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【WPC EXPO 2004 講演レポート】
-「放送のユビキタスを実現し、巨大空白マーケットを狙う」
モバイル放送 溝口哲也社長


モバイル放送 溝口哲也社長
10月21日開催

会場:東京ビッグサイト 会議棟


 東京ビッグサイトで20日に開幕した「WPC EXPO 2004」では、東ホールで展示会が行なわれているほか、会議棟でも講演が連日行なわれている。

 21日には、20日から本放送を開始したモバイル放送の溝口哲也社長が登壇。モバイル放送の概要から今後の展開を含め、「放送のユビキタス化」にかける思いを語った。


■唯一ユビキタス化が遅れていた放送分野

 10月20日から本放送が開始されたモバイル放送(以下モバHO!)。衛星を使った世界初の移動体向けの有料放送で、コンテンツは映像7チャンネル、音声30チャンネル、データ情報サービス約60タイトルを用意している。利用料金やコンテンツの詳しい内容は既報の通り。

衛星と地上の再送信設備を併用したハイブリッドシステムを採用している

 放送の周波数帯域は2.6GHz帯を利用。送信は東経144度、赤道上上空36,000kmに浮かぶSバンド放送衛星を利用しており、衛星に直径12mという超大型Sバンドアンテナを装備することで、パラボラアンテナなどを利用せずに、小型の端末に搭載したアンテナだけで受信が可能になっている。

 映像をMPEG-4、音声をAACフォーマットで送信しているデジタル放送のため、屋外などでもアナログ放送よりも安定した受信が行なえるのが特徴。また、地下鉄やビル影など、衛星からの電波が直接届かない場所では、地上のギャップ・フィラー(再送信設備)から再送信を行なうハイブリッド・システムを採用している。

 溝口社長は講演の冒頭、携帯電話の高性能化や、デジタル家電を使った家庭内ホームネットワークなどついて触れ「“いつでもどこでも”というユビキタス技術は現実のものになりつつある。しかし、様々なデバイスが進化する中で、放送だけが流れから取り残されてきた」と語り、モバHO! が放送のユビキタス化を促進する放送サービスであることをアピールした。

 さらに「BSやCSなど、衛星を使った固定テレビ向けの全国放送が存在する。また、AM/FMラジオは移動体向けの地域放送として長い歴史を持っている。しかし、移動体向けの全国放送は長い間空白のマーケットになっていた」と解説。

 その市場規模について「携帯電話や自動車の数は7,000万台を超えるとも言われている。また、モバイル用としてノートPCを活用している人も多い。こうしたものすべてが潜在的な市場だと考えている」とし、開局後3年で加入者200万人を目指すことを改めて語った。

空白の市場を狙い、3年で加入者200万人を目指すという

 また、各地に深刻な被害をもたらした台風についても触れ、「NHKでは連日台風情報を放送しているが、モバHO! ではNHKからもニュース番組を中心としたコンテンツを提供してもらっている。今後は災害時に役立つ放送メディアとして貢献していきたい」とした。


■全国の阪神ファンにも

 なお、モバHO! は主なターゲット層として「20~50代のビジネスマン」を想定、NHKのニュースだけでなく、「日経CNBC」や「NNN24」など、経済関連のニュース番組も多く放送している。

 だが、溝口社長は「アニメやショートコンテンツを放送する“TAKARAND”や、MTVなど、幅広い人が楽しめるコンテンツもある。また、スポーツ関係にも力を入れており、野球では阪神戦をすべて放送できるようになった。阪神ファンは全国に沢山いると聞いている」とし、巨人戦についても今後交渉を進めていくことを明らかにした。

シャープの「4E-MB1」 東芝の「MTV-S10」 PCカードタイプのモバイル放送チューナ「MBT0102A」

あらゆる携帯型デジタルプロダクツの中にモバHO! チューナを搭載させたいという

 また、対応機器として、東芝の「MTV-S10」(11月1日発売:予想価格6万円弱)、シャープの「4E-MB1」(11月19日発売:同7万円前後)、PCカード型の「MBT0102A」(12月24日発売:9,800円)などを紹介。ブースで展示されている携帯電話型や音声放送専用端末のモックアップにも触れ「今後はチューナユニットのコストダウンと小型化を進め、あらゆる携帯型デジタルプロダクツの中に搭載させていきたい」と抱負を語った。

 モバイル放送はPCカード型チューナだけでなく、車載用受信機の開発も行なっている。放送事業者が受信機の開発まで行なうというケースは希だが、このことについて溝口氏は「本来は予定していなかったが、市場を作るという意味も込めて、6月の総会で方針変更して自社でも開発することにした。こんなに大きな市場があるということを、論より証拠として示したかった」という。

モバHO! チューナ内蔵の携帯電話のモック AMラジオを連想させる音声受信専用端末のモック

ANAでは機内で携帯端末を提供するのではなく、大型スクリーンや座席上部の小型モニタなどで映像を提供する予定。なお、携帯端末を機内に持ち込んでもリアルタイム受信は行なえるという

 なお、同社は20日に、全日本空輪株式会社(ANA)と2005年下期から、国内線のインフライトエンターテイメントとして、モバHO! を導入することで合意したと発表した。これにより、ANAの国内線機内でモバHO! の映像・音声放送が楽しめるようになる。

 具体的には、航空機に搭載したアンテナでモバHO! を受信し、映像番組を機内の42インチの大型スクリーン、15インチ小型モニタで表示する。また、各座席では乗客が任意の音楽番組(8チャンネル程度を想定)を視聴できるという。現在、ANAの機内では、事前に収録した映像・音楽番組を提供しているが、モバHO! を導入することで、リアルタイムなコンテンツが楽しめようになる。

□ニュースリリース
http://www.mbco.co.jp/05_news/press_archive/041020.html


■会場からはモバHO! バスで帰宅

 WPC EXPO 2004の会期中、東京ビッグサイトからりんかい線の「国際展示場駅」までの区間で、モバHO! が体験できる無料のバスを運行している。所要時間は10分程度。

 座席2つに1台専用受信端末が設置されており、チャンネル変更なども含め、自由に操作し、体験できる。注目して欲しいのはデジタル放送ならではの安定感で、車の速度が変化してもノイズやチラツキなどがほとんど発生しない。ビル影や陸橋の下などを通過しても表示が途切れることはなかった。

無料で利用できるモバHO! バス 車内では携帯端末を使って、自由に受信のチェックやコンテンツの視聴が行なえる

□WPC EXPO 2004のホームページ
http://expo.nikkeibp.co.jp/wpc/
□関連記事
【WPC EXPO 2003レポートリンク集】(PC Watch)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/link/wpc03.htm
【10月19日】モバイル放送、PCカード型「モバHO!」チューナを発売
-放送の録画・録音も可能で価格は9,800円
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20041019/mobile.htm
【10月4日】モバイル放送「モバHO!」、10月20日より本放送開始
-新幹線、高速道路でも視聴可能。3年で加入200万人目指す
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20041004/mobile.htm
【10月4日】東芝、モバイル放送「モバHO!」の専用受信端末
-SDカード録画に対応し、実売6万円弱
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20041004/toshiba1.htm
【10月4日】シャープ、「モバイル放送」受信端末を発売
-SDカードに録画。MPEG-4/MP3再生機能も装備
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20041004/sharp.htm

(2004年10月21日)

[AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]


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