤字を見込んでいるほか、ゲーム分野における研究開発投資などによって、前年同期比並となる1,087億円の赤字を予想している。

 また、2003年度の通期連結見通しは、売上高7兆4,000億円、営業利益1,000億円は昨年10月時点とは変更がないものの、税引前利益は100億円上方修正し1,300億円に、当期純利益は50億円上昇の550億円とした。上方修正の要因は、為替差益およびプレイステーション2用のソフトが第3四半期で予想以上に売れたこと、ソニー生命の運用益の増加などとしている。一方、構造改革費用は、当初の1,400億円から1,500億円に引き上げる。「トータルで3,000億円の構造改革費用を予定しているが、2004年に予定していた分から100億円を前倒しにした」(同氏)と説明している。

連結営業利益 業績見通し

 今回発表した第3四半期決算は、過去最高の売上高を記録し、営業利益率は6.5%、構造改革費用を除けば約9%の営業利益率に達するという明るい見方もある。しかし、構造改革費用の影響があまりにも大きく、依然として手離しで評価する状況には至っておらず、もう少し時間がかかるといえそうだ。


□ソニーのホームページ
http://www.sony.jp/
□ニュースリリース
http://www.sony.co.jp/SonyInfo/IR/financial/fr/2004-1-28j/index.html
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http://av.watch.impress.co.jp/docs/20030724/sony.htm
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(2004年1月28日)

[AV Watch編集部/Reported by 大河原克行]


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